PERSONA-trinity heart-   作:善い思考

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Rainbow observation

 一夜明けて翌日。

 目的の縦穴は森の中にあるらしく、一行は魔理沙先導のもと、木々の間を縫うようにして地底へ続く縦穴に向かった。

 

「いい天気だな。雪はあるけど散歩日和だ」

 

「カンザト、大丈夫?」

 

「だ、大丈夫。ちょっと背中が……」

 

 晴空の下、雪原を往く一集団。

 そこには4つの人影と……金髪の少女を象った人形がいた。

 

『そういえば間欠泉が吹き出した時も、こうやって私がアンタをサポートしたわね』

 

 乗りかかった船ということで、アリスも途中まで同行してくれることになったのだが、彼女は生身でなく、代わりに魔法で操る人形を動かしていた。

 

「その人形、喋れるんですか?」

 

『その娘が生きて喋ってるわけじゃないのよ。魔法でこっちの音声を人形から発生させてるの』

 

 つまり、スピーカーにした携帯電話を人形に持たせているような状態なのだろう。電子機器が無い幻想郷においては、とても便利な技術だ。

 

「ふぅむ、魔法とは奇っ怪なる術であるが、さても見事なものだな」

 

 布都が感心したように呟く。

 彼女たちの技術に疎い者からすれば布都の技も似たようなものに思えるのだが、これを言うと師匠は怒る。

 

「しっかし、鬼のいる地底の方が安全とはなんともなぁ」

 

『うーん……あそこが危険なのは変わりないし、私は大して違いないと思うけど』

 

 あの異形の目的は不明だが、少なくとも闇討ちは避けられるため、道中より人目のある地底の方が安全だろうという話になった。

 そのため、魔理沙とアリスが付き添うのは縦穴までだ。

 

「お、見えてきた」

 

 魔理沙が進行方向を指さす。

 遠くを見やると、真っ白な雪原地帯の中、明らかに雪の積もっていない開けた空間が存在していた。その土地だけ太陽光が集中して、雪が溶けているのだろうか。

 

「……!」

 

 いや違う。自分達の立つ地面より下にゴツゴツとした岩肌が見える。そこには、あるべきはずの地面が存在していなかった。

 

「でっか……」

 

 歩を進める一行の眼前で、ぽっかりと口を開けている。まさに『大穴』と呼ぶに相応しい、遥けき地下世界へと続く縦穴が、その威容を現した。

 

「これは、なんと広大な……!」

 

 布都が感嘆の声を漏らす。

 初見の人間はことごとく似た反応をとるだろう。それほどに自然の神秘を感じさせる、壮観な風景が目の前に広がっていた。

 

「警戒した割になんも無かったな。じゃ、私たちはここまでだ」

 

「ありがとう、魔理沙」

 

「いいってことよ。またの依頼をお待ちしてるぜ」

 

「アリスさんもありがとうございました」

 

『いえいえ、特に何もしてないからお気になさらず。記憶、無事に戻るといいわね』

 

「ありがとうございましたー」

 

「諸々感謝するぞ、御二方」

 

 こころと布都はお辞儀して感謝を伝えた。

 別れの挨拶を終えた一行は、ついに縦穴の縁に両足をつける。

 

「よし、行こう」

 

 3人は穴の中へ視線を投げる。

 底が見えず、高さは見当もつかない。見える限りの下部には闇が満ちており、未知へ挑む来訪者を手招きしていた。

 

「……」

 

 カンザトは地下へ降りる安全な階段を探す。

 が、目当てのものは見当たらない。

 

「……これ、どうやって降りるんだ」

 

 よく見ると辛うじて足場になりそうな突起はあるが、どれも人の子が安心安全に下りていくには心もとない。

 

「ん? そりゃ飛んで一直線に…………あ」

 

 魔理沙は気がついた。

 常日頃、空を縦横無尽に飛び回る自分たちとカンザトでは、そも前提が違うということに。

 

「あー……お前さんは飛べないんだったな。完全に忘れてたぜ」

 

『え、カンザトさん飛べないの?』

 

「あ、はい。お恥ずかしながら」

 

 幻想郷において、飛べないのは恥ずかしいことなのか。彼女たちは感覚が狂っているが、人間は飛べない方が普通である。

 

「私はいつも箒に乗って下りてる」

 

「え、じゃあどうすれば……」

 

「う〜ん……岩につかまってゆっくり下りてくか?」

 

 言わば逆ロッククライミングか。深度は不明だが、命綱もなしに挑むのはおよそ正気の沙汰ではない。

 カンザトは必死にかぶりを振った。

 

「だよな。じゃあ飛ぶしかないわ」

 

『魔理沙が連れてけばいいじゃないの』

 

「私は別にいいけど……快適安全な空の旅は保証できないな。あと帰りはどうするって話になる」

 

『どういうこと?』

 

「日帰り旅行なら昇りも私の箒に乗ればいいけど、何日も滞在するってなったらそれは難しい。地底にいる間、私がずっとついて回るわけにもいかんしな」

 

 日にちを決めて迎えに来てもらう手もあるが、どれほどの期間を地底で過ごすか未定なため、適切な案ではないだろう。アリス特製の通話機能付き人形が欲しいところだ。

 

「くっ、修行の前に飛行訓練をつけるべきだったか」

 

「私と布都が運ぶのは?」

 

「それじゃ! 面倒くさいが、背に腹はかえられん!」

 

「簡単に言うけどな、妖怪でも男ひとり運ぶのって結構キツイぞ? お前ら、そんなに力あるわけでもねぇだろ」

 

「だいじょーぶ。私、こう見えて意外と力持ちだから。むん」

 

 両拳を天に掲げ、マッスルポーズをとるこころ。

 筋力は並の人間よりあるのだろうが、どう見ても力持ちには見えない。

 

「……やめとけ」

 

「むーん」

 

 2人が手を滑らせてしまい、自分が真っ逆さまに落ちていく様を想像し、カンザトはゾッとした。

 

『じゃあどうする? 飛べるまで特訓してみる?』

 

「それしかねぇんじゃねえかなあ。誰でも飛べるようになるマジックアイテムでもあれば話は別だが。アリス持ってる?」

 

『無い。そんなのがあれば、里で売り捌いて大金持ちになれそうね』

 

「しかしだな、そんな一朝一夕で仕上がるものでは……」

 

「そうだ。カンザト、アレに再挑戦しよう」

 

「……アレ?」

 

「アレ」

 

 こころが両の人差し指をおでこから伸ばし、ピコピコと動かした。

 

「……! アレか!」

 

「そう、アレ」

 

「アレなぁ……」

 

「がんばろう」

 

 あまりいい思い出はない。だがやるしかない。

 

「おーい、アレアレ言ってないで説明してくれ」

 

「飛べるペルソナに乗るんだ」

 

「ペルソナ……ってなんだっけ」

 

 そういえば、魔理沙にはペルソナを見せていなかった。名前を知っているのは、霖之助か霊夢から聞いたためだろう。

 

「俺の能力なんだけど──」

 

 説明しようとして、実物を見せた方が手っ取り早いことに気づいた。

 カンザトは『隠者』のペルソナ、蛾人間『モスマン』を顕現させた。

 

「うわっ! なんだコイツ!?」

 

『あら可愛い』

 

「うげ……おぞまし」

 

 こころを除く初見3名が三者三様のリアクションを見せてくれた。

 

「このペルソナに乗ってみたら、ちょっとだけ飛べたんだよね」

 

「うえぇ〜こんなん乗れんのかよ」

 

『上手く飛ばせられたの?』

 

「動かすのが難しすぎて無理でした」

 

「えぇ……無理なんかい」

 

「飛んだよね、カンザトが」

 

「うん……飛んだな。俺が」

 

 あれは実に見事な飛翔だった。落下後に倒れ込んだ無様な姿さえ無ければ。

 

「なんじゃい、少しは実現可能な提案をせぬか」

 

「練習したら、実現できるかもしれません」

 

「そんな曖昧な……いや」

 

 布都は視線を落とし、考え込む。

 

「信じて待ってやる。やってみよ」

 

 わずかな沈黙の後、カンザトの顔を見上げた。

 

「ありがとうございます」

 

 師匠の許しを得て、カンザトはペルソナ飛行訓練を開始した。

 

 

 ・

 ・

 ・

 

 

 縦穴から少し離れた場所で特訓するカンザトを眺めながら、布都は休憩をとっていた。肩にはアリスの代理人形がちょこんと座っている。

 

『彼の能力、ペルソナ。なかなかに興味深いわ』

 

「む、興味深い、とは?」

 

『ペルソナは魔力と違うエネルギーを宿している。いえ、宿しているというよりエネルギーそのもの……に、見える』

 

「ふむ」

 

『生物に魔力を吹き込んで操ったり、契約した魔獣を召喚するなら分かる。容易ではないけれど、そういった魔法自体は存在する』

 

 布都は「耳元から声が聞こえるのはむず痒いな」と思いながら、アリスの話に耳を傾ける。

 

『でもあの召喚術は、無から自律的生命体を生み出している。私の知る魔術体系には当てはまらない。一見近いようでいて、逸脱してるわ』

 

「ふぅん……しかし、昨日はあの怪物のことを、何某かに造られた(てい)で話しておらんかったか? あれは無から生み出しているのとは違うのか?」

 

「その話も素材がある前提よ。泥か岩にでも魔力を注いで動かしてたんじゃないかって考え。ゴーレムみたいなものね」

 

 布都は、()()()()とはなんぞやと思ったが、それは今重要そうでないため流した。

 

『対して、ペルソナ(あれ)は全身がエネルギーで出来ている、エネルギーの集合体。ある意味、霊や妖怪の成り立ちに近い』

 

「要するに、よう分からんから惹かれるということか」

 

『ふふ、すごい簡略化されちゃったけど、端的に言えばそういうこと。長生きしてるけど、あんな力見たことないわ……今の私、冷静に見えるかもしれないけど、結構興奮してるのよ』

 

 冷静に見えるも何も、今のお主は人形だから感情の起伏はこちらに伝わらんだろう。布都は苦笑いしながら、そう思った。

 

「……アリス殿は人間ではないのだな」

 

『元・人間よ。そう言う貴方は人間にしか見えないけど、里の人たちとは少し違うわね』

 

 どのように自己紹介しようか。

 ……だまくらかす意図は無いが、少しぐらい虚栄を張っても許されるだろう。

 

「我は崇高なる御方、聖徳太子様の近衛たる仙人である。そんじょそこらの俗人とは比べんでいただこう」

 

『仙人? へぇ、ふーん……』

 

 なんだその反応は。何か怪しまれているわけではないだろうが。

 

『外の偉い人が蘇ったとは聞いていたけど、貴方がその関係者とはねぇ』

 

 少女人形がクスクスと笑った。

 

「馬鹿にしておるのか?」

 

『いえいえそんな、滅相もございませんわ。貴方のような偉い御方が、私の手料理を美味しいと言ってくれたのが嬉しかっただけ』

 

 本当にそれだけだろうか。なんだか小馬鹿にされている気がしてならない。

 

『貴方の尊敬する聖徳太子様にも、いつかお会いできたらいいけど』

 

「しからば門を叩くといい。寛大なる太子様は、見込みある同志の弟子入りを拒まぬ」

 

『あらごめんなさい。それはお断りするわ。わたくし無宗教なもので』

 

 手を差し伸べたのだがあっさりと払われ、布都は顔をしかめた。

 

『貴方は聖徳太子様をとても慕っているのね』

 

「当然だ。アリス殿にもいるだろう。信じ、尊び、守りたいと思う御仁が」

 

『うーん、パッと思いつく人はいないわね』

 

 信ずる御方がいない……自分には信じ難い心境だ。

 

 太子様を信じるがゆえに、我は我でいられる。

 我を我たらしめるのは、太子様の存在だ。

 それが揺らいでしまえば──

 

「……我は太子様を心から信頼しておる。太子様のためを思えば、如何なることも厭わない。太子様のお力になりたいゆえだ」

 

 太子様から命ぜられれば、自身すら犠牲にできる。自分と屠自古は、その覚悟を持っている。

 

「あやつを弟子にとった時、思ったのだ。もしあやつが道に迷うなら、我が太子様のように導けたら、と。カンザトにとっての我が、我にとっての太子様になれたら……と」

 

 最初はそんなこと考えていなかった。ほんの戯れのつもりだった。

 だが交流を続けていくうちに、立ち振る舞いを改めるべきではないか、と思った。

 

「なぁアリス殿、お主の目に我はどう映る? 我はあやつの師として、うまくやれているだろうか」

 

 そこまで話して、会ったばかりの者に何を話しているんだとハッとした。人形師が後ろにいるとはいえ人形相手だからか、思わず胸の内を吐露してしまった。

 

「いや、何でもない。唐突に語り出してすまなかったな。忘れてくだされ」

 

 人形は数秒黙し、やがてその向こうからすました声が聞こえてきた。

 

『そうねぇ……私は貴方たちと知り合ったばかりだから具体的なことは言えないけど、さっきの彼、貴方に信じてやるって言われて嬉しそうだったわよ』

 

 布都は目を丸くした。

 

 嬉しそう? さきのカンザトが? 

 

 そんなこと──と否定しようとして、口を噤んだ。

 

「……そう、か。それは……喜ばしいことだ」

 

 無関係な者の方が先入観なしに物事を見られる。そういうことだろうと自分を納得させた。

 

「アリス殿。恩に着る」

 

『いえいえ、こちらこそ。なんだか貴方のことが分かった気がするわ』

 

 何はともあれ、善く思われているならそれで良い。

 布都は幾分か前向きになった気分で、四苦八苦する弟子へ視線を戻した。見れば、背に主がしがみついた状態のモスマンがふらふらと浮かび上がったところだった。

 

『あ、落ちた』

 

 そしてすぐに墜落した。

 それほど高くないとはいえ、打ちどころによっては骨の一本や二本折れてもおかしくなさそうだが、何事もなかったようにカンザトはむくりと起き上がった。

 

『人間……?』

 

「本人曰く、純粋な人間だ」

 

 ペルソナ自体気になるが、アリスは使役者本人にも興味が湧いてきた。

 

『あっちは何を遊んでいるのかしらね』

 

 アリスに言われて、布都は視線を横へずらした。

 

「魔理沙! 背負いづらいから暴れるんじゃあない!」

 

「こんなん落ち着いてられるかぁ!」

 

「しがみついてろ!」

 

「不安定すぎて無理だっつーの! うぉぉ落ちる落ちる落ちる!」

 

 別の場所では、魔理沙とこころがギャーギャーと騒いでいた。おそらく、こころがカンザトを運ぶことになった場合の予行練習だろう。

 

「まったくしようがない。我も手を貸してやるか」

 

 見かねた布都が立ち上がり、彼らに近づいていく。

 歩く布都の背中を見ながら、アリスは思う。

 

 彼の考えを知りたがり真正面に立っていたはずの彼女より、第三者である自分の方が彼の表情をよく見れていたというのは、なんとも皮肉なことだ。

 

『仙人だって言ってたけど、随分人間臭い悩みをもってるのねぇ』

 

 

 ・

 ・

 ・

 

 

「全然飛べない……」

 

 以前よりは操作できているが、たかが知れている。そんな半端な状態で降下しては、死に急いでいると言われても仕方ないだろう。

 というわけで一度集合し、作戦を練ることにした。

 

「もっと安定するペルソナに変えてはどうだ?」

 

「たしかに。そうですね」

 

 布都からのアドバイスで、騎乗するペルソナを変えることにした。

 

「んー……じゃあ、こいつか」

 

 カンザトがその威光漂う姿をイメージすると、紺碧の鱗が煌めく龍『セイリュウ』が顕現した。

 

「うぉ、龍もいんのかよ。でけぇな」

 

「なんと……!」

 

『これは……凄いわね』

 

 今度は3人とも好感触だ。受け取り方は人それぞれだが、やはりペルソナの容姿にも美醜の差があるのだろう。

 

『でも……うーん』

 

「……あーそうか。あんま良くないかもな」

 

 かと思えば、アリスと魔理沙は微妙な反応を示した。

 

「え、なんで?」

 

「龍ってのはここじゃ特別な存在でな。私たちはカンザトが出したペルソナだって分かってるけど、事情を知らない奴らがソレを見たら騒ぎになるかもしれん」

 

『龍神様が降臨なされた。龍神様を呼び出したあの者は神の使いか? 今すぐ崇め奉るのだ。……っていう風にね。容易に想像出来るわ』

 

 自分が崇められる光景を想像して、カンザトは末恐ろしさを覚えた。ついこの間越してきた一般人が神の御使いにまでランクアップか。神の冒涜にあたりそうだ。

 

「地底の悪鬼共がそんな反応するかぁ? 思いのほか信心深いんじゃな」

 

『こうはならないにしても、なまじ長生きさんが多い分、騒がれるのは間違いなさそう』

 

「なんなら悪い方向に転ぶかもな。龍神が地底を滅ぼしに来たとかそういう」

 

 ただの訪問者が侵略者になってしまえば、大惨事になること間違いなしだ。さとり妖怪に会うどころではない。

 

「お、おぉう……じゃあダメだな」

 

 カンザトはこちらをジッと見つめてくるセイリュウを戻し、代わりに巨鳥『グルル』を召喚した。

 

「む、コイツは我が稽古をつけた際も出した悪魔じゃな」

 

「人型だが鳥か。さっきのよりは飛べそうだな」

 

『引き出し多いわね。本当に凄い能力だわ』

 

 浮遊状態のグルルを地面に着地させる。

 安定感を確かめなから、腰を落としたグルルの背に跨った。

 

「どう?」

 

「背骨がゴツゴツしてて痛い……でも確かに、さっきよりはいいかも」

 

 そのまま真上に浮かせる。

 中腰で飛行という、グルルにとってはかなり辛い体勢だろうが、文句を言ってくるわけでもないので続行する。

 

「おー浮いてる浮いてる。全然羽ばたいてるように見えないんだが、どういう原理だ? あれ」

 

『謎多き力ね』

 

「おーい! そのままじゃ! そのまま前に進め!」

 

 布都の命じるがままに、カンザトは前進しようとする。ところが──

 

「うぉっ!?」

 

 体に強いGがかかり、前方に跳ね飛ばされた。

 

「ぁぁぁぁぁぁああああああああああ

 

 命の危険を感じ、カンザトは受け身をとろうとする。

 しかし、備えていた衝撃と痛みは訪れなかった。

 

「大丈夫?」

 

「だ、大丈夫……助かった」

 

 落下するカンザトをキャッチしたのはこころだった。男として少々情けない絵面だが、横抱きにされている。

 

「むっ……う、く」

 

 苦しげに呻くこころを何事かと思い見れば、腕がプルプルと震えていた。

 

「うわごめん! 降りる降りる!」

 

「だいじょぶ……わ、私、最強だもん……」

 

「マジで無理しないで!」

 

 危なげながらも、こころは無事着地した。

 

『惜しかったわね。この調子ならいつかは飛べそうじゃない?』

 

「そうですね……頑張ります」

 

「なー、一旦戻らね? このままじゃ日暮れちまうよ。腹も減ったし」

 

「やはりそう易々と出来ることでもないか……」

 

 自分のせいで皆が足を止めている。その事実を考えると、カンザトは心からもどかしかった。

 

『しばらく魔理沙の家にお泊まりかしら』

 

「私は別に構わんけど、寝床無いのはどうしたもんかな」

 

「俺は床でも大丈夫」

 

「うー、でもなぁ……こーりんとこに布団あったっけな」

 

 魔理沙は、周辺の数日間滞在できる施設を考える。

 そこそこ縦穴の近くにある、複数人が宿泊できる場所。

 そんな好条件、そうそう都合よくあるわけが……

 

「あ、いいとこあるじゃん」

 

 あった。自宅よりも縦穴に近く、空き部屋が多そうで、なおかつ家主の許可も下りそうな建物が。

 

「よし、お前ら私についてこーい!」

 

『アンタまさか……』

 

「?」

 

 尋ねても行先を明かさない魔理沙に困惑しながら、一行は大人しく後ろをついて行った。




要介護系主人公

ペルソナ〜トリニティ・ソウル〜は

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