アンケートの結果ですが、未視聴の方が多く正直驚きました。本編を知らなくても、興味をもって読んでいただけたことがとても有難いです。もしこの小説きっかけで本編を視聴した方がいたら、いちファンとして嬉しい限りです。
アンケートは常設するので、まだの方は投票をお願いします。書くモチベーションに繋がります。
ダイニングルームに通されたカンザトは食事が運ばれてくるまでの間、レミリアへ身の上を語った。
記憶喪失のことやペルソナ能力についても話したが、中でも盛り上がったのは、共通の知人の話題だ。
「──それで霊夢と森近さんに助けて貰って、人里に住むことになったんです」
「へぇ、あの無愛想な店主が随分と優しい……」
レミリアは可笑しそうにくつくつと笑った。
「無愛想ですかね?」
「無愛想も無愛想。お客じゃないと分かった瞬間の変わりようったらないわ」
「あー……」
自分が邪険に扱われたことはないが、どうしてか容易に想像できた。
「友人もいなさそうだし、貴方みたいに話せる男友達ができて嬉しいのかもねぇ」
命の恩人が友達とは……恐れ多くも、カンザトは嬉しく思った。
「たまに遊びに行ったら喜ぶんじゃないかしら」
なんだか母親地味たことを言っている。
失礼だが、見た目と台詞が合ってないな、と思った。
「マジかよ……香霖は私じゃ満足できなかったってのか……」
魔理沙は天を仰ぎ、わざとらしく落胆を示した。
『いくら昔馴染みでも、男性と女性じゃどうしても違うのよ』
「ふふ、そういうものかもね」
先ほどの諍いが嘘のように、レミリアは友人(?)2人と親しげに談笑している。アリスの言っていた「話してみると案外普通」という言葉に納得した。
『そういえば、店主さんは昨日の音に気づかなかったのかしら』
「あー、近くで誰かがバチバチやり合ってるとでも思って気にしなかったんじゃねぇかな」
『なるほどね』
「昨日の音って?」
レミリアの疑問に答え、異形について美鈴へ伝えたことと同様の説明をした。
「ふーん……青い怪物ねぇ」
「結構デカい音だったんだが気づかなかったか? 門番は揺れに気づいてたぞ」
「寝てた」
「あぁ……お前はそうだよな」
「ただの新入りじゃないの? なにも幻想郷の住人全員が顔見知りなわけないんだし、変なのの一匹や二匹いるでしょ」
「その線もなくはないんだが……ちょっと気になることがあってな」
魔理沙の視線がこころへ向く。
視線に気づいたこころは、異形が宿していた何者かの意思について語った。
「これ聞いちまうと、ただの野良妖怪とは思えないんだよな」
『私は背後に遠隔操作してる術者がいると思ってるんだけど、レミリアはどう思う?』
「いや私に訊かれても分かんないし……そういうのはパチェに訊いてよ」
「まさにそのパチェさんが怪しいと踏んでるんだが、あいつ最近変なこと言ってなかったか?」
『アンタ……まだ言うか』
「自分の代わりに使い魔を動かして外の空気を吸ってるかもって? 出不精極めてるわね」
「で、どうなん?」
「知らないわよ。やるかもしれないし、やらないかもしれない」
「適当だなぁ。友達なんだろ? もっと関心持ったらどうだ」
「だから余計なお世話だっての」
以前も話に上がった容疑者候補はレミリアの友人らしい。そろそろ、その人物の素性を訊いておこう。
「あの、パチェさんって誰ですか?」
「ここに居ついてる魔法使いだ」
「ウチの地下には図書館があってね。いつもそこにいるの。話をしたいなら明日にでも会いに行ってみるといいわ」
予想よりも近くにいて、カンザトは少々驚いた。
犯人かと疑っているわけではないが、飛行訓練の合間に図書館を訪ねるのも手だろう。
「ところで、貴方」
レミリアの赤い瞳が、身体を硬くするこころの姿を捉える。
「ナ、ナンデゴザイマショウカ」
ギギギと軋む音が聞こえてきそうなほどぎこちない動作で、こころはレミリアと向き合った。
「たしか神社で舞を披露していたわね」
「ハ、ハイ。ヨクゴゾンジデ」
「外の伝統芸能には詳しくないのだけれど……見事な演舞だったわ」
「ハイ……え?」
「観客の目をよく意識して、楽しんで貰えるよう努力したのでしょう」
まさか趣味の能楽を褒められるとは思わず、こころは唖然とした。
「また見せてくれると嬉しいわ」
レミリアは目を細め、上品な笑みを浮かべた。
「……是非に!」
桃色の瞳を輝かせるこころを見て、カンザトは微笑んだ。
気づけば、レミリアへの恐怖心は薄れていた。
見る者に恐怖を植え付ける悪魔のような一面はなりを潜め、そこには異能者すら惹きつけ従える、カリスマ性溢れる夜の帝王の姿があった。
その後も雑談に興じていると、ドアをノックし咲夜が部屋に入ってきた。
「お嬢様。お食事の用意が出来ました」
「運んでちょうだい」
「かしこまりました。それと……」
咲夜の後ろから恐る恐ると現れたのは、気を失って別室に寝かせていた布都だった。
「布都さん! 大丈夫ですか」
「うぅむ、すまない。ちょいと取り乱した」
「まだ寝てた方がいいんじゃ……」
「いいや問題ない。我も一緒させてもらおう」
気を取り直し、カンザト達は今宵のディナーと洒落込んだ。
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咲夜と妖精メイド達により、次々と豪華な料理が配膳されていく。
カンザトは、普段食べられない洋風料理に軽く感動を覚えていた。
「……!」
そのうえ、美味しい。
他人の料理を批評できるほど肥えた舌は持ち合わせていないが、これは自信を持って美味だと言える。
「お口に合うかしら」
「美味しいです。ありがとうございます」
「そう、良かった」
レミリアは優雅に微笑んだ。
横を見ると、こころも黙々と料理を口に運んでいた。一方で、布都はあまり手が動いていないように見える。
「お主、さっきのアレを見て、よくそんな堂々と食えるな……」
「もう怖くない。話してみたらいい人だったから」
「今ばかりはお主のその豪胆さが羨ましい……」
布都は銀のスプーンを手に持ったまま目の前のスープに視線を落とし、小さくため息をついた。
「遠慮せずお食べなさい。そこの貴方も」
レミリアの深紅の瞳がビビり散らかす布都を射抜く。
「ヒッ」
布都はか細い悲鳴を漏らすと、より縮こまってしまった。手から滑り落ちた匙がカシャンと音を立てる。
「完全にビビっちゃってんじゃん。お前があんな凄むせいだぞ」
魔理沙はスープを啜り、悪戯っぽい目つきでレミリアを一瞥した。
「誰のせいだと……」
「私のせいじゃねぇぞ。私はこいつらが心配だっただけだし」
「う」
「ちょっとした冗談に過剰反応したのはどこのどいつだったかなぁ?」
「う゛」
「てかお前、私の言うことなんてお見通しだとか言ってたよな。それじゃさっきのあれも演出か? はた迷惑な奴だな」
「うぅ……」
怒涛の責めに耐えきれなくなったのか、レミリアはバツの悪そうな顔でそっぽを向いた。
「もう、私が悪かったわよ! 大人げなかったわ!」
見た目幼女が大人気ないとは。これほど外見と言動が一致しないこともそうあるまい。
『やめなさいっての。あれはアンタも悪いわよ』
「わりぃわりぃ。つい、な」
ニヤッと口角を吊り上げる魔理沙に、反省の色は見られなかった。
こうして些細な小競り合いはありつつも、皆は食事を楽しみながら、四方山話に花を咲かせた。
その後も……
「レミリアさんのことは小鈴ちゃんから聞いてたんですよ」
「あら、小鈴と友達だったの」
「はい。レミリアさんと文通してるとかで……」
「ええ。筆圧から分かるんだけど、毎回頑張って書いてくれててね。なかなか楽しいのよ」
「あの……チュパカブラ飼ってるって本当ですか?」
「本当よ。見たい?」
「えっ、見たいです!」
「どこかで見せてあげるわ。名前はチュパよ」
「パチェ? お前、親友があんま構ってくれないからってペットに同じ名前つけんなよ……」
「違うわ!!! チュ、パ!」
思いのほか話は弾み……
「へぇ。貴方、例の聖人の部下だったのね」
「あ……はい。我は……いや、私は……」
「そう硬くならないで。さっきは怖がらせてごめんなさいね」
「え」
「貴方は何故この旅に同行してるの?」
「……この男の師として、危険が伴う旅に同行するのは当然ですので 」
「あら、貴方たち師弟関係だったの。立派な心がけだわ。さすが聖徳王の傍に仕えるだけある」
「そ、そうでしょう! 私は弟子へ指導しながら、自らも日々研鑽を欠かさず、更なる高みを──」
最終的には、すっかり距離が縮まっていた。
「これうめぇな。腹減ったら飯食いにここ来ようかな」
『美味しそうね。また機会があれば私も参加させてもらおうかな』
「さっきから気になってたけど、今日は随分と可愛らしい姿なのね。なんで?」
『歩くの疲れるから』
本人不在なのはそんな理由があったらしい。出不精な魔法使いはここにもいた。
「あ、そうだ。今日は私もこいつらと一緒に泊まってくから、もうひと部屋用意頼むわ」
「は? アンタは家あるんだから帰りなさいよ」
「まぁそう言うなって。数少ない友達は大切にすべきだぜ」
「……」
『魔理沙。一時的に接続切るから、帰る時私の人形持ってきてね』
「ういー」
「帰れ」
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食事を終えた後は、各自客室に案内された。
歩き疲れて疲労が溜まっていた一行は、早々に寝支度を済ませたのち、明日に備えて休むことにした。里の生活様式に染まりきっているせいか紅魔館の内装にはいちいち感動を覚えたが、全ての感想を長々と語っては冗長さが否めないため、割愛する。
「疲れた……」
現在、カンザトは清潔に整えられたダブルベッドに腰を下ろしている。
「……」
部屋に居るのは自分だけ。ここ最近は常に誰か──主にこころと行動を共にしていたため、独りの状況は久しい気がした。
静寂が支配するなか、ホテルの一室かと見まごうほど清潔感のある室内をぐるりと見回す。
「なんか、紅魔館ってすごい赤いな……」
名は体を表すと言うが、ここまで赤いと謎のこだわりを感じる。これは家主の趣味なんだろうか。それとも、我々常人とは異なる世界を見ている吸血鬼の視界に合わせた結果なのか。
「カンザト、おるか?」
そんな取るに足らないことを考えていると、ドア越しに声をかけられた。
「はーい」
カンザトは警戒することなくドアノブを捻る。
そこに立っていたのは、寝巻き姿の布都だった。風呂上がりなのか、下ろした銀髪がほんのり湿り気を帯びている。
「布都さん、どうしたんですか?」
就寝前になんの用だろうか。作戦会議なら、なにも疲れている今日済まさずとも、明日に持ち越せばいいだろう。
「怖くないか?」
「はい?」
と思いきや、予想斜め上の質問が飛んできた。
「怖がりなお主のことだ。こんなところでたった独り寝るのは怖かろう?」
「いえ……」
「言わずとも分かる。先のこともあって、怖くて怖くてたまらないはず。おぉ……弟子よ、哀れなり」
貴方にだけは言われたくない。
カンザトは喉まで出かかった言葉を、ぐっと飲み込んだ。
「レミリアさんすごくいい人だったんで、もう大丈夫です」
「ぐ……たしかに予想に反し理性的だったな」
布都はバツの悪そうな顔をした。
「しかしな、隙を見せれば何をされるか分かったものではない。いついかなる時も油断は禁物であるぞ」
「今さら何かするとは思えないんですけど……」
「まあまあ。眠ろうにも独りでは気が休まらんだろうという話だ」
「むしろよく眠れそうです。ベッド触ってみました? めっちゃ柔らかいですよ」
「あぁ、あれは驚いた! あの、えも言われぬ感触……まるで雲の上にいるようであった! 悪魔の城なんぞどんな荒れ果てた場所かと思いきや、意外も意外、これほど手入れの行き届いた快適な環境だとは。しかし欲を言うなら寝慣れた布団の方が……じゃなくて!」
楽しそうに語り出したかと思いきや、不満気な表情に早変わりした。どうやら紅魔館への印象が裏返ったようである。
「と・に・か・く! そう頑なに隠さなくてもよい。我に隠し事は通用せんぞ」
「はぁ」
「ゆえに、だ」
布都の表情に自信が漲る。嫌な予感がした。
「今宵は我が横にいてやろう! 師の寛大なる温情に咽び泣くがよいわ!」
「結構です」
カンザトはパタンと扉を閉めた。
「なっ、何故だ! 我の優しさを無下にするとは何事か!」
布都が自分から扉を開く。
開き切るすんでのところで、カンザトは扉を掴んで停止させた。
「いや、ありがたいけど大丈夫ですって! 普通に一人で寝れます!」
「痩せ我慢は身体に毒だ! 素直に入れろ!」
「嫌です!」
「い、い、から入れろ〜〜!」
「なんすかちょっともう〜!」
力ずくで入ろうとする布都を、力ずくで断固拒否するカンザト。吸血鬼の根城にいるとは思えない、なんとも馬鹿馬鹿しい絵面がそこにあった。
他の部屋への迷惑を顧みず争っていると……
「なにしてるの」
「げっ! 面霊気!」
「こころ……」
こころという助け舟が到着した。布都と同じく寝巻き姿で、これから寝ようとしていたのだろうと推察できる。
疲れているところ悪いが、今すぐ意味不明な駄々をこねる布都を連れ帰ってもらおう。
「ごめん、うるさかった?」
「ううん」
ところが、直後の台詞でカンザトの期待は容易く裏切られることになる。
「ここに寝に来た」
「え?」
「いつもあなたが傍にいたから、独りだと落ち着かなくて」
照れくさそうに、こころは後頭部に手を添えた。
「スーッ……」
カンザトはどう答えていいか分からず、細く息を吸った。
仲間は色々な思いを分かち合うべきと言ったが……今回ばかりは少し話が違ってくる。
「ならばしょうがないのう! ようし、3人で寝るか!」
「あ、ちょっと!」
言うが早いか、布都は呆けているカンザトを押しのけて部屋に入り、そのままベッドへ飛び込んだ。
このままでは、侵略者2人に極上の寝床を奪われてしまう。
「こころ……あっ!」
混乱に乗じ、するりと部屋に入ってくるこころを止める気力はなかった。
「お邪魔します」
邪魔すんなら帰ってや〜と言いたいところだが、頑固者を説得してそれぞれの部屋へ強制送還するのは骨が折れる。それにもう寝たい。
広いベッドでゆっくり寝たかったのだが……仕方ない。
「じゃ、俺はソファで寝ますね……」
落胆しながら大きなソファへ移動すると、布都の口から衝撃の一言が飛び出した。
「どうした? 早う入れ」
「は?」
驚愕のまま勢いよく振り向くと、そこには掛け布団をめくりキョトンとした顔でこちらを見つめる布都の姿が。
何を言い出すんだこの暫定師匠は。空いた口が塞がらない。
「こ、こころ……」
この、倫理観を異空間に置き去りにした人をどうにかしてくれ。
目で助けを求めるが、カンザトの思いは二度も裏切られることになる。
「カンザト」
こころはベッドに腰掛けると、手招きした。
「早く寝よ」
カンザトは頭が真っ白になった。
「ほれ、こやつもこう言っておるぞ」
「は、いや……」
思わず後ずさった。このまま別室に逃走を図るべきか。
そこでハッと気づく。こころが来た時点で、布都の目的(本人はカンザトのためだと言い張っているが)は達成しているではないか。
「こころと一緒に寝ればいいじゃないですか! 俺は──」
「こやつは何かあった時に我を見捨てそうだからダメだ! 安心できん」
普通に「我を」と言った。怯える弟子のためを想い、添い寝を提案した心優しい師匠という建前はどこへやら。
「むっ、失礼な。そんなことしないもん」
「大丈夫ですよ、こころは仲間を見捨てません」
「でも私はカンザトがいなきゃヤダ」
「oh……」
彼女に必要とされるのは嬉しいが、この状況下においては素直に喜べない。
「……ま、魔理沙連れてきましょうか……?」
「だから根本的な解決になっとらんだろが」
「いや……だって、えぇ……? 仲間でも男女で一緒に寝るのは……あんま良くないと思うんすけど……」
「なあにウブなこと言っておる! 師弟間ではそんな気遣い不要! ほれ早う!」
これは俺がおかしいのかと、カンザトは頭を抱えた。この人達には男女の距離感を保つという感覚がないのだろうか。無知だとか、無防備だとかそういうレベルを超えている。
こんなことになっている原因は二つ。
まず第一に、男として見られていない。
おそらく当人達にその気は一切なく、純真無垢な気持ちで提案しているのだろう。言わば子供同士の距離感だ。突っぱねづらい分、なおさらタチが悪い。
こころはこちら寄りだ。
第二に、紅魔館というアウェイな環境と、さきのレミリアから植え付けられた恐怖心が正常な思考を阻害している。孤独感と防衛本能が、仲間への救援要請を躊躇いなく実行させたのだろう。
布都はこちらの傾向が強い。
長々と述べたが、要は勝手に意識してドキマギしているのはカンザトだけという悲しい話である。
(いいのか……?)
眠気のせいか、カンザトは分からなくなってきた。
こちとら人並みに異性を意識する立派な男だ。女性との同衾が嫌なのかと問われれば、即答は出来ない。
一緒に寝るだけ。不埒な行為などでは決してない。それだけの事だと理解はしている。
だがどうしても、それは旅の仲間としてどうなのか? という理性が身体にストップをかける。頭を空っぽにして「わーモテモテだ。嬉しいな〜」などと思考放棄が出来れば、どれほど救われるだろう。
「……じゃあ、失礼します」
「うむ、遠慮はいらぬぞ」
「いらっしゃい」
結局こちらが折れて、布都を真ん中に3人仲良くベッドに入った。
・
・
・
というのは嘘で、カンザトは2人が寝入るタイミングを見計らってベッドを抜け出し、2人が目覚めないようそろりそろりとソファへ移動した。
この根性なし!それでも玉ついてんのか!と野次が聞こえてきそうなものだが、彼の意思は固かった。
「うぅ……あ、悪魔が……」
布都の寝言にドキリとしながら、ソファに寝転がる。
(やっと寝れる……)
毛布に包まり、ひと呼吸する。
お日様の香りがして、吸血鬼の住処にいるにも関わらず、どこか心が安らいだ。
「……」
しかし、足がはみ出る。
多少居心地の悪さを感じながら、瞼を閉じた。
……
…………
………………
眠りについてからどれだけ経っただろう。
…………?
精神がどこかへ引かれる。
意識が浮上していく。
上体が起きている。
何かに座っている感覚がある。
いつの間にか、目が覚めている。
ぼんやりとした思考のまま、ゆっくりと、ゆっくりと瞼を開く。
「──っ!?」
青い。
ひたすらに青い。
だが、それ以外が判然としない。
明るいのか、暗いのか。
広いのか、狭いのか。
暖かいのか、寒いのか。
それすらも掴めず、ただただ青い空間が眼前に横たわっていた。
自分は客室で寝ていたはず。
赤い館はどこへいった。
こころは、布都はどこだ。
その時、混乱から立ち直るより早く、細く甲高い声が鼓膜を震わせた。
「ようこそ……我がベルベットルームへ」
心根を見透かすように、ギョロリと、老人の血走った目が青い小部屋へ招かれし愚者を見つめていた。
ペルソナ〜トリニティ・ソウル〜は
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全話視聴済
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途中まで視聴
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未視聴
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存在を知らない