最近のつぶやき:こころちゃんって公式グッズのラインナップに選ばれること多くないですか?思ってるより人気なんだろうか。布都とか霖之助とかもっと増えてほしい。
さとりの能力により、失くした記憶の断片を垣間見た翌日のこと。みなは改めてさとりの自室に集まった。
「やはりあれは、貴方の幼少の記憶」
カンザトは頷く。
間違いない。今よりも目線が低く、自分を子供だと認識していた。
「海で襲われていたのは……俺の両親だと思います」
距離があったせいか、顔はよく見えなかった。今はぼやけているあの人たちの輪郭が確かな形を帯びた時、自分はどのような感情を抱くのだろう。
「……あの、近くにいた男性は」
「たぶん、兄です」
「曖昧だな」
布都が歯切れの悪い物言いに疑問を覚える。
「なんて言うか……その時のことを完璧に思い出したっていうより、その時見たものと思ったことを頭の中に直接流し込まれたような感じなんですよね」
「私が心を読んだ時と似た感覚かしら」
「私もちょっと分かる気がする……」
さとりとこころは、それぞれ共感できるところがあるようだ。
「よう分からぬが、確たる証拠とするには不十分ということだな」
その場にいた者との関係性は、己の思考と自他の発言を手がかりに推察するほかない。
とはいえ、この考えは九分九厘正しいだろう。記憶の中の幼い自分は、そばにいる眼鏡の青年を『兄』と認識し、視界の奥で血に濡れる男女を『両親』と認識したのだから。
「たしか幻想郷に来る前は兄弟といたんですよね? それがお兄さんなんでしょうか」
カンザトは幻想入りの直前まで兄弟と共にいたが、巨大な異形と戦闘になり、その後行方知れずとなった。パチュリーから記憶投影の術を受けて判明した事実だ。
「弟もいるのでまだ分からないですね」
「例の忽然と思い出した
「いました。でも──」
さとりの能力で想起した
「歳が全然違うような……」
「とし?」
「後に思い出した方が大きかったんです。だから歳が違うのかなと」
「こころさんの身長と同じくらいだと言ってましたね。ということは、同時期の出来事ではないんでしょう」
「殊更わからぬ。後者は何故、脈絡もなく思い出した?」
その問いに答えられる者はこの場にいなかった。きっかけはこいしとの会話でも、具体的な理由は不明だ。
「その人が心を読めたことには関係ないよね?」
「それはないと思うけど……」
「同じく心を読める──まあ元であるが、サトリ妹と語らいしことを機に弟君の存在を思い出したというのは……ちと無理があるか?」
「心が……?」
食事中に知らされていたこころと布都に対し、唯一初耳だったさとりは眉をわずかに持ち上げた。
「俺の弟、他人の思ってることを当てられたみたいなんです。読心術とかじゃなくて、本当に自然と分かっちゃうみたいで」
「……嫌だったんですね。その力が」
さとりはシンパシーを感じずにいられなかった。生まれながら備わっていた才に振り回され、能力そのものを忌む兄弟がいるという境遇に。
「念のため確認するが、人間よな?」
こころが無防備な布都の頭をスパン!とはたいた。
「ぃたぁっ!?」
「カンザトの家族なんだから人間に決まってるでしょ。なに言ってんの」
「分かっとるわ! だから念のためと言ったのだ!」
「人間ですけど、もしかしたら──」
「ペルソナ使いかもしれない、ですね?」
「はい。心を読めるのは、ペルソナが影響してるんじゃないかと」
「あるいは、太子様と近しい力か?」
「その可能性もありますね。いずれにせよカンザトさんが分からないのであれば、この場で答えは出ませんが」
ふむ、と布都が腕を組む。
「ペルソナ能力に想いを悟る力……時代は違えど、異才を持つ者はいつの世も現れるものなのか。お主の弟君は、民草を導くに相応しき器やもしれぬぞ」
「いやぁ……多分あいつはそんなタイプじゃないですね。どっちかと言えば引っ込み思案で」
「お主もその者と血を分けているのだから、先導者たる器が……いや、ないな。お主に衆庶を導く役目など似つかわしくない」
「うわさらっとヒドイ」
「でもカンザトは話しやすいよ。みんなの相談役になれると思う。たしかにリーダーって感じはしないけどなー」
「ありがとうこころ。でも最後のは余計だわ」
「お主にも人心を掴む才があればな……」
「強いペルソナならあるんで、力にものを言わせれば」
「あほう。それでついてくるのは鬼ぐらいであろうが」
「たしかに。布都さん、その考え、あながち間違いじゃないかもしれませんよ」
ふざけたやり取りを静観していたさとりだったが、不意に口を挟んできた。
「え? 力でついてくるのは鬼ぐらい……?」
「そっちじゃなくて。カンザトさんにも人心掌握の才能が──心を読む能力が備わっているかもということです」
話が見えず、布都は首を傾げた。
当の本人も目を丸くする。
「赤いドレスの少女『アヤネ』が言った、“受け継がれしペルソナの力”。それこそが、カンザトさんの弟が持つ心を読む能力のことだとしたら?」
「……! なるほど」
「でもそれじゃ、その人は」
故人の可能性が高い。肉体は滅び、魂だけが兄であるカンザトの身体に宿っている事になる。カンザトにとっては受け入れ難い推測だ。
「実際のところどうなのだ。お主、心が読めるのか?」
そんな自覚はないが、カンザトは正面のソファに座るさとりの顔をジッと見つめてみる。
……数秒後、さとりの視線がふいと外れた。
「あの、あまり凝視されると……」
「す、すみません」
「して、読めそうか?」
「分かんないです」
「ならば生きていると思っておいた方がよいな。分からないものをそう案ずることもあるまい」
布都なりに心の持ちようを助言してくれているのだろう。彼女の言う通り、現時点では不確定要素が多く、断ずるには早計と言える。
「そうですね。ごめんなさい、結論を急ぎすぎました」
「じゃあカンザトの中にいる誰かの魂は、お父さんとお母さんなのかな」
こころは少し言いづらそうにしながらも意見を述べた。
「そうかも。ただ、俺が見た記憶の中には、もうひとり亡くなった人がいた」
「お姉さんですね」
さとりの言葉に頷き肯定する。
当然、同じ記憶を覗き見たさとりは知っている。
「兄と弟、そして姉か……」
口には出さなかったが、布都は「ますます込み入ってきたな」と思った。
「あの人も何かに襲われていた。目の前で……」
軽いボールが空中へ打ち上げられるかの如く、人体がいとも容易く放り投げられる現実味のない光景。嫌でも頭にこびりつくというものだ。
「つまり亡くなったのは、父、母、姉の三者。遺影の数とも一致しますね」
三つの遺影を前にして、魂が抜かれたように呆然とする幼少期の自分。横で泣きじゃくる弟と、沈痛な面持ちの兄。あれが同時に亡くなってしまった家族三人の葬式に参列する場面だとすれば、悲しいほどに合点が行く。
三人の死に際を見たうえで葬儀の記憶も蘇るとは、どこか出来すぎている気もするが、何か意味があると見て然るべきだろう。
「要するに、だ」
布都は話の区切りをつけるかのように、ひとつ咳払いをした。
「こやつの肉体には、父、母、姉のうち、いずれか二人の魂が宿っておる。彼らの魂はそれぞれ異なる力を有し、異能を宿主たるカンザトにもたらしている。そしてその二つ力こそ、近い未来に対峙する何者かに抗するため必要なものである、と」
「その三者と仮定するなら、二つの魂は男女のものだと判明しているので、片方は父で確定です。つけ加えると、その異能は暴走状態にあるこいしの能力を和らげていて、あの子に良い影響を与えている」
「生きている家族、兄と弟のどちらかは、カンザトがこっちに来る直前に一緒にいた可能性が高い……だよね」
「うん。あとは……弟には心を読む力があって、ペルソナにも関係あるかもしれない。ただこれは俺の記憶と、幻想入りしたことに関係ないかも」
ふぅ、とさとりが小さくため息をつく。
「本当に……辛い記憶が蘇っただけで、肝心の失った原因などは依然分かりませんね」
「それでも、一歩前進ですよ」
「うんうん。何もないよりいい」
「
三人の明るい答えを聞き、さとりはふっと表情を和らげた。
「そうですね。今は素直に喜びましょうか」
目覚めてから初めて、明確に記憶を一部取り戻した。人里から出ることなく漫然と過ごしているだけでは得られなかった、飛躍的進歩。たとえそれが凄惨な過去だとしても、紛れもなく奇跡の第一歩だ。
「これからどうしますか」
「分かったことを色んな人に相談して、意見を貰います。できれば、次の手がかりを見つけたいです」
終着地までは遥か遠く、足元から伸びる白線は霧に呑まれている。
されど、魂は敗北していない。全てを放棄し諦めるには、あまりに早すぎる。
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エントランスにて、カンザト達は地霊殿の面々から見送りを受ける。
「お世話になりました」
「また遊びに来てください。歓迎しますよ」
「今度来た時はアタイの仕事手伝ってよ。ニーサンのそれ、ペルソナだっけ?怨霊祓えるらしいじゃん?」
「あーズルい! 私も手伝ってほしいのに!」
「あなた達ねぇ……お客様に手伝わせないで自分でやりなさい。あとお空の仕事はお空にしか出来ないんだから土台無理な話よ」
燐と空も見送りに参加してくれている。滞在中は彼女たちにも大変お世話になった。
その場にいたもう一人、こいしは無言でこちらを見つめている。
「私もついてこうかな」
こいしにしては珍しい、こちらの反応を伺うような顔つきだった。
「途中まで見送りしてくれるのか?」
「ううん、あなたのおうちに行こうかなって」
一時の別れが寂しくなってしまったのだろうか。
さとりの方を一瞥するも、彼女は何も言わない。ただ成り行きを見守っている。こいし自らの意思を尊重すると暗に示しているのだろう。
「こいしがそうしたいなら、俺はいいよ」
「私は……」
燐と空は緊張の面持ちでこいしを見つめている。彼女たちも主の心境の変化を心配しているのだろう。尻尾と翼が忙しなく動いていた。
「……やっぱり、今はここにいようかな。なんか、その方がいい気がする」
答えを聞き、カンザトは少し安心した。
こいしの判断に任せると言いつつも、今は彼女の居場所である地霊殿に残るべきだと考えていたためだ。
「でも、またそっちに遊びに行くね。私、あなたの都合なんて関係なく動いちゃうから!」
やはり、こいしは変わった。
初めて会った時にも聞かれた、「ついて行っていいか」という問い。だが、一見無感情にも見える彼女の真剣な表情は、あの頃とはまるで異なる心の在りようを如実に物語っていた。
「記憶のこともそれ以外のことでも、何かあれば教えてください。いつでも協力しますから」
さとりは一歩近づき、カンザトと目を合わせる。
「はい、ありがとうございます」
光を湛えた瞳は、しかと開いている。
さとりはこの時になって、ようやく腑に落ちた。内向的な自分が、妹のことがあるとはいえどうして初対面の人間に進んで協力を申し出たのか。
酷く、似ているのだ。
心を読む
知らぬはずなのに、無意識のうちに重ねてしまった。同じ境遇の人間に自分たちを重ね、すんなりと心を開いてしまった。そうして、普段なら拒むはずの来訪者を、快く受け入れたのだろう。
「ふふっ」
なんてスピリチュアルな愚考。他者の内面を知り尽くす覚が聞いて呆れる。合理的思考を持つワタシは、荒唐無稽な考えだとせせら笑う。だが、今ここに立つ私──私という
違うのは、
「カンザトさん」
知りたい。
しかし、彼の心は何も教えてくれない。全ての記憶が戻るのを待って、“本来の彼”との対話で訊くほかないのだろう。
だから……
「また──」
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三人は縦穴を目指して旧都繁華街を一直線に進む。最後まで妖怪たちの好奇の視線には慣れなかったが、ある意味で忘れられない思い出になりそうだ。記憶喪失なんて不幸に見舞われない限り消えることのない、鮮明な旅の思い出だ。
「この無駄に喧しい景色も見納めか。そう思うとなんだか……」
「寂しい?」
「また来ようと思えば来れますよ。さとりさんもああ言ってたし」
「いいや、寂しいというより感慨深いな。特段もう一度来たいとも思わぬ」
流石に布都の心境に劇的な変化は訪れなかったようだ。カンザトはこころと顔を見合せて苦笑した。
「まあ、食事は悪くなかったがのう」
「ですね。時間あればもっと見て回りたかったなあ」
旧都の玄関口たる巨大な門をくぐり、小川のせせらぎをBGMに森を往く。帰りは妖怪の妨害に遭うことなく、穴の真下に着いた。
ここからはひたすら上昇するのみ。行きは余計なエネルギーを使うことなく自然に降下できたが、昇りは重力に逆らい飛ぶことになる。当然、身体への負荷は増すうえ時間がかかる。
「お前にはまた頑張ってもらわないとな」
鳥型のペルソナ『グルル』を呼び出し、骨ばった背に跨る。この旅のMVPペルソナは彼だろう。
「ではゆくぞ」
地底都市に息づく満天の星々に別れを告げ、一行は大穴へ吸い込まれていく。
ふと背後を振り返った時、遠くで眩い光が明滅し、風に乗って街の声が届いた。まるで街そのものが、去りゆく者へ別れの言葉を贈り、新たな門出に祝福の調べを奏でているかのようだった。
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時間感覚が曖昧な闇の中、昇り始めてどれほど経過しただろう。上を見上げても、下を覗き込んでも、視界に映るのはただ均一な漆黒のみ。求めてやまない地上の陽光は、未だその姿を見せない。それほど距離があるのか、既に日が落ちたのか、考えても答えは出なかった。それでも平衡感覚を失わずにいられるのは、こころの発する青白い光が辛うじて辺りを照らしているおかげだろう。
「闇は好かぬ。何が潜んでおるか分かったものではない」
「好きな人いないんじゃないですか?」
「“人”は、そうであろうな。妖からすればむしろ力の増す環境で──」
「私は嫌いじゃないよ。本能ってやつかな?」
「ギャッ!!!」
「うぉっ!?」
「誰?」
こころは警戒心を強め、青白い炎を四方八方へ放つ。
かたやカンザトは、突如割り込んできた謎の声より、布都の絶叫に心臓をビクつかせていた。
「やあ旅人さんたち。一週間ぶり……いや二週間ぶり? まあいいや。これからお帰りかな?」
闇を泳ぎ下方から寄ってきたのは、行きの際に遭遇し地霊殿までの道筋を教えてくれた、ヤマメという妖怪だった。
「そうだ。今から地上に帰る」
最も冷静なこころが答える。
「ふーん、街は楽しかった? 人間にはちょっとばかし騒がしかったかもしんないけど」
「楽しかったです。たしかに色々ありましたけどね」
「それはよかった。もうちょっとで地上に出るよ、頑張ってね」
心なしか嬉しそうなヤマメに手を振り、再び上昇しようとする。
「あーそうだ。地上ね、ちょっと気をつけた方がいいかも」
カンザトはグルルを静止させ、「何に?」と尋ねる。
「なんていうか……違和感? わたし感覚鋭いから分かるんだけど、なんとなく上の雰囲気がいつもと違う気がするんだよね」
その違和感は彼女にとっても感覚的でしかなく、上手く言葉にできないのだろう。どうにか伝えようとしてくれているが、要領を得ない。
「変に静かっていうか、風が鋭いっていうか……いや、何もないとは思うんだけどね?」
変に静か。
その表現にどこか覚えがある気がした。
しかしその感覚は刹那のうちに掻き消え、記憶の底を掠めるに終わった。
「ごめん、変なこと言った。多分、寒くて動物たちが引っ込んでるとかだろうから気にしなくていいよ」
縦穴に巣を張り、日常的に地上と地下の空気両方を感じているであろう彼女が感じる違和感とは。一行は言いようのない不安という重荷を背負わされた気分になりつつ、出口を目指して翼をはためかせた。
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・
「あ、出口」
「星が見える。上は夜みたい」
「うー……日光浴はしばしお預けか」
滞在中は一切太陽を拝んでいなかったわけだが、不思議と身体に不調はなかった。本来なら、幸せホルモン欠乏によるメンタル悪化は避けられないはずだが……何か生物学的通念から逸脱した摩訶不思議エネルギーが、地底には降り注いでいるのかもしれない。とはいえ布都の言う通り、地上に生きる者の本能なのか、脳はナマの太陽光を渇望していた。
「よっ……と。はー……疲れた」
難なく着地し、久方ぶりに馴染みの大地に足を下ろす。穴の縁は地温が高いのか、地面の雪が溶けていた。
凝り固まった体をほぐし、周辺を見渡す。こころは夜空を見上げ、布都は伸びをしながら深呼吸し、思い思いに地上の空気を味わっている。
「満月だ」
一点の欠けもない黄金の月が空に浮かんでいる。月光を透かした雲が、不思議なほど深い緑色を帯びていた。
「きれい……」
「家帰ったら、どっかでお月見でもするか」
「おだんごたべたい」
風流が食欲に負けた。こころはいつの間にか食いしん坊キャラになってしまったらしい。
「季節外れの月見は良いが、念のため用心せよ。満月は魔の者を増長させるぞ」
「布都がすごく師匠っぽい……ん?」
こころの視線と指先が、暗がりのある一点を指す。
「あれなんだろう」
「どうした、なんかある?」
目を凝らすが、暗くて何も見えない。
確認するため、カンザトはこころが指し示す方向へ歩を進める。
「待て!」
切迫感を孕んだ声が、足をその場に留める。振り向くと、声の主である布都の顔が引きつっていた。
「どうしたんですか」その一言を発する前に──
べしゃり
雨上がりの土を踏みしめたような、粘度の高い物質が床へ叩きつけられたかのような──この環境にそぐわぬ、不快な音が背後に響いた。
──ッ
冬に吹くはずのない、生温い風が頬を撫でた。
『かつて、俺たちは長きに渡りヤツらと戦っていた』
静かだ。動物は冬眠し、妖怪たちは降雪を避けるように巣窟に引っ込んでいるからだろうか。
いや、そんな説明では片付けられない。まるで質が違う。息が詰まるような静けさが、その場を支配しているのだ。
『ヤツらは日常の裏に巣食い、限られた時間にのみ現れた』
そこで気づく。
ヤマメの言っていた違和感とは、これだ。
青い怪物が出没した魔法の森でも感じた、嘘のように静まり返った空気。
『ヤツらは精神を喰らう。襲われればたちまち生きる屍だ』
何が恐ろしいのかも分からぬまま、冷たい汗が頬を伝った。
一体、そこに何がいるのだろう。水に棲まう妖の類か、血肉滴らせる人喰いの獣か。少なくとも、人ひとりを恐怖の淵に追いやるには十分な、名状しがたい存在なのだろう。
『ヤツらは人の心より生まれる』
こころと布都は、口を開けたまま呆然と宙へ視線を投げている。
『日頃抑圧している感情が、具現化した存在』
全身を強ばらせながら……ゆっくりと、ゆっくりと後ろを振り向く。
『ヤツらは常にそこに在る』
そこには何も無かった。
言うなれば、無機質な“闇”が存在している。
自分は顔を上げてようやく、それが蠢く何かであると理解した。何も無いと思っていた背後の空間には、耳障りな異音を発する漆黒の物体が存在していた。
「なん……だ、これ……」
人の何倍も大きな壁に成長してなお、膨張は止まらない。あたかも空に浮かぶ月さえ呑み込まんとするかのよう。
『あらゆる生命が逃れられぬ、死のように』
天より降り注ぐ月明かりすらその存在を避けていた。
『この力を、想いが生む光だと言うのなら』
光を奪い、現世に闇を落とすその異様
『ヤツらは』
“ 影 ”
と、呼ぶに相応しい。
ペルソナ〜トリニティ・ソウル〜は
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全話視聴済
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途中まで視聴
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未視聴
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存在を知らない