daily life with lover   作:rain/虹

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君は、ずるい。


ずるいよ。

「ごめん!待った……よね?」

 

「別に、今来たとこ」

 

 嘘だ、その証拠に遊矢君の耳は赤い。

集合場所は駅であり、そこは遊矢君のお家が近い場所。

そのため、今来たばかりだと言うのならば、この雪景色の中でも彼の耳はいつも通りの綺麗な肌色を保っているはず。

きっと、長い間私のことを待ってくれたんだと思う。

そんな彼に私は嬉しさ反面、待たせてしまった罪悪感があった。

 

「それにしてもつぐ、早いね。

 待ち合わせまであと1時間もあるのに」

 

「遊矢君とのデートが楽しみだったから。

 それで言ったら、遊矢君も早いよね」

 

「俺は、別に……」

 

 彼はそう呟き私から顔を逸らす。その頬はうっすら赤く染まっていた。

それはきっと寒さからのものではなく、きっと彼の照れからできたものだろう。

もしかしたら彼も、私と同じで、今日が楽しみでしかたなかったのかもしれない。

そう思うと、私はどこか心の中で満たされる感覚になった。

 

「それじゃあ、そろそろ行こっか。

 バスも来てるみたいだしね」

 

 私はそう言いながら彼の手をとる。彼はそんな私の手を振り払うことなく、受け入れる。いつも通りの関係性だ。

私がリードし、それに彼がついていく。

昔から私たちはそんな関係、だから幼馴染から恋人になっても変わらないし、これからも変えるつもりも無い。

無論、それは今日のデートも同じだ。

今日という日も、遊矢君に楽しんでもらうために、精一杯頑張るんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「思ったより人が少ないね」

 

 私たちが乗ったバスには私達の他にカップルらしき2〜3組の人達がまばらに座っているだけだった。

クリスマスということもあり人が多く乗っていることを想定していた為、少し拍子抜けだった。

「想定してたよりも早く乗ったからだろ」

 

「あ、そっか」

 

 彼の言葉で私は納得した。

元々、想定していた時間は、行遊びにいく上で最適な時間であり、大抵の人が乗車するため混雑することが予想されていたが、

私達はお互い、1時間前集合というあまりにも早い事前行動をしていたため、2、3本早い時間にバスに乗車した。

そのため、混雑する時間帯から外れ、乗車数が少ない時間に乗る事ができたのだ。

 

 ここで私は、乗客が少ないのを良いことに、彼を驚かせる為に少し悪ふざけを思いつき、実行した。

 

「人もそんなにいないし、イチャイチャできるかもね」

 

 私は甘えるようにして、彼の右肩に自分の頭を置いた。

 

「お前、そんなキャラじゃ無いだろ」

 

 遊矢君はそんな私の行為を一蹴した。

 

 ……なんか悔しい。

 

 私だって結構勇気を持って彼に甘い言葉を囁いたのに、彼はそんな私を意図も容易く避けてしまった。

肩に頭を乗せることは許してくれてはいるのは幸いなのかもしれない。

それでもやっぱり、彼を一泡吹かせられなくて悔しいものは悔しい。

 

「つぐ、こっちによって」

 

 少しばかり拗ねていた私を他所に、遊矢君は私の体を自分の方に抱き寄せた。

 

「イチャイチャしないんじゃないの?」

 

「別にしないとは言ってない」

 

 確かに、遊矢君は私のキャラの言及をしていただけでイチャイチャするかの有無は何も言っていない。

また遊矢君に一本取られた。やっぱり悔しい。

 

「それに、つぐ寒そうだし。

 こうすればバスの暖気と二重で暖を取れるでしょ?」

 

 彼は私を抱き寄せながら恥ずかしげにそう言った。

勿論、照れ屋な為、赤く染まった頬を隠すように顔を逸らしていた。

恥ずかしがり屋さんなのに、こういうことは平気でやってくる。しかも、大抵不意打ちでやってくるのが余計タチが悪い。

でも、そんな彼が、私は愛おしくてたまらないだろう。

 

「じゃあ、私が遊矢君を抱きしめればもっと暖かくなるかもね」

 

 私はずるい。

彼の体を温めるという建前の上で、今にも愛しい彼に包みたい、包まれたいという本音の欲求を満たそうとしている。

 

「おいで、温まろ」

 

 そんな私を受け入れている彼もずるい。

嫌な表情をひとつも見せることなく、私を包み込んでくれる。

きっと私は、昔から今にかけて遊矢くんの沼に沈められていたのだろう。

 

 その沼は心地よく、きっと私はいつまでも抜け出せない。

 

「到着するまで、こうしてよっか」

 

「別に、良いよ」

 

 私の提案に頬を染め素っ気なく返しながらもぎゅっと抱きしめてくれる遊矢君。

 

 あぁ、照れ屋さんのくせに。やっぱり私のことを満たしてくれる彼はずるい人だ。

 

「それとつぐみ、服、似合ってるよ」

 

 ……不意打ちをしてくるのもやっぱりずるい。

 

「ありがとう。

 遊矢君、今日はいっぱい楽しもうね!!」

 

 私はそんな彼に精一杯の笑顔で返した。




読了ありがとうございます。
自分でも買いてて短いな、とは思っていました。
ほんとはこのあと、空回りするつぐとそれを慰める遊矢君っていう想定はしてたんですよ。
でもそれを書いてると、だらだらと同じような内容になって蛇足になるし、せっかくのクリスマスに間に合わないなと思ったのでここらで切りました。
まぁ、クリスマス終了まであと1時間なんですけどね。
あと多分これ羽沢つぐみじゃないです。
きっと羽沢つぐみの皮を被った何か。

※12月27日に続編を次話に掲載しました。
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