daily life with lover   作:rain/虹

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前回の続きです。
文量も約3倍とボリューミーになってます。
あとクリスマス終わってんのにクリスマス話題の話です。
そこはあまり気にしないでください。


やっぱりずるいよ。

「つぐみ、そんなに落ち込まなくていいよ。こういう日も、たまにはあるって」

 

 落ち込む私を、遊矢くんは優しく諭すように慰める。

 

「……本当にごめんね。せっかくのデートなのに、こんなに空回りして」

 

 そんな遊矢くんに対して、私は何度目かも分からない謝罪をする。

 

 結果から言えば、今日のデートは失敗だった。

私の確認不足だった為に、スケート場の突然な定休日に対応することができず、やってもいないお店にわざわざ出向いてしまった。それが一度目の失敗である。

でも、それだけならまだ良かったかもしれない。

 

 本来、想定していたルートから大きく外れていたことに私は焦りを感じていたのか、雪が吹雪き始めていることに気づかず、そのまま少し遠くのイルミネーションを見に行くことを提案してしまった。

 

 その時、遊矢くんは「少しゆっくり考えていこうよ」と私に言ってくれていた。

だけど、焦っている私には当然その声が耳に届くはずもなく

 

「今から行けば綺麗な景色を一緒に見ることができる。私はその景色を遊矢くんと一緒に見たい」

 

 と、彼が絶対に断ることのできない理由を盾に無理矢理意見を押し通してしまったのだ。

 

 当然、私の都合で天気を変えることが出来るわけもなく、イルミネーションの場所に着く頃には、すっかり吹雪に包まれ、中止となっていた。二度目の失敗だ。

 

 そして追い討ちをかけるように、帰りのバスも悪天候により明日の朝まで運休。この吹雪ではきっとタクシーも役に立たない。

また、徒歩で帰ろうにも、私も遊矢君も、ここからお互いの家にたどり着くのに最低でも3時間はかかる。この悪天候に3時間も外にいるのは、自殺行為と何ら変わりないだろう。

幸いにも、空きがあり、学生割引ということでお手軽な料金で旅館に泊まることができたため、野宿は免れ、一時の安心を得ることはできた。

だが、ことごとく上手くいかなかった為に、私の気持ちはずっと浮き沈んでいた。

 

「ほんとにごめんね。私のせいで、貴重な一日を無駄にしちゃって」

 

 私は彼に何度も謝罪を繰り返す。彼もその都度「大丈夫」と優しく諭すように声をかける。

それでも、私は止まらなかった。止められなかった。しつこいくらいに、もしかしたら彼がうんざりするくらいに、私は謝罪を繰り返す。

 

 崩壊したダムから水が溢れ出すように、何度も、何度も。

 

 

「私が、もっとスケート場の確認をしっかりしておけば良かった」

 

「仕方ないよ。休みのお知らせがあったの、開店時間の1時間前だし」

 

「イルミネーションの提案を無理に押し通さないで、しっかり考えてれば良かった」

 

「俺と一緒に見たかったんだろ?それだけで俺は嬉しいって」

 

 

「そもそも、私1人で考えなければよかったのかも」

 

 そう、そもそも私が1人で勝手にデート内容を考えたのが悪かったのかもしれない。

 

 初めての恋人とのクリスマスデート、そのことに胸を打てれたのか、私1人が変に突っ走ってしまった。

いつもは2人で考えるくせに、今回は「自分に任せて」と謎の自信に任せていたのが全て間違っていたのかもしれない。

 

 

「つぐみ、そんな落ち込まないで。さっきも行ったけどこういう日もあるから」

 

 彼が私を抱きしめる。 いつもの私ならここで安心できていた。でも今の私は、いつも通りじゃなかった。

 

「でも、でもっっ!!」

 

 彼の胸の中で、何度も言葉を詰まらす。熱くなった私の目には、薄ら涙が浮かぶ。

何度も頭にたらればな言葉が浮かんでくる。

 

「つぐみ、多分疲れてるんだよ。今日は明日に備えて、もう寝よっか」

 

遊矢君はそう言いながら、私の頭を優しく撫でた。でも私にかけた彼の声色は、どこか疲れているように感じた。

 

「ひとまず寝て、気持ち切り替えよ?」

 

 ……あぁ、やっぱり仮に負担ばかりかけていたのかもしれない。もしかして、彼に嫌われたのかもしれない。

それもそうだ、彼にここまで負担をかけ続けたんだ。遊矢君も嫌いになるに決まってる。

何度も頭の中で巡る負のサイクル。

彼の言った通り、一度寝て気分をリセットさせるしかないのかもしれない。

 

「じゃあ、おやすみ」

 

「……うん、おやすみなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「つぐみ、別れよっか」

 

 ……え?どうして?

 

「だって、つぐみといても楽しくないし」

 

 そ、それは……!!

 

「俺ばっか負担かかってるし、辛いだけかなって」

 

 で、でも……!!私は、私は遊矢君と……!!

 

「まぁ、そうゆうことだからバイバイ、つぐみ」

 

 ま、待って……!!遊矢君……!!遊矢君!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

「遊矢君!!!」

 

「うぉ、びっくりした」

 

 目が覚めると遊矢君の顔が目の前に広がる。

 

「行かないで……!!離れないで……!!」

 

 私はそんな彼に縋るように胸に顔を埋め、赤子のように泣き喚く。

 

「……どうした?何か怖い夢でも見たか?」

 

 私の泣く姿を見た遊矢は驚いた顔をしながらも、すぐに状況を受け止め縋る私を受け入れてくれた。

そんな彼の温もりに私は安心してしまう。

 

 が、またしても彼に負担をかけてしまっていた。

 

「……夢の中でね、遊矢君に振られちゃったの……そしたら、離れるのがすごく寂しくなって、怖くなって……!」

 

私は夢の内容をポツリ、ポツリと呟く。正直、彼に伝えるのが怖い。どこか、夢が現実になってしまいそうで。

それでも、受け入れてくれるかもしれない微かな希望に賭けていたのかもしれない。

 

「つぐみ、とりあえず涙拭いて。そうしたら屋上に行こう、先に行って待ってるから」

 

 だけど彼が私に投げかけてきたのは、夢に対しての返しではなく、一つの提案だった。

なぜ彼が屋上に行こうと、提案したのか分からない。

屋上で、夢の内容について何か言及をしてくるのか。はたまた、そのこととは関係なしに、別の用として提案をしたのか。

全くもって予想ができなかった。そもそも屋上って、深夜でも空いているものなのか。私は頭を悩ませていた。

 

「……行かなきゃ」

 

 悩む私を他所に、遊矢君は先に屋上に向かっている。

長い間夜風に当たれば、体調を崩すのは目に見えている。ましてや冬の寒さならば以ての外だ。

 

 私は目に溜まった涙をハンカチで拭き取り、防寒着を着用し、一端の不安を手荷物に部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遊矢君……?」

 

 屋上に辿り着くと、彼は地べたを座り、何も言わず、ただ空を見上げていた。

私も彼の姿に釣られ、そのまま自分の真上に浮かび上がる空を見上げた。

 

「すごい、綺麗な星空……」

 私の視界に入ったのは、無数の星が浮かび上がる、綺麗な星空だった。

彼が静かに空を見上げていたのも納得だ。現に私もこの景色に圧倒され、見惚れていた。

 

「この星空、すごく綺麗だよな」

 

「うん、すっごく綺麗だね」

 

 彼の言葉に私は相槌を打つ。

すると彼は「まぁ、俺は語彙力ないから綺麗しか言えないけど」なんて、冗談めかしく、照れ臭そうに呟いた。

 

「いつまでも立ってないで、こっちおいでよ。一緒にこの空見ようぜ」

 

「……いいの?」

 

 私は彼の誘いに少し言い淀む。夢のことや寝る前のやりとりがあったからか、少しばかり臆していたのだ。

 

「良いも、何も、俺の横はお前のもんだろ?別に許可なんて必要ないって」

 

 ッッッ!!

 

 いくら私が悩んでいようと、彼はそんなことも気にせず、いつも私を受け入れ、包み込んでくれる。

そんな彼がとてもズルくて、愛おしくて、大好きで仕方ない。

 

 だからこそ、離れるのが怖いんだ。

 

「じゃ、じゃあ、隣に座るね」

 

 私はそのまま遊矢君の横に拳二個分くらいの距離を空けて座った。

いつもであればもっと近い距離で座る。それこそ0距離という至近距離で。

でも、今そんなに近づけば、きっと私は彼に甘えてしまう。

きっと今日の失態をそのまま水に流し、その記憶を風化させてしまうだろう。

 

「寒いから、もっと近づいて。このままじゃ、俺、凍え死ぬから」

 

 なのに、どうして彼はそれでも私の懐に入ってくれるんだろう。

 

 冗談めかしく言った彼はそのまま私の体を抱き寄せ、0距離まで密着された。

お互い、恥ずかしさがあったのか、頬は赤く染まっていた。

 

「顔、真っ赤だね」

 

「……うっせーばーか」

 

 今度は私が冗談めかしく言うと、彼は更に頬を赤く染め、照れ臭そうにはにかんだ。

 

「つぐみさ、俺と別れる夢見たの?」

 

「……うん」

 

 彼は、私に核心に迫る問いを投げる。

ふと、その横顔を不安げに見ると、彼ははにかんでいた表情から真剣なものに変わっていた。

 

「その夢はさ、つぐみにとってすごく不安かもしれない。

 自惚れた発言かもしれないけど、それは二度と見たくない夢かもしれない」

 

「うん……」

 

「でもそれはさ、ただの夢だから」

 

「ただの、夢」

 

「うん。つぐみがその辛い夢を見たとしたら、俺が現実で幸せな方向に上書きしてあげるから、絶対に。

 それに、俺はつぐみのことが好きだからどんなことがあってもつぐみのことは嫌いにならないよ。

 つぐみが他の人を好きになったとしたら、つぐみが俺を好きになってくれるまで一生手放さないし。

 ……なんか、ちょっと重いし、気色悪いな、これ」

 

「ううん、そんなことないよ」

 

 ずるい、ずるいよ。

とにかく彼はずるい。どれだけ私が悩んでも、どれだけ私が辛くても、彼はそんな感情を上書きしてくれる。

照れ屋なのに、恥ずかしがり屋なのに、さっきも自分で語彙力がないなんて言っていたのに。

 

 精一杯の想いで、私に気持ちを伝えてくれる。

 

「ごめんな、こんなクサいセリフばかりで」

 

 彼はそう言いながら、私の体を抱きしめる。優しい抱擁だけど、どこか力強く感じる。

 そして彼の温もりは、とても暖かい。私の心の芯まで温めてくれる。

 

「全然、ぜん、ぜんっっ!!クサくないよぉ……!!」

 

 私は彼の温もりに触れたことで、また目から涙が度目となく溢れてくる。

 

「クリスマスデートで、失敗ばかりして、貴重な1日をどうしようもない日にして……!それで遊矢君にも負担ばっかりかけて……!

 夢みたいに、君につまらないから一緒に居たくないからとか、別れたいとか言われるのが、ずっと怖かった!!」

 

 涙と一緒に、私の想いが溢れ出る。

 

 遊矢君は、私の頭を優しく撫でながら一語一句聞き逃さぬよう、真剣に聞いてくれていた。それが私にとってとても嬉しいものだった。

 

「あのね、つぐみ。正直に言うとさ、俺今日のデートは楽しかったんだ」

 

「楽しかった……?」

 

「うん、楽しかったし、嬉しかった。

 確かに、内容はあまり楽しいと言えるものじゃなかったかもしれない。

 それでも、俺はつぐと一緒にいれたことが何よりも嬉しかった。

 それに、つぐみが色々計画立ててくれたり、それが逸れていた時には急いで修正しようとしてくれたのは、

『俺たち2人で楽しむ』っていう根本の部分が変わってないからでしょ?

 それだけこっちを想ってくれるのは、何よりも嬉しいことだよ」

 

 やっぱり、遊矢君はずるいよ。

あれだけ後悔してたのに、嫌な思い出になりそうだったのに、手のひらを返すように、私は今にも良い思い出に塗り替えている。

 

 それは、紛れもなく遊矢くんのおかげだ。

 

「遊矢君、ありがとね」

 

「いいよ、モヤモヤしてたものは晴れたか?」

 

「うん、遊矢君のおかげでね」

 

 私はそう言いながら遊矢君の胸により強く自分の顔を押し付ける。

 

 彼から離れないために、温もりを逃さぬように。

 

「ずっと顔、真っ赤だったね」

 

「うっせ、照れ屋舐めんな」

 

「でも、カッコよかったよ」

 

「やめろ恥ずかしい」

 

 抱き合いながら、お互いの温もりを感じながら私達は軽口を叩き合う。

 

 その時間はとても心地よいものだった。

 

「でも、まさかこんなに空が綺麗だと思わなかったな」

 

「そうだね、あんなに天気が悪かったのに、今はそれが嘘のように晴れてるね」

「な。夜中にたまたま起きて、空見たら綺麗だったから、急いで屋上行けるか確認したなぁ。

 そんで夜中もオッケーぽかったから急いでつぐみ起こしてみに行こうとしたら、つぐみが大泣きしちゃったから」

 

「ッッ!!わ、忘れて!!」

 

 私は恥ずかしさのあまり遊矢君をポカポカと叩く。女の子だからあまり威力は出ないけど。

 

 それでも、乙女の純情を弄ぶのは良くないと思う。良くないと思う……!!

 

「お、おい暴れんなって。せっかくこの綺麗な景色を俺たちで独り占めにできるんだからさ。

 ほら星空綺麗だからそっち見ようぜ!な??」

 

 ポカポカ叩き続ける私に対し、遊矢君は落ち着かせるようとして空に指を刺す。

落ち着くのは良い。星に集中するのも良い。

 

 ……だけど

 

「独り占めじゃなくて、2人占め」

 

「意味、あんま変わらないし、使い方あってるの?」

 

「そんなのどうでも良いの!私と遊矢君。私たち2人で2人占め!!

 私たちだけの、独占できる大切な景色だからねっ」

 

「ずるいな、つぐは。納得しちゃうじゃん」

 

「納得してもらえなかったら困ったかな?」

 

 私は遊矢君にそう告げると同時に、彼の片手を握る。もちろん恋人繋ぎで。

 

「じゃあ、もう少しこの景色楽しもうね」

 

「あぁ、そうだな」

 会話を終え、私たちは互いに空を見上げる。

 

 空に広がる無数の星。もしかしたらそれは私たちの思い出なのかもしれない。

星の数だけ、思い出がある。なんか、ロマンチストだね。

 

 私がそんな考えに更けていると遊矢君は何かを思いついたかのように「そうだ」っと言葉を漏らす。

 

「つぐみ、こっち向いて」

 

「ん?どうし___」

 

 彼に対する私の問いかけは、他の何者でもない遊矢君によって止められた。遊矢君の唇を使って。

突然のことで意識が追いつかない。

 

 私の唇には何が触れた?遊矢君の唇?つまりそれは、私は初めてキスをしたってこと?相手は誰?遊矢君か。

 

 頭の中がぐるぐる回り続ける。これじゃあ星に意識に向けることなんてできない。

 

「クリスマスプレゼント。簡易的なものだけどね」

 

 彼は顔を真っ赤に染めあげながら私に微笑む。

 

 ほんと、君はいつもずるいよ。

 

「大好きだよ、つぐみ」

 

 彼からの愛の言葉。それに対する返しはとっくに決まっている。

 

「私も大好きだよ!!遊矢君!」

 

 私はそう言って、私はもう一度遊矢君と口付けを交わす。

 

 これは私からのクリスマスプレゼント。簡易的だけどね。

 

私たちがキスをしている時、夜空には一筋の星が流れていた。それは現実なのか、はたまた幻なのかはわからない。

それでも、広大な星空を背景に大好きな人と初めてのキス。

それは私の中でとびっきりの思い出が埋め込まれただろう。

 

「好き、大好き」

 

「俺も。好きだよ」

 

 何度も何度も、言葉を、口付けを交わす。

大切な、大好きな彼と。

 

 ここまで私を虜にしてくる彼は

 

 やっぱりずるいよ。




つぐみって、うまくいかないことがあると、多分自分のせいにすると思うんすよね。
あんま人のせいにしない印象がある。
とにかく自分を責めて、悩む気がします。
流石にここまで酷くなるとは思いませんけど。
これに関してはこちらの手癖の悪さが存分に発揮されてましたね。

とりあえず、このずるいよ。に関しては完結です。
続きの構成は一切考えてないです。自分なりにキレイに終わらせたつもりなので、
変に追加して変に終わらせたくない願望です。

ひとまず、ご愛読ありがとうございました。
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