ものづくり中毒属性を付与されたシャープちゃんSS   作:スクワイア

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一方、キャヴァリーの素体は…?

今度はサブタイの二人がいねぇ!スカセちゃん&ダクスタちゃんどこ…?

中編です。
それでは、どうぞ。


シャープとスカイセイバー&ダークスター_中

「いやーこれをポンと渡すなんてキャヴァリーちゃんは太っ腹だねぇ」

「押し付けられたに近いですけどね」

 

シャープの自宅には珍しく客人がいた。

家が本体なのか、工房とガレージが本体なのか分からない作りの自宅。

個人工房など荒れ放題なイメージがあるが、シャープの工房は工具資材その他諸々、整然としている。

きちんと自ら管理している。整理整頓はヒヤリハット防止の初歩中の初歩。他人が足を踏み入れても全く問題無い状態だ。

 

むしろ生活スペースの方が荒れがちだが、そこは自作のメイドロボがやってくれるので、いつ人を招いても恥ずかしくない環境に保たれている。

 

そんな自宅に招かれたのはデュカリオン。

 

シャープはフレックス退勤をキメた後、上司・デュカリオンに連絡をとった。

なんかもうヤバいので家に来てください。といった文言のメールで。

デュカリオンは、その連絡に何事かと驚いた時、まだ就業中であった。

さらに、連絡の中にフレックス退勤申請についても書いてあったので二重に驚いた。

キャヴァリーを見送りして戻るはずがそのまま退勤していたのだ。

 

あのシャープがフレックスで定時前退勤するほどの事態、緊急の用事っぽいなとダラダラ書いてた訓練室の始末書をさっさと仕留めた。

タイムカードは後日忘れた体で手書きして出すことにして定時前に退勤。シャープの自宅に直行した。

 

シャープが待っていて、そのまま工房のシャッター横の通用口から入ると、えらく頑丈そうな作業台に本日のBABELビッグゲスト、既に帰ったはずのキャヴァリーが横たわっていて飛び上がって(サブ格闘)しまったのだった。

 

その後、別れ際の顛末を聞き、デュカリオンの目の前にあるのが、意識のない完全な軌道機兵の素体であることを聞いたのだった。

 

 

「星導器は、意外にウチでも作れそうだね」

「作ったところで運用は無理そうですが…」

 

キャヴァリーの素体のうち、武装や装具の部分の星導器は、BABELでのレクリエーションで観測できた知見と技術者2人のここでの観察により、非常に堅実な作りで前文明の先進的技術を使わずに作られていることがわかった。

 

現文明でも再現できる技術レベルで、信頼性に重きを置かれている。もし壊れても現場で直して動かせるような比較的単純な構造だ。設計コンセプトが兵器寄りであることが推測できる。

 

運用は無理。と言ったのは、運用するための星導核がないためである。

この星導器に搭載されている多数の武装。

これを十全に動かせる天使型星導核を現文明で作り出せないのだ。

軌道機兵独自の強力な星導核ありき。

この星導器をコピーしたとしても使えない代物のため、再現は無意味に近い。と2人は評価した。

 

一方、星導器以外の体の方だが…

 

「身体の方…解析します?」

「…こっちも意味ないよねぇ」

 

BABELはA.O.D.S.について全く知らないという訳では無かった。研究機会が極小なだけで、軌道機兵含めA.O.D.S.勢力の研究はBABELの専門部署で細々と進められていた。

過去、血のにじむような努力をしていたようだ。

軌道機兵の戦闘情報があれば、危険地帯の戦場跡地に赴き、無数に転がる戦闘機械の残骸をひっくり返して探し続けた。

しかし、彼女達の強さ故に殆ど空振り。

やっとの思いで身体と思われる部位を探し出して解析できたという。

 

この努力で得られた結果、軌道機兵の身体は人間の構造のままに、硬化性のナノマシン素材で構成されていることがわかっていた。

硬化性は文字通りの意味ではなく、1度だけ形質を変化させ、機能を持つと不可逆的になることを指す。

ここで、ある疑問がでた。

 

修復的機能が硬化後のナノマシンがないのにもかかわらず、

数少ない軌道機兵の戦闘映像にて、損傷を受けてもその場で即座に復帰している点だ。

 

「まさか、衛星から転送して恒常性を保っていたとは…」

 

これはシャープとキャヴァリーの去り際の会話で明かされた事だ。

その時は流してしまったが、呼び寄せたデュカリオンに顛末を話すうちに、それが先ほどの疑問の答えであることに気づいたのだ。

 

つまり現状、いくら素体を解析した所で軌道機兵は作れない。運用できない。

必要なのは強力な星導核と硬化前のナノマシンと、超遠距離転送技術、人間の細胞レベルのスケールでナノマシンの配置を決める設計図だ。

今後の人造天使計画には極一部応用が効くかもしれないが、研究開発コストが見合わない。というのが2人の間で結論づけられた。

 

「うん、他の天使…新星工業(ノヴァ・インダストリーズ)系とは、結構違うねぇ。これはこれで大きな発見じゃないかな?」

「帰り際の雑談で知るとは思いませんでしたよ…」

「それはそう」

 

この結論に至らなかったら、BABELが素体を手に入れた時、骨の髄まで解析したことだろう。とシャープは予想する。

 

そして、解析して行けば何時かは無駄であると気付くことになる。

それが現時点で判明し、余計なリソースを割かなくて良くなった点を今は喜ぶべきかもしれない。

シャープとデュカリオンの意味の薄いデスマーチは回避されたのだった。

 

「…シャープちゃんさ」

「はい?」

「これ、リサイクラーに突っ込んじゃうんだよね?」

「まぁ、そうした方がいいと思います」

 

解析や研究をする意味が低いとはいえ、非常に貴重な資料であることには変わりない。

解体して素材に変えてしまうというのは一般に勿体ないが過ぎる話だ。

 

BABELのA.O.D.S.調査部署がそれを知れば血涙を流すだろう。

素体の存在が知られれば、有用性はともあれBABELの将来の為にそのまま渡せと指示が飛んでくる。

 

しかし、この素体はシャープへ個人的に渡された物だ。会社に渡す義務は無い。

渡すことで莫大な謝礼金が贈呈されるだろうが、それはシャープの気持ちが許さなかった。

 

1日とはいえ関係を築いた友人の、文字通り身を削った謝罪の品を使って邪な利益を得るのは、気持ちが良くない。

あと、自分が予想したように骨の髄までしゃぶられたら、羞恥心で爆死するだろうという思いもある。

 

やられたくないことは人にやるな。

これは大切なことである。

 

ただ、素体の星導器については惜しく感じている様だ。

前文明が導き出した質実剛健で実用性を突き詰めた合理的で素晴らしい設計。眺めているだけで、ため息が出る程の品だ。

シャープの個人的な感性では、武骨が過ぎて趣味では無い部分もある。しかし、設計思想に忠実に芯のある設計というのは美しく、設計者へ畏敬の念を抱かずにはいられない。

 

できれば飾っておきたいが、後々BABELにバレたら面倒になる。身体と一緒に素材に変えてしまうのが吉。と自分を納得させている。

 

リサイクラーにかけるのは次の休みの時、適当な遺跡に赴き、設置してあるものを使う予定。

BABELにもあるが、素体の存在がバレる上にちょっと問題がある。

 

「このままリサイクラーか…絵面がヤバいよ~!」

「労災防止教育ビデオを生で見るのは気が滅入りますが、渡した人の望み通りが1番ですよ」

 

人ではないとわかっていても、刷り込まれた意識が非常停止ボタンに手が伸びる絵面になるだろう。

他人に見られたら通報ものだ。

 

~~~~~~

 

シャープはキャヴァリーの置き土産、ある種の爆弾処理に目処が立ったことに安心し、改めて、はぁと息をつく。

デュカリオンの方はまだ、顎に手を当てながら真剣な表情で横たわるキャヴァリーの素体を眺めている。その表情のまま、おもむろに口を開いた。

シャープはまたとんでもないこと言いだすんじゃないかと警戒する。

 

「シャープちゃん。…気になってることがあるんだけど、いいかな?」

「…聞きたくないんですけど」

ピー(至極真っ当な医療用語)ってどうなってるのかなって」

 

こんな探究心を出すこの女、やはりデリカシーがない。

本人は居ないとはいえ、知り合ったばかりの…いや、関係の多少に関わらず、顔見知りのを見ようとするのはシャープ倫理的にアウト判定。

 

知見を得る為の行為だとは思うが…そういう再現の確認は、もっとこう、口の中とか!鼻の穴とか!あるだろ!

とシャープは脳内でツッコミを入れていた。

 

横たえてあるキャヴァリーの素体。

起きている時のハツラツとした顔からは想像できないほど、幼くあどけない顔だ。

悪の科学者に捕まり、改造手術手前の少女の様で酷く不憫に見えてきた。

 

「…興味無いです。そもそも過去に入手できた一部分ですら人間の構造に固執してるんですよ?…そこだけ変える必要ありませんし、大して変わりませんよ」

「そうかなぁ…見比べれば…シャ──」

「それ以上言ったら、ゲンコツ(頭にファンネル落と)しますよ」

「そんなマジにならないでよぉ〜」

 

勤務時間外で同性でも、流石にセクハラ事案である。

シャープとデュカリオンはそれなりに裸の付き合いがあるとは言えだ。

毎月のように遺跡調査に行くと、帰りのルートにあるホテルや旅館の大浴場に大体は一緒に向かって疲れを癒す。部屋も同じにすることが多い。

当たり前だが、シャープは他人の恥部など見たことも見せたこともない。

見られたか、は…この探究心の塊のモラルによる。

…シャープはちょっと不安になった。空間投影技術を利用してプレイエリア外。と表示できる機器の作製を脳内で検討し始めている。

 

「あ〜やっぱり気になる!キャヴァリーちゃんごめん!資材集め手伝うからさ〜!見させて〜?…イイヨ!!」

 

何をやっているのだこの先輩は。なんと醜い1人芝居か。

あとなんでそんな手をワキワキ動かしているのだ。別のとこも触る気だろ。

相手の意識は無いとはいえ、いや、無いからこそサイテーである。

 

デュカリオンがキャヴァリーのレオタードの股布(覚悟)に手をかけようとした時だった。

 

 

テキセッキン!キケン!キケン!キケン!

 

 

安っぽい合成音声がけたたましく工房に鳴り響く。

デュカリオンは思わず固まった。

 

「…襲撃──あれ?」

 

シャープの自宅は、危険地域が比較的近いところにある。伴って、しばしば戦争機械の小物がシャープの家に近付くことがある。

これに対してシャープは、趣味でタワーディフェンスゲームよろしく防衛線をつくり、戦闘機械駆除用のトラップを設置してある。

何時もはすぐさま撃破通知が来て、警告もならずにリザルトが送付されるのだが…

 

あれ?と言ったのは警告の音声が最終防衛ラインに近づいていることを知らせるためのものだからだ。

ここまで接近を許したのは久々で、シャープは携帯端末からレーダー情報を確認する。

 

「…は?直上!?」

 

ドバァン!

 

「…現着」

「こんばんは。良い夜ね。いかがお過ごしかしら」

 

バカでかい自宅。工場兼ガレージ兼自宅の天上をぶち抜いて2人の人型が突入してきた。

 




お読み頂きありがとうございます。

以下、独自解釈・妄想設定の注釈になります。

シャープの自宅関連。
一話を参照願います。

キャヴァリー星導器
他の天使、軌道機兵のものと比べると、一番技術レベルが低い気がする…。
でもそれは戦場の現場にとって悪いことではない。という解釈です。
ハイテク機器は部品点数の多さ複雑さから壊れやすく現地修理が困難、
アナログであれば壊れにくく、壊れてもどうにかできるといったイメージがあるので…。

キャヴァリー身体
というか軌道機兵ボディについてですね。
とりま、ありがちなナノマシンで構成されたボディということに。
そしてわざわざ自己修復機能がないものにしたかというと
天使の物と差があると思われたためです。
軌道機兵は壊れたらそっくり交換で他の天使は修復してるっぽい(ケルビム再出撃ボイス※自動修復完了※)
その差がナノマシンの機能差、復帰手法の差なのでは?と考えました。

BABELのA.O.D.S._軌道機兵調査
天使を研究してベータ作ってるならこっちも研究してないわけないよなぁ!

ようやっとシャープちゃんと邂逅。

下は書いてあります。独自解釈部分を書き次第投稿します。
それでは。
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