ものづくり中毒属性を付与されたシャープちゃんSS 作:スクワイア
シャープの長い一日は、続く────
やーっと邂逅して関わり合い!
下編です。
それでは、どうぞ。
「…現着」
「こんばんは。良い夜ね。いかがお過ごしかしら」
バカでかい自宅。工場兼ガレージ兼自宅の天上をぶち抜いて2人の人型が突入してきた。
それは天使…ではなく、軌道機兵だった。
BABELの研究で姿は確認されている白いのと黒いの。
よく物が壊れる今日という日に、シャープは白目を剥きそうになる。
自宅すら壊れた。後、今の衝撃で加工機の設置がズレ、精度が落ちたかもしれないというショックがキツイ。
デュカリオン未だにキャヴァリーの素体の横で手を伸ばしかけて固まっている。
軌道機兵の2人はキャヴァリーの素体を囲むBABELの2人を見た。
「3Pとは…やはり獣か」
「…不潔」
絶対零度の眼光をよこしてくる。特に黒いの。
「ふぁ!?私も!?あっちだけです!あっち!」
「えぇ〜?
即座に先輩に罪をなするシャープ。部下のケツ持って、上司でしょ。
変な体勢のまま、口は平常運転のデュカリオン。誤解を生むようなややこしいことを言う。
こいつら多分冗談は通じないタイプだぞ!
シャープは心の中で思い、実際その通りで軌道機兵の視線はより鋭くなった。
「ちょ!…あの!まだ何もしてないですから!」
「…まだ?」
しまったー!ドツボったー!
そんな気はサラサラないのに弁明の弾みで余計なことをつけてしまっている。
「ま、まだって言うのは、リサ──」
「御託はいい。…獣には躾が必要」
「…制圧対象と認定」
弁明する暇すら与えられない。
人の話を聞け!教わらなかったのか!?
シャープは心の中で叫ぶも、伝わることは無い。
既に軌道機兵は戦闘態勢。それぞれの得物を構えている。
シャープは焦る。
幸い、2人が着地したのはもともとキャンピングビークルを収めていた場所だ。
愛車はキャヴァリーを運び込む都合でまだ外にあり、今は何も犠牲になっていない。
天井は…まぁ、いいだろう。比較的安いから。
だが、ここから天使級同士の戦闘になればどうか。
高級で繊細な加工機郡。これまで手塩にかけて作った作品達。色々こだわった建屋。全て吹き飛んでしまう。
これまでの時間、労力、金、全てが灰塵に帰す。
キャンピングビークルのフロントガラス&ボンネットの代償としてはあまりにも価値が釣り合わない。
この御殿を守る為に、シャープは軌道機兵の目的が自分たち自身であることに賭ける。
「…貴女達、星導使でしょう。さっさと抜きなさい」
思いのほか考え込んでしまったようだ。
一向に動かないこちらに業を煮やして、黒い軌道機兵が得物を取るように煽る。
おもむろにシャープは星導器を召喚する。
「私はいらないって言ったのに〜!!!」
「あ!シャープちゃん待ってよ!」
採光用のガラス窓を
デュカリオンも同じ窓から
「制圧完了?」
「…追う」
「了解」
装備が大きい2人は入ってきた天井の穴から出て、逃げる2人を追いかけた。
〜〜~〜〜~
「なんであんなに怒ってるのー!」
「わかりませぇーん!でも多分!先輩の!せいです!」
「そんなに悪いことかな!?」
「このノンデリー!!!」
日が落ちかけの郊外を2人は
幸い、シャープの家の近くに家屋は無い。工作中の騒音、塗装時の異臭、屋外実験での暴発、その他もろもろの騒ぎを避けるためにそういう土地に建てたからだ。
天使級が戦っても問題は無い場所だ。ここでなら、追ってこられても対処出来る。
…でも、追ってこないでくれ、さっさと素体を持って帰ってくれ。と願うもそれは叶わなかった。
ヒゥン。となにか飛んでくる音がシャープの耳が拾う。直後、
「おおぅ!」
シャープは反射でステップを踏み、回避する。
薄暗い中で赤いレーザーがほとばしった。
「よく見えてるじゃない?」
もう追いついて来たようだ。
シャープとデュカリオンは反転して相対、ダメ元で対話を試みる。
「…貴女方…軌道機兵ですよね?キャヴァリーさんの素体なら持って帰っていただいて構いませんので、止めません?戦うの」
黒い方は銃をこちらに構えたまま、答えた。
「ダメ」
「な、なんですかぁ…?」
短い言葉で断られる。何も理由が分からないのでシャープは聞き返した。
黒いのは動かず、口を開いた。
「…強いていえば、キャヴァリーが羨ましいから…」
「は?」
は?は白い軌道機兵の方だ。
仲間内でも話が通じてないのかい!
それよりもキャヴァリーが羨ましいというのはどういうことなのだろうか。
「だってずるいじゃない。バベルにはヤり合える星導使がいるって聞かされて…今日は一日中ヤりあった?…妬ましい…!」
おっと、様子がおかしい。
今日キャヴァリーとヤったことと言えば…
「…だから、私も戦ってみたくなった…!」
「ああ、それは同意する」
やっぱりだ。白いのも即座に賛同。
うーむ。これは2機とも、しかりとキャヴァリーの同類。
…戦いに飢えている方、多くないですか?
「同意するが…これは任務ではないのか?」
黒いのに疑問を呈する白いの。
白いのは比較して理性的なようだ。指示に忠実なタイプなのだろうか。
いいぞ!そのまま抑えてくれー!とシャープは願う。
「…任務よ、任務。主目的が素体回収、副目的が戦力調査と…私たちの装備改良検討、と言った類の」
「なるほど、任務だな。承知した」
ダメだった。速攻で丸め込まれている。
テキトー、適切かつ妥当では無い。テキトーに取ってつけた理由にきこえるが、それでいいのか白いの。
…あ、戦う理由付けが確認したかっただけですか。そうですか。
少しばかり緩んだ空気感の中で、静かにしていたデュカリオンが口を開く。
「ねぇねぇ。後日にしない?今日はもうキャヴァリーちゃんの相手でヘロヘロなんだよ〜私達〜。貴女達もその方が有意義じゃない?」
「イヤ」
「あーだめだ。シャープちゃん。コレもうやるしかないわコレ」
戦闘延期の交渉虚しく、2文字で黒いのに断られた。
よほどキャヴァリーの自慢が効いていたのか戦いたくて仕方がないようだ。
取り付く島もないことを察したデュカリオンは諦めて酷くだるそうに戦闘態勢に入る。
「おしゃべりはもういい?」
「…参る」
「おわー!もうどうにでもなれー!」
シャープとデュカリオンの持ち帰り仕事が始まった。
〜〜〜〜〜〜
「良好、貴女達。キャヴァリーが気に入ったのも分かる」
「類稀な強者」
仕事の流れは決められた型、
スカイセイバーがデュカリオンに斬りかかるところをシャープがカットで弾を放つ。
弾を避けたところをデュカリオンが槍で突く。
それをダークスターがビットでカットする。
デュカリオンはそれを避け──
カット役、攻撃役、回避役が入れ代わり立ち代わり、演武のような戦闘。
全員、当てるように攻撃しつつも、被弾覚悟で攻撃を通すようなことはなく、冷静な競り合いが続いていた。
このクールな戦闘で先にバテたのは、シャープとデュカリオン。朝、昼、夕と戦いまくっていれば当然である。
戦闘しながらなんとか距離を取ると、向こうも察したのか、着地して声をかけてきたところだ。
「はぁはぁ…おゥッ…。それは…どうも。」
「疲れたよ〜もういい〜?」
"死合"までする気が、双方に無いからこその弱音。
「どうしようかしら」
「温まってきたところ」
しかし、その弱音への返答はいまいちノリが良くない。
軌道機兵はこの戦闘に心が踊っているようだ。
まだ、戦い足りないといった雰囲気。
「続けよう」
「お前たちなら、それが出来るはずだ。」
第2ラウンド開始――――
「おりゃぁーーー!!!」
「「ガッ!?」」
突如、空からキャヴァリーが落ちてきた。
大型マニピュレーターでのダブルラリアットを食らわせて軌道機兵2人を地面に叩きつけた。
そして、2人を見下ろしたまま叱りつける。
「ダークスター!スカイセイバー!2人ともなにやってんの!?回収するとか言ってたのになんで戦ってるの!!!」
どうやらキャヴァリーは、私達がボコられかけてるところを止めるために降りてきてくれたらしい。
彼女は不貞寝を決め込もうとしたが寝付けなくて、監視衛星を通して様子を見ていたのだった。
「抵抗の意思─」
「ウソこいて!見てたんだからね!逃げたの追い回してるの!」
「破廉恥行為の仕置も兼ねて…」
「ッ!?」
破廉恥の言葉にビクッとキャヴァリーが反応する。
デュカリオンとシャープの方を向いて口を開いた。
「えっ…本当にえっちな事─」
「「してないです」」
二人は食い気味に返答した。
デュカリオンの方はちょっぴり嘘かもしれない。本人的には知見を得る目的、ある種の学術目的なので
「ほら!してないって言ってるよ!?」
キャヴァリーは自分が破廉恥されていたとしても信じたくなくて、シャープ達の言い分を信じることにしたようだ。
「あれは…」
「未遂に見えた…」
「未遂!?…ならやっては、いないんでしょ!もういいよ!わたしもう気にしない!」
未遂とは、計画・準備はしたものの未実行・未犯行のことを指す。
キャヴァリーは自分が詫びのつもりで渡したものがここまでの悶着に発展するとは思っていなかったので、いろいろ吹っ切って多少強引でも事態の収束がしたいようだ。
彼女は起き上がるそぶりを見せない2人をマニピュレーターで掴んで立たせた後、シャープ方に近寄り…
「…シャープごめん!なんかもう…いろいろごめーん!」
膝を地面につけ、頭の上で手を合わせ頭を垂れてシャープに謝る。
マニピュレーターは土下座の手で地面に着いている。
テクニカルメカ土下座だ。
「ええああもう大丈夫ですビークルの修理も安いもんで貰いすぎだと思ってましたよアッハッハ」
極度の疲れと緊張感からの解放のせいか、頭に思いついた傍から喋っている。
「あ、いやでも、やっぱりお詫びはしたいなと思ってて…星晶はいくらか持ってきたし…あと何かない!?バカ2人分!」
「バカとは…」
「不服」
「黙らっしゃい!ばか!野蛮人!屋根をぶち抜くな!インターホン押してよ!文明人でしょ!」
どうやら突入の様子も見ていたらしい。
顔だけ軌道機兵の2人に向け、プンスコと叱っている。
シャープは疲労で働かない頭で少し考える。
かといってまた断ると素体が3人に増えるかもしれないと思い至り、頑張って回答を探す。
脳内は、もうさっさと帰って寝たいが大半だ。
「…え〜。あれどうです?あれ。塔の見学とか」
捻り出した要望は、さっきの別れ際にキャヴァリーとの会話で出た"塔"について。
A.O.D.S.によって封鎖されている地域で、今現在、どの勢力も調べることが出来ていない不可侵の領域。
ここの調査はBABELの一部署の悲願だ。
しかし、断られてもシャープは食い下がる気は無い。今は状況を終息させるのが優先。
交渉の一端のブラフ、まずは要求のハードルを上げる。
そして下げて、さっき持ってきたとかいう星晶分で手打ちにしてしまおうと考えての要望だ。
「えっそんなんでいいの?」
「え?」
この要望に対してキャヴァリーは、シャープの言葉にキョトンとしながら聞き返してくる。
シャープは、"そんなん"と気安い感じに予想外と言った声が漏れた。
なんだか思い描いた方向と違うが彼女は言葉を続ける。
「…ええ、ぇぇ。それが何より1番のお詫びになります」
「そうなんだ!うん!大丈夫!話を通しとくよ!」
意外、その要望が通ってしまった。
キャヴァリーは立ち上がり、ふー。権限範囲内!。と呟く。
しかし、後ろの2人がなんとも言えない顔をしている。
これは怪しい。やっぱり良くないのでは?
「キャヴァリー」
「現文明との過度な接触は─」
「いいよね!?」
「「─はい」」
組織の方向性に沿わないようだが、キャヴァリーは強引に同意を得る。
キャヴァリーが言外に"お前らが余計にややこしくしたんだぞ。代わりに謝ったんだから妥協しろっ!"と訴えているのが分かる。
「あの、ご迷惑なら─」
「とぉんでもない!見学なんていくらでも!」
「あっはい」
シャープはちょっとマズったかなと思って要望を下げようとしたらキャヴァリーが抑えてくるので、受け入れることにした。
しかし、未だに軌道機兵の白黒は不服そうである。
実際に過剰と思えるほどの封鎖を施してあるのだから、それなりの理由があるのだろう。
シャープは2人の思いを汲んで、適当に都合をでっち上げて見学に行かない選択も出来る。
彼女はそんなピリピリしなくてもいいですよ〜オーラを出す。
ダークスターとスカイセイバーの表情は変わらなかった。
「…2人の素体もつける?」
「「「やめて」」」
そんな同僚の様子に詫びの追加を申し出したが、3人は即座に拒否した。
デュカリオンだけは、拒否しなかった。
~~~~~~
この後は何事もなく軌道機兵達は素体を回収して宙へ、シャープは自宅に戻った。
デュカリオンはここから運転して帰る気力がないようで、シャープの家にお邪魔している。
シャープの非常に長く感じる一日がやっと終わりを迎える。
「ところで先輩。最後、断ろうとしなかったのなんでです?」
「キャヴァリーちゃんの、触診できなかったからね~。二人分あれば、個体差の有無も確認できるでしょ?」
「…聞くんじゃありませんでした」
お読み頂きありがとうございます。
ダークスターさんの語尾が……「だ」っぽいけど体言止めも多い。表現できなかった…。ちょっと冷たい女性の感じで書いてます。
メールがすげぇ丁寧なのに…、
いずれ修正するかも…。
以下、独自解釈・妄想設定の注釈になります。
お、今回は注釈が必要そうな独自解釈ないな。ないよな?
おしゃー長かったぜ~最後までお読みくださりありがとうございました。
今度はグリフィンで書くはずですが、、、もうわからん!書けるかわからん!
書けたときは、よろしくお願いします。
それでは。また。