ものづくり中毒属性を付与されたシャープちゃんSS 作:スクワイア
なんてことの無いバベルでの日常の一幕を書いてみました。
シャープちゃん可愛いよシャープちゃん。
今回も独自解釈・妄想設定もりもりです。
「ふぃ」
1人の少女が、ついさっき入れたコーヒーを持ってソファに腰を落ち着ける。
ベージュのポニーテールを下げた、青い瞳の少女だ。
彼女は地上に暮らす一般市民だったが、本人の素質とちょっとしたトラブルが縁を結び、ここスターエネルギー関連の大企業BABELで行われている実験に参加している。
彼女の名は、コードネームは「ベータ」。
由来はなんの捻りもない、「天使人造計画」の試作β型から来ている。
BABEL内の他、私生活でもこの名前を使用している。
少し寂しい話ではあるが、本名はありふれた名前と苗字とはいえ、非人道的にも捉えられてもおかしくない実験の資料に人類が滅びるまで残ってしまうことを考えると、妥当で穏便な処置とも言える。
…ズズッ
手でマグカップを回したあと、中身をすする。
休日明けの今日、彼女は今日も今日とて出勤し、始業の一杯を入れた所だ。
広い無機質な訓練室の一角で可愛らしいカバーのかかったソファに体を預けている。
ベータの
…元々、この休憩スペースは個室だったが、シャープの
直してもいいのでは?いや、せめてブルーシートか何かで目隠しするとか…。
なお、ぶち抜いた時に出たガラクズは綺麗に掃除されている。
とこり
3口ほど飲んだところで、ベータに近づく人影。少し背を正す。
「おはようございます。ベータさん」
「おはようございます!シャープさん!」
挨拶、大事。
ベータをBABELに連れてきた人の一人。あとこの穴を開けた張本人。シャープだ。
ベータは座りながらだが、目を合わせて挨拶する。
そしてシャープの様子がちょっと気になった。
「…?」
「?、どうしました?」
「いや、今日は元気そうだなぁ〜って………いつものですか?」
「…えぇ…まぁ…」
「やっぱり」
休日前のシャープは確かにボロボロだった。
身だしなみはキレイなものの雰囲気がが怪しく、ボロボロだった。
…まぁ、金土日たっぷり10時間ずつ30時間寝たところで、目元のクマは消えていないのだが。
それでもしばらく付き合いがあれば、仕事仲間の体調くらいは察せられる。いくらか顔色がよくて、ちゃんと自分の筋肉で立っている姿を見れば、だいぶ調子が良さそうなのが分かる。
毎度、クマがすごいなぁ…。あれ?隠すつもりがないってこと?
つまりそもそも化粧していない…?それとも薄いだけ…?
皺も下瞼近くの他には無いし…シャープさん、ポテンシャルは高いのになぁ。
と、ベータは心のうちで思った。
「ということはデュカリオンさんはお休みですか」
「んィィ。…代休でそうなります」
ベータが一言つけたすと、シャープは喉の奥から謎の鳴き声を鳴らした後、心を落ち着けて言葉を発した。
酷い話である。デュカリオンはシャープを連れ出して土日休日出勤"させた"のに、本人は代休をいれた上でシャープには出勤、代休は日を空けてとることを指示した。
もっとも、エンジニアリング・デトックスによって創作意欲が高まっている中、シャープに代休を与えたら恐らく十中八九徹夜で作業してしまい、休暇前の状態に戻ったことだろう。
残念ながら当然の処置である。
あと、責任者クラスが2人同時に会社に居ないのはちょっとまずいというのもある。
「あはは…」
「アハ…。…私もコーヒーいただきますね」
「あ、どうぞ」
シャープは給湯スペースに歩いていく。
何万回と繰り返したことが見て取れる流れるような所作でカップを用意し、インスタントコーヒーの瓶を開けて目分量で粉を盛る。
うお、多くない?
ベータの目は自分の量の2倍ほど盛られている粉を見た。
トポポ…。
そのままなんの躊躇もなく電気ポットからお湯を注ぎ入れる。
コク…
「あち」
味見したら熱かったらしい。ちょっと水を足している。
それ以外は問題無さそうだ。
「失礼しますね」
「どぞ」
ぽふり
元々スペースは空いていたが丁寧に断りを入れてくれるシャープ。
座り方も丁寧だ。
ンゴクッ
「はぁ…」
多めの一口を飲んだあと、一息…と言うよりため息をついた。
多少不健康そうな目元が見る目線は何処だろうか。虚空のようだ。
何か考えてるのか。
やはり、休日出勤からの連勤は疲れたのだろうか。
おそらく、今日のシャープはおサボりモードだ。
サボりと言ってもしっかりやる事やってからサボるタイプなので社内ヘイトはすごく低い。
前は気持ちの余裕というか、任されたものは全てこなすことに焦燥感溢れるワーカーホリックと言った具合だったが、デュカリオンのゆるい感じにだんだんと引っ張られたことと、度重なる労働環境改善運動※自力能力救済※により人並みにサボることができるようになった。
ベータ的には緩い上司になってよかったと思っている。とはいえ、沈黙したままコーヒーだけを啜るのはちょっと落ち着かなかった。
「えーっと、今回の外回りはどうだったんですか?」
「…そうですねぇ。今回も天使さんに会いましたよ」
「えっ天使!?またですか?」
「本当は珍しい存在なんですが…月に1回は見るようになってしまうとこう、レア感なくなりますよね」
天使。人ではない、人を模した知性体。「天使人造計画」の到達目標。
天使級星導使の語源となった、上澄みの星導使達しか相手どれない恐ろしく強い存在である。
彼女達は基本的に神出鬼没。そして人間とは敵対していない。したとしても一時的。こちらがちょっかいかけた時か、暇つぶしに力試しを挑んでくる時だ。
当然、個体差はある。何してもスルーされる個体。戦闘がスポーツ感覚のライフワークな個体もいるので一概にいえない。
「今回はセラフィムさん会いました。相変わらず優しい方でしたね。一緒に探索、施設を掌握したあとは当分のスターエネルギーを補給したらすぐに何処かに行ってしまいましたよ」
「あ〜セラフィムさん。仰々しい喋り方の割にほんとに優しいですよね。私も何度か助けられて…」
セラフィムは妾、御主など、少し古い言葉をつかう天使だ。
高慢な喋りに似合わず、迷子を助けたり、戦闘機械をシバく手伝いをしてくれたり人類に好意的。
ベータも先程口に出した通り、助けられたり、こちらのお願いで手合わせをしたり…。ギャップのある天使である。
ブツブツブツ
「?」
ふとシャープが俯き、ブツブツ言い出した。
「やっぱり、あのモードチェンジでの性能変化…通常の星導核では対応しきれないはず。核のエネルギーバイパスを逐次変更しているのでしょうか?それともスターエネルギーの昇降圧を内部で…いや、彼女が形態変化する時は主に髪が変わっている…。あれこそがコンバータの役割を…ブツブツブツ」
「…始まっちゃった…」
シャープが独り言で構想を立てるのは、割と稀だ。
いつもは頭の中で考え事してたり、作業をしていたりしても、受け答えはしっかりする。手を停めずに対応してくれるマルチタスクが完璧なタイプの人間だ。
最初冷たい印象を受けるが、どれも生返事とは思えない対応を知るうちに、抱えてる仕事の量から鑑みて可能な限り丁寧な対応をとっているのだとわかる。
業務効率化のおかげか、ちゃんと手を止めてくれることも増えた。
しかし、たまにこう、自分の世界にこもってブツブツブツと脳ミソに思いついた事を口に出す状態になる。
「アレを再現出来たら、1つで遠近対応が可能な装備が…いや、複雑化によるメンテナンス性悪化も考慮…そもそも製造コストが…計画に落とし込むとして…」
この状態はだいたい、自分の時間が取れていない時になる。
つまり、外回りでやりたいことがしばらくやれてない時、今日みたいな時になる。
ちょっと今日は重症かもしれない。
「…あっ失礼しました。ベータさん」
「いえいえ…」
我を取り戻したようだ。
息継ぎ少なめで喋ったからか、喉が乾いたようでまたコーヒーを口に運ぶ。
ズズ
「ふぅ…ベータさんにも射撃特化・近接特化みたいなモードチェンジ、必要だと思います?」
「えぇっ…?わたし、今の武装がちょうどいいと思いますけど…というか、これ以上はいっぱいいっぱいになるかもで…」
「なるほど、持ち腐れてしまうかも…ですか」
「そんな感じです」
天使人造計画は凡人の天使級化を目指すものであり、計画においてベータの装備は"結果的に"コストパフォーマンスの高い構成となっている。
ベータは今の装備で満足してるし、BABEL側も計画進捗に不満は無い。
"結果的"となったのは、天使人造計画の立案、及び、研究段階では高出力の天使装備を解析、模倣による強化が計画されていたが、天使型星導核の懸念事項により出力制限をかけることになったからだ。
一般の星導使が使用する星導核は、スターエネルギーの増幅だけを担う装置であるのに対し、天使が使う星導核は"動力源かつ増幅装置"であった。
これが現在の技術では入出力を加減しないと星導使にエネルギーが逆流する厄介な代物であり、
仕方なく制限をかけて実験してみたところ…性能低下以上にエネルギーコストパフォーマンスが高いとむしろ評価されたのである。
BABELの上層部は、この結果から計画内容を高出力の天使を作るよりも低出力ながら数をそろえる方針に変更したため、
ピーキーな強化案は計画方針の破綻を招くので却下。という姿勢になっている。
…今だって戦う時は手一杯なのに、機能追加されたらあっぷあっぷになるよ…それに出来ることが増えて仕事も増えたらしようも無いよ…
と、ベータの凡人魂は正直に思った。
なお、ベータの装備を最終的に開発、設計、製造したのはシャープであり、
責任をもって常日頃、調整や整備を行っている。
計画の仕様に忠実に沿って作られたことからシャープの手掛けた物にしては、遊びのない作品と言えるだろう。
…その頃は余裕がなかったというのもあり───
「でも、やりたくなりません?
「いやぁ、
「そうですか…
「に、
───余裕ができた今、強化目的で追加機能・装備を思いついては本人にしばしば提案するようになった。
尤もベータが気迷いで承諾したとして、少ない成功例かつ、人造天使の性能基準として"調度良い"今の状態を崩すのは、上層部が良しとすることは無い。
「そうですか…」
ちょっと残念そうにするシャープ。
少し分かりにくいが、これくらいはシャープなりのおどけた会話、エンジニアンジョークの内だ。
なお、時たまに本気だったのか、本当に残念そうにすることもある
ズズスッ
詮無い話をしてる間にコーヒーは減ってゆき、2人同時にカップに残ったコーヒーを飲みきる。
「さて!働きますかァ…くぁ」
「ふへ」
シャープは気合いを入れて立ち上がった瞬間に欠伸をかいた。
その様子に思わず笑ってしまうベータ
「…失礼」
バツが悪そうな仕草をしていても少しも恥ずかしくなさそう…
可愛げはないけども、こういうのがシャープさんのいいとこだよね。
ベータの心の後方腕組み彼氏がうむうむと頷いている。
「それで、今日は何をするんですか?」
「そうですねぇ…
「了解です!」
カップをゴミ箱に捨て、本型端末を入力しながら休憩室の大穴から訓練室に移動する。
この後、めちゃくちゃ仕事した。
きっかり、定時まで。
お読み頂きありがとうございます。
以下、独自解釈・妄想設定の注釈になります。
天使人造計画
ベータちゃんのゲーム本編の二つ名「人造天使」と18号ちゃんのフレーバーテキスト「量産天使プロジェクト」から生やした、まぁ、当たらずとも遠からずあっただろうといった妄想設定。
上層部からの指示で計画理論構築したのがデュカリオンちゃん。装備の設計開発がシャープちゃん。
ちなみに人造天使の存在が前回の天使級設定の妄想爆心地。
星導使がそれなりにいて天使連中と力が同等なら、人造する必要ないよね。なんでわざわざ天使を人造するの?
→やっぱりプレイアブルキャラクターは特別な星導使やろ。
という流れから
天使型星導核について
ローランドの核フレーバーテキストによると、星導核はスターエネルギーを増幅するものと読み取れる。
しかし、天使達の核は動力源と統一して表現されている。
動力源と表現する方が正しい気もするが…統一した方が読みやすいよなぁとなったのでこの表記にしました。
"動力源かつ増幅装置"は普通の星導核と機能差をつけるための独自設定。
エネルギーが逆流する設定は、18号の核フレーバーテキスト「原理不明で不安定、使用者の体に影響を与えるもの」から妄想した設定。
ベータの妄想設定。
ゲームでの口調は内気。荒事に慣れてない感じと人造天使の力に感動する様子がわかる。
頑張って戦闘に従事する姿…健気だ…。
本作では一般ピープルだったけどデュカリオン&シャープの外回りで縁ができてBABELに入社()といった設定。
実験体の体ではあるが、先輩方のおかげで充実した生活を送っている。
考えようと思えば壮絶な出会い、生活にできるけど…文にするかは予定無し。
本作での口調について。
気弱から来る怯えがほとんどなくなってしまった。
戦ってない時で身内で話している時なんてこんなもんやろと言った具合の味付けになります。
コードネーム設定について。
ベータって名前はやっぱりコードネームというか開発型式とか、試作番みたいなもんやろ!
というわけで本名は別にあることとしました。
ゲーム本編で明かされるかは…俺らがゲームをやり続けて情報開示を待つしかないなぁ!
セラフィムさんというか天使達との関係性について。
天使達のフレーバーテキストを読むと人間との干渉はしたりしなかったり、まぁ個性があるんですが、ヒール役にするにはそうでも無い感じでして。おまけに…ゲーム本編で戦いあってる理由があんまりわかんなくてですね。
手合わせ含めて、なんだかんだ人類とは仲良くやっている。とか、こうふわっとした独自設定とします。
…ゲーム本編でアプデにより天使が相手になるとセリフが変わるようになったキャラがおりましてね。
これが天使ガチアンチなんすわ…。
まぁ、利害が不一致した時にガチバトルと考えます。
最近、戦闘機械側の天使が追加されましたね。ヴァルキアとライン。明確な敵としてはなーんかどっちも闇深そう。扱いがムズい!
はい、以上が注釈になります。
今回もありがとうございました。
それでは。