ものづくり中毒属性を付与されたシャープちゃんSS   作:スクワイア

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お題箱にていただきましたお題
「書類を作るシャープとそれを手伝うベータ(ロンギヌス)が、休憩中お菓子を食べながら和気あいあいと話しているだけの話」
で書かせていただきました!お題ありがとうございました。

いつもの神視点…。星の翼設定妄想込々でゆるーく書いたつもりでございます~。

過去の話と設定に齟齬ないかな…相変わらずのご愛敬!


それではお読みください!!!


BABELの和やかな一幕

今日のBABEL技術部デスクルームでは、超高速のタイピング音が、激しくもうるさくない程度に響いていた。

 

音源はシャープの操る物理キーボードだ。

 

一昨日から今日にかけての就業時間、シャープはとある報告書類をまとめる為、作業ベンチではなく、デスクに齧り付いていた。

BABELに所属しているシャープは、技術屋としても星導使としても、誰も否定できないレベルで有能だ。

そんな彼女のタスクは、いつも飽和していて溢れ気味である。

 

原因は、有能であるが故。

 

…それだけでは無く、上司及び先輩のデュカリオンが遺跡探索に出張してしまい、残った仕事の処理や他部署からのお願い等も多分にある。

こなした仕事は正当に評価され、別部署の下手な年上よりも年収が高い。

まさにエリートプレイヤー職員だ。

 

そんなシャープは少し前、持ち前の技術で業務を極限まで効率化して、余裕を作った時期もあった。

しかし、団長が現れたことで状況は一変…とまでは言わないものの、明らかに業務が増えた。

 

団長は、出土数が少なく用途不明だったナノマシンカートリッジ──有用性を示され「天賦髄液」と名付けられたそれの活用法を知っていた。

知っているだけでなく、前文明由来の知見や知識、技術…神の権能じみた能力を使い、星導使達の潜在能力解放、星導器の改良を施す術を持っていた。

 

さらに…天賦の洗礼を、旅ゆく先々、星導使知り合いが増えればそのまま施して回っている。

星導使どころか天使、軌道機兵、…剰え明確な敵対勢力とされる戦争機械の上位個体までにも洗礼を与えている。

 

これまでBABELが集めていた各勢力の星導使・天使データは、軒並み事実と乖離した。

 

星導技術研究の最先端を走るBABELにとって、まさに衝撃であった。

星導技術に発展に、予想されていなかった道が突然現れたような状況だ。

どうやれば団長の施す天賦が再現できるのか。ナノマシンの影響を受けた星導器・星導使はどんな変化があるのか…。

 

これらを解明、調査する為、様々な部署で同時に追加業務が突如生えてきたわけである。

 

何も、シャープだけがタスク飽和している訳では無い。

BABEL全体で飽和気味になっていたのだった。

 

 

シャープがタイピングしているのは、ガイア中の星導使データを編纂の為。

 

BABEL上層部は調査部が集めた内容の"まとめ"を、技術者と星導使の多角的な視点を持ち、さらに各々の星導使能力変化の原因たる団長と一緒に動くこともあるデュカリオンとシャープに割り振った──

 

が、

 

「先輩は私に"まとめ"を押し付けて、遺跡調査に団長と行ってしまいましたとさ〜」

 

シャープはタイピングを両手から片手に変え、入力を止めずにカップを手に取り、コーヒーを飲んだ。

 

「シャープさん。大丈夫ですか?」

 

ベータはマウスをカチカチと小気味よく操作しながら、突然喋りだしたシャープへの心配を口にした。

 

「お気になさらず、頭の中で今の状況を考えていたら口に出てしまっただけですので」

「…いつも思いますけど、よく別のこと考えながらタイピングできますね…」

「いつの間にかできるようになってました。」

「えぇ…」

 

BABELにお留守番している星導使は、シャープとベータ。

二人で資料をまとめている。ベータがシャープを手伝っている形だ。

 

ベータが任意的にやっている事で、本来の星導使業務には含まれていない。

そもそも、BABELでの本来の立場は星導使ではなく、人造天使計画の実験被験者だった。

この為、BABELに雇われている他の星導使より実務が少ない。BABEL中が忙しくなった中でも、既に手隙になっており、シャープを手伝っていた。

 

また、こういった書類仕事を手伝うのは、初めてではない。

 

最初の手伝いは、人造天使に成り立ての頃だった。

荒事の経験が無く、星導系知識も全くない学生から突然人造天使になったため、検査と実験とちょっとした訓練だけという日々が続き、暇が多かった。

自分は暇なのに、世話を見てくれるデュカリオンやシャープが本当に忙しそうにしているのを見て、申し訳なさを感じたベータは、手伝える仕事が無いか。そう聞いたのが始まりだ。

 

最初の頃は当然、おぼつかない手際だったものだが、上司の2人が掛け合ってくれており、いつの間にか手当もついていた。

これにベータのモチベーションが維持されて、サブの業務として手伝いを継続。

 

技術関連の仕事は流石に高度過ぎて触らなかったが、人造天使計画からロンギヌス計画に移行する頃には、十全に技術以外の事務仕事をこなせるようになっていたのだった。

 

そして今日は、まとめ資料の作成を分担して作業している。

 

文章や数値情報はシャープが書き、ベータはそれらを元に、画像やグラフ、表を追加して資料の体にする。

ついでに、たまに現れる専門的でコムズカしい表現を噛み砕いたものにしたり、トゲのある表現を丸めたり、細かいところに手を加えていた。

 

シャープちゃんは大助かりである。

 

カタカタかちカタカタかちかちカタカタカタカタ

 

「あ…。…シャープさん」

「どうしました?」

「休憩しましょう」

「へぇッ?」

 

作業が順調に進む中、ベータが突如休憩を宣言した。

 

理由は単純。

本人はまだまだ行けると無自覚のようだが、ベータにはシャープの疲れが分かったからだ。

それは発言や仕草、顔色から判断したわけではない。顔色は悪い方がデフォルトだ。

 

シャープが直近に保存したファイルを覗いたところ、誤字脱字はないものの、コムズカしさやトゲトゲしい表現が明らかに増えていたのだ。

それは、長くシャープ達の事務仕事を手伝って来たからわかる、疲労の兆候だった。

このままだと、ベータが直す部分は増えていくし、続けてシャープの疲労が進行すれば誤字脱字、変換ミスが出てくる。

 

ベータは自分の仕事量調整を謀るために、シャープを休ませようとしているのだ。

 

休憩宣言に思わず止まったタイピング。

その隙を見逃さずに、ベータはオフィスチェアの背もたれを掴んでフロア内のミーティングスペースに押していく。

 

「あの、キリのいいとこまで…」

「どうせ覚えてるじゃないですかー。いつ休んでも変わりませんよー」

 

ガラガラと押される中の小言は聞き入れられず、大きめのテーブルまで運ばれた。

即座にお菓子や軽食の乗った大皿と、コーヒーマシンから淹れたてコーヒーが並べられる。

シャープに口を挟む暇を与えない早業だ。

このテキパキさは、ベータが手伝い始めた時、最初に行ったお茶汲み仕事によって培われていた。

 

ぱん。と手を叩いて仕切る。

 

「さ、休憩しましょ」

「…そうですね」

 

昨日も、割と強引に休憩させられた記憶のあるシャープは、逆らわずにそのままコーヒーを手に取り、すする。

苦味とコクが強く、さらに濃いめで、好みに合わせてあった。

 

1口飲んだあと、お菓子に手を伸ばす。ラインナップは市販の焼き菓子と…

 

「カヌレ…?」

「作ってみました〜。資料まとめが終わるまで外勤はないでしょう?せっかくならオヤツも凝ってみたくなって!」

「か、家庭力ぅ…」

 

ベータお手製のカヌレが乗っていた。

形と色はパティスリーのものと見間違うほどのクオリティ。

 

シャープは、いただきます。と言いながら、1つ手に取り、かじる。

 

──カリッもちっ。

 

外殻はカラメリゼのほろ苦さ。内側からのバニラとラム酒の芳醇な香りと暴力的な砂糖の甘さが舌に広がる。

 

「ウマ」

「上手に焼けたんですよ〜!…できたての味見を1個にするの苦労しました…」

「…1個でとまったんです?」

「実は2個いきました。」

 

あははと笑うふたり。

おやつをつまみながらコーヒーを飲む。

 

ふぅ。と落ち着いたあとシャープはぼそり。

 

「家庭力が高くて羨ましい…」

「シャープさんも十分高いじゃないですか〜」

「自作メイドロボ達の活躍をそう言うのは憚られるんですが…」

「遺跡調査の時とか、振舞ってくれる料理美味しいですよ。あと、デュカリオンさんに料理教えたことあるって聞きましたけど?」

「先輩と比べて!?…ええまぁ、それは、当然です…。」

 

デュカリオンは料理ができない。これは舌がおかしいと言うよりも、余計な事をしがちな所にある。

比べてシャープは、図面(レシピ)通りに作るタイプで、失敗はしないが、並。

伴って、分量が大雑把なレシピだと悩む程度の料理スキルだ。

 

その程度でも、家庭力…料理だけを見れば、誰が見てもシャープに軍配があがるほどにデュカリオンは料理が下手だった。

 

「…教えても何故かできないんですよね…」

「料理中に何か閃いて、つい試しちゃうんでしたっけ?」

「そんなところで探求心を出さないで!って、いつも言ってましたよ…。それで、いつの間にか私が調理役に…」

「ん…?」

「…何か?」

 

もしかして、デュカリオンさんは、シャープさんに料理を任せたくていつも失敗してるんじゃ…?

…まさかね!と、ベータはあらぬ空想をさっさと捨てた。

 

「…団長達、出先でなにか美味しいもの食べてるのかなぁーって思って」

「あ〜もしかするとレプリケーターを見つけて、前文明美食を出力してそうですね」

 

変に何でもないとごまかすのではなく、食べ物関連の話につなげれば、シャープは特に追及することなく新しい話題にすすんだ。

 

前文明から残る遺跡には、当時の超技術が使われた機器が生きている時がある。

"レプリケーター"…工業部品から家庭料理まで出力できる超高機能3Dプリンターもその一つだ。材料さえ残っていれば、望むものを作れる。

しかし、レシピを知っていないといけない。解読が済んでいない文字が含まれていたり、意味が読み取れなかったりすると、望むものは出てこない。現文明人にとっては、適当にボタンを押して何が出てくるか検証する必要があるので、高価値な遺物ではない。

 

「団長の手料理…」

「それを手料理と言っていいんですか?」

 

そんな価値の低い遺物も団長の手にかかれば、値千金の遺物になる。

団長は記憶を喪失しているが、前文明由来の知識は残っている。つまり、前文明の文字とその意味を正しく理解でき、真の意味で望むものを作り出せるのであった。

団長が食べたいものを選び、ワンボタンでしばらく待てば、チーンと調子のよい音と共に熱々の料理ができあがる。

 

シャープの言う通り、それを手料理といっていいか疑問が残るが、食べさせてあげたいと思うその気持ちが大事なのだとベータは考えたため、手料理の判定をしている。

 

「まぁ、出先でいつの間にか獲ってくる野生生物を振る舞われるよりかは…"らしい"んですかね?」

「野食も美味しく作れることに驚いたのが懐かしいですよね…。下処理も味付けも完璧で…私も腕を上げないとなって気になりましたよ」

「私は諦めました」

 

ベータは小さなファイティングポーズを作って意気込みを見せるが、シャープはお手上げのポーズを取った。

自分の専門分野すら超える団長の能力に、降伏宣言。正しくお手上げ状態なのだった。

 

団長は…ほぼ、なんでもできる。

ハードウェア・ソフトウェアの技能とデザインセンス…。

一般市民から気難しい星導使に天使、果ては戦争機械までともやり取りを円滑に進ませるコミュ力…。

デスクワークもフィールドワークもできれば、さっき話されたように家庭的なスキルも不足ないどころか、完璧なお手前…。

 

ここまで規格外となると嫉妬心すら湧かなくなる。

 

「えぇ〜?一緒に立ち向かいましょうよ〜。団長の舌を唸らせる為に〜!」

「…ヤミンガイドの三ツ星店を廃業に追い込むレベルで腕をあげなきゃなりませんね…」

「間違いないです」

 

なお、星導使達が振る舞う料理を、団長は美味い!美味い!と言いながら食べる。不満も嘘の様子も無く平らげる。

そして、そのお礼に作られる団長の手料理で、自信を粉砕されるのが鉄板ルーチーンとなっていた。

 

そんな話を多数聞けば、張り合おうとするのさえ馬鹿らしく感じてきてしまったのがシャープだ。

 

「プロをも下す壁を超えるなんて、夢のまた夢…。本当になんで戦闘だけできないんですかね?」

「いや、星導技術が絡まない闘いなら相当強いですよ?」

「それは知ってますけど…」

 

器用万能な団長に、何が苦手なんだと聞けば、"荒事"と答えてくる。

 

星導器を扱えない団長は…体力こそ星導使顔負けだが、戦闘力が足りない。正直、探索の為に現文明世界を出歩くの過酷だ。

そのため、旅や依頼で何処かに向かう際は、現地の星導使を伴うことが殆ど。

そして、次のことが起こる。

 

探索の為に旅をする。

現地で問題が発生する。

団長が解決しようとする。

星導使に天賦を施しつつ、問題を解決する。

携わった星導使が、お礼しようとするも遠慮される。

代わりに、次の探索も付き合ってくれと言われる。

頼まれた星導使は、団長の為にと訓練を張り切る。

何かの折で、団長と関わりのある星導使がめぐりあう。

力試しをすれば、以前より増した圧力を感じる。

競争心が煽られ、さらなる力を欲し、身体は闘争を求める…。

 

これが、団長の行く先々で発生しているのだ。

団長の顕現前と比べ、いたる所の星導使が軒並み戦闘能力を上げていくというループが発生。

 

星導使資料の再編纂が求められたのは、天賦髄液の影響だけではなく、星導使個々の努力が実っている部分もあったのだった。

 

「団長へ恩返しするためにって、皆さん鍛えだしているの…単純ですよね…」

「単純って…シャープさんもじゃないですか!?」

「それはまぁ…自覚ありますね」

 

団長の顕現直後から関わりのあるBABELの星導使達は、そのままだと付き合いが長いだけの星導使に成り下がってしまう。

 

今後、最近関わりだした星導使だけを団長が重用し始めたら…嫉まずにはいられない。

 

「再調査の資料が必要になった位には強くなってるんですよ?…このままBABELの立場に胡座をかいてると、置いてけぼりにされますから…」

「うかうかしてられないですよね」

 

もしも置いてけぼりにされたら、シャープを含めたBABELの星導使はこう思うだろう。

 

私達の方が、先に、手助けしていたのに。

 

団長に能力で負けるのは、まだ良い。前文明由来であるところで納得できるだろう。

しかし、同格の者達と大きく水を空けられるのは、シャープが如何に温厚といえど、対抗意識に火がつかないわけがなかった。

結果、シャープは仕事以外では近付きもしなかった訓練場に足を運ぶ様になっているのである。

 

なお、ベータもロンギヌス装備を受領した先から、次々に強力な星導使と団長が知り合いになっていくため、日々の鍛練にも力を入れるくらいには、単純だった。

 

「…シャープさん、一緒に訓練しましょ?」

「えっ?今からですか?…報告書を終わらせてからにしましょうよ…流石に…」

「それはもちろん!」

 

また、アハハとふたりは笑い合う。

 

愉快なおしゃべりを楽しんだ休憩は、オヤツを食べきり、コーヒーを飲み終えたところでおしまい。

業務に戻ろうと、二人そろって席を立った。

 

シャープは準備してくれたベータに代わって後片付けを引き受けた。大皿を下げ、カップは洗う。

テーブル拭きまで済ませれば、自分のデスクへ椅子に座りながら地面を蹴って行儀悪く戻りながら、先に席についていたベータへ話しかける。

 

「さて〜もうひと踏ん張りですね〜!」

「ですね〜。あ、ベータさん、提案なんですが…」

「なんです?」

「先輩達が戻ってきたら、久々にヴァルキリー小隊と模擬戦しに行きませんか?」

「し、シャープさんとは思えない発言…」

 

デスクに戻ったシャープは、ベータにキャラじゃない提案をした。

こう…デスクワークを続けていると、体は鈍る。更にまとめている資料の内容を目の当たりにして、危機感が沸きまくったから…という理由だ。

訓練のお誘いをされたからには、鍛錬をより有意義にしたい。それには同格者との競争が最適だと考えての提案になる。

とはいえ、ヴァルキリー小隊のいるロイヤル星導学園までは定時後にふらっと行ける距離ではない。

どう頑張っても半日は欲しいところで、となれば休日を使う他ない。

 

「休日に伺う感じですか?」

「…そんなことしません」

 

休日を大事にするシャープさんが、そこまでして?とベータは疑問に思った。確認すれば、そのつもりは無いと言う。

 

「仕事にするんですよ。調査報告書と実態が正しいか確認するという名目で。」

「なるほど…。ちなみにその間の通常業務は…?」

「そんなの、デュカリオン先輩に押し付けてしまえばいいんです。」

 

若干の怨念がこもった言葉の割に、高速で叩かれるキーボードの指は、実に軽やかだった。

 




最後までお読みいただきありがとうございました。

団長。万能すぎて作る飯もうまそうだよね…というわけでメシウマ属性付与。
…いったい戦闘以外何ができないんだ…。

あと、ガイアの美食をまとめたヤミンガイドはある(断言)

シャープとロンベ…あっちでガチバトルさせて今回は超平和…風邪ひくぜこんなん…w

はい、蛇足まで読んでいただきありがとうございました。
また、何か書けたら投稿いたします。
それでは
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