ものづくり中毒属性を付与されたシャープちゃんSS 作:スクワイア
安定の独自解釈と妄想覚醒ブッパマンです。
今回はまたもや上司のデュカリオンに振り回されるシャープちゃんになります。
よろしくお願いします。
「シャープちゃん。ガルザ支部に出張行ってきて〜!」
「…」
マジか。
シャープの思いはこれだ。
別に出張が嫌な訳ではない。代休は無いかもしれないが、手当もついて、何時もの
自分のライフワーク。もとい、心身の呪いとなっている工作や設計も、端末経由でAR・VR遠隔作業ロボを操作すればなんとかなる。
対人の会話も得意ではないが苦手でも無い。
特に別の事業所のエンジニア達と技術交流できるとなれば乗り気になる話だ。
どちらかと言うと、問題はガルザ支部の気風というかモラルだ。
「…量産天使案件ですか?」
「例によって。だね!」
「はぁ…」
そのモラル、主に欠如しているのだが、それを存分に味わったのが前期の社内報告会である。
当時、秘匿プロジェクトだったガルザ支部の量産天使プロジェクト。
これが形になり、本社やほかの支部から人を呼んで社内成果発表会を行った際の出来事。
それがシャープがガルザ支部に行くのに気が引ける理由だ。
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「いやー。上の連中には参ったもんだよね〜。週末に突然、月曜日からの出張命令を出すなんてさぁ〜」
「土日に準備できただけ、良しとしましょうよ」
「それもそうだね〜。冬服引っ張り出すついでに衣替えの機会にできたと考えるよ〜」
「あはは…」
ガルザの帝国らしい華美な装飾が目立つ講堂の一角。
そこには、
美人が3人。
可憐で華やかに見えるが、彼女たちは人類の中でも上澄みの女傑達。
デュカリオンとシャープと、社会見学を兼ねて連れてきていたベータだ。
普通はもっと上の人が行くが、デュカリオンが言った通り、突然の代打として既に寒さが厳しいガルザ帝国内BABEL社ガルザ支部にやってきたのである。
本社上層部曰く、発表内容詳細は伏せられているが、スターテクノロジー関連の発表であることを把握。技術屋を送り込むのが適任だと判断した。とのことだ。
それを聞いた時、デュカリオンもシャープも首を傾げた。
ガルザ支部ではココ最近、本部及び各支部を呼びつけてまで発表する内容のプロジェクトは、予算案・社内報等を読む限り、なかったはずだからだ。
ガルザ支部が、本社に隠して進めたプロジェクトなのではないか?と推測するのは簡単だった。
それはそれで気になった2人はベータを連れてくことを条件に出張命令を受領。はるばるやって来たのだ。
少しばかりおしゃべりを楽しんでいると、今日の司会者が仕切り始め、発表者が登壇する。
そして、いくらかガルザンジョークを挟んだ後、スライドを流しながら発表をはじめた。
その発表内容にシャープは絶句した。
なんとガルザ支部は、この前期に本社で行われた社内報告会で発表していた
身内とは言え、なんの相談もなしにプロジェクトが立ち上がって、進行して成果とされるのは気持ちが良くない。
しかし、エンジニアの心情的には、如何に自分の設計を超えたものを出されるものか。少しワクワクしてもいた。
そのワクワクは、沸く沸くの憤怒となった。
それは酷く惨い倫理軽視設計に頼った出力向上だったのだ。
上手く誤魔化しているから、一般の、他の支部の技術者は気付いていないようだが、大元の設計者だからお喋りな発表者の説明でわかった。
天使型星導核を比較的安全に安定して運用する為に、苦心して開発したスターエネルギー逆流を抑える為の整流兼降圧用の緻密な装置。
これを費用削減して、危険な領域、つまりは装備者をひどく蝕んでしまうまで簡素化していたのだ。
おまけに出力も不安定そのもので、最高出力は
製造コストはかなり下がっていたのは見所ではあったものの、そりゃ最高出力が上がって当然のもの。
シャープからしたら論外中の論外。
シャープは発表の最中に暴発はしなかったが、最後のこういった発表会での定番、質問の時間に爆発した。
―素人質問で申し訳ありませんが―
から始めた舌戦により論破をキメ込み、改善要望を突き付けた。
発表者は劣勢だと言うのに、プライドが許さなかったのか、絶妙なかわし言葉で言外に確約を濁す。
それにカチンと来たシャープ。
と、考え出した所で
「まぁまぁ」
デュカリオンがニコニコとした表情で場を宥めだした。
「ちょ、先輩…!?」
シャープは思わずデュカリオンの肩を掴んだとき
ニコニコとしていた目がシャープを見た。
あ、カチキレてる。
何時も飄々とニコニコ、サバサバしているイメージのあるデュカリオンだが、笑顔の奥の目が語っていた。
私はキレてます。
ニコニコ顔と怒り目。その視覚ギャップでシャープのあったまった脳ミソは少し冷えた。
何か案があるのであろう。さっきカチンと来た時にチラついた、天使級星導使らしく
シャープは一先ず矛を収めることにした。
デュカリオンはそのまま発表者に対して心地の善い言葉をかけ、場の緊張を和らげさせた。
なお、付き添いで座っていたベータは突然のちんぷんかんぷんな専門用語の応酬に、視線が集中する中にあったため、蛸壺塹壕に籠り、砲弾が直撃しないことを祈る兵士のような面持ちで身をちぢこませてやり過ごしていた。
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その後は会場を移動し、夕食会となった。
シャープは、あんな立ち回りをした後だとな。と気が引けていたが、デュカリオンが場を取り持ってくれたおかげで、あまり意識せずに豪勢な食事を楽しむことができている。
デュカリオンは食事もそこそこに、発表者含むガルザ支部の方に
ベータは目を輝かせながら舌鼓をうっている。
「どれも美味しい…あ、これ、初めて食べた…!」
「あれ?そのガルザ料理、
「あ、そうなんですか…その、前の報告会の後は色んな人に挨拶されて緊張して、あんまり記憶がなくてですね…」
「わかりますよ…私も入社したばかりはそうでした。はは…」
「たはは…」
少しバッドコミュニケーション。今はやっぱりちょっと、カリカリしてるのかもしれない。
さっきの舌戦のおかげか話しかけてくる輩もいないので存分に味わうが良い。
これから食事を邪魔するものが狙われたら、私が全て受けきって見せよう。これはお詫びだ…。
と、シャープは食中酒のワインを傾けながら心の内に宣誓した。
「や、ただいま〜、ふぅ〜」
デュカリオンが空いたビール瓶を持ったまま席に戻ってきた。
「先輩、すいませんでした。面倒かけてしまって」
「いいのいいの。部下をお守りしてこその上司だよ〜」
「
シャープの耳には、ベータがなにか小声で言っているが聞こえなかった。
デュカリオンの様子はにこやかだが、報告会より少し覇気が強まってる気がする。
今、呑みニケーションの会話内容を聞いてつっつくのは…シャープは止しておくことにした。
「それよりお腹空いた〜!どれがおすすめ?」
「このピエロギ?ですかね?美味しいですよ!」
「どれどれ〜♪んむっ…おいひー!」
ベータに勧められた料理を口に運び破顔するデュカリオン。
さっきまで纏っていた覇気はいつの間にか霧散していた。
そのまま夕食会では問題は特に起こることはなく、一行は手配されていたホテルに向かって朝までぐっすりと寝た。
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「みんなおはよ〜」
「おはようございます」
「おはよふぁ、ございます…」
「じゃ、朝ごはん食べに行こ〜おめかししてね〜」
「…ふぁい」
大きな部屋だったので3人一緒だ。
起きた順はデュカリオン、シャープ、ベータ
デュカリオンは割と早めに起きたのか、ベッドの上で携帯端末を操作して暇を潰していた。
シャープは夜更かししなかったので普通に起きた。寝起きはいいようだ。
なお、デスク残業が半端なかった時期の睡眠時間で寝起きが悪かったら遅刻常習犯になり、仕事の振られ方も変わっていただろう。
シャープは自分の習性に勝手にいじめられてたわけだ。
ベータはなんとも幸せそうな顔で最後まで寝ており、ついさっきデュカリオンに起こされたところだった。
3人は身だしなみを整えて、朝食の為、レストランへと向かう。
コックが目の前で調理もするブッフェスタイルだ。
気分と好みに合わせた物をとり、朝食をいただく。
ベータは今日も人生一に美味しいと顔に書きながら、料理を口に運んでいる。
シャープはあの後、結局デュカリオンになにか案があるのか聞いていない。
そもそもシャープ自身、時間を置いてしまったからか、あの設計仕様を思い出すとムカつきはするものの、会社が了承してるならまぁ…と怒りが溢れる程では無くなっていた。
3人とも朝食が済んで、食後のコーヒーとデザートを楽しんでいた時。
「それじゃ今日の予定決めようと思うんだけど、どうする〜?」
今日は移動日で、平日出勤日扱いだ。
バベル本社からガルザ支部までは、弾丸出張できる距離では無い。
したがって前泊、後泊の日程であり、帰りに使える航空機まで時間があるはずで、普通だったら少し観光して帰ることだろう。
しかし、それは一般会社員の話。
今回はこの3人、
自動運転機能により、日付が変わるまでに本社に向かわせれば、明日の出勤には間に合う。
つまり、今日は夜になるまで観光を楽しんでも良いわけだ。
「特に…」
「おまかせします!」
シャープは本当に行きたい所はなかった。
強いていえばさっさと帰って、自作開発品の作業を進めたいと考えていた。
遠隔でやる事はできるが、出来上がりの感動はやはり生で味わってこそと言った具合だ。
ベータはオススメの店とか、観光スポットとか教えてくれるんじゃないかと期待してのおまかせ。
ギラリ、2人の回答に待ってましたとばかりにデュカリオンの目が光った。
「よーしそれじゃお姉さんに着いてきてね〜。シャープちゃん!車貸して!」
「???、いいですよ?」
あんなクソでかい代物でいける観光地なんかあるのだろうか
「一体どこに行くんです?」
「い・い・と・こ・ろ❤」
可愛くウィンクを決めるデュカリオン。
ベータは正しくワクワクと言った表情で小さく「おぉ」と言ってこれまた小さく拍手した。
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「ここって…」
「ガルザ支部じゃないですか!?」
哀れベータとシャープ。
自動ビークルに乗ったあとは、デュカリオンに目的地指定を任せ、2人は何も考えずに広めの車内で過ごしていた。
着いてみたらどうだ。見覚えのある建物の前に立っていた。
オサレなショップやステキな景色を思い描いていたベータは心底ゲンナリしている。
「何をしに…!」
あ、昨日の件か。
たしかにさっさと追求するのがいいだろう。
何か案を考えてるんだろうとは思っていたが、昨日の今日がその日になるとは。
シャープにとってはまさかだった。
「ごめんね、ちょっと手伝ってもらいたくてさ」
「手伝う?というかアポ取ってるんですか?身内の支部とはいえ、それなりに入退管理が…」
「
なんだコイツ。自分の声と顔面の強さを正確に把握して使いこなしてやがる。
「それじゃお邪魔しよう!」
「えっ、えぇ〜?」
「…」
スタスタと駐機場から正面玄関へと進むデュカリオン。
混乱しつつも、直ぐに追いかけ始めるシャープ。
楽しみを砕かれたベータは虚無顔でとぼとぼついて行く。
ロビーに入ると受付と入退ゲート、その奥にエレベーターが見えた。
デュカリオンは勝手知ったると受付を素通りし、ゲートに向かう。
ガードマンが両脇に立つ中、デュカリオンがゲートに社員証をタッチする。
ポーン「バベルガルザ支部へヨウコソ。ヨイイチニチヲ」
「お疲れ様です〜」
ガードマンに挨拶しながらゲートを通る。挨拶大事。
そして本当に許可は降りているようだ。ベータはワンチャン、許可降りてないといいなーと願っていたが、その願いは無事に砕かれた。
デュカリオンに続いてシャープとベータもゲートを通る。
ポーン。ポーン。
「「お疲れ様です」」
同じような素振りで挨拶をして、そのまま何食わぬ顔でエレベーターに入る。
「ふっふっふ。魔王城に侵入〜」
「何言ってるんですか。それよりも何を手伝うんです?」
「そりゃカチコミだよ!」
「かっ…!?」
わからせかよ。
シャープが思い浮かべはしたものの、実際にやるのは避けた手段だった。
しかし、この先輩は本当にやる気に見える
「殴ったって解決しないじゃないですか…結局は設計をどうにかしないと…」
「そうだね。だから、シャープちゃんは改版作業をお願い❤」
「は?」
何言ってんだこいつ。
最近の脳内に思いつく言葉が荒々しいシャープ。
無茶を言ってるようだが、できるかできないかで言えば、シャープはできる。
改版というのは、図面に不具合があった場合、書き換えることを指す。
シャープの開発品流用だろうから、1から読み解く必要は無い。
大体の設計図は頭の中にはいっているし、インテリジェント化している星導核端末を覗けば正確な図面もでてくる。
ということになると一見簡単そうに思えるが、元になった図面が頭に入ってるからこそ、どっかの誰かがいじった部分に気が付かない。と言ったことは往々にある。
流用込の図面改版というのは酷く神経を使うのだ。したがって、時間がかかる。
さらに言えば、世界中探したって別支部の設計図面を頼まれてもいないのに改版するやつなんて居ない。
越権もいいところだ。何はともあれ、めんどくさいことには変わりない。
「いやいやいや、もっとこうありますよね!?本社から圧力をかけるとか」
「…実は、内部監査部署からヘルプがあってね〜。ガルザ支部に何回も通告しても指導しても変わらず、最近は特に恣意的な振る舞いが過ぎる。なにかあったら焼きを入れて置いて欲しいってさ!」
そう、ガルザ支部は本社からかなり遠い上にガルザ帝国内という訳で、支部の社員は帝国主義的な若干の選民思想と、運営資金の一部が帝国から出ている点で、独断傾向が強いのだ。
本社的には利益の点では申し分ないとは考えていても、流石に目に余るようになった。ということだろう。
「…もともと予定があったんですか?」
「いや?報告会参加だけだったよ?ただまぁあんな成果物出されちゃねぇ。殺ろうなかーと思って」
「殺る」
「上手くことが運ぶかわかんなかったけど、お膳立てしてたら舞台が爆速で整っちゃったわ。それを監査部に報告したらGOサインがきたってわーけ」
シャープは思い出した。
発表の時、わざわざ場を取り持ったのも、お酌しに行ったのも、朝弄っていた携帯端末、今思い出すと社用端末だった気がするのも、すべてはこのシチュエーションの為。
デュカリオンはガルザ支部強制監査までのオリチャータイムアタックを走っていて、私たちは巻き込まれたというわけだ。
「なら…言ってくださいよ…心構えってものが…」
「甘いよシャープちゃん。ここはガルザだよ?ホテルで物騒な話してたら筒抜けなんだ」
「…車の中で話したら…」
「言ったら直帰するよね?シャープちゃん?」
「…」
やはりデュカリオンはシャープの生態をよく知っている。
なお、デュカリオンは行きたい場所があるか聞いた時、きちんと答えていたらそっちを優先した。
これを言ったらベータが虚無を通り越して闇堕ち確定なので黙っている。
「ま、そんなわけでカチこむんだけど、ただ指導(物理)するだけじゃまた無視されるのがオチ。そ・こ・で!シャープちゃんがより良い設計を叩きつけて、本社の威厳ってやつを知らしめるって寸法よ」
「無茶な…いつまでこっちにいるんですか…」
「ぶっちゃけ、差し替えでいいんじゃない?ベータちゃん用に試作した片割れ、
「それ、いずれ事故ったら私の責任になりません?」
「ならないならない!ていうか、今のアレより絶対マシだから!」
「…。それでいいなら今日の定時までにはできますかね…」
「よーしよしよし、流石シャープちゃん!」
頭をナデナデされるシャープ。しかし顔面はベータと同じく虚無顔になりつつある。
…隈のせいかベータより重症に見える。
「そんじゃ妨害してくるやつは私とベータちゃんで抑えるからさ。ね❤」
「ショウチシマシタ」
ずっと虚無顔のベータが小さく答える。かわいそう。
「量産天使とやらが出てきたらお守りできなくなると思うけど…まぁ、
りーん
エレベーターが目的の階に着いたようだ。
「それじゃぁいっちょいきますか」
扉が開いた瞬間にデュカリオンは星導器を展開しながらガルザ設計部に突撃していく。
「Урааааааааааааа!」
「ウラー!」
「…お邪魔します」
この後、シャープは宣言通り図面の書き換えを定時までに終わらせた。
それまでの間に、当然ガルザ支部で開発されていた量産天使達が乱入。
結果、ベータはいつの間にか20人ほど妹ができていた事を知り、本格的に闇堕ちしかけた。
はい、お読みいただきありがとうございます。
エレベーター長くね?まぁいいや。
今回のお話。なんか冗長な気がする…。
あとベータちゃんがかわいそうすぎる…。カワイイネ…。
以下、独自解釈・妄想設定の注釈になります。
ガルザ帝国について
冬が厳しそうな土地。イメージは帝露。
アイーダのキャラテキストを読むと君主制らしく貴族がいるよう…権威主義だな…選民思想強そう。
あと、シグナスのキャラテキストを読むに帝国主義・膨張主義全開やんけ!
BABELガルザ支部について。
ゲーム本編では18号ちゃんを開発したところ。
キャラフレーバーテキストを曲解するとベータとは別軸の開発であると考えられる
そして、18号ちゃんとベータちゃんの装備テキストを比べると、設計思想がまるきり違うように感じる。
ここからガルザ支部は本社に対して、ガルザ帝国の気風により、かなり独断・独立的な支部であると独自解釈。
実際にあるんかなこんな形態の組織…w
倫理軽視設定は18号の各テキストから、使用者の消耗上等!大量生産でカバー!というので…。ソ連なのか帝露なのか…。
量産天使プロジェクトについて。
18号ちゃんが作られた計画。うーん、キャラ、星導核、装備テキスト全部が病み深い…。
よっしゃここは設計のプロ、シャープちゃんで改変だ!!!!
はい、量産天使プロジェクトが比較的健全な方向に進むようにしました。
ゲーム本編設定ままだと、ぽこじゃかお亡くなりになりそうな雰囲気だったので…。
ベータの闇落ち案件について
まぁ、このフレーバーテキストなら…やるよなガルザ支部…。
次話の根幹ネタ予定なので詳細は省きます。
ここまでお読みくださりありがとうございました。
それでは。