ものづくり中毒属性を付与されたシャープちゃんSS 作:スクワイア
キャヴァリーがBABELにお邪魔するようです。
下編です。
それでは、どうぞ。
「シャープさん…大丈夫かな…」
「まぁー大丈夫でしょ!暗黒期を乗り越えた女だもん」
「それとこれとは話が違うような…」
BABEL本社。大型車両用駐機場にて待つのはデュカリオンとベータ。
少し前、シャープから数十分後には出勤すると連絡を受けて待機してる。
遅刻した同僚の出待ちをするような趣味は無いが、シャープに着いてくるというゲストの存在により、わざわさ外に出てシャープの到着を待つことになったのだ。
ちなみに暗黒期とはシャープのBABEL入社半年後から起こったデスマーチ期間のことを指す。
«こちら、観測班。シャープのビークルを確認…。なにしてるんだ?ありゃ…»
«あちこちに蛇行していますね»
社屋の、いくらか階層を上がったところに
今、この現場にはBABELの天使級星導使が揃っている。
BABELの歴史を見ても極稀にしか来ないゲスト、"天使"のお迎えにBABELは万全の布陣で構えた。
無理もない。
過去、現在のメンバーが入社する前のBABELに天使がやって来た時の用事など、ほぼお仕置の為だったのだ。
お仕置以外だと、当時の天使級星導使に戦いを挑む為に戦闘狂が来るぐらいだ。
全部荒事。つまり上層部はビビっているのだ。
特に今回は情報の少ないA.O.D.S.の軌道機兵。
何をしてくるか分からず、さらにビビり散らかしていた。
「蛇行…それって回避機動!?やっぱりおそわれてるんじゃ…!」
«ん…?なんか引っ張ってるな…»
«あれがゲスト様では無いですか?映像を送ります»
観測班から送られてきた映像にはカーキを基調とした人型がシャープの車に付けられたロープに引っ張られている姿が写っていた。
足には幅広の、翼のような形状のボードがつけられており、蛇行に合わせて浮かぶとクルクルとトリックを決めている。
「う、ウェイクボード!?」
「アッハハハハ!空でやるもんじゃないでしょ普通ー!」
そうこうしているうちにシャープの車が駐機場に近づいてきた。
かなりの猛スピードだ。
減速する素振りを見せない車に、そのまま駐機場に突っ込む気かとベータが肝を冷やしていると、ビークルが急カーブ。
後ろで引っ張られていた軌道機兵は直進慣性が乗ってるまま、ロープを手放してトリックをキメながらすっ飛んでくる。
「Wooooooohooooooo!!!」
興奮の喚声が聞こえる。
乗っていたボードが外れた直後、星導器召喚の光がほとばしり、装備が展開、そのまま駐機場にランディング。
「OH!!YEAH!!」
回転しながら円弧軌道、両足から派手な火花を散らしながら減速し、デュカリオンとベータの前でようやく止まった。
「風を読みきる鋼鉄の騎兵、キャヴァリー!堂々と参上!!!」
「わぁ…!」
「…ひゃ〜」
軌道機兵キャヴァリーは2人に対して名乗り口上を上げて大見得を切る。
スーパーヒーローのような登場に盛り上がるベータ。
デュカリオンは駐機場の白線が大変な事になってて引き気味だ。
「どうも!遊びに来ちゃいました!キャヴァリーといいます!」
「…ああうん。私はデュカリオン。ようこそバベルに!…シャープちゃんがお世話になったようで…ところで、なんでウェイクボードしながら?」
「絶好の機会だったので!同僚は嫌がってやってくれなくて〜」
なお、お願いした時の反応はダークスターが、冷たい目を向けて無回答。
スカイセイバーが、私は犬じゃないと回答。
グリフィンは…頼むにはちょっと遠かった。
キャヴァリーとデュカリオンが喋っていると、さっきカーブして行ったシャープのビークルが戻ってきた。
3人の元にふよふよと近寄ってきて着陸。ドアが開いたらシャープが転がり出てきた。
「えっほ、うえっほ、はぁぁ〜」
「シャープさん!?大丈夫ですか!?」
地面に手をついてえずいている。
ベータは駆け寄り、シャープを介抱する。
「ダメですぅ…」
「えええ〜!?いい感じにフッてってお願いしたけどそんなになるなら断ってくれても良かったのに…」
そもそも、機敏な機動で戦う星導使があの程度でヘロヘロにならない。急激なG負荷がかかっても普通に戦える。
ビークルもいつもなら問題ない機動だが、今回はイレギュラーがあったのだ。
「えふっ…カメラのモニター出力が地味にラグくて…酔いましたぁ…」
「あらら〜。でも楽しかったよ!ありがとう!」
「どういたしまして…おふっ」
「おいおい…大丈夫か…?」
「これお水です。どうぞ」
シャープの様子がおかしかったのが上から見えたのか、18号とカタリナが上から飛んで降りてきていた。
カタリナは手にボトルを持っており、シャープに差し出した。前の諜報メイド任務のおかげか以前よりさらに気が効くように進化したらしい。
「わお。みんな星導使ってヤツだよね?それもとびきり強い。豪華なお出迎えだ!」
「コクリッ…まぁ、お出迎えと言うより迎撃部隊って感じですよね」
お前そっち側かよ。
シャープとキャヴァリー以外は心の内にツッコんだ
「そーなの!?もしかして歓迎されてない!?」
「むかーし、BABELは天使に痛い目に合わされたそうですよ。キャヴァリーさん含め軌道機兵のデータはほとんどないので警戒してただけかと」
「ノヴァ・インダストリーズの連中か〜。行動が個体ごとにバラバラだもんね」
いや、あの行動を見る限りあんたも変わらんだろ。
これはキャヴァリー以外がツッコんだ。
「…それじゃあ、いっちょヤっとく?」
「えっ!ヤれるのか!?」
いち早く戦闘のにおいを察知した18号の発言に対してBABEL陣は総ツッコミ。
「わたしは全然構わないよ!ぶっちゃけ雑魚戦争機械の相手、飽きててさ〜」
「お前、話が分かるじゃないか…!」
「キャヴァリーだよ!」
「18号、オハコと呼んでくれ」
「よろしくぅオハコゥ〜」
流れるように握手する2人。
短い間に太い絆が結ばれてるのが見える。
一般に見て数少ない戦闘へのこだわりを持つもの同士、
シンパシーがあるとこうも仲良くなるのが早いのか…。
「アハハ…あー、どうしよっか?」
デュカリオンが皆に聞く。
デュカリオン的には人造天使計画に活用できそうな軌道機兵のデータを収録できる貴重な機会。正直な所、満更では無い。
カタリナは、お客様をおもてなしする。というメイド的目線で構わないと言ったところ。
…結構前の任務のはずなのにだいぶ演じた
シャープは、喫緊の仕事無かったよな…と、脳内のスケジュール帳を開いている。
今日の仕事をオすことになるが、納期のやばいものがなければ、設計屋として非常に気になっているキャヴァリーのメカメカしい星導器を機能・性能含めて観察したいと考えていたところだ。
轢いた直後は迷惑をかけた上、刺激しないようにジロジロ見なかったため、あまり観察できていなかったのだ。
18号は勿論ヤる気。
ベータはいつも通り極力戦いたくない。お金が出るなら頑張るが。といった具合だ
─なんと、ほとんどやる気じゃないか。
そしてBABELメンバー同士、性格をだいたい知っているので、考えてる事もそれぞれ把握していた。
「な、なんでみんなこっち見るんですかぁ…」
結果、ベータに目線が集中する。
キャヴァリーもそれにつられて、ベータを見つめる。
酷い同調圧力が発生。一言も声に出してないのがたちが悪い。
断ったところでムラハチになりはしないだろうが、自分だけの疎外感なんて味わいたくないベータは、屈した。
「…うぅ…わかりました…。殺し合いにならない程度にお願いします…」
「だってさ。どうする?」
「マジ!?言っといてなんだけど、ジョーク半分だったよ?」
「なら──」
「でも、これだけ人数いたら楽しそうだねぇ!やろうやろう!腕がなるぅ!」
ベータのか細いつぶやきは元気いっぱいのキャヴァリーの声にかき消された。
哀れベータ。
「それじゃ訓練室に行こうか〜着いてきて〜!」
BABELの天使級星導使と追加の軌道機兵が、改めて自己紹介などを歓談しながらぞろぞろと社屋に入っていく。
今日、神経質なBABEL一般社員は不定期に揺れる感覚を味わい体調不良を訴えた。
~~~~~~
「はぁ…はぁ…疲れた…」
「貧弱だなぁ〜」
「本業じゃないんです…」
「あんなに戦えるのに!?」
「やりたいとやれるは違うんですよ」
6人は入れ替わり立ち代り2on2。
都度都度小休止、大休止をはさみ、BABELの社員食堂で遅めのランチをとったりした。
キャヴァリーが食べたいと言い出した時はみなが驚いていた。
軌道機兵だって、ものは食べる。とのとこだ。
ただし、優先順位はかなり低いとも言っていた。同僚2人は全く食べず、自分が一番食べてるとの事。
食べたあとはまた2on2。
シャープにとってはかなりハードワーク。
明日は筋肉痛だろう。
他に筋肉痛になりそうなのは…デスク頻度が高いデュカリオンか。
そんな愉快な交流会も訓練室がついに崩壊したことにより、強制終了。
ここにいる2人以外は始末書なり、レポートなり、武器装備のメンテナンスをするためにキャヴァリーに別れを言ってそれぞれ散った。
シャープはお見送りを託された。
連れてきたのがシャープであれば、見送るのもまたシャープ。
自然な流れだ。
二人は社屋を出て、駐機場の方にむかって歩いていた。
「帰るって言ってましたけど、居住地は衛星でしたっけ?どうやって戻るんです?」
「あ〜普通なのと、安いけど面倒な方法、高いけど簡単な方法があるんだよね」
「はぁ」
「今回はどうしよっかな〜。あ、気になる?」
「かなり」
「しょうがないにゃぁ。教えてあげよう!」
シャープは好奇心のままに催促した
そんな様子にふふふと笑うキャヴァリー。
「まずは普通なの!これはシャトルを呼んで飛んでく!」
「ほんとに普通ですね」
捻りも夢もない方法だ。
「次に面倒なの!軌道エレベーターかマスドライバーまで向かって上がる!」
「それって塔のことですよね。あそこの封鎖って突破できるんですか?」
「まぁ、わたし
「そうでした…」
封鎖された塔がいろんな大陸に点在していて、そこがA.O.D.S.のナワバリであるのは知られている。
グリフィンと呼ばれる天使がいたり、防御フィールドがあったり、尋常な手段では塔に近づくこともできないのだ。
BABELもその攻略や情報収集には、ほとんど匙を投げている。
「でも軌道エレベーターだと赤道でしょうか?かなり遠いですね」
「そうだよ!遠いんだよ!」
「マスドライバーの塔もこの近くにはないですね…ていうか、そんなもので宇宙に帰ってるんですか」
「どっちも着いちゃえばワンボタン行けるし、資材消費も極小、リーズナブルなんだなこれが。マスドライバーは馬鹿速いけど狭いんだよね。ああ、あと、生身ならやめといた方がいいね」
「やりませんよ…」
「強化人間ならワンチャンあるらしいけど?」
「やりませんって」
何とも浪漫ある方法だ。
マスドライバーで撃ち出されたくはないが、軌道エレベーターには乗ってみたい。
そして技術者としてはやはり、塔の構造・機能を観察したいなぁと思いながらシャープは聞いていた。
「でもって最後!これはガチで簡単。今すぐできるけど、いろいろ勿体ない方法!」
「それは…ダメなレベルなんですか?」
「そこまでじゃないけど、同僚にドヤされるんだ…」
「ああ、そういう…それでその方法は?」
「星導核をぶっ壊して、上に強制帰還!」
「えぇ…」
軌道機兵のリスポーン機能を応用した帰還方法。所謂デスルーラだ。
「素体とか装備はいくら壊しても衛星から送ってくれるんだけど、星導核はダメみたい。壊れた瞬間に宙にあるバックアップから起動しちゃうんだよね」
「なるほど、今日の破損がいつの間にか治っていたのはそういうからくりだったんですね」
「
「つまりドヤされるって言うのは…」
「遊びに行って、帰ってくる為に星導核をわざわざぶっ壊すな!ってことだね」
「
「そうなんだけどね~」
「?」
含みのある言い方にシャープは疑問に思っていると、目指していた駐機場に到着した。
その一区画にはシャープの愛車が止まっているのが見える。
「ま、今回は例外かな?」
「え?わざわざ強制送還で帰るんです?ここなら安全にシャトル呼べるじゃないですか」
「いやー、ちょっと気がかりがあってさ。シャープのビークル壊しちゃったじゃない?だから、残った素体を代金代わりに渡そうかと思ってて」
「ちょ、ちょっと!何言ってるんですか!?」
「素体をばらせば、お金になるでしょ」
「それはそうですが…」
素体を分解して得られる素材的な話であれば、特殊なフロントガラスとボンネット分のお金になるだろう。自分で加工してしまえばお釣りも来るだろう。
それよりも解析・研究に回せば次第によって、シャープの改造ビークル本体が何台も手に入れられるほどの利益を産む。
そもそも解析による脆弱性の露呈とか気にしないのだろうか。諸々、迂闊すぎる提案だ。
シャープには利益やその相手を思いやる懸念よりも、もっと大変そうな未来が見えた。
「いや、そこまでしなくていいです!修理費大丈夫!お金いっぱい持ってるので!」
「そんな見栄張って〜遠慮するなよ〜」
見栄も遠慮の気もまったくない。
素体を受け取ったら、デスマーチが始まる可能性が高いから断っているのだ。
BABELからしたら、軌道機兵の完全な素体は喉から手が出るほど手に入れたい物だろう。同時に天使や星導士、競合企業、どこぞの軍部等、あらゆる存在が絡んでくる厄ネタでもあり、避けたいものでもあるだろう。
シャープ予想では、多分、恐らく、BABELは利益方面への微妙な天秤の傾きにより、リスク承知でシャープに命じるような気がしてならなかった。
こうなったら最悪、しばらく家に帰れなくなる。
「ほんとに大丈夫ですって!」
「いーや、受け取って貰うね!」
ああ、なんで宇宙にも行けるキャンピングカーが壊れているのか…。
必死に断わるシャープ。
しかし、心の内は伝わらず、その姿にむしろムキになったのか、キャヴァリーはにわかに星導核を手の平に召喚した。
そのまま星導核を大型マニピュレーターで掴むと、肩部の
「それ、たーまやー!」
ズドン!
「わー!!!!!」
星導核はキャヴァリーのマニピュレーターから吹っ飛んでいき、綺麗な弾道を描いて空に飛んでいく。
シャープが叫んだあと唖然としていると、キャヴァリーが手を差し出してくる。
「んじゃわたしはこれで!最高の一日だったよ!近くに用事があったら遊びに来るからさ。またね!」
「え、えぇ。また会いましょう…」
シャープはキャヴァリーの言葉で我に返り、言葉を返す。その手をとると強く確かに握られる。
その直後、砲弾の軌跡の先で花火の様に星導核が破裂して、快晴の空を彩った。
キャヴァリーの意識はもう上に、衛星に逝ったようだ。
瞳は虚空を見つめ、手の力もすっと抜けている。
その姿を見たら、とんでもない喪失感がシャープにまとわりついた。
「…なんですかこの映画のラストみたいな雰囲気…!それより!あぁ!
シャープは2ob2で疲れきった体に鞭をいれ、キャヴァリーを天使級星導使の膂力で自家用車に星導器ごとつっこんだ。
さきほどの花火を見たであろうBABEL社員が、ぞろぞろと駐機場にやってくるのをみて、状況の説明要求をどうかわそうかと思案した。
…が、めんどくさくなり、フロントガラスバキバキ愛車のエンジンに火を入れる。
もう帰ろう。今日は、いろんなことがありすぎた。
シャープ、BABELに入社して初めてのフレックスタイム退社をキめた。
はい、お読み下さりありがとうございます。
キャヴァリーちゃんのエミュレートむずぅい!けど楽しい!
元気っ娘で、乱暴な口にさせず、賢過ぎず、阿呆過ぎず書くのは大変や…。
可愛くかけてるかな…w
以下、妄想設定・独自解釈注釈。
BABELお仕置案件。
なんかやばすぎるMAD博士ががいたとかで…。
本当の意味で遊びに来るのはヴァーチェみたいな戦闘狂だけだった的な妄想
ウェイクボードキャヴァリー
上編で出したレジャー好き設定を引き継いでやらせちゃった。
BABELに遊びに行けて、あまりやれないレジャーまでできてお得!
もぐもぐキャヴァリー
公式の2025春の記念スチルで花見してるのがあるんですが、軌道機兵達が食事してるので食べれるはず。
でもその絵だとスカイセイバーが1番食ってる。
衛星への帰還方法。
妄想&独自解釈がすごぉい。
上編で衛星に住んでるとしたので、やはり帰宅方法の描写が必要かと思いましたので…
シャトルは普通なので特に語ることなし
軌道エレベーターとマスドライバー。
SFで宇宙との行き来といえばこれ!なとこある。
AODSのtipsスチルだと、大陸各地の塔を封鎖・監視してるとのこと。
軌道エレベーターは構造上、自転軸と垂直、つまり赤道上になければならないので、大陸各地ってイメージがわかない。
他に塔っぽくて、宇宙に行けそうな代物を考えたら…マスドライバーが選ばれました。
デスルーラ。
軌道機兵達が原作にて撃墜されると、この素体はもたないとか、素体を無駄にしたな!とか言ってます。
素体自体は複数あるのだろうなーと考えました。でも星導核もぽこじゃか壊れるのはなんか違うなと。
なので本作では、再出撃のたびに衛星の素体ストック・もしくはパーツを星導核めがけて転送する。といった方式の復活・修復方法であると考えました。
つまり、星導核が壊れると転送先がなくなり、その素体は捨てるしかなくなる。といった設定でス。
手を離れてもなんでキャヴァリーちゃん動いてるの?
バッテリーとか、コンデンサーみたいなもの…積んでるでしょ流石に…。
星晶・星塵・星髄の扱い。
チケットとか星導核が買えたりするし、素材であるとのことなので…それで作ってるんじゃね?とふわっと設定しました。
ハイ、妄想設定・独自解釈までお読みいただきありがとうございました。
また何か書けましたら宜しくお願いします。
それでは