狙撃手ギュスターブ   作:Aa_おにぎり

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ゼンゼロにハマりました!


メインストーリー
First shot


基本的に警察と軍隊で求められる狙撃能力は大きく異なっている。

 

軍に求められる狙撃能力は相手を負傷させ、行動不可能にする事。或いは敵の侵攻を遅らせる事にある。

その為人体のどこかにあたれば良いので的は必然的に大きくなる、

代わりにとてつも無く長い距離で攻撃を行うので交戦距離が1000mを越えることがままある。

 

逆に警察に求められる狙撃能力は対象を一撃を持って無力化する事である。

直径4cm程の脳幹を相手に気づかれない距離から一発で仕留める為、初弾を外した時点で任務失敗となる。故に交戦距離は100m以内である場合が多い。

ただし、軍隊ほど長い交戦距離を必要とせず。隠密行動で撤退する必要もなく、堂々とヘリコプターを使って撤退ができる。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「こいつがどうなっても良いのか!?」

 

ここは新エリー都のとあるビルの屋上。そこで一人の野蛮な格好をする男が左腕に女性を一人抱え、頭に銃口を向けて叫ぶ。

その下では治安局の隊員達が装甲服を着てライトを照らしながら見上げていた。

 

『人質を解放し、大人しく降参しろ!!』

 

メガホンで治安局の隊員が呼びかけるも、容疑者は聞く耳を持たない様子で下を見ながら激昂する。

 

「五月蝿ぇ!何でこのクソ女の為に治安局のクソどもが出て来るんだよ!!」

 

男は山獅子組の下っ端構成員、俗に言うギャングの構成員だ。

彼は借金をしていた目の前の人質にとった女性の取り立てに来ていたが、彼女は言われた金額を払わなかったので掟に従っただけなのだが。

どっかの馬鹿が通報したせいで今じゃあこの有様だった。

 

「くそっ!どうしてこんな事に……!!」

 

男は手が軽く震えながら毒吐いていた。

 

 

 

 

 

『対象は屋上にて人質一名を連れて籠城している』

「突入部隊は?」

 

通信を受けながら一人の男が着々と準備をする。

 

『屋上に繋がる階段の前で待機中。いつでも動かせる』

「目標は無力化か?」

 

側には青灰色のボンプを一匹使え、持っていた楽器を仕舞う筈のプラスチック製の箱を開けると中から一丁の小銃(Barrett MRAD)を取り出す。

箱には複数の銃身と付随するボルト、弾薬入りの弾倉があったが。今回は使わなかった。

 

『いや、対象は仮にも山獅子組構成員。故に生け捕りにしたい……出来るかね?』

「先方のご要望とあらば」

 

そして6.5mmクリードモア弾の入る弾倉を確認して装填する。

 

『君が発砲したら、突入部隊が動く。人質に危害が及ぶ前に制圧したい』

「……了解しました」

 

そして小さなビーズクッションをストックの当たる地面に敷き、折り畳んだストックを展開してうつ伏せになって肩に合わせると手元に数字の羅列と放物線を描いたメモ帳を取り出す。

 

「……ふぅ」

 

コッキングレバーを引いて薬室に銃弾を装填。銃の安全装置を解除し、スコープで反対のビルで治安局とやり合う山獅子組の男と人質を見る。

 

「……」

 

そして持ったある拳銃が震えているのを見て軽くため息を吐くと、横にいたボンプに問いかける。

 

「今の風向きは?」

「ンナンナッ!(北北西、毎秒0.5m!)」

 

翻訳機を介して伝わるその情報に男は軽く息を整えると、人質となった女性を照準を合わせると引き金を引いた。

 

ッー!!

 

ビル街に響き渡る銃声。

 

放たれた弾丸は人質の脚を一瞬掠めると後ろの男の太腿に命中した。

 

「がぁあっ!?」

 

一瞬の痛みから撃たれたと勘違いして気絶した人質の女が背後にもたれかかり、太腿を撃たれた山獅子組の構成員はその痛みと気絶した人質の重みを耐えて持っていた拳銃を撃とうとしたが、

 

キン

 

「あっ!?」

 

弾かれるように拳銃に強い衝撃が走り、そのまま空中で二発目が当たると木端になった。

 

「突入!!」

 

そして銃声を聞いて、控えていた治安局の隊員達が一斉に屋上に上がると容疑者は拘束され、人質は解放された。

 

「すんげぇ…」

 

そんな中、ある隊員が解放された人質を見て溢す。

 

「こんな小さな擦り傷しか出来ていない……」

 

少々赤くなった一センチ程の細い線、弾丸がここを掠めて容疑者に命中したのだ。

 

「人って案外重いですからね」

 

人質を気絶させ、対応に困らせた所で武器を破壊する能力。はっきり言って超人的だった。

 

「すごい腕前だ」

「流石だよ」

 

隊員達は反対側のビルで銃の撤去作業をしている一人の鰐のシリオンを見ていた。

 

 

 

 

 

時間が解説し、ボンプと共に帰ろうとした矢先。

 

「さすがの腕前ね、ナイル」

「朱鳶か…」

 

そこには一人の治安局の捜査官、朱鳶がパトカーに背を預けて男を見ていた。

 

「何の様だ?」

「いえ、山獅子組構成員の逮捕に御助力頂いた感謝をしに」

「…そうか」

 

そこでナイルはその場を去ろうとしたが、その時に朱鳶に聞かれた。

 

「ねぇ、戻って来る気はないの?」

「……」

 

治安局所属だった男に問いかけると、彼は軽く首を横に振りながら答えた。

 

「悪いが、もう再就職しちまったんだ」

「…そう……」

 

朱鳶は少し悲しげにしつつも、無理ならと納得させると中折れ帽に紺のスーツを身に纏うかつての同僚を見送った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

男、ナイル・グスタブは一仕事終えて拠点に帰る。

 

「ただいま戻りました」

 

中折れ帽に紺のスーツを見に纏う彼はトゲトゲした尻尾を持っており、肌も全体的に爬虫類の様に軽く光を反射していた。

鰐のシリオンなだけあり、長い顎と鋭い歯を持ち。鰐をそのまま二足歩行させた様な見た目をしていた。

 

「あら、お帰りなさい」

 

そんな拠点で出迎えたのはヴィクトリアンメイド服に身を包んだ女性、通称リナと呼ばれているメイド長、アレクサンドリナ・セバスチャンだった。

 

「思ったよりも早いご帰還でしたわね」

「ええ、仕事を簡単に終わらせてきましたので」

「ふふっ、流石の腕前ですわ」

 

微笑ましげにナイルを見ると、彼はやや疲れた様子で荷物を片付け始めていた。

 

「先ほどライカンから連絡がありました。『ナイル用の新しい武器が用意できた』と」

「了解しました」

 

連絡に頷くと、ナイルはスーツを身に纏ったまま控え室に向かった。

 

「今日はこれで上がらせてもらいますね」

「はい、今日はお疲れ様でした」

 

リナはナイルが部屋を後にするのを見送ると再び視線を戻して紅茶を一口、カップを傾けていた。

 

 

 

 

 

タイムカードを切り、ネクタイをとって白シャツに紺色のスーツと仕事終わりの中年男性の様になったナイルは会社帰りに携帯を確認して軽く連絡する。

 

上司と大喧嘩して治安局を辞めたすぐに俺は今の職場である『ヴィクトリア家政』にスカウトされていた。

かの職場は家事代行を行う派遣会社であり、前職が治安局員だった自分からするとあまりにも色違いな職場だった。正直、何かの間違いじゃないかと確認をスカウトに来た白狼のシリオンにしてしまった程だ。

 

「あぁ、俺だ」

 

電話相手は今の上司のフォン・ライカンだった。

 

『ナイル、お伝えしたい話がございます』

 

げっ、となりつつもナイルは会社帰りに応える。サー残は勘弁よ。

 

「あのー、ついさっきタイムカードは切っちゃいましたが?」

『いえ、構いません。ただ明日、装備の確認の為。早めに出勤していただきたいのです』

「あぁ……りょーかいです」

 

しかし、就職してすぐになぜ自分がスカウトされたのか理由がすぐにわかった。

そして電話を切るとナイルは会社帰りに行きつけの店に向かう。

 

 

 

 

 

新エリー都のヤヌス区六分街にその店はあった。

ナイルの趣味である映画鑑賞、その店はとある兄妹が経営している小さなレンタルビデオ店だが、トレンドをいち早く仕入れて店に置くのでかなり気に入っていた。店名は『Ramdom Play』と言う。

 

「あっ、ナイルさん!」

「やぁ、夜分にすまないな」

 

CLOSEと書かれていたが、事前に伝えられていたので扉を開けるとそこでは一人の少女。リンと言う、この店の店主の一人だ。

 

「いえいえ!ナイルさんはお得意さんですから」

 

事実、ナイルはこの店のゴールド会員である。家が近いと言う事もあり、よく寄っていた。

 

「これですね?」

「ああ、ついでに。前回借りていたビデオを返しに来たよ」

「分かりました」

 

きちんと期日内に借りていたビデオも返却に来るので向こう側も上客として扱っていた。

 

「いやぁ、今日はいつもより随分遅かったんですね」

「ああ、仕事が遅くなってしまってね」

 

営業時間外でもレジに立ってくれることに感謝しながらナイルは後でラーメン屋『滝湯谷・錦鯉』で何食べようかと考えているとリンが聞いてくる。

 

「今日は何のお仕事だったんですか?」

「ん?いつもの仕事さ、ちょっと職場が変わっちまったがね」

「へぇ〜転職ですか?」

 

彼女は自分が治安局の人間だった事を知っている。

生憎と飛び級で治安局に入っており、年齢と仕事歴は合っていなかった。

 

「ああ、同じ様な仕事だがね」

「なるほど、だから最近は来れなかったんですね」

 

納得した様子でバックに頼んでいたドキュメント映画を入れて貰うと代金を払ってナイルは店を後にする。

 

「またのご来店をー!」

 

夜なのに元気な若い声がよく耳に響いていた。

 

 

 

 

 

自分の家があるヤヌス区六分街には多くの頼もしい住民が暮らしている。

自分が通っているこのラーメン店もその一つだ。

 

「へいお待ち!」

 

黒い器に乗った大きなチャーシューと、豚骨スープに大量の細麺。胡椒を少々かけた仄かな香りが鼻腔を刺激する。

 

早速箸を持って麺を啜るとちゃんと硬めに茹でてあった。

 

「ああ、美味い……」

「最近来なかったからな、色々と心配したぞ」

 

こんな深夜に訪れる客にまでラーメンを提供してくれるチョップ大将はナイルに話しかけると、彼はチャーシューを食べながら答えた。

 

「生憎転職したせいで、色々と忙しくてね」

「ほぉ、治安局からかい?」

「ええ、上と喧嘩したのでね」

 

するとナイルの苦労を察したのか、少し表情を暗くした大将。

 

「そりゃあ……大変だったな」

「いえいえ、幸いにもすぐに就職先は決まりましたよ」

「おぉ!そうかそうか!」

 

しかしすぐに職が見つかったと聞き、大将の表情は明るくなる。

 

「じゃあ、再就職祝いに安くしておくよ」

「はははっ、ありがとうございます」

 

そしてその後、ボンプ用の土産までもらったナイルはそのまま家に戻ると、冷蔵庫に仕舞ったソーダを取り出しながら今日借りてきたビデオを見ていた。

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