狙撃手ギュスターブ   作:Aa_おにぎり

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三八式実包の優れている所は弾道特性が高い(弾頭が落ちにくい)所、つまり警察の狙撃にはもってこいな気がするんです。
じゃ無かったらアメリカで今でも弾薬が生産されないと思うんです。


Tenth shot

かつて治安局に勤務していたナイル・グスタブ。当時は優れた狙撃手として活躍していた彼であったが、ブリンガー長官との大喧嘩で治安局を退職する事となった。

 

「ハズなんだがなぁ…」

 

インカムを付けて狙撃銃を片手に構えるナイル。

彼のスコープの先には少し前と同じく人質をとって立て籠っている赤牙組残党の男が一人。

 

「治安終わってやがんの…」

「それはいつもの事です!」

 

ナイルの横でいつも通り観測をするカニング。治安局時代からの頼もしい家族である彼(彼女?)は今日も携帯型軍用測距儀を覗いて距離と風速を観測してくれる。

弾道落下計算をする必要があるが、生憎と今日使うのは6.5mmクリードモア弾。優れた弾道特性を持った銃弾で、かつて1000ヤードの射撃において選手がこの弾薬を使用した銃で退屈するほど正確であると評価するほどだ。

 

それをMRADの機関部に突っ込んでボルトを一回引く。既にゼロインは済ませてきているのであとはタイミングを見計らうまでだ。

 

「何で俺にばっか依頼してくるのかね…」

 

今回の依頼主は治安局だ。自前の狙撃班…自分で育てたのだが、がいるハズなのに何故だ。

 

「それはナイルさんがフリーだからじゃないですか?」

「これじゃあ治安官の時とほぼ変わらねぇよ」

 

うつ伏せになり、スコープ越しに目標を捉える。

 

「フゥゥ…」

 

そして一旦息を整えた後に一回引き金を弾いた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

狙撃手として活躍していたナイルは、今は一般人であるので銃の携帯には更新のある免許が必要である。

そして今日は銃の免許更新で治安局を訪れていた。

 

「あっ!」

 

そしてヤヌス区は自分の家であり、嘗ての職場である。

故にとても行きづらいのだが、生憎と免許更新は本人の住んでいる場所じゃないとやって貰えない。つまり分かるね?自分は嘗ての職場に定期的に行かなければならないのだ。

これを生き地獄と評しても文句を言われる筋合いはない。

 

「どうもお久しぶりです〜!」

 

そして受付に行くと数ヶ月前まで同僚だった治安官の受付嬢がナイルを見て親しげに挨拶する。

同じく免許更新に来ていた他の市民からの目線がとても痛いのでやめてくれ。

 

「元気にしていましたか?」

「まぁ、それなりにな」

 

受付に免許更新の為の書類を渡すと、係の治安官は受け取った後に直ぐに後ろの職員に渡す。

 

「じゃあ、ちょっと待っててくださいね」

「あぁ」

 

見知った治安官に言われて受付から離れようとした時、

 

「上に朱鳶班長達もいますけど、挨拶しますか?」

 

その治安官から言われ、それを聞いたナイルは言う。

 

「いや、良いさ。第一、俺は退職した身だぞ?勝手に会えるかよ」

 

ナイルはそう言って返却した治安官バッチや手帳を思い返すと、その職員は軽く手を振りながら言う。

 

「何言ってるんですか。常々朱鳶班長達がいつもボヤいていましたよ」

「帰ってこいってか?」

「そうですそうです」

 

その治安官は頷くと、ナイルは軽くため息を吐く。

 

「治安官よりも儲かる仕事に再就職しちまったからなぁ…」

「ありゃ、マジっすか」

 

そうさ、今だってガンスミスの仕事を数件抱え込んでいるんだ。

給料も良くなったから自前で高級車すら買える、公務員の安月給の時代じゃあ考えられんくらいだ。

 

「おかげで毎日いい思いをさせて貰っとるよ」

「うわぁ、前のナイルさんじゃ考えられないっすね」

「なんだ嫌味か?」

 

受付で邪魔にならないように隅っこで話す二人。

 

「いやいや、ナイルさんくらいの実力なら再就職も困らなさそうで良いですね」

「安月給の公務員とは大違いだよ」

「羨ましいですね〜今度奢ってくださいよ」

「ダメだな」

 

即答して帰ってきた書類を受け取るとナイルは治安局を後にしていた。

ただ他の待っていた人達よりも書類が帰ってくるのが早かったのは聞かないでおいた方が良いだろう。

 

 

 

ナイルの家はヤヌス区のアパートに暮らしている。両親は二年前に老衰で死亡しており、墓石もしっかりと作ってやれた。

この世界において、老衰で逝けると言うのは非常に幸運で幸せなことであり、ましてや調査員をしていた両親が生き残った上で老衰で死ねた事は神に感謝すべき事と言えるだろう。

 

「帰ったぞ〜」

「お帰りなさい!」

 

アパートに戻ってそこでいつも通り彼を出迎えるのはカニングだ。

昔、ホロウの中で彷徨っていたカニングは当時任務中であったナイルの元で行き倒れていた所を保護していた。

事情を聞くと元は野良ボンプだったが、喧嘩別れをしてハブられたのだと言う。

 

事情が事情なだけに本当はボンプ商会やらに送る必要があったが、それは嫌だと泣いて縋られてしまったので困った後に自分の補助を担当する様にしたのが始まりだった。

 

「家の掃除と、あとビデオを返しておきました!」

「あぁ、いつも悪いな」

「いえいえ、私の仕事ですから!」

 

嬉しそうに胸を張っているカニング、かなり昔の軍人を思わせるホリゾンブルーのトレンチコートにケピ帽。背中のリュックサックにはナイルの銃の予備弾薬や戦闘糧食を入れて運んでいる。そしていざという時は持っているリボルバー拳銃で応戦することも可能。

治安官だった時は長期任務や偵察任務も多かったのでカニングに大量に食料を積み込んでいけたのは大きかった。

そして家にも上がらせて、両親がカニングを見てとても可愛がっていたのは覚えている。

 

「とりあえずほれ、土産だよ」

 

そう言ってカニングに手渡したそれに、カニングは一瞬固まった後にナイルを見返した。

 

「こ、これって…」

 

ナイルがカニングに渡したのはボンプチケット。

ボンプを開発・販売しているマルセルグループの販売するボンプ向けメンテナンス・クリーニングサービスであり、ボンプにこれをちらつかせるだけで文句を言わずに働いてくれると言われている最高級のチケットである。

 

「色々と助けになっているからな」

「あっ…えっと…」

 

ナイルの土産に嬉しさと困惑が入り混じっていたカニングは暫くボンプチケットを見つめた後にナイルに大きく頭を下げた。

 

「ありがとうございます!これからもナイルさんの元で一生懸命働かせていただきます!!」

「はははっ、独立をしたくなったら一言言ってくれればいいさ」

 

そう言ってケピ帽を軽く撫でると、カニングを横に座らせて借りてきた映画を見ていた。

見る映画はドキュメント映画、自然を舞台に繰り広げられる自然の脅威や弱肉強食の美しさと儚さを描いたそれは二人を夢中にさせるのには十分だった。

 

「わっ!危ない!」

 

映画に映る動物に反応するカニング。その横でナイルはビールにジャーキー、ナッツと完全にオフのおっさんのような自堕落な生活を送っていた。

 

「あっ、あぁ〜…」

「噛みつかれちまったな」

 

シマウマを追いかけるライオンが遂にシマウマの体に襲いかかって倒れる様を見て軽く悲鳴をあげているカニングに少し笑みが溢れていると、

 

ピンポーン

 

「「?」」

 

部屋の呼び鈴が鳴って部屋を開けると、そこにはリンが立っていた。

 

「あっ、ナイルさん!」

「どうした?珍しいな」

 

彼女がわざわざ家に来たのなんて初めて…いや、ここに越して来て少しした後に邪兎屋の馬鹿どもに巻き込まれてやった飲み会をした時以来だな。あれも随分昔の話になっちまったもんだ…。

 

「何か用事が?」

 

ナイルは取り敢えず家まで来た彼女に要件を聞くと、彼女は少し部屋を覗く様にしながら聞いた。

 

「さっきカニングに貸したビデオってあるかな?」

「あぁ、今見てた所だ」

 

そう言ってテレビに映っているドキュメンタリー映画を見せると、リンは少し申し訳ない様子でナイルに言う。

 

「貸しててちょっと悪いんだけどね。あのビデオ、実は予約が入っちゃってたの」

「あぁ、そうなの」

「代金は返却するからさ、今返して貰っても良いかな?」

「あぁそう言う事ね」

 

事情を知り、ナイルはカニングの借りたVHSを返すとリンは

 

「ごめんっ!今度お店に来たら一回サービスするから!」

 

そう言って速攻アパートを出ていくのを見送ると、少し呆然となった後に部屋に戻った。

 

「これからどうしますか?」

 

借りていたVHSは持って行かれ、少々不完全燃焼気味な今。少し気分転換にナイルは思いつく。

 

「ラーメンでも食いに行くかな…」

 

大将のおすすめでも食べに行くかと考えていると、今度は携帯が鳴った。

 

「はいもしもし?」

 

電話に出ると、そこでライカンがナイルに要件を伝えにきていた。

 

『ナイル、至急出勤できますか?』

「えぇ、出来ますよ」

 

二つ返事でナイルはカニングに目をやると、カニングは頷いてナイルの特製スーツを取り出す。

 

「仕事は何ですか?」

『はい、ご主人様よりホロウ内のエーテリアスの牙の回収をご所望されました』

「はいはい…なるほど、分かりました」

 

基本的にライカンが依頼主の事をご主人様と言うので一瞬脳が混乱するが、仕事を了承した後に電話を切った。

 

「やれやれ、休暇返上か…」

「お仕事、頑張りましょう」

 

カニングはそう言ってナイルを励ますとスーツを着て家を出る。

 

「終わったら何処か旅行にでも行きたいもんだな」

「良い場所を探しましょう!」

 

新たな仕事の依頼にナイルはやや気疲れしながら銃を肩に背負って家を出ると、カニングも後を追っていた。

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