狙撃手ギュスターブ   作:Aa_おにぎり

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Twelfth shot

「主は…白祇重工のボンプではないか?!」

 

現れたその人物…いやボンプに青衣は驚く。

それは、少し前に通報のあった白祇重工の建築現場付近に居た謎のボンプであった。

 

モニュメントの中にいた奇怪なエーテリアス運送と、それを襲撃したであろうギャングを追っていた青衣達。彼女達を救ったのが目の前のボンプという事になる。

 

「い、いや…並のボンプに、ぬしほどの知能は持たせられぬ。ましてや、我らの回線に介入する能力などもってのほか…ぬし、一体何者だ?」

 

困惑しかける青衣に朱鳶が記憶を頼りに一つの憶測を立てた。

 

「先輩、聞いたことがありませんか?インターノット上にかつて存在していたと言う、伝説的なプロキシ…自らホロウに入って先導するではなく、ホロウ内外をリアルタイムに通信で結ぶ事によって、それを可能にしたという…」

『その通り、私が「パエトーン」だよ』

 

そのボンプは少々機械音混じりの声で答える。

 

「なれば、我らが白祇重工の通報を受けた時、ぬしは全て影で見ていたのだな」

 

その問いにパエトーンは頷いた。

 

『そうだよ。あの日、私はホロウで白祇重工が失くしたものを探すのを手伝っていた。でもその奥で、思いがけずあの怪物に出くわしたの』

 

そう言い、パエトーンは当時の状況を思い返しながら二人に事情を伝える。

 

『あんた達と同じように、私もあの怪物には裏があると思った。あれの背後に隠されてる陰謀と、私がずっと追いかけていることが関係している可能性があるから』

 

パエトーンは言うと、朱鳶達はわざわざ自分たちを救った理由を察した。

 

「つまり…私たちを助けたのは証拠品がH.A.N.Dに渡り、怪物の真相が明らかにされる事をあなたも期待しているから、と…言うこと何ですね?」

『そう言うこと』

 

パエトーンは頷くと、二人に言った。

 

『証拠品を取り返したいなら、今からでも遅くないよ』

 

パエトーンの提案に青衣は軽くため息を吐いた。

 

「治安官養成マニュアル、173項…」

「先輩、それは…」

 

朱鳶は青衣が何をしようとしているのか理解し、思わず驚くと…

 

「昔、俺がよく使っていた手だ」

「「っ!?」」

 

上からよく知っている声が聞こえ、思わず二人は見上げる。

 

「緊急事態発生時、治安官は市民を身元調査無しで「協力者」に指名できる…」

 

それを口にした人物に朱鳶は呟く。

 

「ナイル…」

「よぅ」

 

そこでは建物の鉄骨に腰を掛け、片手にスコープ付きの古い小銃を持ったかつての同僚がいた。

 

「では我らの逃亡中に狙撃をしたのは…」

「あぁ、俺だ。あとついでに班長達の周波数を教えたのもワシじゃ」

 

答えると、彼は鉄骨から降りて二人の間に立った。

 

「貴方、今なら拘束対象になるわよ?」

「こっちはホロウ調査中に迷子になったの」

 

体の良い言い訳をほざくナイルに朱鳶達は苦笑する。

 

「相変わらずじゃの。ナイル」

「おやおや、貴方達だって本来なら職務放棄で反省文書かされるんじゃないんですかね?」

 

少々悪い笑みを浮かべながら彼は返すと、二人は何とも言えない表情を浮かべていた。

そしてナイルはそんな二人を横目にパエトーンを肩に乗せた。

 

「まぁ、お互い利害は一致している」

『そうそう、協力し合えば証拠品も取り返せる!』

 

お互いを知っている雰囲気に青衣達はパエトーンがナイルを読んだのだと感覚的に理解した。

 

「そうね…この際、詰問する暇はないわね…」

 

朱鳶はそんな二人を前に吐息した。

 

「パエトーン、そしてナイル・グスタブ。正式に貴方達に協力を要請します」

 

そして続けてこうも言う。

 

「しかし敵は万全の装備で迎え撃ってくる事でしょう。正面からの衝突は無謀です」

 

先ほども見た通り、襲撃したギャング達の装備はとても重厚。それに対し圧倒的に数も質も足りない今で、どうやって戦うのか…。

 

「それはこの人の得意分野だ」

 

そう言われ、ナイルの肩に乗ったボンプは頷く。

 

『任せて!戦力で負けているなら、ホロウの特性を活かして戦う!そう言うのは得意だよ、私』

 

自信満々に答えたパエトーンにナイルが言う。

 

「んじゃ、行きますか?」

 

その問いに朱鳶達は頷いた。

 

 

 

 

 

「どほっ!?」

「ぐはぁ!!」

 

ホロウの中、ギャング達は文字通り吹っ飛ばされていた。

 

「何だこいつら?!」

「治安官だ!」

 

直後、叫んだギャングの一人が青衣によって殴られてノックアウトされる。

 

「くそっ!」

 

その襲撃にギャング達はボウガンを取り出すが、

 

パンパンパンパンッ

 

「「「「「ギャァァアアアッ!?」」」」」

 

四発の銃声が轟き、それで五人の体を貫通して一斉に倒れる。

 

「今のは…」

「あぁ、流石じゃ」

 

朱鳶達は後方支援に感謝しながら次々と目標に向かって突進していった。

 

 

 

「うほ〜、すげぇ」

 

その様子を見ていたナイルは思わず感嘆の声を漏らしてしまった。

 

『すごいでしょう?』

「あぁ、目から鱗だ。まさかこんな芸当ができるとは…」

 

その横で観測手をやってくれるパエトーン…この際はリンと呼ぶべきか、褒められ彼女は少し嬉しそうに胸を張った。

 

「小さな裂け目を使った三次元狙撃なんてやった事ないぞ…」

 

それはリンのそばにいたFairyと言う人物の提案で、銃弾ほどしか通さない小さな裂け目を使い。縦横無尽に弾丸が飛び交うようにすると言うものだった。

 

「まさかリアルで魔法の銃弾をする羽目になるとはな…」

『何それ?』

「昔の大統領暗殺の証拠の一つさ。銃弾の弾道が摩訶不思議に動くってやつ。…有名な陰謀論だけど」

 

証拠物件399で調べたら出てくる、と言って彼は撃ち切ったので新しいクリップを二つ装填する。

するとリンはナイルが持ってきた武器に少し興味があるようで聞いた。

 

『見た事ない銃だね。ナイルさん』

「ん?あぁ、会社から借りてきた」

 

そう言い彼はSMLE Mk IIIを握って上に向けて発射すると、その銃弾は通さな裂け目を通じて朱鳶達を囲むギャングの日一人の足を貫通させる。

 

『会社から?』

「あぁ、ビンテージだが。経費で落ちるって言われたからな」

 

そう言い彼はボンプに聞いた。

 

「それで、次は何処に向けて撃てばいい?」

『あっ、じゃあもうこの部屋で撃てそうな場所はないから…移動かな』

「了解した」

 

ナイルは頷くと、パエトーンを持って廃ビルを後にした。

 

 

 

 

 

その後、朱鳶達を包囲していたギャング達は後方からの狙撃も相まって簡単に目標に辿り着いた。

 

「先輩」

 

そこで朱鳶はギャングの一人が持っていた重厚な箱を手に取る。

 

「敵が持っていたこの箱ですが、中身はエーテル物質です。本物の証拠品かどうか、見てもらえますか?」

 

そう言い差し出されたものを見て青衣と、狙撃を終えて降りてきたナイルは思わず呟く。

 

「間違いない…この気配、たとえ密封された欠片であろうと、全身が総毛立つようであるぞ」

「禍々しいな…」

 

見ずともわかるその気配に朱鳶は安堵した。

 

「よかったですね!ようやく取り戻せましたよ…」

「包囲していた連中も、思いもよらなかったであろう」

 

青衣も安堵した様子で頷いた。

 

「我らに逃げられたばかりではなく、証拠品まで奪い返されるとは…」

「あとは、ここを出るだけですか…」

 

ナイルが言うと、ナイルの足元でパエトーンが言った。

 

『近くに出口があるよ。三人とも、送ってってあげる』

 

と言うわけで、三人は出口近くまですぐに移動した。

 

 

 

「…てなわけで」

 

そして出口付近、そこでナイルとパエトーンは朱鳶を見る。

 

「ウチらここで別れるわ」

 

彼は言うと、パエトーンも

 

『ここで見逃してくれるなら、ここでお別れだね』

 

言うと、青衣は軽く頷いた。

 

「うむ、恩を仇で返せば雷に打たれると言うしな」

 

そう言い、青衣はパエトーンとナイルを見る。

 

「それに、プロキシを問答無用でひっとらえると言うのも、かねてより公平さに欠けると思っていた」

「おっ、青衣さん分かってくれた?」

「先輩…ナイル…」

 

そんな二人に呆れた目を向けた朱鳶はパエトーンとナイルを見た。

 

「ともかく、今日はお二方の協力。感謝します」

 

そう言うと、パエトーンは返した。

 

『お礼を言うのはこっちだよ。自動輸送車が危ないって、小さな手掛かりから気付いてくれて…』

 

その時、ほんの一瞬だけナイルの目線が細くなった。

 

『証拠品を守るためだからって。ホロウにまで入ってくれたんだから』

 

そしてパエトーンは最後に朱鳶達に言う。

 

『じゃあね、治安官さん達!次会うときは、お互い一触即発の状況じゃないと良いね』

 

そう言うとパエトーンはナイルと共にあっという間にホロウの中に消えて行った。

 

 

 

 

 

そしてその後、別の場所からホロウの外に出たナイルはボンプを車に乗せると開口一番。

 

「リンちゃん…君やらかしたね」

『えっ?!』

 

それに思わず彼女は驚くと、彼は言った。

 

「朱鳶達の事だ。気づかないはずが無かろう」

『え?え?どう言うこと』

『あぁ、そう言うことか…』

 

すると気づいたのだろう、アキラは少し驚きながら頷いた。

 

『どう言うこと?お兄ちゃん』

 

リンが聞くと、アキラは言う。

 

『リン、僕たちは朱鳶達の話をこっそり聞いていただろう?』

『うん』

『本来、朱鳶さん達がホロウに入ったのは証拠品のすり替えの疑いがあるからだった』

『うんうん』

 

相槌を打つリンにアキラは一つずつ階段を登るように説明する。

 

『あの状況で、治安官が自動輸送車に近づいたのは何かしら命令があったからだと思うはずだ』

『うんうん…

 

 

 

あっ!!』

 

そしてそこで気づいたようにリンは声を上げた。そしてそんな彼女にナイルは頷く。

 

「そう、つまり君達は遠回しに朱鳶達の近くで聞き耳を立てていた事がばれちったって事」

 

一通りの情報を事前に聞いていた彼はそう結論づけると、リンは若干慌てた。

 

『どどどっ、どうしよう!?朱鳶さん達が私たちに気づく可能性が…』

 

そんな同様にナイルは笑った。

 

「はははっ、それは無いさ」

『え?どうして?』

「何、単に候補が上がりすぎる。こんな世の中、何処で誰が聞き耳を立てていたかなんてわからないだろう?」

『あっそっか…あぁ〜びっくりした』

 

安堵するリンにナイルは助手席にボンプを乗せると車のエンジンをかけた。

 

「さて、家まで送ろうか」

『うん、お願い』

 

リンは頷いて返すと、ナイルは車を発進させた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

数日後、ナイルはライカン、リナと共にある場所を訪れていた。

中の豪華な内装に加え、重厚感溢れるその場所にナイルは仕事服で苦笑していた。

 

「慣れない場所は緊張しますね」

 

ナイルはそう溢すと、ライカン達は彼を見た。

 

「ふふっ、珍しいですわね。ナイルさんが緊張なさるとは」

「仕方ありません。本来であれば、画面越しでしかお会いしないようなお方です」

 

そんな事を話しながら三人はある扉の前で止まった。

 

「ナイル、心の準備の程は?」

「問題ありません。行きましょう」

 

その返事にライカンは頷くと、扉を三回ノックした。

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