狙撃手ギュスターブ   作:Aa_おにぎり

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Thirteenth shot

朱鳶達と別れてから少しした頃、

 

チリーンチリーン

 

扉の鈴の音を鳴らすと、そこで店番をしていたトワがナイルを見て手を振った。

 

「ンナンナ!」

「やぁ、トワ」

 

手を振って愛嬌を振り撒くそのボンプに店を訪れたナイルはやれやれと言った様子で借りていたビデオの返却をする。

その足元ではカニングが着いてきており、共にビデオを選ぶために訪れていた。

 

「今日はカニングの好きなビデオを選ぶ日だったな」

「ンナンナッ!」

 

すると嬉しげにカニングは店の棚を見始めると、

 

「あっ!ナイルさん!」

「よっ」

 

店の奥からリンが愛嬌を振り撒きながら出てくると、ナイルは軽く笑みを見せて返した。

 

「それがパエトーンの仕事部屋と言う訳か…」

「あっ、バレた?」

 

そこでリンはアキラもいる奥の複数の画面が連なる部屋を前にテヘッと言った具合で舌を出すと、

 

「リン、いくら首になったとは言え元治安官なんだぞ?」

「はははっ、クビとは酷いなぁ。喧嘩別れの自主退職と言い給え」

 

辛辣な事を言ったアキラにナイルは言う。

 

「でも、オフィスで大暴れして窓からコンピューターが飛び出てくるほどの喧嘩をしたのなら、誰だってクビと思うはずだろう?」

「ふざけるな。だったらこの前、朱鳶達と共同戦線張れる訳なかろうて」

「…優しくされているんだな」

「おぅ、アキラ。ちょっと表出るか?」

 

カンシャク顔を浮かべながらナイルは出てきたアキラに言うと、

 

「ちょっとちょっと、二人ともここで喧嘩したら…

 

 

分かっているね?」

 

 

その時、目元を暗くして言い放ったリンにアキラ達は顔をやや青くして頷いた。

その様子を見ていたカニングやトワも同様に震えており、この店で誰が一番強いのかのヒエラルキーを見た気がした。

 

 

 

「ありがとうございました〜!」

 

店の扉の前で手を大きく振って見送るリンに、借りたビデオを片手にナイルも振り向き、カニングも手を振って返していた。

 

「いいビデオがあってよかったな」

「はいっ!おかげで今日は楽しめそうです!」

 

カニングはそう言い、今日の上映会を前に楽しみにしていると、

 

prrrrr

 

携帯が鳴り、ポケットから電話に出たナイル。

 

「はい、もしもし?」

 

すると相手はライカンからだった。

 

『ナイル、新たなお仕事が入りました』

「分かりました。すぐに行きます」

 

ナイルは詳しい内容も聞かずに頷くと、カニングを見て言った。

 

「上映会はまた後日だな」

「はぁ〜、仕方ありませんね」

 

 

 

 


 

 

 

 

 

カニングを連れて高級車(アストンマーティン・V8)に乗ったナイルはヴィクトリア家政の拠点の一つ、集合場所に指定された建物の駐車場に入る。

 

「すみません、少々遅れました」

 

今日は灰色の仕事服に身を包んだ彼は、開口一番にガレージで待っていたライカンに言うと、彼は気にしたそぶりを見せずに答えた。

 

「大丈夫です。まだエレン達も学校が終わったばかりですので」

「そうですか…」

 

そこで少し安堵の息を吐きながら二人は拠点に入る。

 

「しかし、今回は全員参加ですか」

「えぇ、幾分今回のご主人様のご指定なされた場所はホロウでございますので…」

「すぅぅ〜…ホロウかぁ〜」

 

少々面倒くさい表情を浮かべるナイルだが、最近はガンスミス含めて本来の業務である家事代行、一応裏稼業の扱いのホロウレイダー…いや、ホロウ探索。

ヴィクトリア家政の業務は多岐にわたっており、且つ従業員のカリンとエレンはまだ学生の身分である為、二人が学校に行っている間はライカンとリナが仕事を回していたと言うのだから恐ろしい。

 

「面倒ですね」

「ナイル、本音が漏れていますよ」

 

そんな事を言いながら拠点の廊下を歩くと、

 

「あらナイルさん」

「どうも、リナさん」

 

そこで部屋の前で待っていたリナはナイルに軽く挨拶を済ませると、大人三人組はそのまま作戦会議や事前情報などを共有するための部屋に入った。

 

「今回は全員出るんですか?」

「えぇ、その為にナイルのご予定に変更も加えさせていただきました」

「そうですか…」

 

ナイルの最近の予定は遊猟会の付き添う人としてガンスミスとして依頼主の猟銃の整備・点検・装填を行なって万全の状態で顧客に渡すのが主な仕事であった。

 

「どこに行くんですか?」

「そうですね…先に大まかな内容をお伝えしておきましょうか」

 

そこで席に座って話を聞くナイルにライカンも少し考えた後に片手に持った資料を手渡す。

 

「今回のご主人様は、バレエツインズの事前調査をご依頼されました」

「バレエツインズ?確かあそこは…」

 

場所を聞いてナイルはすぐにその場所に疑問を浮かべた。

 

「えぇ、かの超高層ビルは共生ホロウの中に存在していました」

「…していました?」

 

ライカンの含みのある言い方にナイルは首を傾げていると、

 

「えぇ、昨日のラマニアンホロウのエーテル活性が低下したことにで縮小が起こり、バレツインズの屋上の一部が出現いたしました」

「あぁなるほど。そこで中に入って事前調査をしてくれと?」

「そう言う事です」

 

ライカンはそう頷いた時、

 

ドンッ「申し訳ありません!遅れました!!」

 

そこで慌てた様子で扉を勢いよく開けたカリンが早速頭を下げながら入ってきた。

そんな彼女にナイルは、

 

「はははっ、大丈夫ですよカリンさん」

「ナ、ナイルさん…」

「私も今着いたばかりですからね」

 

そう言うとライカンはカリンに聞いた。

 

「…エレンはどうしましたか?」

 

同じ時間帯に拠点に来たはずの彼女がいないことに首を傾げていると、

 

「あっ、エレンちゃんなら…さっき更衣室から出ていくのを見かけましたが…」

 

そう言っていると、

 

「すいやせーん、おくれやっしたー」

 

やる気のなさげな声色でエレンが後から入ってきた。

 

「エレン…」

「相変わらずだな…」

 

ライカンとナイルは呆れてため息を吐いてしまうと、

 

「ナイルも遅刻したくせに…」

「こっちは休暇返上だよ。生憎、()()()が本業の身じゃないのでね」

「…」

 

つまらない返しをされた顔を浮かべながらエレンはソファに横になって座る。

 

「エレン」

「…はいはい」

 

ライカンに注意されて改めて座り直すと、カリンもリナの隣に座って改めてライカンから詳しい情報を共有される。

 

「今回の目的地であるバレエツインズは…」

 

そこで今回の依頼主の話をようやくするとこうだ。

 

元々浮いた財産であったバレエツインズを、今後の共生ホロウの縮小を見越したとある資産家が購入。事前に購入したバレエツインズの調査を行うと言うものが今回の依頼だ。

 

「バレエツインズはすでに屋上が見えているんですか…」

「えぇ、共生ホロウよりはみ出たバレエツインズはすでに複数の媒体より確認しています」

「そうですか…」

 

資料を読み終え、軽く頷いた彼はそのまま席を立つ。

 

「出発は明日の早朝となります」

「了解しました。それまでに準備を完了させておきます」

 

ナイルは出発の時間を確認すると、会議室を後にする。

 

 

 

そして彼は拠点の作業台に移動すると、そこで彼は自分の仕事用の銃である対物ライフルを置くとクリーニングロッドとガンオイルを取り出す。

わざわざライカンに依頼して年寄せてもらった旧文明の遺物。どうしてこんなものが手に入れられたのかと疑問に思ったが、今なら納得だ。

 

「やれやれ、面倒なことに巻き込まれるのは勘弁だ…」

 

ナイルはそう言いながら数日前に面会を要望された()()()()に胃痛がしてきそうだと思った。何せそれほどの相手から依頼された話というのも中々に重い話であったからだ。

 

「これもリン達と旧知の仲だったのが災いしたかな…?」

 

そう呟きながら銃のパーツを分解すると、

 

「隣、良い?」

「どうぞどうぞ」

 

そこで今日は珍しくエレンが武器の鋏を持って作業台を訪れる。

そして二人は作業台でそれぞれ自分の武器の整備をする。

 

銃と鋏。二人を象徴する武器の手入れは毎日行なっており、この作業台もそんな武器を手入れするための場所であった。

 

「…」

「…」

 

互いに無言のまま数分が過ぎると、エレンが話しかける。

 

「ねぇ」

「?」

 

そこでナイルは首を傾げると、エレンは聞く。

 

「ナイルはさ、どうして治安局であんな大喧嘩をしたの?」

「…」

 

その問いに少しナイルは考えた。

彼女はまだ学生の身ではあるが、幾多もの仕事をこなしてきた同僚であり、社歴で言えば先輩の立場。ある程度こちらの事情も知っているので、行っても構わないか。

 

「まぁ強いて言うなら…

 

 

常に市民の味方でありたいと思う、子供のような正義感があったからだろうな」

 

 

「…」

 

それを聞いたエレンは軽く鼻で笑った。

 

「…何それ」

「まぁ、俺もあの時は流石にブリンガー長官相手にやりすぎたと思っているよ」

 

ナイルはそう言い、それを聞いたエレンは言う。

 

「でも…悪くないんじゃない?元治安官さん」

「…ふっ、らしくないな。年下の先輩」

 

そんなエレンの対応にナイルはそう言うと、エレンは途端に表情を悪くする。

 

「一言余計」

「いてっ」

 

そして超高速でナイルの背中を尻尾で叩いた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

翌日、車に必要な荷物を積むライカン達。

 

「さて、必要な機材は積み終えました」

「わかりました」

 

大型バンに積載された荷物の確認を終えると、ライカン達は車に乗り込む。

 

「しかしこの銃も乗せられるとは…」

「特別な改造を施したものです」

 

そう言い2mある対物ライフルを積載できたその車にやや苦笑しながらナイルも座ると、今日の仕事の為に目的地に向かう準備が整う。

 

「あっ、ナイルさん」

 

すると助手席に座ったナイルにカリンが話しかける。

 

「今日、試しに作ってみたんです。よかったら一つどうですか?」

 

そう言い、彼女はその手にナイルの好きな羊羹が入っていた。

 

「おぉ、わざわざ作ってきたのですか?」

「はい、いつもナイルさんにはお世話になりっぱなしですので」

 

そう言い、カリンは家事代行の際にキッチンに立って下準備をやってくれるナイルが思い浮かんだ。

 

「いやぁ、ありがとうございます」

 

ナイルはそんなカリンの心意気に感謝しながら一つ受け取ると、エレンはすでにその羊羹を一つ手にとっていた。

 

「…おぉ〜」

 

そして一口噛んだ時にほんのりと感じる甘さ。

 

「美味しいです。さすがですね」

「そうですか…よかったぁ〜」

 

そう言い安堵するカリンをみながら、少し遠出のピクニックのような雰囲気で彼らは仕事場に向かった。

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