狙撃手ギュスターブ   作:Aa_おにぎり

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Sixth shot

ヴィクトリア家政に就職して色々とイリーガルな仕事をこなす様になったナイルだが、これらの事象に元治安局職員として嫌悪感があるかと言われると否と答えてしまう。

 

なぜなら自分は直々グレーゾーンを渡って犯人逮捕をしたことが今までよくあったからだ。

自分は朱鳶と違って完璧な捜査能力を持っていないので減刑を餌にプロキシやホロウレイダーから情報を得ていた。

 

元々特務捜査班はホロウ内外に関する事件を多目的に担当する課であり、それ故に人手不足な一面もあり。本来は後方担当のはずの自分も駆り出されることがままあった。そして実際にホシを上げたことも何度かあった。

 

ただその度に捜査のやり方に苦言を呈していたのが朱鳶達だった。

やはり犯罪者と取引をして事件を解決することに、素晴らしい清廉潔白な正義の心を持った朱鳶は俺のやり方に少し不満と危険視をしていた。

 

『もし市民の間に流れたら治安局の威信の問題になるわよ?!』

『だからって市民の真横で犯罪が寝ている状態にできると思うか?』

『それは……』

『時には危ない橋を渡らにゃならん事もあるのさ。蛇の道は蛇ってね』

 

そして時には本業である狙撃銃を構えながら立てこもり犯や銀行強盗と言った車の狙撃を行ったこともあった。

 

『流石だわナイル』

『ナイル、この前押収した銃器の確認をしてはくれぬか?生憎と銃器には不慣れでのぅ』

 

そして同じ班の青衣に言われて犯罪組織から押収された武器の確認と書類の作成。

 

『すみませんナイルさん!応援を要請します!』

『今度は何の用だ?』

 

ある時は巡回中の治安官から呼び出される事もあった。

 

『犯人が子供を人質に取ったんだ。お陰で手が出しにくい』

『…了解、直ぐに行きますよ』

 

いつもの拳銃を持ち、分署からパトカーに乗り込み。人質を取る犯人の背後から拳銃を撃ち込む。

 

『ありがとうございます。お陰で助かりました』

 

担当していた治安官から感謝されながらついでにサインをせがまれる。

たまに潜入調査をしている同僚から連絡が入り、その対応にも追われる。

 

 

そんな日々の連続だった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「……」

 

その日、ナイルは仁王立ちで射撃場のとあるレーンで立っていた。

反対には二つの風船が固定されて置かれており、少し距離が離れていた。

 

「……」

 

そして緊張が最大まで行った時、

 

ビーッ!

 

ブザーが鳴り、その瞬間ナイルは身体を少し反らせて早撃ちの姿勢を取ると抜いた拳銃の引き金を引きながら二発の弾丸を綺麗に風船に導いた。

その早さ故に側から聞いていると一発の銃声にしか聞こえないほど速かった。

 

「タイムは0.08!」

 

カニングが計測したタイムを伝えると、ナイルは軽く息を吐く。

 

「秒数は少し落ちたか……」

「それでも十分ですよ!」

 

褒めるカニングにナイルは軽く頭を撫でていると、射撃場に来客があった。

 

「ナイル、至急お話が」

「?」

 

ライカンが呼び出すと、ナイルは返事をした後に射撃場を後にする。

因みに此処、一応拠点で作ってはいたものの。銃を使うメンバーがいなかったと言う事でナイルが来る前はエレンのサボり場となっていたと言う。

 

 

 

「えぇ、カリンが?」

 

そこで聞いた事実に少しナイルは驚く。

 

「ええ、少し目を離したら逸れてしまって……」

「あぁ、参ったなぁ……」

 

少し頭を掻きながらナイルは呟く。なんとホロウ内でカリンが迷子になったのだと言う。

今日はとあるホロウ内にある装飾品を探索するように依頼を受けていたが、ナイルは拠点で待機していたのだ。

 

生半可な人間であれば自殺行為にも等しいが、カリンなら実力的な面では問題なかった。ただ、エーテル侵食に関してはどうしたって限界がある。そちらの方がどちらかというと不安だった。

 

「幸いすぐにホロウを出ましたので、ナイルにも捜索をして貰おうと思っております」

「分かりました」

「はぁ、これなら『キャロット』を全員に配布すれば良かったですね」

「まぁ次回からそうすれば良いでしょうよ」

 

装備を整えながらナイルは出発の準備をすると、カニングもナイルの予備弾倉をリュックサックに詰めていた。

 

「ンナッ!」

 

そしてすぐに準備を終えると、ナイルは背中に対物ライフルを背負った。

これでも移動速度がやや落ちる程度なのが身体能力の高いシリオンだからこそできる芸当だった。

 

「…やはり大きいですね」

「そりゃ全長2m、私やライカンとほぼ同じ大きさですからね」

 

デカすぎるからこの前の依頼で使ったMRADも持っているのだと改めて納得すると、四人は改めてホロウに向かって捜索を始めていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

ナイル達が捜索を始めた頃、カリンはとあるホロウの中である人物に話しかけていた。

 

「えっと…私はカリン。家事代行会社の従業員です」

 

先に自分から名乗れと、列車の向こう側にいる人達から言われ。初めて知った事実に驚きながらも、風習という事でそれに従って名乗っていた。

 

「星座は双子座、血液型はRh-、好きな事はお掃除です。市民ナンバーは…」

 

事細かく言おうとした所を、扉の反対にいる調査員と思われる女性は苦笑気味に返してきた。

 

「そ、そんなに細かく紹介してくれなくても…。それで、カリンちゃんはどうしてこんなところに?」

 

そこでカリンは道に逸れた理由を説明する。

 

「つ、ついさっき、危険なエーテリアスを避けて通ろうとしましたら、同行していた皆さんと逸れてしまったんです。

私は『キャロット』データを所持していなくて…調査員のお二人なら、きっとホロウから脱出するルートをご存知ですよね?」

 

命の危機もあるのでカリンは恥を忍んでも頼み込む必要があった。

 

「ど、どうか。私も連れて行っていただけませんか?」

 

そんな要望に列車の反対にいる調査員と思われる女性は少々訝しんでいた。

 

「ホロウで道に迷った一般人、か。

それにしても、家事代行なんかがどうして危険なホロウなんかに?…どうする?あの子を助けてあげる?」

 

そんな疑問に調査員の正体である少女は横にいるボンプに聞く。聞かれたボンプは今の状況を踏まえた答えを出す。

 

『助けたくとも、それは向こう側にいけたらの話だからな…それが無理なら今すぐ引き返して、他のルートを行くべきだ。さもないと、計画の時間に間に合わない』

 

ボンプはそう答えると、カリンはそこで話に割り込んだ。

 

「あ、あの!勝手に聞き耳を立ててしまってすみません!」

 

今まで聞いた情報をまとめた上での解決策を提案した。

 

「も、もし私が、お二人を車両のこちら側までお招きできれば…そのまま調査員様について行ってもろよしい、という事でしょうか?」

「にゃ?あたし達がそっち側に行く方法があるの?」

 

首を傾げた少女だったが、カリンは頷いた。

 

「だ、大体そんな感じです。ちょっとだけお待ちください!すぐに済みますので!」

 

そう言うと、カリンは持っていた電動丸ノコを手に取った。

 

「下から来るのか?」

 

そんなことを言いながら列車の外で待っていた少女は潜って確認をすると、

 

ギュィーーーーーッ!!

 

「にょわぁっ!?嫌な音だ!!」

 

その音に一瞬驚いて耳を塞ぐと、音が一瞬止まり。どうしたと思って列車に耳を近づけると、目の前に丸ノコの刃が飛び出してきた。

 

「!?」

『危ないよ!』

 

これには彼女を見ていたパエトーンも注意すると、丸ノコが彼女の鼻先を掠めていった。

そして列車を切り刻む勢いで丸ノコが列車を切って行くと、最後にドアが倒れて二人の真横を掠めて行った。

 

「「ヒィ〜!!」」

 

そして一瞬土煙が舞うと、その奥からカリンが列車を降りた。

 

「うん、破れてない…」

 

そこで自分のメイド服を確認したカリンはそこで目の前で縮こまっている少女とボンプを見た。

 

「お、お待たせいたしました!初めまして!」

 

そこで少々取り乱しつつも平静を保つと、挨拶をした。

 

 

 

自分を助けてくれる調査員が少女一人とボンプ一匹な事に彼女は少々驚いた。

 

「それで、先ほどからお話しさせていただいたのは、こちらのボンプ様だったのですか?」

 

その疑問にカリンは誤解を与えたかもしれないと慌てて訂正を加えた。

 

「あわわ、すみません。ボンプさまのご身分を疑っているわけではなくて…」

 

そこで訂正をした彼女は改めてホロウから脱出する事を要望すると、猫のシリオンの少女はボンプに問いかけた。

 

「どうする、この子が電車を壊してくれたお陰で、このまま迂回する必要もないけど?」

『まぁ、無理なお願いでもないし』

『僕も妹の意見に賛成だ。彼女を出口に届けるのは構わないが、見ず知らずの人だからね。お互い、隠したい事もあるだろう』

 

そう言うわけで彼女をホロウの出口まで案内する事になったのだが……。

 

「…カリン?」

 

そこで列車の影から見知った影と声が聞こえた。

 

「えっ?あっ!ナイルさん!」

『えっ!?』

 

そこで現れた大きなワニのシリオンにカリンはやや顔を明るくさせ。代わりにボンプ達が驚いていた。

 

「こんな所に居たか」

「す、すみませんナイルさん。今丁度、こちらの調査員様等にホロウを脱出させていただこうと思っておりました」

 

ベストを着込んだ濃紺のチェスターコートに中折れ帽、水色と黄色のレジメンタルタイ、背中に背負った一丁の巨大な銃と腰に下げた拳銃と言った一人の紳士がそこに立っていた。

いつも知っている自分たちのナイルという男の格好と余りにも乖離しているので顔を見るまで合致できなかった。

 

「ンナンナッ!」

 

そしてリュックを背負い、青灰色のトレンチコートに黒のケピ帽を被ったボンプが顔を覗かせた。

 

「あっ!カニングさんまで」

 

ボンプを見てカリンは安堵した様子になり、ナイルは銃を抱えたまま少女とボンプに話しかけた。

 

「あぁ、失礼。私の同僚が迷惑をおかけした様子で……」

 

しかしボンプは非常に驚いた様子でナイルに話しかけた。

 

『なっ、何でナイルさんが此処に居るの?!』

「……え?」

 

ナイルはいきなり目の前の喋るボンプから、自分を知っているような口調で話しかけられて一瞬頭が真っ白になった。

 

 

 

 

 

「ーーあぁ、なるほど…」

 

そして陰でこっそり事情を全て知ったナイルは軽くデコに手を当てて点を仰いだ。

 

「マジかよ、君があの噂のプロキシだったのか……」

『私も、まさかナイルさんの転職先がカリンちゃんと同じとは思わなかったよ』

「まぁ、言わなかった理由はわかるけどさ」

 

かつての自分は治安官、非公式のプロキシと言う逮捕対象はたとえ現行犯でなくとも証拠があれば令状無しに逮捕ができてしまう。

 

『あの…因みに逮捕って……』

「出来るわけねぇだろ。俺は治安局を辞めた身だぞ?それに今は俺もヘマしたら捕まる側だよ」

『まぁ、そうだよね……あぁ、安心した』

 

パエトーンこと、リンは安堵した様子で胸を撫で下ろすと。ナイルは徐に立ち上がった。

互いに仕事なので深く立ち入る事はしないと言うのが、この業界の鉄則なのはナイルも承知していた。

 

「じゃあ、俺はカリンを連れて後にさせてもらうよ」

『うん!ナイルさんも気をつけて!』

 

そこで双方に事実確認が終わった二人はそのまま別れると、カリンと猫のシリオンの猫宮又奈は同じ事を聞いた。

 

「「あのボンプ様(ワニのシリオン)と知り合いなのですか(なのか)?」」




因みに早撃ちの世界最速は0.0208秒らしい。ドユコト?(゚o゚;;
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