狙撃手ギュスターブ   作:Aa_おにぎり

7 / 15
Seventh shot

カリンをデッドエンドホロウより救出したナイルはデッドエンドホロウの前で待っていたライカン達と合流する。

 

「ライカンさん」

「二人とも、ご無事でしたか」

「ええ、案外簡単に見つかりましたよ」

 

そこで銃を片付けていると、ライカンは安堵したまま溢した。

 

「今日はあの場所で爆破工事がありましたので、何とか間に合ったようで……」

「あぁ、そう言えばそんな工事があると言っていましたね」

 

自分は出ていないので詳しく見ていなかったが、確か地下鉄の改修工事の為に企業の拡大を目論むヴィジョンが低価格で工事を勝ち取っていたのを思い出した。

よくもまぁ多くの人がいるのにこの値段でできるものだとインターノット上では予算の削減方法を探る声が上がっていたはずだ。

 

工事内容は至って簡単で、指定の場所に爆薬を仕掛け。爆発と共にホロウを縮小させ、その後に工事を行うと言うものだった。

 

「よくもまぁ、あんな場所に人が居るもんだ」

 

銃を箱にしまうと、そこでライカンが聞いてきた。

 

「どなたかホロウで?」

「ええ、ホロウレイダーとプロキシが一人ずつ」

「ふむ…少し妙ですね」

 

地下鉄改修プロジェクトの話は都市の住民の皆が知る所であり、わざわざ危険なデッドエンドホロウに足を踏み入れるのはおかしな話だった。

 

「え?まさか突っ込むんですか?」

「いえ、あの中にはデッドエンドブッチャーと呼ばれる要警戒エーテリアスがおります。無闇に敵対する可能性がある以上、危険かと」

「ああ良かった。あの怪物相手に戦う選択をするのは危険だ」

「ナイルはご存じなのですか?」

 

その疑問にナイルは頷く。

 

「ええ、危険も危険。治安局にいた時、デッドエンドブッチャーと遭遇してやられた同僚もいるくらいだ」

「それは……」

 

お悔やみ申し上げますと言い掛けたところで遮るようにナイルは続けた。

 

「治安局ももちろん討伐に乗り出そうとしたが、治安局だけでは火力が足りないと言う事で防衛軍との共同戦線を張ろうとしたが……まぁ結果はお察しの通り。防衛軍と治安局のいがみ合いでまともに部隊が編成できなかったさ」

「……」

 

恐らくは実際に見たのだろう、ナイルはデッドエンドブッチャーの情報を語る。

 

「まずエーテリアスの大きさが普通の三倍はある。おまけに核は守られていて、まずはそこを破壊する必要がある」

「それは何とも恐ろしいですね」

「それが斧を片手にすばしっこく襲ってくる。…まさにブッチャー(屠殺者)に相応しい能力だ」

 

そこで一瞬、真剣な眼差しになったナイルを見て。それだけでライカンはその要警戒エーテリアスの恐ろしさをまざまざと実感すると、彼は続けてこういった。

 

「アイツを倒すなら、よっぽど慌てているか。よっぽど力に自信がある時だろうね」

 

若しくはよっぽど正気なじゃ無い時だ。と締めくくると、彼は車に銃を乗せていた。

 

 

 

 

 

その後、帰りの車の中でエレンとカリンは一番後ろの座席で寝ていた。

 

「あらあら」

「今日はさぞお疲れだったでしょう」

 

少なくとも寝ている二人はまだまだ学生。故に扱いはバイトだが、ライカンの計らいで給料は正社員と変わらないと言う。

 

「ご依頼された商品も無事に発見できました。あとはご依頼された品物をご主人様にお届けするだけです」

 

ホロウの中には取り残された物資が山ほど眠っている。そう言った物資をあさって換金するのがホロウレイダーの仕事であり、法律上はホロウ内の物資に関しても元の所有者が生存している場合はその物資の所有権は元の持ち主の物となる。

 

そして上流階級の自身の財産を示す品として人気なのが貴金属の類。特に金だ、小さくとも値段の相場が比較的安定しており、大きな値下がりも起こらない。少し重いと言う点を除けば財産としては十分な代物だ。

 

「今日は物資探索でしたか」

「ええ、ご主人様はホロウに取り込まれた銀行の貸金庫より物資の回収をご依頼されました」

「よく開きましたね」

「ご主人様は事前に銀行に連絡を入れていたので、比較的容易でした」

 

トランクに積まれたアタッシュケースの数々。そこには金の延棒が大量に詰め込まれていた。

 

「やれやれ、現金輸送車よりも価値あるものを運んでいる」

 

そんな事を言っていると、反対車線に大量の治安局のパトカーや装甲車がサイレンをけたたましく鳴らしながら走り去っていた。

 

「おやおや、すごい量だ」

「何かあったのでしょうか?」

 

少し気になったので車のテレビをつけると、そこではとあるニュースが報じられていた。

 

『速報!速報です!』

 

アナウンサーが興奮気味にカメラに映りながら緊急ニュースを伝える。

 

『あのヴィジョンに、重大な人命軽視が発覚しました!』

 

その命題と共に治安局の部隊が次々と現れる様を映し出す。

 

『情報を受け、本局の記者は治安局の部隊の後に続いて、デッドエンドホロウ入口付近の爆破解体本部に駆けつけました』

 

映像には治安局の武装隊員が同じ格好をした隊員を捕まえると言う珍妙な光景が映し出されていた。

 

『現在、治安部隊は現場を封鎖しており、治安官を装った不審者を多数確保したとのことです!』

 

そのニュースを聞き、ライカン達は納得する。

 

「無線も付けて見ましょうか」

 

そしてリナがそこで警察無線の盗聴器を起動すると、そこでは治安官達の無線が聞こえてきた。

 

『報告、現場の容疑者は全面的に降伏。住民の全員が無事です』

「おやおや、これは……」

「はははっ、明日の株式は大荒れになりそうだ」

 

テレビでヴィジョンの悪行が不特定多数の目に晒され、大々的にリークされた情報が並べられる。

 

「おや?」

 

映像が映る中、ナイルはカメラに一瞬映ったその姿を確認する。

 

「何かありましたか?」

「いえ、顔見知りがいた様な気がしたので」

 

そこで軽く首を横に張るとナイルはテレビの映像を見続けていた。

 

「しかし、これは予想外の事態になりましたわね」

「地下鉄改修プロジェクトは大幅な遅れを齎す事でしょう」

 

ライカンはハンドルを回しながら話すと、そこでナイルは少し首を傾げた。

 

「しかし、どうやって住民達は避難できたのでしょう?」

「地下鉄を使ったのではないでしょうか?」

「おそらくはそうでしょう。幸い、地下鉄列車は対エーテル侵食性がありますので、住民を一度に避難させる事は可能でしょう」

 

そんな推測をしていると彼らは拠点に到着した。

 

「さて、着きましたよ」

「カリン、エレン。起きてください」

 

ドアを開けながらナイルが話しかけるとカリン達はパチッと目を覚ました。

 

「わっ、わわわっ!?寝てしまいました!」

「ん?んんーっ!!」

 

いつの間にか寝ていたカリンは少し慌て、エレンは目を覚まして軽く背伸びした。

 

「おはようございます、二人とも」

 

二人を起こしたナイルはそのまま車を降りると、ライカンがアタッシュケースを降ろしながら言う。

 

「後の事はお任せします。私はご主人様にお荷物をお届けに参ります」

「ええ、そちらもお気を付けて」

 

世間ではヴィジョンの大事件が有りつつも、ナイル達の仕事は変わらず遂行されていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

あのヴィジョンの大事件より数日後、予想以上に様々な企業や議員。果ては防衛軍を巻き込んでのかの不祥事は新エリー都全体を巻き込んだ大事件となっており。連日のニュースを騒がせる一大事となっていた。

 

そして被害にあった避難民の代表として弁護に立つのがあの邪兎屋のニコと言うのだから苦笑せざるにはいられない。

 

チリーンチリーン

 

休暇をもらったのでナイルは私服を着てRamdom Playに足を運んだ。ナイルはそこでビデオの返却をすると、従業員用の部屋から見知った顔が覗かせた。

 

「あっ、ナイルさん!」

「よぅ」

 

軽く挨拶をしたナイルにリンはお客様として扱っていると、同じ部屋からげっ、と言う声と共に噂のニコが顔を覗かせた。

 

「治安局のガミガミ親父!!」

「誰が親父だ、お前らと同年代だろうが」

 

いつもの挨拶をしたナイルだが、そこで彼は付け加えた。

 

「それに今の俺は治安局を辞めたよ」

「えっ!そうなの!?」

「うん、そうだよ」

 

そしてその時の姿を見ていたリンが頷くので、ニコはそれが本当だと理解した。ついでにリン達がパエトーンであることを知っている事も話した

 

「嘘…」

「ほんとほんと。この前再就職した姿見たもん」

「そこで、リン達がパエトーンというのも聞いた」

 

それを知ったニコは後顧の憂いが無くなったと理解した。

 

「ははははっ!これで不安は無くなったわ!!」

 

運は私に味方していると豪語しているニコに軽く苦笑するナイル。

 

「でも、驚いちゃった」

「何がだ?」

「まさかあんなイケてる服を着るなんてさ」

「グホッ」

 

唐突に言葉のボディーブローを喰らったナイルだが、リンに反論する。

 

「言っておくが、その何が書かれているかわからんシャツを着た君よりはマシだと思うぞ」

「そんなザ・オタクのような格好をしている人に言われたってねぇ……」

 

軽くジト目で言うリンは緑のチェック柄のシャツによれたジーンズを履くナイルをみる。毎度毎度思うがオタク臭がすごいのだ。

 

「毎日あの服着なよ。その方が格好良いって」

「阿呆、あれは仕事の服だよ」

 

毎度着るのに手間がかかると溢すと、リンはついでにニコに言った。

 

「それで、この前の事件の時にバッチリ決まった服を着てたの。…あれってホロウレイダーをしてたの?」

「ん?まぁ、ちょっと違うが……職場の仕事だな」

「ふーん…」

 

ただ少なくとも、イリーガル事業も行っているのでホロウレイダーにも似たことをしているかも知れない。

 

「ただまあ、俺が治安局を辞めたからニコ達が問題を起こしたらパトカーが飛んでくる様になるがな」

「あっ、そっか。いつもニコ達が問題を起こした時、大体ナイルさんが対応していたもんね」

「えっ?!」

 

その事実にニコは気づいて顔がたちまち青くなると、店の奥からもう一人の店主であるアキラが顔を覗かせた。

 

「これからは大変になりそうだね。ニコ」

「どーするのよ!ナイル、もっかい治安局に戻りなさいよ!!」

「無茶言うな。こちとら上司と揉めて治安局を辞めたんだぞ?」

 

治安局にいるニコ達の影の味方だったナイルを失ったニコはこれからの経営をどうしたものかと頭を抱えていた。

 

「因みに誰と揉めたの?」

 

そんなニコを見ながらリンが聴くと、ナイルは少々忌々しげに答えた。

 

「ブリンガー長官」

「えっ?!」「っ!?」

 

喧嘩した相手を聞いて思わずリン達は驚いてしまうと、ナイルはビデオの返却を終え、そこでアキラが呆れた様にナイルに言った。

 

「流石は治安局一の不良治安官。まさか治安局局長と喧嘩とは……」

「いやぁ、上の無茶な指令に反抗したまでよ」

 

どこか誇らしげにナイルは言っていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。