本と、一瞬と、美しさと。   作:高山典子

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【おことわり】
 本作品は、2013年5月に作ったものであり、今とは多少感覚の違う表現が含まれているかもしれません。また作者はアナログ人間(機械オンチ)のため、更新に時間がかかりますが、それでも良ければ、読んで下さいませ。
 
 


第1話

第1話

 

『僕は君の事を想うと、夜も眠れません。どうか、君にこの想いを届けたくて――』

『好きです。好きなんです。一目見た時から、ずっと好きで()まりません――』

『君を花に例えるなら、薔薇(ばら)のようだ。どの花よりも、飛び抜けて色と香りが芳醇(ほうじゅん)でいながら、誰も寄せ付けない(いばら)を持つ――』

 下らない。本当に下らない。

 特に3つ目の文章なんて、最低だ。

 唯子(ゆいこ)は、鞄から取り出した3通の手紙を読んで、気怠(けだる)い6月の雨音に気分悪く感じていた。

 ――市内の図書館の窓の中からは、建設途中のマンションビルが見え、近くに停まっている大型トラックや建設材料が、雨に打たれて、したたかに()れている。

 この分じゃ、到底(といてい)止みそうにない。

 屋外のじわりと湿った空気とは異なり、唯子の(のど)(かわ)きを感じ、図書館入り口近くの自動販売機コーナーまで来ると、500ml入りのミネラルウォーターを購入し、3分の1ほど一気に飲み干した。

 そして、「今月の新刊コーナー」と書かれた棚から、唯子はセンスを感じた一冊の本を目にし、ペットボトルを鞄にしまった。

 唯子は女子高に通う17才で、小さい頃から本が大好きで、頻繁(ひんぱん)にこの市立図書館に通っていた。

 もちろん、学校にも図書室があるのだか、彼女は何より自分が住んでいる市の図書館が、お気に入りだった。

 話題の新刊だけでなく、古典や近代文学、音楽雑誌、写真集や画集といったアート本、さらには料理やお菓子のレシピ本、カクテルの豆知識など、背表紙を見ているだけでも、色とりどりの幅広いジャンルの本が大型の書店並みに置かれている。

 (しょう)スペースではあるが、飲食出来る場所もあるし、学生のための勉強机が用意された「学習コーナー」の部屋もある。

 ここで読書に(ふけ)るのが、彼女の一番の娯楽(ごらく)であった。

 今日も手にした新刊を持って、なるべく他人の目に触れられない様、出入り口から一番遠い席に座り、本を開いた。

 彼女は学校では部活動には入っていないので、土日になると同級生から遊びに誘われる事が多かった。

 しかし、唯子は「彼氏と約束している」と言って、断わる事の方が断然多かった。

 彼女にとって「彼氏」とは、市立図書館の学習コーナーで過ごす時間そのものだった。

 携帯電話の待ち受け画面にしている写真も、大学生の従兄弟(いとこ)に頼んで一緒に()ったもので、「この前は一緒にどこに行って来たのか」だの、「2人の仲はどれほど進んでいる」だの――聞かれる質問は、彼氏のいない同級生からひんしゅく(・・・・・)を買わない程度の返事をしていた。全部、(うそ)だと思いつつも。

                   (つづく)     

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