「土屋俊一、〇〇大学芸術学部写真学科卒業――」
確か、この前、土屋から聞いた話では、彼の父親は高校を中退して写真家になったはずだ。
しかし、この写真家のプロフィールでは、はっきりと、「卒業」という文字が
一体、どういう事なのだろう。
その夜、唯子は眠りにつくまで、ずっとその事を考えていた。
――――――
ギラつく太陽の下、唯子は土屋と一緒に美術館へと向かっていた。
唯子は、
「――でさ、第1次世界大戦が始まると、スペイン人のピカソは、
土屋は、ホワイトのシャツにチョーカー、黒と白のチェック柄のハットに黒ぶちのメガネ、そして黒のチノパンに、茶色のサンダルを
唯子は土屋の
「1920年代になっても、ピカソはキュビズムの作品を書き続けて――って、ゴメン、オレばっかり話しているな。話題変えようか。――アレ?」
駅で待ち合わせをしてから、唯子と一度も目を合わせていない事に土屋は気付き、
「どこか、具合でも悪くなった?」
と、尋ねた。
顔を
「……えっ、あの、……何でも、ないです……」
と言って、わざと鞄の中からハンカチを取り出して、汗を
すると、
「美術館に着くまで、ちょっと休まない?」
自動販売機を見つけたから、と言って、彼は近くの
そして、戻って来た土屋は、
「アイスコーヒーと、スポーツドリンク、どっちが良い?」
と、聞いてきたのだが、
「……あの、わざわざ買って来て
と、唯子は答えた。
「――そっか。ちゃんと、聞いてから行けば良かったな。じゃあ、お昼ご飯、オレにおごらせてよ」
「……えっ、そんな……」
「何か、無理やり連れて来たみたいで、気使わせて悪いから。せっかく美術
と、途中まで言うと、
「ちょっと頼み事があるんだ。――まっ、それは後のお楽しみって事で」
と、軽く笑った。
言葉の雰囲気から、何か想像も付かない事を言われるのか気になったが、初めて一緒に訪れる美術館へ行く事になるのが土屋みたいなタイプの人間だとは、と今さら思う唯子であった。
(つづく)