美術館に着くと、玄関ゲートでは
「あっ、今年もキレイに咲いてるじゃん。――ここの美術館、こうやって月ごとに季節に合った花を玄関ゲートに植え替えしていて、手入れがマメなんだ。――あっ、上田さん」
ホースを持って水やりをしていたその男性は、
「おっ、俊介。今月も来てくれたんだ。――やけに
と、土屋と並んで立っている唯子を見て、上田はニコリと笑った。
「いや、たまたま美術に興味深い子と知り合っただけですよ」
「ハハッ。そうか。まぁ、今日は天気が良いから、テラスからの
上田は唯子と目が合うと、はにかむように
――――――
「『上田』さんって
約1時間かけて、特別展を
「うーん、知り合いっていうか、上田さんはここの館長――オレの親父の知人――の
私でいうところの、恵さんみたいな存在なのかな、と、唯子はふと思った。
「でさ、オレ、一人っ子で、上田さんより8才も年下だから、何か年の離れた兄貴っつーか。そんな風に思ってるんだ。ここへ来ると、色々相談したりする事があって。まぁ、写真も美術も、同じ芸術分野といえば、そうだし。――この前、一緒に行った喫茶店のマスターも、いつの間にか仕事でほとんど家にいない親父の代わりみたいな感じになっててさ。外に出て、実際に体感する事で、小さかったオレの世界が広がったんだ」
外に出て、体感する――。
読書する事でしか得るものが無かった唯子にとっては、とても考えられない、
そして、その言葉は、彼女の胸の奥に深く
文学部がある大学へ入学して、本屋でアルバイトをし、図書館の
ぼんやり頭の中で想像し始めると、
「ねぇ、
と、ペペロンチーノを食べ終えた土屋が、ふいに話を持ちかけた。
(つづく)