本と、一瞬と、美しさと。   作:高山典子

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第14話

「【特別展】

『photographer(写真家)への第一歩』

 20✕✕年8月10日(日)

 開催時間︙午前11時〜午後4時

 〇〇百貨店西館8階にて開催――」

 

 写真家への第一歩、か。

 帰りの電車の中で、唯子は土屋から渡されたチラシをずっ見ていた。

 結局、昨晩から悩んでいた、土屋の父親についての本当の答えを()く事は出来なかった。

 しかし、今はそれよりも目にしているチラシの特別展の事が気になって仕方が無かった。

 一体、どんな風に私は映っているのだろう。

 唯子は、早くも自分が土屋の作品の一部として飾られるところを想像した。

 ――おっ、この子、なかなか可愛(かわい)いじゃん。

 ――えぇ、たまたま、図書館で知り合って。

 ――へぇ、意外と、本好きなんだ。

 会場に来た客が、土屋と話しているのを勝手に妄想し始め、最後にはモデルのスカウトマンから連絡を受ける、という一連(いちれん)の流れに()いしれていた。

 そして、自宅から最寄(もよ)りの駅構内にある本屋で、普段(ふだん)滅多(めった)に見たことの無いファッション雑誌を一気に数冊も購入(こうにゅう)し、家に帰るなり、「モデル募集」の(らん)片っ端(かたっぱし)から探した。

 たまたま手にしたティーン雑誌の「読者モデル・エントリーシート」と書かれたページを見つけ、唯子はその誌面(しめん)()い付いた。

本誌(ほんし)で読者モデルとして、ご協力いただける15〜18才の女性を募集(ぼしゅう)しています。このシートを参考に“あなたにピッタリ”という企画がありましたら、本社(ほんしゃ)にシートが届いて1ヶ月以内に、こちらの編集部から直接お電話(いた)します。

    ()め切り日 20✕✕年6月30日』

 記入(らん)を見ると、名前や生年月日、趣味や簡単な自己PR(らん)、連絡先、そして、上半身写真と全身写真を貼る(らん)がある。

 文字で()める所は(かわ)わないが、写真となると――。

 せっかくなら、土屋に現像(げんぞう)してもらった写真をもらっておく機会(チャンス)があれば良かった。

 しかし、電話番号先も、メールアドレス先も知らない彼と、こちらから連絡を取るのは無理な話だった。

 彼女は仕方なく携帯電話で撮った画像をプリントアウトして、応募する事に決めた。

 そして、スタイルを良く見せられるシンプルな服が良いか、それとも流行のアイテムを取り入れるかを悩みに悩んだ末、彼女は唯一、家族以外に見せた美術館に行った時の服装にする事を決めた。

 何度も撮り直しては、顔のツヤや、姿勢が悪くないかをチェックし、結局10日間もかけて撮った写真と共に、エントリーシートを送った。

 もし、合格すれば、今までに無い経験をする事が出来る夏を味わい、また、「新しい自分」に()える。

 もちろん、モデルとして雑誌に()れば、学校中の話題になる事は分かっていたが、何も自慢(じまん)慢する為に応募(おうぼ)したのではなく、自分が、今までに触れたことの無い世界に飛び込みたいという強い気持ちから、応募したのだと決めていた。

                    (つづく)     

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