本と、一瞬と、美しさと。   作:高山典子

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第15話

 また、夏休み前の期末テストで、良い成績を取れたら、お小遣(こづか)いをねだるチャンスだと思った。

 新しい夏服を買って、未知の世界の編集部へ行く――。

 しかし、彼女の思いとは裏腹(うらはら)に、一向(いっこう)に連絡は無かった。

 

     ――――――

 7月の第2土曜日になって行われた市立図書館の「読者の会」の後で、恵が唯子に話しかけてきた。

「唯子ちゃん、お久しぶりね。――テスト、終わったの?」

「はい、昨日で全教科を終えたばかりで」

「そうなの。お疲れ様。――で、どうだったの?土屋君とは」

「えっ、どうだったって……?」

「唯子ちゃん、可愛(かわい)いのに、こういう話には(うと)いんたから。――まあ、土屋君とは仲良くなれたかどうか、って事よ」

「あっ、その、土屋さんに写真のモデルになって欲しいって言われて……。その日だけですけど」

「あらっ、それって、土屋君に気に入られたって事じゃない?」

 恵は近くの椅子(いす)に座ると、

「あー、ついに彼氏が出来(でき)るのねえ。小学生の頃から唯子ちゃんとは知り合いだから、まるで妹を彼氏に取られちゃった気分だわ」

と、口をすぼめて(さび)し気な表現をした。

「えっ、そんな、『彼氏』だなんて……。『好きだ』って言われてもないですし……」

「でも、『モデルになって欲しい』なんてだなんて、少なくとも好意(こうい)を持ってなきゃ、そんな話、持ちかけてこないわよ。――連絡先とか、()いた?」

「いえ、それが……、そんな事、考えた事が無くて……。あっ、でも、来月の〇〇百貨店で写真展を開くから、来て欲しいって言われて……」

「へぇ、写真展ね。で、そこで唯子ちゃんの美少女っぷりが(かざ)られるってわけね」

「えっ、いえ、『美少女』なんて……」

 唯子は否定しつつも、どこか、こそばゆい嬉しさを()()めていた。

「あの、良かったら、恵さんも一緒に行きませんか?家族や友達だと恥ずかしくて……」

 すると恵は、

「悪いんだけど、来月っていったら、8月よね?学校の夏休みが始まっているでしょ。だから、書庫の整理とか、読み聞かせのイベントとかで、色々忙しくて……。せっかく(さそ)ってくれたのに、ゴメンね」

と、申し訳無さそうに手を合わせた。

「……いえ、言われてみれば、そうですよね……。こちらこそ気付かなくてすみません」

「いいのよ。――その代わり、というか、今度こそ土屋君の連絡先、()いてくるのよ。オッケー?」

「あっ、はい……」

 

 唯子は、うつむき加減(かげん)曖昧(あいまい)な返事をした。

 

     ――――――

 

 7月24日。

 夏休みが始まり、ちょうど読者モデルのエントリーシートを送った1ヶ月後だった。

 雑誌の編集部からは、まだ連絡が無く、来るとすれば今日が最後だった。

 彼女は、美術館でモデルになった事に気を良くし、一週間もすれば電話がかかってくると思っていた。いや、 「確信(かくしん)していた」という方が良いかもしれない。

                    (つづく)     

 

 

 

 

 

 

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