本と、一瞬と、美しさと。   作:高山典子

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第17話

 (うそ)をつくにしたって、(たい)したメリットは無い。むしろ、マイナスイメージだ。

 そう思うと、唯子は、今度こそ本当の事を確かめようと、写真展に向けて、自分(みが)きに(いそ)しんだ。

 

     ――――――

 

 そして当日。

 いつもより早起きをして朝食を済ませると、念入りに(かみ)の毛の手入れをし、昨日()ったばかりの夏色カラーのマニキュアと合うワンピースを、いくつか試着して、ようやく決めたそれに(そで)をし、何度も(かがみ)の前で髪型(かみがた)をチェックした。

「行ってきます――」

 9時を過ぎた頃に家を出ると、雲(ひと)つ無い青空が広がっていた。

 唯子は百貨店の最寄(もよ)りの駅まで着くと、近くの露店(ろてん)の花屋で花束(はなたば)を買い、すでに開店している百貨店を見て回った。

 2階のヤングレディースフロアで服や(くつ)を見ていると、自分と同世代の女の子の二人組が歩いているのを見かけた。

「それにしてもスゴイよね――」

「土屋君、一人で写真展を開くなんて――」

「土屋」と「写真展」という言葉を聞いて、唯子はハッとその場で立ち止まった。

 土屋が一人で写真展を開いた?

 確か、彼自身の話では、専門学校の生徒で展示をするはずだ。

 一体、どういう事なのだろう。

「――お客様、何かお探しでしょうか?」

 店員の女性から声をかけられて、唯子は我に返った。

「……あっ、いえ、見ているだけです……」

「そうですか。とうぞ、ゆっくりご(らん)になって下さい」

 そう言うと、店員はその場を離れた。

 しばらくすると、写真展の開催(かいさい)時間の5分前を知らせる携帯電話のアラームが鳴った。

 彼女自身、エレベーターへ向かう足取りが(はや)くなっているのに気付いた。

 そして、開催(かいさい)時間の11時ピッタリに辿(たど)り着くと、看板(かんばん)が大きく(かか)げてあった。

『土屋俊介――photographer(写真家)への第一歩――』

 タイトルからして、個展(こてん)である事には間違いなかった。

 受付(うけつけ)の席に(すわ)っている女性に、特別招待券を渡そうとすると、

「こちらの写真展は、無料でご覧になれますよ?」

 と、言われた。

 戸惑(とまど)いを(かく)せないまま、花束の入った紙袋を持って、会場に入った唯子は、途端(とたん)にその「世界」に圧倒(あっとう)された。

 展示されている写真は、どれも白黒(モノクロ)で、初めて土屋にフォトブックを見せてもらった時のような、(つや)やかで(いろど)りのある作品は一枚も無かった。

 しかし、時がその場で止まったような、それでいて、どこか(なつ)かしい感じのする撮り方ばかりで、彼女はその世界観に、どんどん引き込まれていった。

 動物園の(おり)の中で、昼寝をするシマウマ。

 年代を感じさせる、車のアップ。

 空の彼方(かなた)へと飛んでいく、風船(ふうせん)()れ。

                    (つづく)     

 

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