本と、一瞬と、美しさと。   作:高山典子

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第18話(最終話)

 ――そして、個展の中で、一際(ひときわ)目立つ場所で、一番大きく(ひろ)げられた写真が作品として展示されていた。

 それは、本の角度、文字を追う目線、(ひと)りという空間――白黒(モノクロ)が生み出す世界を一瞬にして切り取った学生の姿――高校の制服を着た唯子だった。――そう、6月の、まだ土屋と知り合う前に市立図書館の学習コーナーで撮られたものだと(さと)った。

 『本と、一瞬と、美しさと。』とタイトルが付けられたその作品以外、唯子の私服(しふく)姿はどこにもなく、まさに、他人にもとめた「自分(ぞう)」が、そこには映し出されていた。

「――よっ、来てくれたんだ。その紙袋は、オレ()て?」

 肩をポンッと叩かれ、後ろを振り向くと、土屋が立っていた。

「……あっ、こんにちは……。花束なんですけど、受付で渡そうと思ってて……。でも、早く作品を見たくて……つい……」

「そっか。11時になるまで時間があったから、この(かい)をブラブラしてたら、高校の同級生に(つか)まってさ。ずっと今まで話してたんだ」

 彼は唯子から花束を受け取ると、

「オレ、他人から花束なんてもらうの、初めてでさ。――何か、恥ずかしいな。で、どうだった?作品は」

 唯子は(たず)ねたい事で、頭がいっぱいになり、返事に困った。

 すると、土屋は、

「ゴメン。オレ、色々ウソ付いてたの、分かった?親父は高校中退って、いつか話してたじゃん?本当は、それ

 、オレなんだ。それと……、あの写真、勝手に使って悪かった。でも、どうしても誰かに見せたくて……。親父に(たの)み込んで、個展を開かせてもらったんだ。……怒ってる?」

と申し訳無さそうな表情をした。

 すると、

「……ありがとう……ございます……」

と、唯子は小さく、(ふる)えるような声でそう言った。

「私、読書をする事しか出来なく自分に苛立(いらだ)っていた時期があって……。でも、あの写真を見て、やっぱり自分は本が好きなんだなって、(あらた)めて思えました。それに、本当に他人に知って欲しかった自分の現実的(リアル)な姿を誰かに見てもらえるなんて……。こんなにも嬉しい事、ないです」

「――へえ。何ていうか、“ありのままの自分”って感じ

 ?」

「はい……」

「ハハハッ。写真家を目指す者として、一番の()め言葉かな。本当に、来てくれて良かった」

 今度は、土屋が、赤くなる番だった。

「――あの、一つ、()いても良いですか?」

「ん、何?」

「一番好きな本って、誰の、何っていうタイトルの本ですか?」

「――写真家、土屋俊介()の『土屋俊介の初恋物語』」

 唯子の夏は、いよいよ始まりを迎えたところである。

                      (完)       




【あとがき︙作品制作ウラ話】
 最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!
 いかがだったでしょう?
 実は、この作品の半分は、私の大学生時代の実体験で出来ています。
 例えば、この作品のポイントとなる美術館は、大学生時代によく通っていた、実際に存在する「兵庫県立美術館」という世界的建築家と呼ばれている安藤忠雄(あんどう ただお)氏が設計された場所なんです。
 また、唯子が土屋と初めて入った喫茶店は、私がよく友達と京都へ遊びに行った際、京都御所近くの有名な喫茶店「六曜社(ろくようしゃ)本店」という所で、ドーナツを出されているのを当時のガイドブックで知り、この作品の参考に参考にさせていただきました。
 そして、私の大学生時代の肝心の恋愛事情と言えば…?
 う〜ん、0勝1敗1引き分け(引き分けってなんだ?!とう方は、ご想像にお任せします。笑)という結果です。
 また、主人公の「唯子」像は、当時、大流行したNHKの朝ドラ「あまちゃん」に出てくる、橋本愛さん演じる「唯(ゆい)」から、名付けさせていただきました。
 だって、イメージがピッタリだったんだもん。
 土屋俊介自体には、モデルがなかったんてすが、ストーリーを作っていく過程で、「こういうアクションしてくれてら、話が盛り上がるだろうな」って感じで、あんなフラフラ(?)だけど、堅実な所もあるというキャラクターにさせていただきました。
 というわけで、次回作は、皆さんの感想次第で、純愛青春ラブストーリーか、はたまた、違うジャンルになるかは分かりませんが、これからも少しずつ執筆活動(ネット投稿)を、このサイトでしていくので、どうぞよろしくお願いします!

参考文献︙『世界の美術家――その生涯と作品』
     出版社︙ポプラ社
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