本と、一瞬と、美しさと。   作:高山典子

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第2話

 しかし、そこまでして唯子が事実を隠したがるのは、近くの男子高に通う男子から告白される回数が半端なかったからだ。

 共学の中学校に通っている間、同級生はもちろんのこと、上級生、下級生関係なく、何度も告白を受けて、思春期の男子(・・・・・・)という「生き物」に嫌気を感じ、彼女は家から一番遠い女子高に入学する事を決めた。

 確かに、唯子は可愛(かわい)かった。

 現代風にいうならば、ティーンのファッション雑誌のモデルになれるくらいの目鼻立ち、身長もスラリと高く、数年後には忘れ去られていくようなアイドルやTVタレントとは決して違った独特の雰囲気(オーラ)があった。

 つまり、彼女は、「知性」と「品性」を()(そな)えた、それでいて誰かから(ねた)まれるような生意気さが無い(たたず)まいをしていたのである。

 でもそれは、読書をする事で身に付けた外見上の問題であって、肝心な中身を知ろうとする人物は、誰一人としていなかった。

「モデルになる気はないのか」「アイドルになる気はないのか」といった、(うわ)ついた話しか話題にのぼらない中学校生活が非常に退屈(たいくつ)で、誰からも告白されることのない女子高に進路を決めたのだが、入学初日から彼女の容姿(ようし)(またた)く間に注目の(まと)となり、やがては近くの男子高にまで(うわさ)が広まり、冒頭のような手紙を受け取るのもザラではなくなっていた。

 しかし、そこまでして唯子が事実を隠したがるのは、近くの男子高に通う男子から告白される回数が半端なかったからだ。

 共学の中学校に通っている間、同級生はもちろんのこと、上級生、下級生関係なく、何度も告白を受けて、思春期の男子(・・・・・・)という「生き物」に嫌気を感じ、彼女は家から一番遠い女子高に入学する事を決めた。

 確かに、唯子は可愛(かわい)かった。

 現代風にいうならば、ティーンのファッション雑誌のモデルになれるくらいの目鼻立ち、身長もスラリと高く、数年後には忘れ去られていくようなアイドルやTVタレントとは決して違った独特の雰囲気(オーラ)があった。

 つまり、彼女は、「知性」と「品性」を()(そな)えた、それでいて誰かから(ねた)まれるような生意気さが無い(たたず)まいをしていたのである。

 でもそれは、読書をする事で身に付けた外見上の問題であって、肝心な中身を知ろうとする人物は、誰一人としていなかった。

「モデルになる気はないのか」「アイドルになる気はないのか」といった、(うわ)ついた話しか話題にのぼらない中学校生活が非常に退屈(たいくつ)で、誰からも告白されることのない女子高に進路を決めたのだが、入学初日から彼女の容姿(ようし)(またた)く間に注目の(まと)となり、やがては近くの男子高にまで(うわさ)が広まり、冒頭(ぼうとう)のような手紙を受け取るのもザラではなくなっていた。

 しかし、唯子は根っからの文学少女であり、TVで一度見かけた「彼氏と行きたいデートスポット特集」なるものに戸惑(とまど)いと疑問を感じた。

 話題の映画を見た後、大型ショッピングモールで買い物をし、別れる前に、夜景が見える観覧車に乗って――。

 そんなの、一人でも行けるじゃない。何が盛り上がるのだろう。

 無論、後で紹介されたテーマパークや水族館にも興味は()かなかった。

 唯一、美術館が映し出された時は、「大人になったら良いかもしれない」と思った。

 彼女は年頃(としごろ)になると、髪の毛や(つめ)の手入れは、最低限、清潔感をあたえる程度のもので、大方、文学や美術といった「お(かた)い」ものにしか反応しない頭になっていた。

 本当の自分なんて、誰にも分かってもらえない。

 チェーホフやトルストイ、ゲーテ、芥川龍之介や森鷗外と数え出したらキリのないくらいの文学作品にふれている時、深い海の底を静かに泳いでいるような、ゆったりとした時間な流れる感覚を味わっていると話したところで、共感してもらえるのだろうか、というのが唯子の通う女子高の友人関係の実情である。

 部活に「文芸部」なんてものがあれば、少しは学校に自分の場所があると思えたのかもしれないが、残念ながら文化系の部活は吹奏楽部(すいそうがくぶ)しかなかった。

 それで、放課後になると彼女はいち早く教科書やノートを(かばん)へ詰め込み、市立図書館近くの駅で降り、もっぱら読書をする事に決めていた。

「――唯子ちゃん、閉館15分前だよ」

                   (つづく)                       





★次回更新予定日︙2025年1月第4土曜日か日曜日
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