すると、土屋は「アッハッハ!」と大声でお
その声を聞いて、唯子はハッとし、恥ずかしさでいっぱいになった。
「いやいや、結構。
土屋はニヤニヤし出すと、
「約束の30分、過ぎちゃったな。――じゃあ、今度の日曜、10時に✕✕駅の改札で待ち合わせって事で。マスター、2人分のお
と言って、店を出てしまった。
一人にされた唯子は、土屋のコーヒーカップに少しだけ残った中身を、じっと見つめていた。
――――――
唯子の通う市立図書館は、毎月第2土曜日の夕方、「読書の会」という集まりがある。
市内に住んでいる中学生以上なら誰でも参加でき、図書館の奥にある「多目的ルーム」に、毎回30名
「読書の会」の前半は今、自分が読んでいる本の内容と感想を、集まった皆の前で発表し、後半は、次はどんな本が読みたいか意見交換をしたりするものであった。
唯子は、その会の
「唯子ちゃん、今日も
時代小説が好きな、70才を迎えたばかりの男性から、声をかけられた。
「『時代が違っても、変わらないものはある』って、唯子ちゃんの年頃の子じゃ、なかなか言えないよ」
「あぁ、今日も言っちゃいましたか……。皆の前では好評価するつもりでとは思っていたんですけど……」
「いやぁ、本の帯に書かれた『〇〇
の文句に
と、別れを告げられると、唯子は後ろから肩を叩かれた。
振り向くと、この会の担当者である恵がいた。
「あっ、恵さん……。私、今日も
「ふふっ。聞いていて面白かったわよ。特に、男女の会話のやりとりが、ぎこちない、ってね」
「……そうですか。でも、今時の若い人って、あんな
「唯子ちゃん、さすが目の付け所が違うわね。私なんて、その辺りはサラッと聞いちゃったのに」
「男女の会話」と聞いて、唯子は少し声を小さくして、
「あの、恵さんにちょっと、相談事があるんですけど……」
「あら、何?本の注文?」
「いえ、あの、それが……」
と、唯子は土屋からの誘いに乗って良いかどうか、迷っていることを説明した。
(つづく)