Kuschel   作:小日向

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011 配属先は防衛班

1月17日

 

 朝9時に訓練場に集合。12時までは体力強化のトレーニングや仮想アラガミを用いた戦闘訓練を行い、昼休憩を挟んで13時から17時まで座学にて神機使いとしての教養を培う。そうした日々を数日繰り返し、この短期間で身体能力は更に向上していた。

 

 今日も同じように訓練と座学をこなし、17時に終了。ここまではいつもどおりだったのだが、普段なら定刻で解散するはずのツバキがまだ演台に立っている。

 

「本日をもって基礎訓練工程は修了だ。よって明日以降、お前たちは実働部隊に就き実戦へ立ってもらう。ユウ、コウタは討伐班の第一部隊、ミツハは防衛班の第二部隊に配属だ。以降の指示は各部隊長から受けるように」

「…………」

「初日と同じことを言わせるな。返事はどうした!」

 

 事の急転に三人は驚きを隠せないが、慌てて返事をすると「よし」とツバキは頷いた。

 

「もう新人研修終わりなの!? もっとあると思ってた〜!」

「でもついに実戦だぜ〜!? やっとゴッドイーターとしての本領発揮できんじゃん!」

「ツバキ教官が実戦配備しても問題ないって判断したんだし、きっと大丈夫だよ」

 

 ツバキが去り、三人は集まって驚きや興奮を共有する。ユウたちはミツハに比べて、驚きよりも実戦へ立てることへの嬉しさが勝っているようだった。

 

 ミツハは驚きのほうが強かったが、ユウの言葉にそのとおりだと納得する。ツバキが修了したと言うのならば、訓練をきちんと修めたのだろう。そう思うと驚きは萎んでいき、ついに『ゴッドイーター』として戦うのかと興奮してきた。

 

「アラガミが侵入したとき、俺も防衛班の世話になったことあるんだよな〜。これから俺んち守ってくれよ、ミツハ!」

「任せて〜。討伐班も頑張ってね、強いアラガミと戦いそうじゃん」

「どんなアラガミでも負けないけどね。お互い頑張ろうね」

 

 同期二人と部隊が分かれてしまったのは寂しいが、激励を送り合う。奮い立てるように拳をコツンと突き合わせた。

 

 

 

   ◇

 

 

 

 解散して自室に戻り、着替えを持ってシャワー室のある共同区画へミツハは足を運んだ。脱衣所に入ると、先客が一人居た。ミツハと歳の近そうな桃色髪の神機使いだ。ミディアムボブの髪は三つ編みでカチューシャを作っており、可愛らしい印象を受ける。

 

 会釈をすると少女と目が合った。そしてミツハの顔を見ると、何故か感激した様子でミツハの近くまでやって来た。

 

「あの、井上ミツハちゃん……ですよね!?」

「そうですけど、えっと……?」

「突然すみません! 私は第二部隊所属の台場カノンと言います。タツミさん……防衛班の隊長から、明日新人さんが配属されるって聞いて……! しかも同い歳の女の子で、もう私嬉しくって!」

「えっ、同い年ですか!? 嬉しい〜……!」

 

 幼稚園を含めると15年間同じ歳の人間と行動していたミツハにとって、同い歳というのは非常に親近感を抱く大きなアドバンテージだ。

 

 シャワーを浴びてドライヤーで髪を乾かしていると、髪が短いぶん先に乾かし終えたカノンが髪を乾かしてくれると言う。先輩にそんなことをさせるわけにはいかないと遠慮したのだが、カノンは何故か「先輩っぽいことやらせてください!」と熱望したためミツハはドライヤーを渡した。はたして髪を乾かすことが先輩っぽいことなのかは謎だが、後輩の世話を焼きたいのだろう。

 

「ミツハちゃん、髪が長いからヘアアレンジとか色々できそうで楽しそうですね」

「台場さんの三つ編みも可愛いですよ〜、真似しちゃおうかな」

「えへへ、本当ですか? 今度お揃いにしちゃいましょう!」

 

 ゆるふわ森ガールという言葉が似合いそうなカノンは嬉しそうにはにかみ、ミツハの髪を楽しそうに乾かしていく。可愛いな、と同性ながらにミツハは思った。

 

 話をしながらシャワー室を出る。ミツハが配属される第二部隊は、カノンの他に男性の神機使いが二人所属しているらしい。第二部隊は極東支部及び外部居住区の防衛を担っており、アラガミ装甲壁に近づくアラガミの迎撃も行っているそうだ。

 

 居住エリアへ移動するためカノンと共にエレベーターに乗り込むと、扉が閉まろうとしたところで少年が駆け込んでくる。慌てて開くボタンを押すと、キャップを被った赤毛の少年が乗ってきた。

 

「あ、シュンさん。お疲れさまです!」

「なんだ、カノンと……噂の新人じゃねぇか」

「ミツハちゃん、こちらは小川シュンさんです。第三部隊の方ですけど、同じ防衛班なので一緒になることが多いと思います」

「そうなんですね。私は井上ミツハと言います。よろしくお願いします、小川さん」

 

 第三部隊は『エイジス島』と呼ばれる、現在建設中の巨大アーコロジーの防衛を担っているらしい。第二部隊と合わせて『防衛班』とまとめられている。

 

 会釈をして挨拶をすると、値踏みをするようにジロリと見られた。なんとなく、後輩いびりをするタイプだなと察した。

 

「そういや、お前極東初のポール型神機使いだったか?」

「らしいですね」

「ケッ、新型だのポール型だの持て囃してるけどなぁ、足引っ張んじゃねーぞ!」

「が、頑張りま〜す……」

 

 察したとおりのタイプだったが、あまり怖くはなかった。わかりやすいぶん付き合いやすそうだ。

 

 ちなみに、シュンが言った『新型』というのはユウのことだ。神機パーツと人工コアの相性もあり近距離型と遠距離型でタイプが分かれているのだが、『新型』は遠近切り替えができる新しい神機だ。現時点で極東支部に新型神機使いはユウしか居ない。

 

「私、ポール型神機って見たことないので楽しみです! どういう形状してるんですか?」

 

 話を聞いていたカノンが明るく尋ねる。ポール型神機使いも極東支部には現時点ではミツハしか居ないのだ。

 

「ヴァリアントサイズっていう大鎌の形をしてますね。お二人の神機はなんですか?」

「俺はロングブレード。お前と同じ近距離型だな」

「私は遠距離型のブラストです!」

「誤射しまくりのな」

「誤射?」 

「シュンさん~! それ以上はやめてください! ミツハちゃんの前ではかっこいい先輩でいたいんです〜!」

「いやどうせ無理だろ! カノンの射線上には立つなよ鎌使い~」

 

 扉が開き、エレベーターから降りながらシュンがケタケタと笑う。顔を真っ赤にして「違うんです!」と必死に弁明するカノンの手を引き、よくわからないが励ましながら部屋へ戻る。どちらが後輩なのかわからない有様だった。

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