翌朝、いつもの時間に食堂へ足を運んだが、ソーマの姿は見当たらかった。7時過ぎまで待ってみるが、来る気配が無い。
食堂の出入り口を気にかけていると、ソーマではないが見知った顔が入ってきた。ミツハはその顔を見つけると、立ち上がって声をかけた。
「ユウ、おはよう……! 昨日、大丈夫だった?」
ユウも昨日、接触禁忌種と遭遇したはずだ。その見た目に大きな怪我は無さそうで、ひとまずミツハは安心した。
「うん、僕なんとも。ただリンドウさんがまだ見つかってなくて……アリサも入院して、今は戦線離脱してる」
「そっか……。でも本当に、無事で良かった」
医療班が待機していたのはアリサのためだったらしい。コウタやサクヤも無事だとわかったことは安心だが、リンドウやアリサのことが心配だ。
7時を過ぎると食堂に人が増えてくる。今朝の食堂はいつもと雰囲気が違った。爽やかな朝とは似つかわしくない、ざわざわとした不穏な空気が流れている。話題はもっぱら、リンドウのことだった。
――もう捜索隊が出てるらしいけど、まだ何も手掛かりは無いらしいよ――
――期待しないほうがいいだろ――
――あいつらの捜索対象はどっちかっつーと神機のほうだろうし――
――見つかんなかったらまたソーマの部隊から殉職者が出ちまうな――
――やっぱり死神って噂は本当なんだね――
そんな会話が、どこからともなく聞こえてくる。
ミツハは頬杖をつきながら目の前の空席を見る。
「……ね、第一部隊の今日の任務って、ソーマさんも一緒?」
空席の隣に座るユウは朝食を食べる手を一度止めた。
「その予定だけど……どうかした?」
「んー、今朝来なかったから……」
「そっか……。様子見とくよ」
――ユウとそう話したのは数日前だ。数日経っても、ソーマが食堂に来ることはなかった。
ミツハとソーマは部隊が違うため、共同区画で会うことが無くなってしまえばソーマと会える機会は途端に無くなってしまう。ユウとコウタに話を聞いても、部屋に篭っているかどこかへ行っているらしく、任務の時にしか姿を見せなくなったらしい。
エントランス2階のロビーラウンジに腰掛けるコウタは珍しく浮かない顔をしていた。
「サクヤさんはだいぶ参ってるし、ソーマは全然居ないし、アリサは寝込んでるし……。第一部隊、どうなっちゃうんだよ……」
「コウタ……」
「……って俺まで暗くなったらいよいよヤバいよな!? リンドウさんのことだし、ビールの配給日にはひょっこり帰ってくるっしょ……」
「……そうだね。きっとそうだよ〜」
明るく振る舞うコウタにミツハも同調した。第一部隊のムードメーカーが笑顔で居るだけで、空気は少し軽くなる。
「防衛班も巡回経路拡大して探してみてはいるんだよね。捜索に参加させてほしいってツバキさんに第二部隊で掛け合ってみたけど怒られちゃったから、内緒にしてほしいんだけど」
「やっぱり? どうりで最近帰ってくるのが遅いと思った」
納得がいったように、コウタの隣に座るユウが笑った。
「……ユウにバレてるってことは、ツバキさんにもバレてそうじゃない?」
「そうかも」
「でも何も言ってこないってことは見逃してくれてんじゃね?」
三人で会話をしていると、夕食の時間が近づいてくる。「一緒に食べる?」とミツハは二人に聞いたが、ユウは首を横に振った。
「夕食の前にアリサの様子を見に行きたいから、二人は先に食べてて」
アリサは未だ入院している。ユウは時間を見つけては面会に行っているようだ。
「……アリサ、早く目が覚めるといいね」
「うん……。あの日何が起きたのか、アリサから聞かないとわからないないとこもあるからね」
「ていうか、ユウたちとリンドウさんたちって、別の任務じゃなかった? 出撃する時、一緒じゃなかったよね」
「そうなんだよなー。なんでか現場でブッキングしたんだよな」
「ヒバリちゃんがそんなミスするとも思えないしなぁ……」
「だよな」
話をしながらユウと別れ、ミツハとコウタは食堂へ行く。席をぐるっと見回してみても、やはりソーマの姿は見つからなかった。