Kuschel   作:小日向

42 / 115
042 大型チャレンジ

3月1日

 

 巡回から帰投したミツハは神機を返却せず、そのまま訓練場に篭っていた。

 

 ヴァリアントサイズを振り翳し、大きな鎌といくつもの小さな刃が胴体を斬りつける。飛びかかってくる巨体を躱し、尻尾に神機が喰らいつく。そのまま神機を振り下ろすと、仮想アラガミは動かなくなる。黒い靄となって消えるのは、ヴァジュラだ。

 

「終わった〜! 倒せた〜!」

 

 一人残された訓練場で、ミツハは歓喜の声を上げる。大型討伐の演習コースを全てやり終えたのだ。訓練用で動きがある程度パターン化されているとはいえ、大型アラガミ相手にどう動けばいいのかは身についた。あとは実戦だ。

 

――明日巡回無い日だし、大型の討伐任務受けてみようかな。

 

 先日ラウンジでお茶会をした日に考えていたように、サリエルの討伐任務があればジーナを誘ってみようと、ミツハは神機を返却してエントランスへ向かった。

 

 エントランスのターミナルで発行されている討伐任務を確認する。偵察班などからの報告を元に、緊急性や危険性が無ければフリーミッションとして誰でも受注することができるのだ。受注が間に合わずアラガミが極東支部周辺の防衛ラインを超えた場合は各部隊に回され、難度が高いものは第一部隊に振り分けられる。カレルはそれが気に食わないようだ。

 

――あ、あった。サリエル。

 

 画面をスクロールして、贖罪の街エリアでの討伐任務でミツハは目が止まった。

 探していたサリエルの討伐任務だが、コンゴウと多数の小型アラガミも同エリアを徘徊している。コンゴウという、戦闘音を聞きつけてすぐに乱入してくる乱戦必須のアラガミが居ることが悩ましい。

 

 任務内容を見ながら頭を悩ませていると、声が降ってきた。

 

「どうしたの、ミツハ。難しい顔をして」

「あ、ジーナさん!」

 

 すぐ隣にジーナが立っていた。ミツハは悩ませていた顔を明るくさせた。

 

「ちょうど良かった! 大型討伐の演習終わったので実戦に出てみようと思うんです。それでジーナさんとご一緒できたらいいなーと思ってサリエルの任務を探してたんですけど、コンゴウと小型アラガミも居るみたいで……」

「いいじゃない。私は大歓迎だけど……初めての大型討伐で混戦になるのは嫌よね。そうねぇ……第一部隊の人も誘ってみたら? 得意でしょ、あの人たちはこういうの」

 

 確かに大型アラガミの討伐は第一部隊の十八番だ。名案だった。

 

「そうですね、ユウに話してみます」

「あら。ソーマじゃないのね?」

「こういうのって隊長に話すのが普通だと思いまーす」

 

 先日のラウンジでのお茶会といい、ジーナには遊ばれてしまっている。軽口を交わしながらくすくすと笑うジーナと別れ、ミツハはユウを探す。

 

 食堂が開いている時間なので、夕食を食べているかもしれない。そう思って食堂に行くと、予想は当たりユウとコウタが一緒に食事をしていた。

 

「あ、居た居た。お疲れ〜」

 

 二人が座っている席に近づいて声をかける。二人はパッと顔を上げた。

 

「ミツハ、お疲れ」

「おっつかれー! ちょうどいいとこに来た! 話したいことあるから一緒に食おうぜ」

「私も話したいことあるからそのつもりで来たよ〜。ちょっと待っててね、ご飯取ってくる」

 

 トレーに食事を取ってコウタの隣の席に座る。ユウの隣はもしかしたらアリサが来るかもしれないので、と余計なお世話を働かせて空けておいた。

 

「それで、話って?」

 

 食事に手をつけながら話を振ると、コウタが答えてくれる。

 

「今度の休みにみんなでユウのリーダー就任パーティするつもりなんだけど、ミツハも来る?」

「えー、行きたーい。でも第一部隊員じゃないけどいいの? 場違いじゃない?」

「ミツハは同期だしさ! いいだろ、ユウ?」

「人が多いほうが楽しいだろうしね。それにミツハが来たらソーマも来るかもだし」

「あいつが来たら雰囲気暗くなりそうじゃね? ……あー! 思い出したらムカついてきた!」

「え、なになに。何かあったの」

 

 不機嫌そうなコウタは珍しい。何かあったのかと話を聞いてみると、どうやら今日の廃寺での任務中にソーマと一悶着あったそうだ。ユウのリーダー就任パーティに誘ってみても、『馴れ合いたいならお友達同士で勝手にやれ』などと言われてしまったらしい。

 

 話をしながら、コウタは少し苛立った顔を見せた。

 

「ミツハってよくあいつと仲良くできるよな……。つーか俺には仲間とか居ないほうがマシって言うくせに、ミツハと仲良くしてんじゃん。なんなんだよ、あいつ」

「うーん……私の場合は色々あるしなぁ……」

 

 ソーマがミツハにある程度心を許しているのは、仲間を救うことができなかった経験をしてきたソーマが救うことができた命だから、というのもきっとあるだろう。

 

 その上人付き合いが不慣れなソーマにとって、ミツハは近寄ってくる理由がわかりやすく、余計な勘繰りが要らないのだろう。命を救ったから感謝されている。ソーマ側から見れば単純明白だ。ミツハ側からは、もっと多面的な理由ではあるけれど。

 

「それより、ミツハの話って?」

 

 話の雲行きが怪しくなってきたところで、ユウが流れを変えてくれた。そうだった、と今度はミツハが話す。

 

「大型討伐の演習が全部終わったから明日ジーナさんと大型討伐の任務に行くんだけど、それがサリエルとコンゴウ、小型多数の複数討伐任務で……。初の大型討伐で混戦はなりたくないから、第一部隊に助力をお願いしたいなと……」

「明日は特に緊急の討伐任務も入ってないし、僕は大丈夫だよ」

「よかったー! コウタはどう? いけそう?」

 

 第一部隊のリーダーが助っ人とは心強い。途端にミツハの気持ちは軽くなったが、コウタはばつが悪い顔をして「ごめん!」と両手を合わせた。

 

「明日は神機のメンテ出す予定だわ……」

「それは仕方ない! 気にしないで〜」

「もう一人声をかけてみるよ」

「うん、お願い。……あー緊張してきた〜。サリエルって結合崩壊箇所は頭とスカートと両足だったよね……」

 

 頭の中でサリエルの情報を思い浮かべ、なんとなく戦い方のシミュレートをしてみる。一応大型討伐の演習でも戦ったが、飛んでいるせいで戦いにくかったことを覚えている。

 

「切断だと頭が通りやすいかな。でも浮いてて攻撃が届きにくいから、落下した瞬間が狙い目かな」

「ふむふむ……っていうかコンゴウもどうしよう。普通に戦ってたらコンゴウ来ちゃうよね?」

「その辺りの作戦はメンバーが決まってからブリーフィングしようか」

「ミツハ、頑張れよ〜」

「頑張る〜」

 

 ゆるっとした激励をコウタから貰い、ミツハもゆるっとしたガッツポーズを作って見せた。

 話をしていたら、アリサが食堂にやってきた。「こっちこっちー!」とアリサを呼び、ユウの隣に座らせて四人で夕食を取った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。