光の巨人と怪獣の報道を様々なメディアが取り上げるせいで、穂乃果の自宅にマスコミが押しかける事態になっており、疲弊する穂乃果。
困っている彼女の相談を受けながらもことりから理事長に呼ばれているという事を大吾につげてひょんな事から一緒に登校する事に。その際、大型ビジョンに映っていたスクールアイドルA‐RISEのライブを見て穂乃果達にスクールアイドルを提案する。
登校後、理事長室へ向かうとことりの母である理事長から人手不足である音ノ木坂学院の用務員として手伝って欲しいとお願いされてしまうのだった。
放課後。
部活の時間になり早速、校内の美化活動に取り組もうと道具を手に校内を歩いていた。人手が足りない中での生活だからか、細かいところを見ると雑草が生えている。
最低限の美観だけを保っている状態だ。
「──これを全部やるってなると、相当時間がかかるな」
そう呟くとまずは、雑草が生え荒れ果てた花壇を綺麗にするべくこしをおろした。
その時だ、ピアノの音色と共に歌が聞こえる。ピアノの旋律に良く馴染む綺麗な声に俺は、手を止め音が聞こえる方へ目線を向ける。
「──あそこは」
校舎の方から聞こえる。
ピアノができて歌が上手ければ、スクールアイドルになれるんじゃないか。
そう思った俺は、軍手を外してから音楽室のある校舎の方へ向かう。
放課後という事もあって人気のない校舎に響くよく聞いていると大好きや勇気、まだ終わりじゃないと言った前向きなメッセージのこもった歌詞が緩やかなピアノの旋律と馴染み聞いててとても美しいとそう思った。
演奏を聴きながら音楽室までやってきた俺は、夢中に演奏する少女の姿を見る。
赤い髪が特徴のその子は、演奏を終えると俺と目が合う。
「──え! 男?」
「ごめん、今日からここの用務員になった円大吾だ」
「そ、そう」
戸惑いながら俺を見る少女は、椅子から立ち上がりピアノから離れようとする。
「今後も会ったらよろしく
ところで君、名前は?」
「西木野真姫よ」
「西木野さんか
ねぇ、スクールアイドルに興味無い?」
「なにそれ? 意味わかんない」
そう言って音楽室から出て行こうとする西木野真姫、どうやら誘いには、答えてくれなかったらしい。
まぁ、急にスクールアイドルやりませんかって言われたら警戒もするだろう。
「ちょっと待って!」
「もう今度は何? 私、忙しいんだけど」
すれ違いざまに俺は、西木野さんへ声をかける。何でか、ここで彼女と別れては行けない。そんな気がしたからだ。
「もし良かったら歌を作って欲しいんだ!
こう、始まりの歌みたいな曲を」
「曲!? なんで私が?」
「君の才能に惚れたからって理由じゃダメかな?」
西木野さんは、何も言わずにただ顔を真っ赤にしながら音楽室から出る。
言い方を間違えただろうか。
そう思っても一人残された音楽室では答えなど分かるはずもない。
人と話すことに正しいも悪いもないのだから。
──西木野さん、曲作ってくれるかな?
先程まで聞こえていた彼女の歌を思い浮かべながらそう思うのだった。
◇◇◇
「──ラブアローシュート!」
弓道部の園田海未は、ステージ上でアイドル姿出たっている自分を想像してしまう。恥ずかしさのあまりリンゴのように真っ赤な顔をしながら矢を射るも的から大きく外れてしまう。
その様子を見た他の部員は、彼女が外すことを見た事がないため、珍しいと思わず声を上げてしまう。
「まだです!」
そう言って再び弓を引く。
精神を落ち着かせなければと思えば思うほど、脳裏にアイドル姿の自分がチラついてしまう。部活中に関係ないことを想像している自分に恥ずかしさを覚え、顔が再び熱くなる。
「──ック!」
我慢の限界になり矢を射るも的には当たらない。羞恥心に押しつぶされそうになり呼吸が荒くなる。そんな様子を弓道場の入口で見ていたことりが、彼女へ手招きしながら声をかける。
「海未ちゃん、こっち」
「──ことり」
ことりに連れられ、弓道場を後にする海未。話すことは、先程自身が想像していたアイドルの件だ。
穂乃果がまた突拍子のない事を言っているだけだと思っていた海未は、呆れながら話を続ける。
「──全く、穂乃果には困ったものです」
「昔から変わらないよね、穂乃果ちゃん」
「それで毎回酷い目にあってきました」
そう言いながら過去を振り返る海未。
子供の頃、三人で木へ登り夕日を見た際も足場にしてた枝が折れてしまい大変なことになったことがある。
あの時も木に登って夕日を見ようと言ったのは、穂乃果だった。
「──でも、後悔はなかったでしょ?」
酷い目にあったという事実だけでどれも海未にとっては、いい思い出となっている。
何も言えずにいるとことりが見てと言いながら物陰から指をさす。目線をその先へ向けると袖を捲りながらダンスの練習をしてる穂乃果の姿があった。
「──これは」
「穂乃果ちゃん、本気らしいよ」
正直、ここまで真剣に練習してる穂乃果の姿を見て驚いたというのが海未の感想だった。
真剣な眼差しでステップを練習する穂乃果だが、上手く出来ずに躓いて転んでしまう。
「ねぇ、海未ちゃん
私、やってみようかなスクールアイドル」
「ことり……」
ぶつけた箇所を抑えながらもう一回踊り出す穂乃果を海未は、真剣な表情で見つめる。
いつの間にか、否定的だったスクールアイドルも三人でやりたいという気持ちが勝っていた。
ぎこちないながらも刻むステップと真剣な表情。それだけで彼女の心を動かすには充分だった。
「──わぁ!」
声を出して再び倒れた穂乃果。
気がつくと海未は、そんな穂乃果へ対して手を差し伸べていた。
「海未ちゃん、なんでここに!?」
「ことりに連れてこられたんですよ、穂乃果が一人で練習してると言うので」
「え、ことりちゃん!? 隠れて見てたの?」
「ごめんね、穂乃果ちゃん」
「穂乃果、三人で一緒にやりましょう」
「──うん!
よーっし、善は急げだ! 部活動申請をしよう!」
そう言って海未の手を握り起き上がる穂乃果は、急ぎ部活動申請をするために生徒会室へと向かう。
「なんですかこれ」
提出された申請書見て生徒会長絢瀬絵里は、眉間に皺を寄せるが穂乃果は、堂々とした立ち振る舞いで絵里の質問に答える。
「学校を救うために、スクールアイドルを始めようと思ってます!
その為にアイドル部の設立申請と講堂の使用許可を貰いに来ました」
「講堂で何をするんですか?」
「ライブをします!」
穂乃果の発言を聞き絵里は、溜息を吐きはながら書類を穂乃果へ突き返す。
「こちらの書類は、受け取れません」
「なんでですか!?」
「理由は、二つ
一つ目、部の設立は最低5人以上からです
二つ目、前にも言いましたが学校を救うのは生徒会の仕事ですので、貴方たちはにもしないでいいと」
「ですが、スクールアイドルは今や超人気で活動を見て入学希望者を増やしてる学校も……」
「失敗したら?」
意見を述べていた穂乃果の口が止まる。失敗したらなんて考えていなかった。
アイドルを始めてA‐RISEの様に人気グループになって学校を救う。それしか思い描いていなかった穂乃果にとって絵里の言葉は、重い一発を受けた気分だ。
「アイドルをして入学希望者が増えなかったら?
遊び感覚で学校を救おうだなんて言わないで!」
「そんな……遊びだなんて!」
「──ちょっと待ち、ここは生徒会室
争いは、あかんで」
遊びと否定されて頭に血が登った穂乃果、絵里に詰め寄ろうとした所をずっと静観していた副会長の東條希が仲裁に入る。
「部活については、あと二人集めてな
講堂に関しては、申請に問題ないから使ってええよ」
「ちょっと、希!」
「講堂の使用内容に生徒会長が首挟んだらアカンで
それはそうと、ライブこ期日までそう時間ないけど、曲とか出来てるん?」
「ありません、他のスクールアイドル曲を披露しようかと」
「他のアイドルの曲を披露して学校が救えるとは思えないけど?」
穂乃果の代わりに海未がライブでしようとしてる内容を希説明する。それを聞いて絵里は、否定的な意見を述べる。
「まぁまぁ、そう言わんでええやんかエリチ
君たちももう遅いから帰りな」
「分かりました、必ず部員を5人にしてまた持ってきます
失礼します」
穂乃果がそう言って三人は、生徒会室から出ていく。彼女の瞳に強い意志を感じこれなら何があっても大丈夫。
そう思っている希に絵里は、仲裁に入られた事を根を持ちながら小言を口にする。
「──どうしてあの子達の味方をするの?」
「仕方ないやろ、何回やってもそうしろってカードがウチにそう告げるんや」
そう言って希は、太陽と冠されたタロットカードを絵里に見せた。正位置のカードは、成功や明るい未来などの意味が込められているがそれを見ても尚、彼女たちが成功するとは思えないと思う絵里だった。
◇◇◇
西木野真姫は、帰宅後一人部屋へ子守り今日出会った不思議な男──大吾との会話を振り返っていた。
──西木野さんの才能に惚れたって理由じゃあダメかな?
彼から言われた言葉を思い返すと彼女の顔がまた赤面する。思い返しては、赤くなった顔を枕に埋める。それを繰り返している状態だ。
だが、恥ずかしくなるも嫌悪感はなかった。
誰かに才能として褒められることは、嫌いじゃない。だからか、少し前向きに曲を作る気でいた。
「今回だけ……なんだから」
そう呟きながら机に向かうとペンを片手にノートを広げる。
彼からのオーダーは、始まりの歌。未来に向ける歌や進むといった意志を明確にしてることは確かだが、いかんせん歌詞がないと曲のイメージすら作ることが出来ない。
「スクールアイドル……そう言ってたわよね」
最初に誘われたスクールアイドルという言葉を口にしながら真姫は、スマホを手に取りスクールアイドルについて調べる。作詞がないならどんな曲調かは、他のスクールアイドルを見て学ぼうとした。
検索をかけると、全国津々浦々に色んなスクールアイドルがあり、それぞれが自分たちの色を出しながら懸命に歌っている。
「──へぇ、やるじゃない」
最初、アイドルなんて言われたものだからクラシック等の伝統的な音楽から掛け離れた物と毛嫌いしていたが、大吾の真剣な表情で頼まれてしまい仕方なしに見たスクールアイドルの姿を見れば一目瞭然だ。
彼女たちは、青春の時間をアイドルという枠組みではあるが、音楽に捧げているのだ。
ジャンルが違うだけで、熱量は変わらない。
「そうと決まれば、気になるのは……」
次に真姫は、検索ワードに音ノ木坂学院と入力する。
しかし、検索結果は0件。
音ノ木坂学院にスクールアイドルは、存在しない。
騙したかと大吾を疑うが、彼の表情に嘘がないと信じたい。兎に角連絡しなきゃと思い電話帳を開くが、ここで重要なことを思い出す。
「──って、連絡先分からないじゃない!!
このモヤモヤどーしろって言うのよ!」
色んな旋律を思い浮かべても果たして歌詞と良いようにまとまらないと意味が無い。
途中、思いついたフレーズを紙の隅に書いては消してを繰り返す。絶対いい曲を作ってみせるという強い意志を瞳に宿しながら作曲を続けるのだった。
いかがでしょうか?
一話に纏まらなかったので前後編にてお話を進めてます。
1年生の一人、西木野真姫ちゃんが出てきましたね!
彼女がどう言う風にこれから関わってくるか楽しみです!
生徒会との溝はどんどん深くなる中、果たして曲は出来るのだろうか。
後編へ続く