人類は移住しました 残され者たちは世界再生の旅に出ます   作:穴熊拾弐

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第27話 湖底へ

 

 

 師匠とやらが向かった『穴』へと降りる為のエレベーターには彼からのメッセージが書かれていた。

 

「師匠からの伝言か」

「本当に、私たちが来るとわかっていたようですね」

 

 ルナと二人してその文章と睨みあう。

 エレベーターが修理されていたのは自分が使うためだろうが、だとしてもこの男は俺たちがここへ来てこれを使うことを想定していたということだ。

 得体のしれない男だ。ウミたちの話を聞いていなければ罠だと思うほどに。

 

「でも、どうやってアタシたちが来るってわかったのか……ヤマちゃんは何か知らない?」

「もちろんわかります!」

 

 びしっと空を指さしてヤマが叫ぶ。

 

 

「ちょっと前、空がとっても明るくなったんです! そしたらししょーが言ったんです! 助けが来るって」

「明るく……?」

 

 そんな現象あったかしらとルナが首をかしげる。

 ルナはもちろん知らないだろう。その時ずっと廃教会に籠っていたから。

 

「あの時か……」

 

 マンダを助ける時にエリたちに事態を知らせるために放った蛇の曳光弾。

 遠くでもわかるように強く高く放ったのだが、まさかここまで届いているとは。

 ひょっとするとこの大陸中に届いたのか……? いや、それは流石に考えすぎか。

 

「あの光をししょーは『きぼうのひ』っていってました!」

「希望の灯……ねぇ」

 

 魔王が希望と呼ばれるとはお笑いだ。

 だが本当に俺たちの存在を察知していたというのなら面白い。会いたくなったぞ、師匠とやら。

 ルナに導かれ、全員で縁に立つ。すると紋様が輝き魔力が流れていく。

 ぼこりと水が浮かび上がり始め、巨大な筒を形成していく。

 三メートル程の高さまで上がった所で、俺たちを迎える様にその一部が開いた。

 

「すごいですねー!」

「この中に入ればいいのね?」

 

 イオとヤマは楽しそうに乗り込み、他の皆も続けて入っていく。

 クアは……ギリギリだな。しっぽがこそばゆい。仕方ないのでルナとヤマをクアの上に乗せてもらう。

 最後、ウミだけが残る。

 

「あたしは泳ぐから、平気」

「わかりました。……では、潜ります」

 

 彼女からすれば箱は邪魔でしかないらしい。

 その言葉に頷いて、ルナが浮かんだ魔法陣を操作し入口を閉じる。

 僅かに輪郭が輝いたかと思うと、箱はそのままゆっくりと下へと降りていった。

 

「おおー、ホントに水の中に入ってる―!」

 

 周囲を包む金属壁が見えていたのは最初だけ。

 直ぐに視界は開け、湖の中が見えてくる。

 

 そこは、地上とは異なる自然の楽園であった。

 透き通る青の世界。数多の魚が泳ぎ、淡く光を放つごくごく小さな生き物が漂い、遠くの壁面には揺らめく水草も見えている。

 幾つか、やたら巨大な影も見えるのは恐ろしいが……視界に映るのはかつて存在した世界そのもののように見えた。

 

「……自然は、本当に再生されているんだね」

 

 思わずと言ったようにエリが呟いた。

 彼女もまた世界の終わりに携わった人間だ。感慨もひとしおなのだろう。

 ルナも、イオも言葉を失ったように眼前の光景を眺めていた。

 

「あ、カイソです!」

 

 ヤマが指さした先。視界を覆うほどの巨大な影が映る。

 クアと比べても圧倒的な巨体。数十メートルはあるだろう鯨のような魚影が周囲を旋回しているようだ。

 

『たまにぶつかってくる。気を付けて』

 

 気楽にとんでもないこと言ってくるな……。

 それだけここの防御魔法が強固なのだろうが。

 長いこと下っていくと、光はどんどんと減っていく。

 エレベーターを起動した際に点灯したのだろう、軌道にある僅かな明かりだけが仄かに灯っていた。

 

「ええと、従業員用の点検路がありますね。ここからならば衣類工場にも入れるでしょう」

『穴はもっと下。そのまま降りていけば大丈夫』

「わかった。ルナ、場所の記録だけ頼む」

「はい!」

 

 湖底はまだ遠いらしく、塔につけられた明かりの点滅が連なるのが僅かに見えるだけだ。

 

 

 

「ねえ、これどこまであるの……?」

「随分深いですね。たどり着くまでにどれだけかかるのか」

 

 壁も水も透明だからある程度下まで見渡せるが、しばらく降りても底は見えてこない。

 そんなに遅いスピードではないから、本当に距離があるのだろう。

 

「しかも穴ということは、そこからさらに深いということでは……」

「言葉通りならな。だが気になるのは、そもそもその穴ってのはいったい何なのか、だ」

 

 ルナと二人で首をかしげる。

 あり得る可能性としては水妖精の集落跡だが、『穴』とは呼ばないだろう。

 

「なんだろうね、魔獣の巣とか?」

「……それくらいかなぁ。湖底に迷宮があるのは聞いたことがないし」

 

 イオとエリもまた底を見つめながら言葉を交わす。

 魔獣と呼ばれるものは、基本的に地中か、山の中に生まれる長大な洞窟などを巣穴にする。

 巨大なものは時には迷宮と呼称されたりもする。ただ特別なことは何もなく、やたら魔力濃度が高いのと魔獣がわんさか出てくるくらいだ。

 何故そこに魔獣が大量発生するのかは、解明されていない謎であったはず。

 

「でも、この世界の迷宮は武器とか財宝とかでないんだよね。最初知ったときは驚いたなぁ」

「魔獣の巣だからな。溜め込むやつがいないとも限らんが……」

 

 人の手なんか一切入らない魔窟。それがこの世界の迷宮だ。

 

「ウミ、何か知らないか?」

『一度だけ近くまでいったことがあるけど、扉でふさがってて入れなかった』

「扉……。こんな深い湖の底に、か」

 

 ますますわからん。が、やはり迷宮の類ではなさそうだ。

 

 

 

 それから潜り続けてしばらく。

 ようやく、俺たちは湖底へとたどり着いた。

 

「本当に扉ですね……しかも大きい」

 

 直径五㎞はあるだろうか。

 鈍い銀の色をした巨大な円盤が湖底に埋まっている。

 あれが『穴』の入口なのだろう。

 

「開けるか?」

「大丈夫です。開くようになっています」

 

 その言葉の通り、エレベーターが近づくと鈍い金属音が鳴り響き、円の中心が回転をはじめ、そこから二つに割れていく。

 

「開きましたね!」

「はい。……進みます」

 

 だがすぐ先にも扉があったようで、動きが止まると元の扉がゆっくりと閉じていった。

 閉まり切った直後に周囲から泡が噴出し始める。しばらく待つと空間を満たす水が排出されていき、なくなると同時にエレベーターが開いた。

 

「……大丈夫です。息もできます」

「驚いた! まさか本当に湖底に空間があるなんて……」

「すごかったですー! わくわくしました!」

 

 ぞろぞろと降りた後、エレベーターは消失した。

 よく見れば足元に上と同じ紋様が刻まれているから、帰りはこれを使うのだろう。

 

 降りた場所は城の大広間よりも大きな、だだっ広い空間であった。

 壁には通路がせり出しており、空間の丁度中間部分に位置するようにこの空間の周囲に張り巡らされている。通路にはいくつか出っ張っている箇所があり囲いがされている。恐らくは簡易的な部屋になっているのだろう。

 また中央部には何のためなのか、中心に向かって上がり外縁部に向かって下がるだけの階段と通路が三つほど、等間隔で並べられていた。

 

「何だこの通路は?」

「これはおそらく潜水艇の発着場だと思います」

「潜水艇?」

「はい。水の中に潜るための船です。あのエレベーターでは大型の資材は運べないでしょうから、この場所の出入りには船を使ったのでしょう」

「それでこんなにおおきいんですねー」

「そんなもの見た事ない……」

 

 クアに乗ったちび妖精二人も、この場所に驚きはしつつも元気そうだ。

 妖精は自然の中で暮らす種族であるがゆえに環境の変化にとても弱い。特に幼体である彼女たちの様子は気にしておく必要があるだろう。

 イオを見ると、意図を理解したのか頷いてくれた。

 多分この中では彼女が一番気を配れるだろうから。

 

「ここから出る時に使ったのか、破棄されたのか。1艇でも残っていれば収集したかったのですが……むう」

「ルナさん、こっちに来てもらっていい?」

「あ、はい!」

 

 いつの間にか壁際まで言っていたエリから声がかかる。

 ルナが走った方向を見ると、リヴラにあったような近づくと開くタイプの大きな扉があった。

 二人で色々と話しながら何かやっていたようだが駄目だったのかこちらへと戻ってきた。

 

「どうした? 何かあったのか?」

「ええ、エレベーターがあったんですが……壊れちゃってますね」

「なんで? ここまで来たやつは動いてたじゃん」

「それが、ここにあるものは機械式のようでして。流石にそちらは簡単には修理できません」

 

 ここまで来たものとは違うもののようで、使えないのでは意味がない。

 廃教会の時のような修復は、資材のないこの場所では難しい。

 

「となると下には別の方法で向かわないとな」

「そうですね。師匠さんが使った道があるはずなんですが……」

「――――!!」

 

 クアが一鳴きして近くの床へと移動する。そこに何かがあるらしい。

 ついていくと、そこにもまた円形の扉が見つかった。

 ここから下へと降りられそうだ。

 

「ルナ、頼む」

「お任せください! ……あれ?」

 

 また開こうとルナが近づくのだが、今度は近寄っただけで扉は開いてしまった。

 今、ルナに反応して光らなかったか……?

 

「これはどういうことでしょう?」

「わからん。師匠が細工したのか、別の要因なのか……」

 

 兎も角道は開いた。降りていくしかなさそうだ。

 扉の先は巨大な螺旋階段になっており、またエリを先頭に、慎重に足を踏み出した。

 

 

 先程までの床を潜って進んだ下には、さらに広大な空間が、縦に深く広がっていた。

 師匠が『穴』と表現したのもうなずける。

 巨大な塔が地中に埋まっているようなもので、その内周に螺旋階段は続き、いくつもの窓が映る。

 そしてなぜだか、螺旋に囲まれた塔の中央部は緑の光に満ちていた。

 まるで底から噴きあがるかのように淡い光が昇ってきていた。

 

「なんじゃこりゃー!」

 

 先を行くイオからとんでもない声がでる。

 だがそれにも頷ける光景が広がっているのは確かだ。あれだけ深かった湖の底のさらに地下にこんな場所があるとは……。

 しかも明らかな人工物。いったいここは何のための施設なのだろうか。

 

「師匠はこの下か?」

「恐らくは。ですがそうなると、ここを降りていかないとだめですね」

「ある程度は魔法ですっ飛ばせるが……一気には無理だな」

 

 一歩一歩降りていくしかない、か。

 どれだけ深いのか見当もつかないが、進んでいくしかないだろう。

 

「……行こうか。だが油断はするな。何が出てくるか――」

 

 その言葉を遮るかのように丁度良く、近くの窓から大きな影が飛び出した。

 幅広の階段の行く先へと着地したそれは、巨大な獅子のような姿をした――どう考えても魔獣だった。

 

「やっぱり、迷宮なのでは?」

 

 エリのそんな呟きは、魔獣の咆哮にかき消されてしまった。

 

 

***

 

 

 飛び込んできた魔獣をエリが一刀両断する。

 剛腕としか言い表せない一振りで、魔獣は跳んだ勢いのまま二つに分かれ底へと落ちていった。

 

「うわ、エグいわね……」

「これが一番早くて楽なの。あ、壁にもう一体」

「はいよー。そっちは任せて」

 

 イオが銃を構えて発砲。

 壁に張り付いていたトカゲ風の魔獣の顎を撃ち抜き、そいつも落下していく。

 

「上からも来ます!」

「俺がやろう」

 

 次は俺が蛇を展開。ほとんど落下に近い一撃を防御魔法陣で防ぎきる。

 そのまま魔法陣は色を変え、雷撃が迸る付与魔術へ変わる。

 そこへ蛇槍を引き抜き放つ。胴を貫かれた黒獅子は遠方の壁に突き立ち、そのまま雷に焼かれ死んだ。

 

「道、開きました! 降りるよ!」

「クア、頼む!」

「――――!!」

 

 ヤマとウミを乗せたクアが吠えると、ルナを咥えて前方へ――穴へと飛び出す。

 そのまま落下するのだが、先に展開していた蛇の魔法陣に着地すると、二つほど階層をすっ飛ばして階段へと飛び込んだ。

 イオを抱えたエリもそのあとに続く。

 

「魔王、OKです!」

 

 エリの声に従い、俺も階下へと飛び降りた。

 凄まじい圧と浮遊感が襲ってくるがすぐにエリの剣が俺の胴に巻き付いて引っ張られる。

 放り出されるように飛んだ俺を、三人を下したクアがキャッチする。

 殆ど力業の移動だが、そうも言ってられないのだ。

 

 なにせこの『穴』、とにかく深い。

 最初に魔獣が出てきた窓から壁内に埋め込まれた部屋に入ってみたのだが、とにかく天井が高く城の一室かという高さがあった。

 

 ルナが調べた結果は何かの研究所か制御室ではないかということらしいが……今はほとんどが魔獣の巣だった。

 調査のために一つだけ殲滅してみたが、各階層を繋ぐエレベーターはやはり故障していた。

 ここのエレベーターはどうやらすべて機械式らしく、修理は望めない。

 周辺から資材をかき集めることもできはするが、流石に時間がかかりすぎる。

 

 ならばその通り道を降りられないかとも思って扉をこじ開けてみたが、穴は根っこで埋まってしまっていた。

 そう。この『穴』、外周部分はほとんどが木の根に侵食されてしまっているのだ。

 多くの部屋、そして下へと至るための螺旋階段にまで根は張っている。

 場所によっては根をよじ登る必要すらあるから、ならいっそとこうして無理やり降りて行っている。

 

 螺旋階段は何週か回ってようやく一階層分と、この穴の深さがよくわかる。

 だが今ので八階層目。流石にもうそろそろ底へたどり着くだろう。

 

 その証拠に、穴の中心を上る魔力がかなり濃くなっている。

 もはや反対側の壁が見通せないほどに。

 

「ヤマ、ウミ、体調に問題はないか?」

「はいーだいじょーぶです!」

「平気」

「ならこのまま行こうか」

 

 この先何が待つかはわからないが、大抵碌なことにはならないことだけはわかる。準備だけはしておこう。

 クアにいつでもルナを咥えて逃げられるように備えてもらう。

 最悪、この三人だけ逃がせればあとはどうとでもなるはずだ。

 

「魔王様、あれ見て」

 

 先を行くイオに呼ばれて向かうと、下を指さす。

 

「少しだけど明かりが見える。多分、上の入口にあったような誘導灯だと思う」

「本当か。ということは間もなくか」

 

 俺の目には魔力の光で全く見えないが、イオが言うならもうすぐだ。

 あと二回ほど降りればたどり着くだろう。

 

「よし、行こう……この先に、師匠が待ってる」

「「おー!」」

 

 気楽な声に笑みを浮かべて、また階下へと飛び出した。

 

 

 

 そして――俺たちは底へとたどりつく。

 

 濃密な魔力光に満たされ、霧の中にいるように周囲はおぼろげだ。

 足元で点滅する赤い誘導灯だけが地面を確かにしており、なければ歩くのもはばかられただろう。

 

 円の端に降り立った俺たちだが、すぐに異変に気が付く。

 今までなかった風の流れを感じるのだ。

 それは逆巻く渦の様に、中心部から流れてきている。

 それが壁にぶつかり、上へ上へと光が、魔力が昇っているのだ。

 

 中央に何かがある。

 

「俺が行こう」

 

 先陣を切って中心へと近づいていく。

 光の奔流に飛び込んで……しばらく。

 その先で何かが振動するような音と――叫び声が聞こえてきた。

 

「だー! まずいまずいまずいまずい! 障壁どんどん壊れちまってる! 修復間に合わない!」

「……?」

 

 あからさまに焦っている、若い少年のような声。

 近づくと、巨大な魔法陣の上に立ったとび色の髪の後ろ姿。

 その声を聴いたとたん、ヤマが嬉しそうに声を上げる。

 

「あー、ししょー!」

「あん? おおヤマか! そしてお前が……って、多いなおい!」

 

 そう言って振り返った顔は、声の通りの若い少年。

 腰まで伸びる鳶色の髪。体は丈の長いローブで隠れているが、その前には光る魔導書が浮かんでいる。

 そして何より特徴的なのは、胸に飾られた三つの光る珠の首飾り。

 それぞれが淡く明滅を繰り返す様子に、何故か目を奪われてしまう。

 

「まあちょうどいいわ。お前ら手を貸せ! ここまで来たんだ、戦いは大丈夫だろ?」

「ちょっと待て、いったい何を……」

「悪いが説明は後だ! もう限界!」

 

 そう叫ぶ師匠の背後で、魔法陣が砕け散る。

 途端に足元が突き上げられ、激しく揺れた。

 ずん、と床が一瞬浮き、俺たちもほんの僅かに浮かび上がる。

 

「なんですか、今の!?」

「いいか、今のは封印。それが壊れた! 意味は分かるな?」

 

 師匠が指を弾く。

 すると三つの珠と魔導書が輝きだし、放たれた光が俺たちを包み込んだ。

 肌から体内へとゆっくりと光が浸透していく。

 その瞬間、体に力がみなぎってくる。これは……補助魔法か。

 

 他の皆にも同様に魔法がかけられている。

 だがエリだけには効かずに光が霧散してしまったが。

 

「あん? 変なのがいるな……まあいい、急いで準備しろ! 来るぞ!」

「いったい何が……」

 

 そう言いつつも蛇を解き放つ。

 悔しいくらいに何が起きるのかがわかってしまう自分がいる。

 

「呼び名は知らん! だが外にいたお前らならわかるだろ? 世界を無理やり直そうとするあれ!」

 

 つまり、滅茶苦茶強い!

 師匠がそう叫ぶのと同時。

 先ほどまで魔法陣が覆っていた場所が吹き飛び、黒い光が柱上に立ち上った。

 

 先頭にいた師匠はこちらへと走り抜け、クアの近くに回る。

 もう一度指を弾いて、クアと自身を覆う膜を作り出した。

 

「援護はする! あとはよろしく!」

「ずいぶん勝手な……」

「来ますよ、魔王!」

 

 剣を抜いたエリが吼える。

 直後、柱の中から黒い影が現れた。

 翼の生えた、漆黒の巨人。

 

 

『■■■■■■■■■!!!!』

 

 顔のない、しかし角のような突起の生えたそれは、螺旋を描く黒の炎に囲まれながら、声にならない咆哮を上げた。

 

 

 遥か深い湖のさらなる底。

 訳の分からないまま、おそらくこれまでで最上級の怪物との戦闘が幕を開けるのだった。

 

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