人類は移住しました 残され者たちは世界再生の旅に出ます   作:穴熊拾弐

65 / 79
第65話 地下監獄にて

 

 

 

 ルナを待っていた男。この地方を侵食する魔獣たちの元凶。

 その男は、地下の監獄の最深部に張り付けられた状態でこちらを見つめていた。

 

「やあ、待っていたよ」

 

 そう告げる男の表情は分からない。

 長く伸びた黒青色の髪が口と鼻を除いて全てを覆い隠してしまっているのだ。声で男と判別はしたが、正直性別すら判断できない。

 そしてその身体もまた分厚い天幕の様な赤い布に覆われ、足があるはずの場所には砂色に汚れた大量の鎖が、とぐろを巻いて積まれていた。

 

 様々なモノに隠され、ルナに見えるのはその状態でも元気そうに動く口許だけであった。

 

「無理やり連れてきてしまって、すまないね」

「……あなたが、音鳴石の声の主ですね」

「音鳴石? ……ああ、ヤザンのくれたあの石か。そうだよ。僕が声を残した。内容は……うん、そうだ。殺して欲しいって頼んだんだよね。あの子たちを殺せる誰かがいたなら、僕を殺せるかもしれなかったから」

 

 いきなりの剣呑な言葉に驚くが、そもそもそれが彼の願いであったことを思い出す。

 

 ――僕を殺して欲しい。

 

 その言葉に導かれて、自分たちはここまでやってきたのだから。

 今、その相手が目の前にいるのだ。

 聞かねば、知らねばならない。理由を、動機を。

 その使命が、未だ硬直していた身体を動かした。

 

「あなたは、死にたいのですか?」

 

 絞り出したその問いかけに、男は軽い調子で口角を上げる。

 

「うん、そうだよ。でも死ねないんだ」

「それは、どうして……?」

「そういう風に『作り替えられた』から。君にわかるように、この後ちゃんと説明するよ」

 

 今は証明もできないしね、と男は笑う。

 その時の身じろぎで、とぐろを巻いていた鎖が掠れた音を立て、ルナの身体が震える。

 どうやって磔になっているかは分からないが、彼の位置は天井に近い――三メートル近い高さにある。この巨体に暴れられれば、ルナの身体はひとたまりもない。

 

「ああ、安心して。君を害するつもりはないよ。見ての通り、僕はここから動けないんだ。ここにはあの子たちも来ないから、安全だよ」

「確かに、ここにはあの肉泥がありません。でも、その方は……」

「ああ、ミャオだね」

 

 少し離れた壁の近くで丸くなっている猫。

 ここにいる以上、彼もまた混獣種の筈だけれど……。

 

「この子は特別なんだ。出会ってからずっと、僕の傍を離れなくてね。大丈夫。僕に何かしようとしない限り、あのままだと思うよ」

 

 ぐっすりと眠っているように見えるが、耳は動いている。

 少しでも怪しいことをすれば、こちらへと飛び掛かってくるだろう。

 つまりここは安全かもしれないが、出ることは決して叶わない。

 ルナもこの男と同じように、この地下深くの牢獄に囚われてしまったということだ。

 

「君を連れてきてもらった理由は、三つあるんだ」

 

 そんなことを考えるルナを他所に、男は変わらぬ調子で続ける。

 まるで優雅にお茶でも楽しんでいるかのように。

 

「一つは、君が戦闘力を持たないからだ。僕は死ぬことができないけど、この見た目だ。無防備な相手はどうしても攻撃をしたくなってしまうだろう? そして万が一攻撃を加えてしまったら、ミャオが反応してしまう。そうなると、困る」

 

 誰かが死ぬところは見たくはない、と男は笑う。

 ミャオが勝つ前提なのが恐ろしいが、それなら猶更逆らえまいとルナは頷きを返した。

 

「そしてもう一つは、君が、君たちの中心人物だから」

「私が……?」

「ああ。君を攫えば、君たちの仲間は必ず奪い返しに来る。そうしたらここにきて、僕を殺さざるを得なくなるだろう?」

「……っ」

 

 射貫かれたように、ルナは硬直する。

 

 ――知られている。

 

 どう見ても動けない筈のこの男が、会ったこともない自分たちの関係をしっかりと把握している。

 ここまで連れて来られたのも、この先しようとしていることも。全て磔にされた彼が狙って起こしたことなのだ。

 

 ……だが、その目的が全くもって理解できない。だって、それはなんという企みだろうか。

 彼は『自分を殺させるため』に拠点を襲わせ、ルナをここまで連れてきたと言ったのだから。

 なんてことないようにそう言い放つ彼の心理を理解することは、ルナには叶わない。

 自分には大事な使命がある。そのために命を失うわけにはいかないのだ。

 

 ……何があったら、命を失くしたいと、そう願うようになるのだろうか。

 

「あの、どうして、それを知って……?」

 

 そして、この男は何故こうも我々の事情に精通しているのか。

 明らかに魔王たちの留守を狙われた襲撃。

 ルナが中心人物であることを言い当て、戦闘能力がないことも当然のように把握している。

 考えられる理由は、一つ。

 

「ヤザンに聞いたんだよ」

「……ヤザンさんが」

 

 仲間に内通者がいる。

 そしてそれは、この地方に出会った怪しい骨の男以外にありえなくて。

 当たり前の答えに、しかしルナは打ちのめされてしまう。

 仲間に、信じていた人に裏切られるなんて初めてのことであったから。

 そんなルナのことなど気にすることなく、囚われた男は最後の理由を語る。

 

「最後の理由は、君が、一番この世界に詳しいとヤザンが言っていたから」

「詳しい……?」

 

 まさかの理由にルナが顔を上げた。

 分厚い髪に覆われた顔が、ルナではない虚空を見つめながら頷いた。

 

「ああ。そうだ。教えてほしいんだ。今この世界では、何が起きているのかを。君の口から、君の言葉で」

 

 そう言って、地下から動けない男は微笑んだ、様に見えた。

 砂と鎖の擦れる音が、地下監獄の最奥で小さく鳴り響いた。

 

 

***

 

 

 ヤザンによる真相の説明は、セムルに戻ってから行うことになった。

 これ以上彼に害意はなさそうで、それならば全員で聞いた方がいいだろうとなったからだ。

 それに結界が壊れた拠点の確認、修復も必要だ。

 約束通り、シルトが麓まで送ってくれ、隠していた車へと戻ってきた。

 そのまま拠点まで戻ろうとしたのだが――。

 

『吾らも行くぞ!』

 

 何故か麓まで着いてきたタッサたちが車に乗り込んできたのだ。

 

『主らのまなほーるとかいう話、興味がある。それに吾はまだこの骨を信じてはおらん!』

「それで構わんよ。やったことは、事実じゃからの」

「それはいいが……狭いな」

『我慢して』

 

 両隣を妖精に囲まれようとも、ヤザンは動揺一つ見せずに座っていた。

 たどり着くまでは何も話すことはないとでも言うように、誰も何も話すことなくセムルへと戻っていった。

 

 

 

「お前ら! 無事だったか」

 

 飛び込むように拠点へと戻った車へとロアが駆け寄ってきた。

 

「ロア、状況は?」

「言った通りだ。急いで復旧はしてるが……って誰だそいつら!?」

 

 続けて降りてきたタッサたちに驚き滑る。

 分かる、分かるのだが今構っている暇はない。

 

「竜の巣にいた妖精だ。力を貸してくれるらしい」

「は? 妖精? 竜は?」

「そっちも問題ない。……カルメは?」

「お、おう。こっちだ」

 

 直ぐに事態を飲み込んだロアが拠点の奥へと案内をしてくれる。

 崩れた家屋を再利用して作られた四角い建造物――リヴラにあったものによく似たそれの中には、光る液体に満たされた円筒がいくつか並べられている。

 数の多いチビルナたちの整備用の施設だが、緊急時にはルナたち人造生命体の治療に使う予定であった。

 そして今がその緊急時である。

 

 

「これだ」

 

 その内の一つに、カルメが浮かんでいた。

 眠っているかのように見えたが、音で目覚めたのかこちらへと気が付くと、途端に顔を歪ませ泣き顔を浮かべた。

 

『イオ、魔王様ー! やられちゃったー』

 

 いつもと変わらない様な軽口で、カルメは言った。

 

「……元気そうだな」

『元気なもんですか! 身体を真っ二つにされたのよー? わたしたちじゃなければ死んでたんですから!』

 

 カルメの身体はいつもと変わらぬ貫頭衣で隠されているが、腕や足は動いているから問題なく繋がっているように見える。

 だがそれは『とりあえず繋がっている』だけで、まだ完治はしていないのだろう。

 そんな状態でこんな気楽に会話しているのだから恐ろしいが……。

 

「治るのか?」

『勿論! 直ぐに戻すから安心して。……イグトゥナ、行くんでしょう?』

「ああ。だがその前に、やることがある」

 

 首を傾げるカルメを他所に、背後のロアへと振り返り声をかける。

 

「ロア、他の連中も集めてくれ。ヤザンから話がある」

「あん? まあいいが……ヤマたちを呼ぶのか?」

 

 彼の視線は、明らかにタッサたちへ向いていた。

 その意図はよくわかる。

 どう見てもタッサたちは妖精だ。ヤマたちとは違う『本来の』。

 そんな彼女たちに会わせたらヤマたちにどんな影響があるのか、その不安は俺にもあった。

 だが、残念ながら時間がない。

 

『あん? なんだ?』

「不安だが、これからすることを決めるための大事な話なんだ。それに、どうなっても選ぶのはあいつらなんだろ?」

「……違いねえな。悪い、呼んでくるわ」

 

 ため息とともに頭を掻くと、ロアは直ぐに外に出て声を張り上げた。

 どうやら近くにいたらしいヤマたちが、僅かな間をおいて部屋へと入ってきた。

 

「ヤマ、来ました!」

『来た』

『……なんだ、こいつら』

 

 部屋に両足をそろえて跳んで入ってきたヤマとウミが、手を上げてそう言った。

 そして、初めて二人を見たタッサが、呆然と呟いたのが聞こえる。

 ……やはり、こいつらでも知らないのか。このヤマとウミの次世代妖精は。

 

「しらない人がいますよ、ウミちゃん!」

『ほんとだ』

『……』

 

 シシカもまた、信じられないものを見たように目を大きく開いて固まっている。

 そんな彼女たちを他所に、ヤマはいつも通りの明るさで顔に笑みを浮かべた。

 

「はじめましてー! ヤマはヤマです、妖精です! こっちはウミちゃんとシンジュです!」

『……』

『ヤマ、この人たち、驚いてる』

「そうなんですか? なぜでしょー?」

『……はっ!』

 

 硬直して数秒、先に我に返ったのはシシカであった。

 腰を屈めて目線の高さをヤマに合わせると、吸い寄せられるように彼女の頭に咲いた花に、次いで水の溜められた服を身にまとうウミへと視線が流れる。

 

「……はじめましてー?」

『うん、初めまして。あなたは……ヤマちゃんというのね。わたしはシシカ。こっちはタッサよ。よろしくね?』

「はい、よろしくお願いいたしますー!」

『……よろしく』

 

 手を差し出して挨拶を告げるシシカの手を、ヤマは迷わず握る。ウミの手も一緒に握ったまま。

 そのぷにぷにぶよぶよした感触を味わいながら、シシカは無理矢理笑みを浮かべて問う。

 

『ねえ、ヤマちゃん、ウミちゃん。あなたたちは、妖精なの?』

「はいー! 魔王様にそう教えてもらいました!」

『……そう。わたしも妖精なの。よろしくね』

「そうなのですかー!? ヤマたち以外の妖精に、はじめて会いました! 大きいですねー」

『ふふ、そうね。わたしは長生きしている、大人だから』

「そうなのですかー」

『そうなの。それで、その後ろの……人は……』

「シンジュですか? シンジュはシンジュですー!」

『そ、そう。あなたもよろしく、ね?』

『――――!!』

『わっ!? 今の、声……? シルト様みたいな……ええ、よろしくね?』

 

 シンジュの光にシシカが驚き反応すると、シンジュもまた喜びの光を発した。

 

『――――!!』

『ちょっと……ええ!? もしかして、あなたの身体、木なの?』

『そうです! ひょっとしてシンジュの言葉がわかるんですかー?』

『え、ええと……うそ、本当に……?』

 

 ぶんぶんとヤマに手を振り回されながら、シシカが困惑した表情を浮かべていた。

 最強種の一角である妖精の成体でも、ヤマには敵わないらしい。

 そろそろ助けてやろう。

 

「ヤマ。悪いがその話は後で頼む」

「わかりましたー! シシカさん、あとで教えてくださいね!」

『え、ええ……』

 

 元気そうに後ろのシンジュの下へと戻る(シンジュが入れないので)ヤマを見送ってから、ゆっくりとシシカの顔がこちらへと振り向いた。

 あとで詳しく聞かせろ、彼女の口がそう動いたような気がした。

 

 ……この話が終わったらすぐに逃げよう。怖いのではない。悪いが俺にも分からないんだ。

 そう決めて、ようやくそろった全員の顔を見渡した。

 

 

「皆、いいか? ――では始めよう」

 

 

 俺は竜の巣で起きた事と、ヤザンが言い放ったことを皆に伝えて聞かせる。

 竜の肋骨でのこと。妖精たちとの出会いのこと。霊竜の協力を得たことに、ヤザンによる告白のことまで。

 

 話を続けながら、ヤザンの方を盗み見る。

 彼は皆から見える場所、そして入口からは最も遠い場所に座らせている。

 タッサたちが両脇に座って監視しているが、あの男は拘束され、首を飛ばされていてもルナの拉致を手引きしたのだ。

 その手段が分からない以上油断はできない。

 

 最大限の警戒をしながら、俺は全ての説明を終えた。

 最初こそヤマたちの反応はあったが、最後は全員が押し黙って聞くことになった。

 それだけ、この好々爺のした行動は想定外で、信じがたいものであったから。

 

 

 

「……以上が竜の肋骨で起きた出来事だ。だから、俺たちはヤザンを連れてここへと戻ってきた」

 

 静寂の中で話を締めくくると、ロアが真っ先にヤザンの方を振り向いて口を開く。

 

「マジかよ……思いっきり敵じゃねえか、その骨!」

「ほっほっほ、その通りじゃな!」

「笑ってんじゃねえよ! お前が原因って事だろうが!」

 

 声を荒げるロアではあるが、決して殴りかかったりはしない。

 本来この問答でさえしている時間が惜しいということを彼はよく理解している。

 その上で、言わないと収まらないこともよくわかる。

 故にヤザンは反論することなく、かくりと骨の首を縦に揺すった。

 

「そうじゃ。ルナ嬢ちゃんを攫わせたのはワシじゃ。じゃが、その理由はもう喋ったぞ? このままイグトゥナに向かえば、お主らは死ぬ。……すまん、イオ嬢ちゃん、地図を」

「ええ」

 

 イオが白い箱を地面へと放ると、そこから地図が投影される。

 何度も見た南西部の地図。一番最初に見た時から大穴が開けられ、草原が砂漠に代わったそれを見つめながらヤザンが白い指を三本立てる。

 

「イグトゥナに向かい、あやつを――混獣種の元凶を殺すには越えなければならない壁が三つある」

 

 立てられた指の一本を折る。

 

「先ずは、都市を守護する騎士団じゃ。受肉し蘇った過去の英傑たちが主らを待っている」

 

 地図に記されたイグトゥナの周囲に鎧を着た騎士たちが浮かび上がる。

 騎馬を狩り『獣』を易々と屠っていた人型の怪物たち。

 やはり首都イグトゥナを守護しているらしい。

 

「とはいえ、大抵の連中は主らでは相手にならんじゃろう。それだけの実力があることはよう知っとるよ。問題は、その中の数騎。奴らの頂点に座す者たちじゃ」

「――至天といったか」

「うむ。彼の騎士もその内の一騎。カルメ嬢ちゃんを倒した騎士じゃな」

 

 騎士たちの後ろに、一回り大きな騎士が一人、姿を現す。

 黄金色の鎧を纏うその騎士が、ここを襲撃した奴なのだろう。

 

『……至天』

 

 ぽつりと、カルメが呟く。

 

 俺も聞いたことはあった。この地方を支配していた騎士と呼ばれる連中の中には、『樹冠の騎士』と呼ばれる者たちがいると。

 要は国が認める騎士の最高位――特権階級をそう呼んだわけだが、この地方では圧倒的な武力と実績の両方が備わって初めて認められた称号だったらしい。

 何せその一人の実績は『単独での霊竜撃破』だ。武勇の誉れ高い騎士だろうと、そこにたどり着くのはほんの一握り。

 

「我らが騎士国家の歴史の中で、その座に認められたものはワシが知っているだけで僅か十騎。……その中で遺骸が残され目覚めたのは、四騎」

 

 地図の上に、更に三体の騎士が現れた。

 

「彼らは、必ずお主らの前に立ちふさがる。戦い、勝たねばならん」

「……強敵だな」

 

 歴代騎士の上から十人のうち、四人も蘇っているということだ。

 やはりそう簡単な相手ではないらしい。

 

「そいつらまで不死ってことはないよな?」

 

 ボロボロになるまで戦い、すぐさま蘇りましたでは話にならない。

 

「ない。他の混獣種と同じじゃよ。事実、騎士の何騎かは竜や獣にやられとる」

『吾も一体殺したからそれは事実だ』

「……そうか」

 

 ならば何度も蘇るお前は何なのかと問いたくなるが、今は我慢だ。

 今はどうやってこの騎士を乗り越えるかを考えなければならない。

 

「シルトに乗せてもらって、監獄へ直行じゃ駄目なの?」

「できなくはないが、奴らは間違いなく後を追ってくる。監獄内はそこまで広くはないからの。逃げ場のない状況で戦うのは危険じゃぞ? それに――」

 

 ヤザンが指を振るうと、もう一つ巨大な姿が地図の上に現れる。

 黒い骨に覆われた竜が。

 

「空から向かえば、こいつが立ちふさがる。いくらシルトでも、無視することも瞬殺することも叶わんよ」

 

 これが第二の壁だとヤザンが指を折り曲げる。

 

「……空からの急襲は、土台無理な話だったということですな」

「でも、そうしたらどうしようか。全員がシルトさんに乗っていっても止められちゃうんだよね? そして正面突破だと騎士団と混獣種もいる……と」

 

 空からも駄目、陸からも駄目となると、一体どうすればいいのか。

 

「方法はある。じゃが、問題はその後じゃ」

 

 首都の外れ、大陸の南西端、宮殿から更に下った空き地に円柱が現れる。

 そこが地下監獄の位置なのだろう。

 そしてここに、ルナと男がいる。

 

「地下監獄の男は、正真正銘の不老不死。奴を殺す方法を見つけなければならぬ。そして、その方法は、まだ存在しない」

「なんじゃそら! じゃあ全部無駄じゃねえか」

「だから止めたんじゃよ。ルナ嬢ちゃんを攫ってまで、の。じゃが、ワシは主らなら必ず方法を見つけられると思っておる。……特に、ロア。お主じゃ」

「あ? オレ?」

 

 まさか自分の名が上がるとは思っていなかったのだろう。

 驚き自身を指さす彼に、ヤザンが頷きを返す。

 

「骨竜を欺いた時のあの技術――あれを使えばあやつの不死に対処できるかもしれんのだ。ワシがお主らに全てを明かすことを決めたのは、ロア、お主の技術を見たからに他ならぬ」

「いや、あれは核を保存する技術を使っただけで、不老不死に効くわけ――おい、待て」

 

 あきれ顔で呟く途中で、ロアの顔が露骨に変わっていく。

 憤怒に近い、怒りのものへと。

 

「おい骨。そいつの不老不死の理由ってのはまさか……」

「ああ。そうじゃ。奴の持つ核が持つ『再生』の力。それを魔術によって増幅されたのが、奴の不死の元凶じゃよ。……核に関してはお主の領域、なのじゃろう?」

 

 そして、彼は語り始めた。

 俺たちがこれから殺さなければならない男について。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。