異世界ガンダム   作:꒰ঌ流✧星໒꒱

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鉱山都市グラナダ

 鉱山都市グラナダへやってきた現在……

とある酒場で流星達は、困っていた。

 

「まいったな……まさか、こんな事になるとは」

 

 流星達がグラナダへ来たのはアリスの鎧の整備である。その整備を頼もうと設備の整った鍛冶屋へ預けようとしたのだが……

 

「魔法の鎧の整備?すまんが、今は手一杯なんだ」

「お客様大変申し訳ありませんが、ウチの店は現在注文が殺到しておりまして……」

「悪いが、他の店に行ってくれないか」

「今は忙しいから、また今度な!」

 

 などなど、頼む為に訪れたのだが、その依頼を断られ続けていた。

しかし、それには理由があった。

 3魔団の1人、カロン・ド・バールが少数の部隊を率いて帝国に侵入していたのだ。

この事件自体は、ラ・ムール国の派遣してくれた勇者須佐達によって防がれた。

 これを受け、皇帝ワポルム4世は魔王軍との戦は近いとし、戦力を整えるべく帝国中の鍛冶屋へさらなる増産をするよう御触れを出した。

この為、現在鍛冶屋はどこも大忙しなのだという。

 

「タイミングが悪かったか……」

 

 しかし、このままではいけないと思い、何かいい案は無いかと考えるそんな時、アリスが酒場の外を見ているのに気づいた。

 

「どうした?」

「……私が見えてる人が居る」

 

 度々言っているが、アリスは精霊である。普通の人には見えない。

しかし、選ばれた者もしくは波長の合う者なら精霊を見る事ができる。

選ばれた者は滅多に現れないので、波長の合う者だろう。

 そんな酒場の外でこちらを見ていた彼は、流星達の席にやって来ると、流星達に話かけてきた。

 

「何か困り事か?」

「ええ、まあ」

 

 相手がどういう人物なのかわからないので、流星は曖昧に返事をする。

その返事に男は「そうか……」と答えたきり黙った。

流星は、何か話した方がいいのかと思い、男に質問をしようとした時、酒場の奥から給仕の者がやって来て、男に取っ手のついた鍋を渡す。

 それを受け取ると、キャピタルを支払い男は酒場を出て行く。

そのまま出ていくのかと思ったら、こちらへ振り返る。

 

「ついて来い」

 

 それだけ言うと、男は再び歩き出す。

流星は、アリスを見る。

 

「……あの人は悪い人じゃないと思う」

「わかった。彼について行こう」

 

 男を見失わないよう、流星達もその後に続く。

 

 

 歩く間、男は何も話さないので、流星はグラナダの街を観察する。

 良質な鉱石が採れるとあって、様々な人種の者達が行き交う。

その中には、ラ・ムール国でほとんど見かけなかった獣人族やドワーフ達も居る。

 

「いかにもなファンタジーな住人を見れるとは……しかし、なんでラ・ムール国では見かけなかったんだ?」

「あの国は、人間主義だから」

 

 アリスが答えるには、ラ・ムール国の歴史を紐解くと、勇者の鎧を身に着けた者は全て人間らしい。

それが人間主義の理由であり、かの国ではそれ以外の者にあまり良い顔はしないそうだ。

 

「なるほどね。まあ、そういう事に首を突っ込むと面倒な事になりそうだし、この問題はこの世界に住んでる人達が、いつか解決するでしょ」

「そう願う」

 

 そんな話をしていると、男が立ち止まる。

 

「ついたぞ」

 

 案内された場所は、街の外れにある工房で、中に入るとそこではいくつもの魔具が動いていた。

そして、その魔具の側に立っている人物へ男が声をかける。

 その人物は耳の長いの女性で、作業着を着ており、頭にタオルを巻いていた。

 

「親方、今帰った」

 

 どうやらその女性は親方らしい。

 

「遅かったじゃないか、ペー。それで、そこの奴は?」

「客だ」

「悪いけど帰ってもらいな。皇帝が魔法の鎧量産しろって、うるさくて無理なんだよ」

 

 親方は文句を言うが、ペーと呼ばれた男は、既に工房の奥に行ってしまった。

 

「全く、もう少し話すって事を覚えてほしいね……まあ、聞いての通りさ。悪いけど帰っとくれ」

「いやいや、彼がついて来いって連れてこられて、それはないでしょ。とりあえず、鎧を見るだけでも見てくださいよ」

 

 食い下がる流星に、仕方なく渡されたアリスの鎧を見る親方だったが、鎧を見ている内にその目が鋭くなっていく。

 

「精霊憑きの鎧か……良い腕の職人が作ったみたいだね……こ、こいつは!?ガンダリウム鉱石製じゃないかっ!!」

 

 ガンダリウム鉱石。軽量かつ物防・魔防に耐熱や耐蝕性も高く夢の素材といわれるが、採掘量が少なく希少な物だ。

名前を見ればわかるが、勇者ガンダムの名の元でもあり、この鉱石がふんだんに使用された魔法の鎧が勇者の鎧でもある。

 

「まさか、こんな希少な物を目にできるとはね……しかし、これ程の作品をいったい誰が?」

「鍛冶師テムですぞ」

 

 工房の奥から声がし、そちらを見ると細身の青白い肌をした老人が現れた。

 

「精霊の気配がして来てみれば、何と懐かしい」

「お前は!」

「アリス、知ってるのか?」

 

 流星の疑問に答えたのは、アリスではなく老人であった。

 

「元魔王軍鍛冶師、ツィー・マッド。久しぶりですな、精霊」

 

 ツィー・マッド。前魔王軍で鍛冶師をしていた者で、アリスはかつての勇者と共に、この老人が手がけた魔法の鎧と戦った事があった。

 

「何故お前がここに居る?」

「グフフフ、答えは1つ。お前さんより速い魔法の鎧を作る事ですぞ!」

 

 そして、ドが付く程のマッドサイエンティストだ。

 

「あっ、吾輩もう魔王軍抜けました。あそこに居ても、何も得る物がありませんでしたから」

「それを信じろと?」

「まあ、信じる信じないは自由ですな。ですが、いつか吾輩の目標である最高にハイスピードな鎧が完成した時が、お前の最後!それではバイビー!」

 

 ツィーはそう言うと、工房の中へ戻っていった。

 

「アレの言ってる事は本当だよ。契約書にも書かせたからね。自己紹介が遅れたね。あたしゃ、アナ・ハイム。ハイム工房の親方さ」

 

 アナはそう言うと、流星に近寄る。

 

「しかし、あんたが噂の勇者スサかい。若いって聞いてたけど、その割には落ちついてるね」

「それ、俺の講義を聞きに来た生徒です。自分は西郷 流星と言います」

「そうなのかい?まあ、そこまで気になる事でもない」

 

 アナは流星から離れ、ついて来るように言う。

 

「ぺーがここに連れてきたって事は、あんたを気に入ったんだ。それに、伝説の鍛冶師テムの拵えた鎧。見れるチャンスを逃す訳にはいかないね。お前ら!仕事は一旦中断しな!とびきりの客が来たよ!!」

 

 アナがそう言うと、工房に居た者達は一斉に流星を見る。

 

「親方、この人は誰ですか?」

「ああ、あの伝説の鍛冶師の鎧を整備に持ってきた人達だよ」

 

 アナのその言葉に、全員が驚きの声を上げる。

 

「え?、伝説の鍛冶師ってあの!?」

「マジかよ……」

 

 アナの言葉に、他の職人達は作業の手を止める。そして、次々と流星の持ち込んだアリスの鎧を見にやって来た。

 

「こりゃ、今日は仕事にならないかもね……」

 

 アナは呆れていたが、無理もないと気を取り直して流星達を連れて工房の奥へと向かった。

 

「こっちだよ」

 

 アナについて行き、辿り着いたのは奥にある部屋だった。

 

「まあ、座りなよ」

 

 2人は促された場所に座る。

 

「さっき軽く見たけど、ありゃオーバーホールしないと駄目だね」

「そんなにですか?」

 

 流星からしたら、特に問題もなく使えていたので、オーバーホールは大げさに聞こえた。

しかし、アナは首を振る。

 

「鍛冶師の目は、誤魔化せないよ。いつから放置されたかわからないけど、そんな物を無茶な使い方して、よく簡単な整備程度で済むと思ったもんだね」

「いや……まあ、確かにそうかもしれませんけど……」

 

 流星は否定できなかった。実際、アリスの鎧を着始めてから様々な事があったからだ。

 

「……まあいいさね、とりあえず整備には1カ月以上は必要だね。しばらく泊まっていきな」

 

 2人の返事を聞く前に、アナは部屋を出て行く。

そして入れ違いぺーがやって来た。

 

「話はついたみたいだな」

「あっ、ぺーさん。先ほどはありがとうございます」

「ん」

 

 一言だけそう言うと部屋に沈黙が訪れる。

本当にあまり喋らない、寡黙な人だ。

 

「あの、ぺーさん。どうして俺達をここに?」

 

 アナはぺーが流星達を気に入ったと言っていたが、たいして話したいないのに何故気に入られたのか?それが不思議だった。

 

「……精霊と、仲が良さそうだったからだ。少し、待ってろ」

 

 そう言うと、ぺーは立ち上がり部屋を出て行った。

しばらくすると、1冊の本を持って帰ってきて机の上に置いた。

 

「読めばわかる。俺は口下手だからな……」

 

 言われた通り本を読むと、そこには精霊の宿った様々な物とそれに関わった者達の事が書いてあった。

 宿っているのに気づかず使った者、見えていたが無視した者、乱暴に取り扱った者、精霊の力を己の力と奢り破滅した者。

様々の事柄が記されていた。

 

「……精霊は気難しい。だから、嫌う者も居る。……俺じゃあ上手く言えないが、お前なら……精霊と仲良くできるんじゃないかと思ったんだ」

 

 ぺーがアリスを見る。その瞳には優しさがあった。

2人は本を読むのをやめ、ぺーを見る。

 

「ありがとうございます、ぺーさん」

「ありがとう」

 

 2人の言葉に、ぺーは照れたのか頭を掻きながら部屋を出て行った。

 

「いい人だね」

「うん……そうだね……」

 

 2人はぺーの出て行った扉を見てから本を読む。

そこには精霊と霊鳥や霊獣についての項目があった。

 

(霊鳥か……確か、甘坂のズィータの鎧に居たな。精霊とはどう違うんだ?)

 

 それが気になり、その項目を読む事にした。

 

 精霊とは、超自然的な力を持つとされる者で、彼らの宿った物は普通ではあり得ない現象を持つという。

例えば、どんなに日照りが続いても枯れる事のない泉や千を超える程の時をそびえる木等が有名だろう。

 これらの物は、時に神と特別な関係を持った場所として崇められたり、邪悪な者を崇拝する者達が占拠する事件等も過去にはあった。

しかし、精霊と遭遇する事は滅多に無い事で、その大半は他者に力を貸す事をせず彷徨う事がほとんどだとされている。

例え出会ったとしても、機嫌を損ねれば命に関わる事もあるという。

 

 そして霊鳥や霊獣とは、強い魔法力を持った動物達が、死後に姿を変えた存在の事で、ずっと暮らして居て亡くなったペットが霊獣となって帰って来た等、比較的良くある話しである。

そんな時、ある鍛冶師が考えた。「精霊は無理でも、霊獣なら宿せるのでは?」と。

 前にも話したが、精霊が魔法の鎧に宿るのは、腕の良い職人の作品を気に入り気まぐれに宿るくらいである。

しかし、比較的人と寄り添う霊獣ならあるいは……

そうして生まれたのが、召喚能力を持つ魔法の鎧だった。

 霊鳥や霊獣の宿った物を魔法の鎧に組み込み、魔法力を与える事で彼らを顕現させ、共に戦うパートナーとしたのだ。

 

 そして、読み終わる頃に再び扉がノックされたので、流星が返事をする。するとアナが入ってきた。

 

「そろそろ夕食になるよ」

「あっ、もうこんな時間か」

 

 窓を見ると既に太陽は沈み、月が昇り始めていた。2人は本に栞を挟むと立ち上がる。

 

「すっかり長居しちゃったね」

「そうだな。でも、いい時間を過ごせたな」

 

 アリスの言葉に頷き、立ち上がる2人。そして工房を出て食堂へ向かった。

2人は教えてもらった通り食堂へ向かうと、既に皆座って待っていた。

 流星とアリスも席に座り食事を始める。メニューはパンと酒場で買ってきたスープに野菜というシンプルな物だったが、満足のいく物であった。

そして、鍛冶師達はそんの2人を驚き混じりで見ていた。

 

「すげ~、本当に物が無くなってく」

「精霊の取り分、まさか生で見れるなんて」

「しかし、あの精霊は一体?」

「なんでも、持ち込まれた鎧に憑いてるらしい」

 

 そんな会話が聞こえた。

食事が終わり、アナが流星達の事を説明する。

 

「良く聞きな。今回持ちこまれた魔法の鎧は、精霊憑きの1品だ。皇帝の依頼と同時進行でやるから、気合い入れな!」

「「おおっ!!」」

 

 鍛冶師達から雄叫びが上がる。

 

「あの鎧の整備には、時間が掛かる予定だ。その間、彼らはここに滞在する。あんたも、しっかり挨拶しときな」

「西郷流星です。それで、鎧に宿ってる彼女はアリスといいます。しばらくの間、お世話になります」

 

 流星の挨拶を皮切りに、鍛冶師も挨拶をしていく。

その中でも、工房をまとめている4人を紹介する。

 

 まず、ハイム工房を取り仕切る親方のアナ・ハイム。耳が長い事からわかるように、彼女はエルフ族である。

故郷でも鍛冶をしていたが、己をより高める為にこのグラナダで工房を立ち上げた。

そして、世にも珍しい全ての属性の鎧を打つ事ができる存在だ。

 

 ジオ・ニック。主に力属性の鎧を担当する。他にも馬車や戦車の部品等を作っている。4人中では若く、アナも彼の将来を期待している。

 

 ツィー・マッド。元魔王軍鍛冶師で、アリスは彼の鍛えた鎧とも何度が戦った事があるらしい。

現在は魔王軍と完全に縁を切り、ハイム工房で技属性の鎧を担当している。

物の軽量化や鎧のスラスター等に日夜力を入れて、最近は魔法の鎧単体で飛行できないか考えてる。

 

 エム・イー・ペー。皆からはペーと呼ばれる寡黙な人物。魔法技術に精通し、魔法属性ならハイム工房で1番優れた物を作れる程だ。

 

 挨拶も終わり、アナは流星にある提案をした。

 

「どうせ、時間はあるんだ。どうだい?ウチで仕事を学ぶってのは?」

 

 アナの提案に流星は少し悩む。

この工房の技術を習得できれば、今後アリスの鎧の整備で苦労する事はなくなるかもしれないと……

 アナの言う通り、時間もある。ここは1つ教わる事にした。

 

「その提案、受けます。よろしくお願いします」

「あいよ。言ってくれれば、工房を自由に使ってもいいからね」

「はい。ありがとうございます」

 

 流星が頭を下げると、アナや鍛冶師達も頭を下げた。そして、解散となり皆自分の作業へと戻る。

流星達は部屋に戻ると、2人共ベッドへ横になる。

 

「疲れたけど、いい人達だったね」

 

 アリスの言葉に頷きながら、流星はアナから渡された紙を見る。

そこには、工房での作業内容と注意事項が書かれていた。

 

「さて、明日から忙しくなるぞ」

 

 翌日。庭に放しているチキンゾックが太陽の出る前から鳴く。青い羽根を持った1つ目の鳥は、一見モンスターのように見えるが、この世界由来の動物だ。

目覚まし鳥として、朝の早い職人達等から重宝される鳥だ。

流星達は早速仕事に取り掛かる事にした。

 

「とりあえず、アナさんに頼まれた事を片付けるか……」

 

 アナに頼まれていた事は2つ。

1つは鎧の修理に必要な素材集めだ。これは、ジオやぺーも手伝うらしく3人で行う。

もう一つは、炉の火を維持する為の燃料を用意する事である。

 

「まあ、こっちは簡単だからすぐに終わるよ」

 

 ジオがそう言うので、2人は炉の火に焚べる為の燃料を準備する。

そして、朝食を頂いた後に3人で素材集めに出かけた。

アナに渡されたメモによると、必要な物は4つ。

 1つ目は、魔法銀と呼ばれる特殊な金属だ。これは、魔法力と親和性が高く魔法の鎧や魔具を作る際に使われる物で、普通の鉄よりも加工しやすいという特性を持つ。

 2つ目は、火炎鉱石。炎輝石とも呼ばれる鉱石で、武具に炎の力を宿したり、炉の温度を高温にするのに使われたりする。

 3つ目は、氷水晶。これは、武具に氷の力を宿したり、炉を超低温にするのに使われる。

そんな事をして良いのかと思われるが、この世界には超低温化でないと溶けない鉱石があるのだという。まこと、ファンタジーである。

 最後の4つ目は、樹液だ。樹液と言うが、樹木から採取するのではない。地面に根を張り巨木のように見えるキノコの菌糸から採取できる物らしい。

 

「2人は、工房で重要そうなポジションに居るけど、ついてきて良いのか?」

 

 流星の疑問に、ジオは笑って答える。

 

「ハハッ、大丈夫さ。必要な物はもう作ってある。後は、他の奴らでもできるさ」

「俺も魔具を完成さてる……問題ない」

 

 ぺーの方も仕事を終えているらしく、問題ないようだ。

 

「なら、頼まれた素材を集めに行こうか」

 

 流星が言うと、皆がうなずく。

 

 

 流星達がやって来たのはキリマンジャロ。

もちろん地球のではない。

 正式な名前はキリッジ・オブ・マンジャ・ノーブル・ザ・ジャロ・レイディアンス鉱山というらしいが、あまりにも覚えづらいので、多くの人からキリマンジャロ鉱山と呼ばれるようになった。

グラナダ1の採掘場で、ここで採れる鉱石は様々な用途で重宝されている。

 

「俺の世界にもキリマンジャロはあるが、それに勝るとも劣らない大きさだ……」

 

 その山の大きさに驚く流星。

そんな彼に、ジオがキリマンジャロ鉱山について語る。

 

「なんでも昔、英雄が巨大なドラゴンと戦った際に崩れてできた山の1つらしいぜ」

「もっと高かったて事か……凄まじいな」

「ここには様々なモンスターがいるから気を付けたほうがいいよ。まあ、あんたなら問題ないと思うがな」

 

 そう言って笑うジオに、流星は少し心配する。

 

「アリスの鎧無しで、どこまでやれるか……」

 

 アリスの鎧はハイム工房へ預けてあるので、現在はハイム工房から貸し出された魔法の鎧、ディアスの鎧を装備している。

ディアスの鎧は、帝国騎士達も使う物で、前回の戦いで損傷したネモの鎧の変わりでもある。

 

「……いざとなったら俺達が守ってやる」

 

 ぺーもそう言ってくれるので、その言葉に甘える事にした。

3人は鉱山へと入ると、そこには帝国兵達が警備に当たっていた。

モンスターが出るの当たり前だが、どうも今日は様子がおかしい。

 

「何かあったのか?」

「わからねぇ……ちょっと聞いてくる」

 

 そう言ってジオは帝国兵に話しかける。

 

「兵隊さん。何かあったんかい?」

「ん?お前は……確かハイム工房の職人か」

 

 帝国兵が言うには坑道からモンスターが出てくると報告があったので、見回りを強化しているとの事だ。

 

「もし採掘場に行くなら、十分気をつけるんだな」

「おう。情報ありがとよ」

 

 ジオは礼を言うと、流星達の元へ戻ってくる。

 

「なんでも、坑道からモンスターが出たらしい。帝国兵達が見回ってるって話だ」

「……わかった……警戒して進むぞ……」

 

 ぺーの言葉に従い3人は坑道へと入って行く。

薄暗い坑内で、ランタンの明かりを頼りに慎重に辺りを見回す。そして、ぺーが小声で伝える。

 

「……いたぞ」

 

 その言葉にジオも槍を構える。

しかし、流星にはどこにモンスターが居るのかわからなかった。

 

「すまない、場所を教えてくれ」

「あそこだ」

 

 ぺーの指差す方向には、石筍があるだけだ。しかし、アレはモンスターの擬態だと言う。

 

「見てな」

 

 そして、ジオが足元の石を石筍に思い切りぶつけると擬態が解け、赤い身体に1つ目のモンスターが現れる。

 ギガンローパー。体に複数の触手を持ち、洞窟や塔等に生息。擬態に油断した相手を触手で絡めて食べる、恐ろしいモンスターだ。

天井に張り付いたままのギガンローパーは、触手を伸ばし流星達に襲いかかる。

 ぺーは右手に装備した大盾で触手を防ぐと、左手のガンで反撃するが、ギガンローパーは天井を這って回避、見た目よりも素早いようだ。

流星もディアスの鎧を纏い戦闘を開始する。

 現れた鎧はリック・ディアスと呼ばれ、ズングリとした外観であるが、動きやすく魔法力噴射も良好であった。

さらに、鎧の固定装備としてピストルいう魔具も装備されていた。本来はクレイ・バズーカという強力な魔具があるのだが、坑道という場所を考えて置いてきた。

流星はピストルを手にすると、ギガンローパーの回避した先へ攻撃する。

 

「当たれ!」

 

 しかし、ギガンローパーは器用に触手を動かしながら壁に張り付き回避してしまうが、そこにジオが槍を投げギガンローパーの1つ目を突いた。

 

「〜〜〜ッ!?」

 

声にならぬ声をあげてギガンローパーは天井から落ちると、流星が駆け寄り剣でトドメを刺した。

 

「ふう。なんとかなった」

「ああ……」

 

 3人は坑道の開けた場所で集まり話しあう。

 

「兵隊さんの言っていた事は本当みたいだ。こんな浅い場所にギガンローパーが居るなんて始めてだ」

「そうだな……奥がどうなっているかわからない……いつも以上に慎重に行動しよう」

「わかりました」

 

 ぺーの言葉に、3人は気を引き締めて先へと進んだ。

途中何度かギガンローパーが現れたが、やり過ごしたり、撃破して奥へと進む。

 そして、ついに採掘場へとやって来た。そこはまるで巨大な空洞で天井は高く、横幅もかなり広い場所だった。

 

「ここが採掘場か……凄いな」

 

 流星が感心していると、ジオが採掘を始める。

 

「さてと、まずは1つ目だな」

 

 彼は魔法銀の鉱脈を見つけ、採掘する。すると、すぐに目的の鉱石を入手できた。

 

「よし、これで1つ目は完了だな」

「こっちもだ」

 

 いつの間に移動したのか、ぺーも目的の火炎鉱石を採掘し終えていた。

 

「早いな……俺も頑張らないと」

 

 流星もツルハシで採掘を始めた時、突然地面が揺れ始める。

 

「なんだ!?」

「地震?」

「いや違う!これは……」

 

 3人が慌てていると、天井から巨大な岩が落ちてくる。

 

「危ない!」

 

 流星はぺーとジオを突き飛ばすと、鎧の力を使い素早く回避する。

先ほどまで3人のいた場所に大きな音と共に岩が砕け散る。

その破片をぺーはジオを庇いながら大盾で防ぎきる

 

「ありがとうよ」

「気にするな……」

 

 ぺーに礼を言うと、ジオは岩の破片を調べる。

 

「すいません。無闇に採掘したから……」

「いや、あんたのせいじゃ無いよ。こいつは人為的に起こされた落石だ」

 

 

 ジオがそう言うと、3人を覆うように影ができる。

上を見上げれば、そこには巨大な蜘蛛が居た。だが、1体だけではない。2体同時にだ。

 

「あ、アイツは、パラスパイダーじゃないか!?」

「どういうモンスターなんだ?」

 

 流星の問いに、ジオは冷や汗をかきながら答える。

 

「採掘場の奥にたまに出る。その時は、鉱山が閉鎖されて帝国騎士団が討伐に向かうんだ。そのくらいの強さを持ってる……」

 

 パラスパイダーを初めて見たぺーも動揺する。

ジオは火炎鉱石を取り出すと、それをパラスパイダーに向かって投げた。

 

「あんた、魔法使えるって言ったよな。アレに魔法を撃ってくれ」

 

流星はその動作で何をしようとしているのか理解し、誘導の高いマジックミサイルを唱える。

 

「逃げるぞ!勿体ないが、命あってのもんだ!」

 

 パラスパイダー達は3人に向けて糸を吐こうとした時、マジックミサイルが命中した火炎鉱石が内に秘めた魔法力を解放。あっという間に採掘場は火炎の海へと様変わりする。

パラスパイダーの悲鳴が聞こえるが、その程度で倒せる相手ではない。逃げる為の時間を稼ぐのが精一杯だった。

 

「こっちだ!」

 

 ジオは採掘場から脱出できる道へと案内する。そして、3人はなんとか外へと出れた。

魔法銀しか採掘できなかったが、パラスパイダーという危険なモンスターが出没しているなら話は別だ。

 流星達はすぐに見回りをしている帝国兵達に連絡すると、その場で鉱山の一時的な閉鎖が決まった。

確認した後に、本格的な対応をするとの事だ。

 

「さて、とんだ目にあったが、樹木を採取して今日は帰るか」

 

 ジオはそう言うと、流星達もそれに続く。

 

 

 グラナダ郊外には、キノコでできた森のような場所がある。

地面に根を張り巨木のように見えるキノコだが、ここから溢れる樹液を凝固させた物が炉の燃料になるのだそうだ。

 

「このキノコは、1本で10リットル分の材料になるんだ」

「へぇー、凄いですね」

 

 ぺーの言葉に流星が感心していると、ジオが言う。

 

「まあな。でも、採取する時に気を付けな。凝固前の液体は毒だからな」

「そうなのか?」

「ああ。だから採る時は注意してるんだよ」

 

 そう言って笑う彼に釣られて流星も笑った。

3人は手分けしてキノコから染み出た樹液を採取。ハイム工房へと戻った。

 

 流星達の帰りが早かった事から、アナは理由を聞くと、それに納得した。

 

「パラスパイダーが2体も出たんかい……しばらく鉱山は閉鎖だね」

 

 アリスの鎧の整備も伸びそうだが、仕方ないの事だ。

この時は、誰もがそう思っていた……

 

 

 それから1週間後、グラナダを騒がせる事件が起きた。

 

「キリマンジャロ鉱山の内部にて、ダンジョン化している場所が発見された。ダンジョン攻略まで鉱山は閉鎖。攻略完了後、採掘を再開する」

 

 その報告に、アナが頭を抱える。

 

「よりにもよってダンジョンかい……」

「あの、ダンジョンとは?」

 

 流星の質問に、アリスが答える。

 

「沢山モンスターが集まる場所。もしくは、洞窟等の奥で魔法力が溜まると、たまに発生する」

 

 ダンジョンの先には、その地形に適したモンスターが棲み、ダンジョン最奥にあるボス格の存在を倒さない限り、際限なくモンスターが出てくるという。

しかし、アリスは何事かを考えている。それを聞こうとした時、アナが鍛冶師達に言葉を続ける。

 

「工房にある素材の残りを確認しときな。この感じだと、傭兵達が集まるよ。それから、納品できる分は納品しときな」

 

 鍛冶師達は頷き、急ぎ作業に取り掛かる。

 

 そして、アナの読みは正しく。ダンジョンを攻略しようと多くの傭兵達による突入が開始されていた。

本来なら、帝国騎士団が動くのだが、魔王軍の団長が負傷しているとはいえ、健在している状態で動く訳にはいかない。

なので、傭兵達によるダンジョン攻略が始まっているのだ。

 

「さて、あたしらも準備をしないとね」

 

 アナはそう言うと、工房の奥へと入って行く。

流星も手伝いをしながら、アリスが何を考えているのか聞いた。

 

「何か、考え事をしてるみたいだけど、どうした?」

「……キケロガが、どこに行ったのかを考えている」

 

 キケロガ。その名を忘れるはずもない。

アリスを闇精霊に堕とす程の魔法力を秘めた魔道士。

 部下である、ソラリ・ルショーンを倒す事はできたが、キケロガはその場に居なかった。

どうやら、アリスは今回のダンジョン化にはキケロガが関わっていると考えたようだ。

 

「キケロガが、あの鉱山に?」

「わからない……でも、無関係とは思えない」

 

 アリスの言う事はもっともだ。しかし、確固たる証拠も無い

悩む2人にぺーが言う。

 

「なら、傭兵達から情報を集めるのはどうだ?」

「傭兵……なるほど」

 

 ぺーの言う通り、傭兵達は ダンジョン攻略の為に情報交換をしてるはずだ。

2人はその提案に乗る事にし、工房の手伝いをしながら、工房へ訪れる傭兵達から情報を集めた。

そして、数人の傭兵から気になる話を聞いた。

 

「その話なら、俺も聞いたぜ」

「詳しく教えてもらえますか?」

「ああ、いいぜ。お前さんも聞いた通り、ダンジョンに変わったモンスターが出てる」

 

 何でも、人やモンスターに鎧の一部等、様々な物がでたらめに接合された、よくわからない者がダンジョンを徘徊しているそうだ。

 

「5年程傭兵をしてるが、あんなモンスター見た事も聞いた事も無い。冥府から這い出てきたって言われたほうが、納得するね」

 

 実際の姿を見た事ないのでわからないが、よほど奇天烈な姿をしているのだろう。

しかし、そういう話を聞いていく内に、アリスの表情は険しさを増していく。

 その夜、流星はアリスから衝撃的な話を聞かされる。

なんと、傭兵達の話しているモンスターに心当たりがあるそうだ。

 

「それは本当かい?」

「うん。先生、ソラリと戦った時に何か違和感はなかった?」

「違和感?……そういえば、ナニカ硬い物を斬った手応えを感じたな。それがどうかした?」

「やはり、あの時の感覚は……」

「何かわかったなら教えてほしいんだけど」

「実物を見ないと確証は得られないけど……多分、グールだと思う」

 

 グール。人間を食らう有名なアンデッドモンスター……では無い。

とある魔法によって生み出された、非人道的なモンスターだとアリスは言う。

 グールは、リユース・サイコ・デバイス儀式と呼ばれる物によって生まれる。

この儀式は、四肢を欠損した兵に義手や義足等を接続する魔法だ。

ここだけ聞くと良いように聞こえるが、その手足は他の人間から切り落とされた物やモンスターの身体等を接続するという。

さらに始末の悪い事に、この儀式によって手足を再生された者は術者が望めば、その意思に関係なく操る事ができるそうだ。

 

「人間のマリオネット化……恐ろしい魔法を考えた奴が居たな」

「この魔法を考えたのは、前大戦の時に3魔団の魔道士達を率いた者……いや、率いたモンスター。メデューサキュベレイだ」

 

 メデューサキュベレイは、前大戦の時に呪術士団長を務めたモンスターだった。

劣勢になった魔王軍を立て直す為、彼女は新しくリユース・サイコ・デバイス儀式を生み出した。

人を人と思わぬ、魔法儀式。それは大いに勇者達を苦しめた。

 なにせ、大戦の時には材料はそこら辺にいくらでも転がっていたのだから……

 

「しかし、グールの事はラ・ムール国に居た時にも聞いた事が無いな」

「それはそう。新しくグールを生み出さない為に、リユース・サイコ・デバイス儀式についての文献は、全て彼と抹消したから」

 

 アリスが言うには、メデューサキュベレイを倒した後、残された魔法書等は先代の勇者達によって全て廃棄されたという。

 

「そんな魔法を開発できるなんて……とんでもない奴だな」

「このまま見過ごせば、この街はグールに支配される可能性もある」

 

 グラナダには数多くの鎧がある。それを部品にされたらどうなるかは、火を見るよりも明らかだ。

お世話になった人達が、それに巻き込まれるのは流石に目覚めが悪い。

 流星は立ち上がると、アナのいる部屋へと向かった。

 

 

「失礼します」

 

 ノックをし中に入ると、アナ達はちょうど鎧をメンテナンスしている所だった。

 

「どうしたんだい?こんな時間に」

「実は、アリスから気になる話を聞いて……」

 

 流星はアナに、アリスから聞いた事を説明した。

 

「なるほどねぇ……」

「うぇー……あの女、生きてるのですか?吾輩、あの女だけは受け付けませんぞ」

 

 ツィーにとってもメデューサキュベレイは何かある存在らしい。

 

「ならば、ダンジョン攻略に傭兵を集めた可能がありますな。わざと露見させて、集まってくる人間を手駒に変える。あの女のやりそうな事ですな」

 

 ツィーはメデューサキュベレイの性格をよく理解しているようだ。しかし、それは少々困る事になる。

 

「さっきアリスが言っていた最悪のシナリオになるか……」

 

 このまま放置すれば、惨劇は必ず起きる。しかし、それをどうにかできそうな帝国騎士団は、カロンの部隊と睨み合いの真っ最中ですぐには動けない。

 

「……アナさん。アリスの鎧を簡単でいいので整備はできますか?」

 

 この未知の敵を相手に、アリスの鎧無しで倒すのは無理だろう。

しかし、アナは首を振りたくなかった。

 鍛冶師としてアリスの鎧を完璧な状態に整備して送り出したかった。

だが、顔馴染み達が魔王軍の操り人形となるのはもっと嫌であった……

結局、アナはこう答えた。

 

「3日待ちな。完璧とは言えないけど、満足するぐらいに仕上げるよ」

「ありがとうございます」

 

 流星は頭を下げると、部屋を後にした。

 

そして3日が過ぎ……

 

 アナは流星を工房の奥にある部屋へ連れて行くと、扉を開く。その奥にあったのは、簡易整備さらたアリスの鎧だった。

 

「これが……アリスの鎧……」

「ああ、そうだよ」

 

 特に変化は見られないが、今までとは何か違うと感じられた。

 

「本来ならちゃんと整備したかったんだけどね……状況が状況だから、簡易整備にしたんだ」

 

 アナに装備するよう言われ、流星はアリスの鎧を着装する。

 

「どうだい?どこか変な所はないかい?」

「……大丈夫です。むしろ前より軽くなった気がします」

「そうかい……それは良かった」

 

 流星の言葉にアナは嬉しそうに笑う。そして最後にこう言った。

 

「必ず帰ってきな!まだ、完全に整備できてないんだからね」

「わかりました。必ず戻ってきます」

「信じているよ」

 

 準備を整えた流星達は、アナ達の見送りを背に受けて、ハイム工房から出発したのだった。




鍛冶師

 地球では、鉄や鋼を熱して叩き、道具や刃物などを製造する職人達をそう呼ぶ。
しかし、この世界には魔法力やオーラ等を溜め込んだ鉱石があり、これらを加工できる者達が鍛冶師と呼ばれる。
 アリスの鎧を鍛えた鍛冶師はテムと呼ばれ、素晴らしい作品を幾つも残した。
しかし、彼は酒に目がなく、報酬として酒を渡すと誰にでも自身の鍛えた鎧を渡したり壊れたモノを治したという……
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