異世界ガンダム   作:꒰ঌ流✧星໒꒱

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キリッジ・オブ・マンジャ・ノーブル・ザ・ジャロ・レイディアンス鉱山内ダンジョン攻略戦

 キリマンジャロ鉱山に再び訪れた流星達は、その変わりように少々驚いた。

商魂ある行商達が露店を開き、傭兵達達を相手に商いを行い、少し離れた場所では客引きをする女性の姿も見えた。

 見張りをしていた帝国兵に聞くと、ダンジョンのある場所では良く見られる光景らしい。

リスクはあるがその分の見返りを求め、傭兵達はダンジョンに潜り財を持ち帰れば、行商達は商売が上手くいく。

そうしてダンジョンの発見された街は発展し、大きくなっていく。そういう物だと帝国兵は語った。

 

「なるほど……」

 

 流星は帝国の兵士にもう少し話を聞こうとしたが、別件で忙しく質問されたく無いのか足早に去ってしまった。

どうしようかと困っていると、老人が声を掛けてくる。

 

「そこの方。どうされましたかな?」

「あ、いえ……ダンジョンについてもう少し話を聞きたかったのですが、忙しいと断られて」

「ふむ、どうやらお困りのご様子……ここは1つ、ワシから何か買わんか?答えられる事なら、答えるぞ」

 

 どうやらこの老人も行商のようだ。流星は彼の商品を見ながらダンジョンについて話を聞く。

 

「ほう、ダンジョンの攻略ですか。お若いのに、なかなか野心的だ。では、老婆心ながら申し添えを……お若いの、無理はなさるな。坑道と違い、目に見えぬ罠等がひしめき合う。慎重に慎重を重ねて行動なされよ」

「なるほど……ダンジョンの攻略には細心の注意が必要か……」

 

 流星はアリスを見る。アリスもかつては先代勇者と共にダンジョンの攻略をしたそうだが、それも随分昔の事だ。

当時とは変化が起きている可能性もある。彼女もそれがわかっているようで、流星の意見に賛成であった。

 

「わかりました。ご忠告に感謝します。さて、色々教えてもらえたし、何を買うか……」

 

 既に準備はしてあるが、消耗品の類は多めにあって損はない。

傷薬を追加で買おうとした時、ある物に目が止まる。

パックの上位薬、メガパックが置いてあったのだ。

 

「メガパックだ。これは、売り物ですか?」

「ほう、それがわかりますか」

「ええ。パックと似てますが、保有魔法力が高いのでそれで見分けがつきます。すいません、これをお願いします」

 

 少々値段はするが、キリマンジャロ鉱山に発生したダンジョン攻略の切り札になるだろう。

流星は老人に別れを告げ、キリマンジャロ鉱山へ入った。

 

 

 キリマンジャロ鉱山内では少々困った事になった。

内部へ行くには、傭兵ギルドにて発行されるタグが必要との事だ。しかも、ある程度依頼をこなした熟練の傭兵でないと入れてもらえないらしい。

 そこで流星は、英雄の徴で代用できないか試しに聞いた所、勇者が攻略しに来たと大騒ぎとなり、流星達は鉱山の入り口で足止めされてしまった。

帝国兵の中には、須佐達に助けられた者もおり、英雄の徴で須佐達の仲間だと気づいた者も少なくなかった。

 その為、勇者を一目見ようと騒ぎを聞きつけた野次馬が続々と集まってくる始末となったのだ。

だが、今はそれどころではなかった。

 流星は騒ぐ彼らをなんとか宥め、キリマンジャロ鉱山内部へと入る事ができたのだった。

そして、今後を考えて後で傭兵ギルドにて発行されるタグを貰おうと思った。

 

 

 鉱山内部はダンジョンが出現した影響なのか、廃坑のような雰囲気だった。

しかし、傭兵達の出入りも多いので、モンスターは少なく進むのは比較的簡単であった。

さらに、前回の探索でギガンローパーの見分け方を教わったのも大きかった。

 坑道内部を進み、流星達は鉱山内部に出来たダンジョンの入口に辿りついた。

 

「これが……ダンジョンか」

 

 ゲームの世界でしかその場所を知らない流星は、その雰囲気に圧倒された。

ダンジョン内部は薄暗く、壁や床の所々が発光しており、なんとか先が見えるといった所だった。

 

「先生、先に進もう」

「そうだな」

 

 アリスに声をかけられ気を取り直すと、ディアスの鎧を纏い、奥へと進んだ。

 

 ダンジョン内部は複雑怪奇であった。

内に入ってすぐにハシゴで上に登らされ、悪路を進んだと思ったら、谷間をつなぐつり橋を渡らされたり、さらには急な坂をよじ登るはめになったりと……

 

「これは厄介だな。魔法の鎧がなかったら、到底攻略出来なかった」

 

 ディアスの鎧で身体能力が上がったとはいえ、ダンジョン内の複雑な構造を把握して進むのは大変であった。

そんな道を進んでいく内に、始めてモンスターと遭遇した。

 

「アッザム!」

 

 スライムアッザム。ゼリー状の身体を持つ小型のモンスターで、だいたいの場所で見かける。

傭兵達がモンスターの討伐を進めたので、第1層目は弱いスライムアッザムしか残っていない。

 弱いとはいえモンスターなので流星は倒そうとしたが、スライムアッザムはダンジョンの壁の隙間へ逃げていった。

 

「うーん、弱いものイジメみたいで気が引けるな」

「先生、ここはダンジョン。モンスターは敵。倒さなきゃこっちがやられる」

「……そうだな。……ん?なんだ」

 

 流星はアリスの言葉に納得し、さらに奥へと進もうとした時、足元に何かが落ちていた。

それを拾うと、魔法力を含んだ鉱石である事がわかった。

 

「ラッキー!さすが、鉱山のダンジョン。これは、アナさん達のお土産にしよう」

 

 それをカーゴの込められた首飾りへしまう。

第1層目の攻略はほぼ完了しており、第2層目へ向かう階段も発見されていた。

そこを通り、流星達は第2層目に足を踏み入れた。

 

 ダンジョン第2層目、そこは今までの山道や渓谷を思わせる物ではなく、石畳でできたフロア状になったいかにもなダンジョンであった。

第1層目のスライムアッザムに加え、ゴブリンやコボルドバルディといった亜人系モンスターが徘徊している。

 ここには多くの傭兵達が攻略に挑んでいる為、モンスターの討伐がある程度進んでいるので、流星達が苦戦する事はなかった。しかし、天井から奇襲を仕掛けるギガンローパーもおり、油断はできない状況であった。

また、第1層目より複雑な構造をし、マップも完全ではない為、地図を作製しながら進む必要もあった。

 

「帝国の兵士が言っていたけど、製作した地図の情報を買ってくれるそうだよ」

 

 複数の傭兵達から地図の情報を買う事で、ダンジョンの地図を正確に作製する事ができている。

その地図を攻略に使う事で、リスクを回避しダンジョンの探索を進めていける。

もちろん、全ての傭兵が製作した地図を提出している訳ではない。誰だって、良い狩場は渡したくないものだ。

 そんな話をしていると、アリスが何かに気づいたように周囲を見回した。

 

「先生、囲まれてる」

「なに!?」

 

 慌てて周囲を警戒すると……

 

「ギギィ!」

 

 10体程のゴブリンとコボルドバルディ達が徒党を組んで待ち構えていたのだ。

 

「ギガンローパーは居ないみたい」

「奇襲を警戒しなくて助かる。蹴散らすぞ」

 

 そう言うと、流星はクレイ・バズーカを取り出す。今回は坑道では無いので、遠慮なく攻撃力のあるガンが使える。

 

「喰らえっ!」

 

 クレイ・バズーカから放たれた魔法力の弾丸はゴブリンとコボルドバルディ達の間に落ち、爆炎と衝撃を撒き散らす。

その威力にゴブリン達は吹き飛び、コボルドバルディ達も怯む。

 

「たたみかけるぞ、アリス!」

「わかった」

 

 アリスに魔法力を渡すと、2人は詠唱する。

 

「「無数の氷刃よ!コールドイナク!」」

 

 怯んでいたコボルドバルディ達目掛け鋭い氷の刃が雨のように降り注ぐと、その身体を切り裂き、凍りつかせる。

 

「グギャッ!」

「ギュネィ!!」

 

 残ったゴブリンとコボルドバルディは、慌てて逃走を図る。流星達はそれを見逃さない。

 

「逃がさない」

 

 アリスの放つ魔法の矢が次々と逃げ惑うモンスター達へ命中し、撃破していく。

 

「これで全部か?」

「そうみたい」

 

 周囲を見回すが、動く影はない。どうやら、この部屋のモンスターは全て倒したようだ。

その時、流星は部屋の隅に箱が置いてあるのに気がついた。

近づいてよく見ると、それは宝箱であった。

 

「運が良いな。こういうのは、すぐに無くなると思ったんだが」

「この場所は、地図だと未探索部分みたい。でも先生、気をつけ……」

「箱の中身はなんだろう?」

 

 アリスが警告しようとした時には、流星は既に宝箱へ手をかけていた。

そう、警告は遅かったのだ……

 

「カチャキンブゥワ!」

 

 なんと、宝箱はバウンドミミックだった!

コレは宝箱に擬態しているモンスターで、その見た目に騙された者を捕食するモンスターだ。

 

「ぐおっ!」

 

 宝箱から異様に発達したバウンドミミックの右手が伸びてくるが、それを素早く魔法力噴射(バーニア)で回避。

攻撃を避けられたとわかると、バウンドミミックの潜む宝箱から足が生え、左腕で箱の蓋を持つと、それを盾のように構える。最後に1対の大きな耳のようなものの付いた尖った顔が身体から飛び出した。

 

「先生、うかつに開けるとモンスターが飛び出して来るって言おうとしたのに!」

「すまんアリス。説教なら後で受ける」

 

 アリスは怒ったが、今はそれどころではない。

バウンドミミックが右腕を振りかぶりながら襲ってくるから。

 

「このっ!」

 

 そこへ流星はクレイ・バズーカで攻撃するが、バウンドミミックはそれを左腕の盾で防ぐ。

右腕の攻撃は止められたが、バウンドミミックはすぐに次の手を打ってきた。

 

「うおっ!?」

 

 なんと、バウンドミミックはムービルフィラを放ってきた。見かけによらず、頭脳派でもあるようだ。

流星はクレイ・バズーカを収束モードから拡散モードへ切り替えると、魔法力を込めて放つ。

クレイ・バズーカから飛び出し途中まで進んだ魔法力の塊は、拡散するとシャワーのように降り注ぎ、ムービルフィラを全て撃ち落とした。

 また、一部の拡散魔法弾がバウンドミミックへ命中するが、宝箱に擬態しているだけあって、表皮はやたら硬くダメージにならなかった。

 

(これだと、ピストルもダメージにならなそうだな)

 

 そう判断した流星は左手に剣を構えると、クレイ・バズーカを構えて前進する。

それを見たバウンドミミックは、すぐに行動を切り替えた。左腕の盾を巧みに操り、右手を握るとストレートを放ってきた。

 

「このっ!」

 

 流星はそれをクレイ・バズーカで受け止めるが、バウンドミミックのパワーにはかなわず吹き飛ばされる。

しかし、すぐに体勢を立て直すが、追撃のムービルフィラが飛んで来た。

 

「くそっ!」

 

 ムービルフィラをバーニアで回避すると、今度は剣を振りかぶる。

そこへ、アリスからの援護がくる。

 

「無数の氷刃よ!コールドイナク!」

 

 アリスの魔法力が籠った無数の氷の矢がバウンドミミックに襲いかかると、その身体に当たり氷が飛び散る。ダメージこそなかったが、怯ませる事はできた。その隙をついて流星の振りかぶった剣が、バウンドミミックの左腕を両断した。

 

「ギャインッ!」

 

 左腕を切断された事で、バウンドミミックは防御手段を失った。

そこへ流星はクレイ・バズーカを構えて収束モードで魔法力弾を放つ。

 

「これで終わりだ!!」

 

 それはバウンドミミックの腹部に直撃し、その擬態用の宝箱を吹き飛ばす。

 

「ギャアアアアア!!」

 

 断末魔の悲鳴を上げながら、バウンドミミックは粒子となって消えた。

 

「まさか、宝箱にモンスターが潜んでいるなんてな……」

「先生、油断しすぎ」

 

 アリスに叱られるが、今回は反論できない。

 

「……そうだな。気をつけるよ」

 

 そう答えると、バウンドミミックが居た場所に何かが落ちていた。それへ近づと、そこには1本の刀が落ちていた。

 

「これは?」

「鑑定する」

 

 そう言うと、アリスは刀を手に取り調べ始める。そして物が何なのか判明した。

 

「この武器は、魔法の込められた武器みたい。名前は確か、カネサダノツルギだったはず」

 

 カネサダノツルギ。またの名を妖刀カネサダ。使い手に高い機動を与えるが、耐えられない者はその身を滅ぼすという呪われた剣でもある。

 

「……先生、これ欲しい?」

 

 そう問われ流星は考える。

 速さが手に入るのは非常に良い事だが、身体を壊す程となると遠慮したい。仮に耐えられたとしても、アリスの鎧の装備品であるブースターユニットと併用した時にどうなるのかがわかならない。

もし、カネサダノツルギの効果が出てしまったら、ただでさえじゃじゃ馬なブースターユニットが暴走トラックへと変わる。その結果は考えるまでもない。

 

「いや、いらない」

 

 アリスの問いにそう答える流星。その反応は予想できたが、一応確認してみたのだ。

 

「だよね」

「ああ。これは……俺が持って良い物じゃない。この武器の力に耐えられる者が使うべきだ」

 

 そう言って刀を受け取ると、それをカーゴへとしまう。いつか扱える者に会った時に渡すか、何処かの収集家に売るかしよう。

 

「さて、ここまで来るのに魔法力も使ったし、少し休憩するか……」

 

 カーゴからパックを取り出し飲みながら追加で鍋等を出す。

水を満たした鍋に干し肉と芋と豆を入れて簡単なスープにすると、それをアリスに差し出す。

 

「ほら、アリス」

「ありがとう」

 

 スープを受け取ったアリスはそれを食べ始める。

それを見ながら流星はカーゴから地図を取り出し、現在地と未探索部分をチェックする。

 

「このダンジョンは広いな……」

「そうみたい。何処か安全な場所で寝る事も考えないとかもしれない」

「そうだな。後で、先に攻略を進めている傭兵に聞いてみよう」

 

 2人はしばしの休憩を終えると、再び攻略を開始した。

 

 未探索部分の第2層を進みつづけると、第3層へ降りる場所にたどり着いた。

これまでのルートをしっかり記し降ると、そこは今までの石畳のような場所とは違い、まるで古代遺跡の通路を思わせるような場所であった。

 

「帝国の兵士も言っていたが、第3層はほとんどが未探索らしい。慎重かつ迅速に進めよう」

「わかった」

 

 2人は頷き合うと、第3層を進み始める。

第3層は今までの階層と違って照明がなく薄暗い。そして不気味なほど静まりかえっている。

そんな第3層だが……

 

「止まって。何かいる」

 

アリスがいきなり制止の声を上げると、曲がり角からひょっこりと白い布を被って左右にロウソクが浮いた幽霊のようなモンスターが現れた。

 

「なんだ?あのモンスター?」

「気をつけて、ゴーストハンブラビは魔法の使い手」

 

 ゴーストハンブラビ。暗闇にまぎれて複数で襲ってくるモンスター。

仮装のオバケみたいな見た目とは違い、彼らに肉体は無く、壁等をすり抜けてくるので、こういうダンジョンで出てくると、その厄介さは計り知れない。

 

「ゴーストハンブラビか……アリス、俺が囮になる。その隙に魔法で攻撃を!」

「わかった」

 

 2人が作戦を練っていると、ゴーストハンブラビが動いた。

2人へ向けたゴーストハンブラビの両手から炎が噴き出す。2人は咄嗟に回避するが、炎は壁に当たると反射して襲いかかってきた。

 

「危なっ!?」

 

見たことない魔法に驚くが、それには種があった。

 

「壁に隠れてる奴が居る。それで反射してるように見せてるんだ」

 

 アリスの忠告に壁を良く見れば、他のゴーストハンブラビが隠れている。

コチラを伺うように浮遊するゴーストハンブラビ。その数は10匹以上はいるだろうか?

 

「厄介だな……」

 

そう呟くと、流星はアリスに作戦を伝える。

 

「作戦変更だ。俺が異世界流除霊術を見せてやる!」

「除霊術?先生はそんな高等魔法を使えるの」

 

 アリスが驚いている間にも、流星は動き出す。

下着以外の全て物をカーゴへしまうと、自分の尻を両手でバンバン叩きながら白目をむいた。そして……

 

「びっくりするほどユートピア!びっくりするほどユートピア!」

 

 と、ハイトーンで連呼しながらその場で跳ね回る。

いきなりの奇行にその場に居る誰もが凍りついた。それでもなお流星の奇行は続いており、そのままゴーストハンブラビへ突撃した。

 そんな流星をゴーストハンブラビは魔法による迎撃ではなく、逃走を選択。

ゴーストハンブラビ達は全て居なくなった。

 

「さすが、最強の除霊術だ。異世界の幽霊相手でもなんともないぜ」

 

 カーゴから衣服を取り出しながらそう言う流星。

 

「先生、あれは?」

「アレは俺の世界で有名……でいいのかな?まあ、最強の除霊術だよ」

 

 少し恥ずかしそうにしながらそう答えると、アリスが近寄ってくる。そして……

 

「えいっ!」

 

 何故かいきなり平手打ちをしてきた。その威力に床に倒れる流星。

 

「痛っ!なんで叩く!?」

 

 叩かれた頬をおさえ涙目になる流星へ、アリスは怒った表情で言い放つ。

 

「先生、次アレやったらコレだから」

 

 そう言うと先に進んでしまう。どうやら、地球最強の除霊術はお気に召さなかったようだ。仕方ないので、この術は封印する事にした。

 気を取り直して先へ進む2人。

未探索というだけあり、モンスターの数も多かった。第2層に居たモンスター以外にも、魔法力によって生み出されたバウゴイルやコウモリに似たジャムルバーン等、奇襲を仕掛けてくるモンスターも居り、探索だけに精神を集中させず、周囲への警戒を怠らない注意も必要だった。

 さらに、第3層では特殊なモンスターも現れてきた。

 

「うげぇ、何だコイツ?」

 

2人の目の前に現れたのは巨大な1つ目のモンスターだ。直径は1メートル程だろうか?そのモンスターが2匹、触手で這って移動してくるのだ。

 

「コイツらはダークアイザック。この目玉を見ると、催眠状態になるから気をつけて」

 

 このモンスターは見た目通り触手系の攻撃を得意としており、獲物を催眠状態にして捕食する習性を持つ。

 

「じゃあ、そのモンスターの弱点は?」

 

 流星の問いにアリスは簡単に答える。

 

「目を見ない事」

 

 そんな2人の様子にダークアイザックが奇声を発しながら突進してきた。

2人はそれを左右に分かれて回避すると、即座に攻撃に移る。

まず動いたのはアリスだ。魔法力弾を放つがダークアイザックにはダメージが無い。

それでも攻撃を続けると、鬱陶しそうに触手を振り回す。

 

「先生、今!」

「よしっ!」

 

 流星は剣を構えると、全力の突きを繰り出す。それは狙い違わずダークアイザックの目玉を直撃し、絶叫を上げながら消滅した。

 

「まずは1匹だ」

「先生危ない!」

 

 アリスの警告に動こうとするが、それよりも早くもう1匹のダークアイザックが触手を絡ませる。

 

「しまった!?」

 

 ディアスの鎧の出力を上げて振り払おうとするが、ダークアイザックの触手の力が強く、引きずられていく。

そして獲物を捕食せんと、ダークアイザックは巨大な口を開く。

 

「そうはさせない!風よ切り裂け、ムービサーベ!」

 

 強力な風の刃が飛ぶと、流星を拘束するダークアイザックの触手を切断する。

これにたたらを踏むダークアイザックへ触手を振りほどいた流星が斬りかかろうとしたが、アリスの警告の声と共に背後からの殺気を感じ、咄嗟に前転で回避する。すると、先程まで流星が居た場所に触手が叩き付けられた。

 

「もう1匹いたのか!?」

 

 天上に隠れていたダークアイザックは仲間を庇うかのように触手を振るうと、2人は周囲を取り囲むように触手を動かす。

警戒しながらどう戦うかを考えるのだった。

 

「目を見ない。しかし、触手も警戒する。厄介なモンスターだ……」

 

 地面に居るダークアイザックは触手を切断されたが、目玉は健在でこちらを睨み続けている。そして天上を這いずるダークアイザックは触手で牽制してくる。

 

「でも、視線を遮ればいいんだよな。パーム!」

 

 

地面から炎が噴き出し、視線が遮られると、天上に向かってクレイ・バズーカを拡散モードで放つ。

すると、天上に張り付いていたダークアイザックに弾丸が着弾し、叫び声を上げながら消滅した。

 

「アリス、トドメを」

「わかった」

 

 残ったダークアイザックへ向かってアリスは魔法を唱える。

 

「汝の生命力を我が糧とせん。トゥール」

 

 トゥール。この魔法に対して抵抗できなかった者は、生命力と魔法力を失うのと共に術者が数割程吸収する。この先の事を考えると、あまり消耗するのは避けたい。そこで、この魔法を使用した。

ダークアイザックは始め抵抗できていたが、次第に苦しみだし、動きが鈍っていきそのまま消滅した。

 

「これで全部か?」

 

 周囲を警戒するが、モンスターの気配は無い。

 

「そうみたい」

 

 2人は安堵すると、第3層の探索を再開するのだった。

 

 

 第3層をしばらく探索する2人の前に大きな扉が現れた。それはまるでボス部屋のようだ。

 

「この先にボスが居るかもしれないな」

「準備は大丈夫?」

 

 2人が頷き合うと、扉をゆっくりと開く……そして、その先ではコボルドバルディ達が石を積んで遊んでいた。

 

「……えっと?」

「アレはまさか……」

「アリス。何か知ってるのか?まさか儀式か何かか?」

 

 もし、コボルドバルディ達が石を積む事で何か起きるなら、それを止めないといけない。

 

「アレは、コボルドバルディの石積み遊びといって、完成すると世界が滅ぶとされる……という都市伝説」

「えぇ……」

 

 コボルドバルディの石積み遊び。それは、彼らが石積み遊びを行っていて、完成させると世界が滅びるといわれている。

 ある学者は世界樹のように巨大な石が積みあがり、それが崩れて世界が滅ぶと言い、また別の学者は積み重ねた石が魔法陣となり世界を滅ぼすと言った。

しかし、そんな事をしているコボルドバルディは発見されておらず、仮に居たとしても彼らの知能でそこまでの物が作れるか怪しいとされ都市伝説扱いであった。

 

「先生、少し観察していかない?」

 

 そんなアリスの問い掛けに流星は考える。

 

(アリスが凄く興味を示しているのは珍しいな。それにハノイの塔の異世界版みたいで気になる)

 

 そう考え、流星は彼らの様子を観察する事にした。

 

「え?いいの?」

 

 こころなしか嬉しそうなアリスに、流星は頷く。

 

「ああ。でも、観察するだけだよ?」

「うん!」

 

 コボルドバルディ達は楽しそうにしかし慎重に石を積んでいく。その数は10個以上はあるだろう。

息を止め、慎重に積み上げていく中、彼らの元に乱入者が現れる。

 

「グムッ!!」

 

 そう叫んだ入って来たのはオーガハンマ。モンスターであるが武具を使い熟し、熟練の傭兵や兵士でも苦戦する強敵である。

そんなオーガハンマはコボルドバルディ達を威嚇すると、彼らは慌てた様子で石の塔をくずして何処かへ運んでいった。

その様は、サボっていた者を叱る現場監督のようであった。

 部屋を見渡し、サボっている者が居ないのを確認すると、オーガハンマは元来た道へ戻っていった。

 その様子を見ていた流星は、アリスに質問する。

 

「モンスターにも上下関係があるのか?」

「ある。強いモンスターが弱いモンスターを従えて村を襲うのは良くある事だ」

「なるほどな……」

 

 そんな会話を交わしながら観察を続ける2人は、ある事に気付いた。

 

「なあアリス、あの塔を作ってた石ってどこから運んで来たんだ?」

「……確かに」

 

 コボルドバルディ達が石の塔を作るのに使っていた石。第3層は古代遺跡の通路のようになっており、石ころはほとんど転がっていない。第2層目もしっかりとした石畳でできておりそこも違う。第1層目は山道や渓谷を思わせる物であったが、遠目であったが石の種類が違った気がする。

 では、彼らはどこから石を持ってきたのか?

2人が頭を悩ませていると、アリスはある事を思い出した。

 

「先生。ダンジョンに入ってしばらく進んだ時にスライムアッザムと遭遇したのを覚えてる?」

「ああ、覚えてる。確か魔法力を含んだ鉱石を残して逃げた……まさか!」

「そのまさかだと思う」

 

 コボルドバルディ達が運んでいた石。それは、キリマンジャロ鉱山内から採掘した鉱石の可能性が出てきた。魔法の鎧を作る意外にも使い道は多い。もし、魔王軍がそれらも目的にこのダンジョンを作成したのなら……

 

「魔王軍もこの鉱山に着目してる可能性は高い。危険だ」

 

 流星はコボルドバルディ達の後を追いかけようとしたが、アリスがそれを止める。

 

「待って先生。そのままだと、すぐに見つかってしまう。そうならない方法を教える」

 

 アリスが教えてくれたのは、姿を消す魔法アクティブ・カモだった。

これは、背景色と同化して非常に見えづらく実質透明状態になる魔法で、偵察をするのに非常に便利である。

しかし、弱点もあり、素早く動いたり、僅かなモヤや砂埃で迷彩を見破られる可能性があり、常に魔法力を纏って姿を誤魔化している関係で、魔法力を感知されて発見される等もあり注意が必要だ。

 その後、流星はアクティブ・カモを唱え、静かに尾行してダンジョンの通路を駆ける。しばらく進むと、彼らはコボルドバルディ達が頻繁に出入りする部屋を見つけた。

 

「出口か?」

「違うと思う」

 

 しかし、そこは行き止まりであり扉が閉まると同時に光に包まれたかと思うと、別の場所へと転移させられる。そこは岩場だった。

 

「……ここは?」

 

 周囲を調べていると、何者かの声がする。

 

「どうやらネズミが紛れたようですね」

 

 その声と同時に、流星達へ魔法の矢が飛来する。

移動して回避を試みるが、正確にこちらへ誘導してくる。

 

「バレてるのか!」

 

 流星は剣を構えると、飛来する魔法の矢を払い、姿を現す。

 

「……ほう、自分のルフィラを切り払いますか。そして、お久しぶりです精霊」

「邪術師キケロガ」

 

 そこに居たのは、ソヨ侯爵領で策略を仕掛けた魔王軍の呪術士団の1人、キケロガであった。その近くには、兜を被った見た事の無いモンスターが1体とオーガハンマ3体が控えて居た。

 

「まさか、ソラリを倒したとは……やはり勇者の鎧は侮れませんね」

 

 キケロガは手を掲げると、配下のモンスターに命令する。

 

「行きなさい。あの者を討ち取るのです!」

 

 それを聞き、オーガハンマ達は一斉に突撃してくる。しかし、見慣れないモンスターは動きが悪く、こちらへ来るまでに時間がありそうだ。

流星はクレイ・バズーカを収束モードで魔法力弾を放つが、キケロガの放った魔法の矢によって相殺された。

 その隙をつくようにオーガハンマの1体が槍を突き出す。

慌てて回避する流星であったが、そこにキケロガが追撃の魔法の矢を放つ。

 

「ぐあっ!!」

 

 その攻撃でよろけた所にオーガハンマの槍が迫る。

しかし、それはアリスの操作するファイターによって阻まれた。

 

「先生、大丈夫?」

「すまん。助かった」

 

 オーガハンマの攻撃を防いだアリスに頷きながら立ち上がる流星は、目の前のオーガハンマに風の魔法を放つ。

 

「風よ切り裂け、ムービサーベ!」

 

 風の刃が逆巻ながらオーガハンマへ迫るが、構えた盾を切り裂くだけに終わった。

盾を失ったオーガハンマは後ろへ下がると、それを埋めるように残りの2体が前に出る。そして、前衛を務めるオーガハンマ達の攻撃に合わせてルフィラを放ってきた。

見た目とは裏腹に非常に高い知能があり、それが危険なモンスターとされる理由だ。

 

「未知のモンスターも居るのにっ!アリス!!」

「わかった」

 

 首飾りからブレイカーとガンナーが飛び出しファイターと合流すると、素早く流星の身体を包むとディアスの鎧からアリスの鎧へ交換を終えた。

 

闇精霊(ナイトメア)の状態から元に戻っていますね……初期の段階とはいえ、元に戻すには強力な浄化の魔法が必要になる。そんな事ができそうな魔法は、ラビア系。あの者、かなりできる)

 

 オーガハンマ達と格闘している流星を観察しながらキケロガは援護をしながら更に考える。

 

(ソラリは、前の契約者を始末したと言っていたが、あの者は新しい契約者か?しかし、先ほど精霊は先生と言っていた……)

 

 ナイトメアへ変える間、アリスが先生と言っていたのをキケロガは思い出す。そして、そこから導き出される答え。

 

「ソラリ、しくじりましたね」

 

 始末し損ねた結果、ソラリは敗北し、更に勇者の鎧まで奪還されたという失態もキケロガは把握した。

しかし、それはソラリの自業自得であり、自分が気にする事ではないと考えていた。

 

「あの者は危険だ。ここで確実に始末する!」

 

 キケロガは配下のモンスターに命令を下すと、オーガハンマ達は流星を囲うように動く。

 

「勇者よ、コレが避けられますかな?」

 

 3体のオーガハンマが突撃してくる中、突如してキケロガの腕が伸びてくる。

 

「アレはッ!?」

 

 その行動が何なのかを把握したアリスは、すぐさまブースターユニットを動かしオーガハンマ達の包囲を突破、そのまま回避行動へうつる。

 

「アリス、いきなり操作を奪ってどう……」

「先生喋らないで!舌を噛む」

 

 ブースターユニットが起動しているのに追いつてくる腕は厄介だが、今のところそれだけだ。何を警戒しているのかが流星にはわからなった。

 

「さすが精霊。魔王様と戦った経験は伊達ではありませんね。しかし、これならどうです!」

 

 キケロガの肩にある装飾品へ魔法力が集まると、光線を発射。進路上に置かれたそれを曲がって避けようとしたした時、ついにキケロガの腕が追いついた。

 

「今!ムービルフィラ〜ッ!」

 

 伸びた腕の指先1つ1つに魔法力が集まると同時に、流星達を包囲するように魔法の矢が発射された。

それは、かつての大戦で魔王ジオングが最も得意とした攻撃方法、オールレンジ攻撃である。

 ブースターユニットを全開にし、キケロガの腕の間を一気に抜けるとそのまま岩を蹴って無理やり曲がる。

そんなアリス達を逃がさんと、腕も追いかける。

バーニアも多用してオールレンジ攻撃を回避するが、オーガハンマ達達から魔法の矢が飛んで来る。

 

「アリス、もっと速度を!」

「……駄目!足りない」

 

 回避行動に魔法力を消費しているため、ブースターユニットの速度が遅い。これでは捕まってしまうと判断した流星は、ビームサーベルを抜く。

 

「アリス、腕に迎え!」

「わかった」

 

 そう言ってオーガハンマ達を突破するために背部・カノンを放つ。しかし、その一撃はキケロガが展開した魔法障壁に阻まれた。けん制ではあったが、それなりに魔法力を込めた攻撃を防ぐキケロガの腕前に舌を巻く。

 反転してブースターユニットを吹かすと、こちらを追いかけてくる腕をすれ違いざまにビームサーベルで斬り落とす。

 

「よしっ!これで……」

「なかなかやりますね。さすが勇者といったところ」

 

 斬り裂かれた腕を戻すと、キケロガは気合いをいれる。

 

「フンッ!」

 

 するとどうだろう。新しくまた生えてきたではないか。

それに驚く間もなく、謎のモンスターが襲いかかる。

 両腕に付けられた盾には上下に刃が取り付けてあり、攻防に優れた形をしていた。

謎のモンスターからの右腕突きを回避すると、流星はビームサーベルを振るおうとするが、それを止めざるおえない事を聞かさせる。

 

「た、頼むッ!ヤメてくれ!」

「なっ!?モンスターじゃないだとっ!」

 

 兜でわからなかったが、目の前にいるのはモンスターでは無く人間だったのだ。

しかし、その四肢はゴブリンの物であり、人のそれでは無い。この人物はいったい?

 

「どうです?これがかつての大戦で負傷した兵士を戦場へと戻した魔法です。貴方達にわかりやすく言えば、グールでしょうか」

 

 そう、彼は禁術リユース・サイコ・デバイス儀式によって無理やりモンスターの手足を繋がれ、グールへと改造された元人間なのだ。

 

「この者を倒さねば、自分には勝てませんよ」

 

 キケロガの脅しに流星は後ずさりをする。それを見たキケロガは満足げに頷き、グールを操ると流星へ突撃させる。

グールが迫る中、流星は覚悟を決めてビームサーベルを握りしめた。

 

「……やるしかないのか」

「一応、グールを止める方法はある。繋がれた場所を切断する事」

 

 アリスの説明によると、リユース・サイコ・デバイス儀式で繋がれた部位で操っているので、その部分を切断すれば術から解放されるのだ。

しかし、それは対策がされていなかった前大戦での話である。

 グールの両腕の盾は、切断を警戒して取り付けられた物だろう。更にオーガハンマやキケロガの攻撃を捌きながらにもなるし、解放した後は人質にならないよう守らくてはいけない。

 

「かなり厳しい条件だな。だけど……」

 

 流星はグールからの逆袈裟を避け、続くオーガハンマからの槍突きをビームサーベルで捌きながらアリスに言う。

 

「アリス。君に頼みたい事がある……」

「今更相談ですか?無駄ですよ!」

 

 完全に腕を再生させたキケロガは再びオールレンジ攻撃の態勢に入る。

 

「……頼めるか?」

「……わかった」

 

 流星の覚悟を受け止めたアリスは、キケロガが操るモンスター達と対峙する。

グールが両腕が振り上げ斬りかかってくるのをバーニアで回避。続くキケロガの腕から放たれる魔法の矢をビームサーベルで切り払い、オーガハンマの接近には背部・カノンと大腿部のガンで対応する。

しかし、それが長く続かないのをキケロガは知っている。

 

「何時まで持ちます?貴方が完全ではないの知ってますよ」

「……くっ」

 

 前回捕らえた時にある程度を調べていたのだ。そして、アリスの鎧には主魔法動力珠(メインジェネレーター)が欠けて補助魔法動力珠(サブジェネレーター)しか残っていない事を知っている。

それを証拠に、ブースターユニットが先程から出力不足で起動出来ていない。

 

「フフフ……そろそろ限界が近いでしょう?そうなれば、もう動けませんよ」

 

 キケロガの言う通り、アリスは徐々に追い詰められていた。しかし、それでも必死に食らいつくように回避行動をとるが、その行動に余裕は無く苦戦している事は明白。その姿にキケロガは笑う。

そんな中、アリスの操作する鎧に守られた流星は、キケロガを観察しながらいつでもある魔法を行使できる様に待機する。

 どんどん鎧から魔法力が減っていくのを見ているしかできない事に焦りを感じるが、ここで行動してしまうと全て台無しになってしまう。

 

(今の俺にアレが使いこなせるかとは考えるな。確実に当てる事だけに集中しろ)

 

 そう言い聞かせながら流星は、キケロガの観察に集中する。

 

「先生!もう……」

「まだだ!もう少し……」

 

 しかし、その願いも空しくついに魔法力が底を尽きたビームサーベルが消え、アリスの動きが鈍る。

そして、キケロガの腕から放たれた魔法力光線がアリスの鎧に直撃すると、そのまま地面に倒れてしまう。

 更に追撃として鎖が伸びてくる。精霊を封じるエルドリッチの鎖だ。

流星の読みは当たったのだ。

少し前にアリスへ相談したのはこの為だ。

 

 

「アリス。君に頼みたい事がある。少しの間、キミが鎧を動かしてくれ」

「理由は?」

「ここまで来るのに消耗して、更に数的優位な状況。もう一度キミを捕獲しようと動く筈だ。それにカウンターをかける。頼めるか?」

 

 

 流星は待機させていた魔法を発動させる。

 

「今ッ!我が魔法力、汝に与えん、マディア!」

 

 これは魔法力を他者へ渡す魔法。

普段の受け渡しでは到底間に合わないので、一瞬で渡せるマディアを使ったのだ。

鎧に魔法力が満たされ、ビームサーベルから再び青く光り輝く刀身が現れる。

 

 

「その程度で、この鎖が破壊できるとでも!」

「続けて唱える。雷よ、ファン!」

 

 エルドリッチの鎖が到達する前にすぐに次の魔法を使う。

何も無い空間に3つの魔法陣が現れると、迫りくるエルドリッチの鎖へ目掛けて雷が走り、その軌道を逸らす。

 

「これでっ!」

 

 ファンの影響で到達がズレたエルドリッチの鎖に目掛けビームサーベルを構えると、鎖はビームサーベルへ吸い込まれるように進み、破壊に成功する。

 

「オノレ!」

 

 エルドリッチの鎖を破壊されたキケロガは肩から魔法力光線を放つが、その前に立ち上がるとブースターユニットで飛び出し、接近して来たオーガハンマ1体を盾事斬り捨てる。その間に流星はカーゴからメガパックを取り出す。

 

「助かったぜ爺さん!」

 

 それを飲み干し、魔法力を回復すると、背部・カノンへ魔法力を供給する。

 

「アリス、そっちは任せた」

「了解」

 

 アリスは左右の背部・カノンを操作して残るオーガハンマへ発射。自身の魔法力も込める事で、魔法障壁を突破してオーガハンマ達を撃破する。

そして、流星は残ったキケロガへ向かう。

 

「これで終わらせる!」

 

 ビームサーベルを上段に構えて斬りかかるが、グールが割り込み盾で防ぐ。そのまま反対の腕の盾にある刃を振るう。

 

「えぇい!?」

 

 恐れる事なくブースターユニット吹かしてニークラッシャーで膝蹴りを叩き込んで退かす。

キケロガは腕を戻すと肩の装飾品と合わせて魔法弾の連射を開始するが、流星達は止まらない。

 

「うおぉぉぉっ!」

 

 そしてそのままキケロガの胸部をビームサーベルで斬り裂いた。

 

「グォッ!?」

「トドメだ!」

 

 ビームサーベルを押し付けようとした時、一瞬にして視界が真っ黒に染まる。

 

「な、何だ!?」

「これは、暗黒天地!」

 

 暗黒天地。それはオーラで黒い霧を生み出し、相手の視界を奪う技である。

キケロガは己を守る為に展開したのだ。

そして、それに気付いた時にはもう遅い。

 

「見事です勇者よ。ですが、ここで倒れる訳にはいきません」

 

 暗黒天地が晴れた時には、キケロガは既に別の場所に居り、そこには渦巻く光があった。

 

「ま、待て!」

 

 止めようとするが、キケロガは魔法力光線を放ち、流星とアリスへ命中させる。

 

「うわぁっ!?」

「きゃあっ!?」

 

 2人は墜落して地面に叩き付けられると、グールが攻撃を仕掛け、追いかける暇を与えない。その隙にキケロガは光の渦へ飛び込む。

 

「……次に会う時は、こうはいきませんよ……」

 

 その言葉を残し、キケロガは流星達の前から去った。

 

「逃げられたか」

「先生、まだ終わってない」

 

 そう、グールにはまだ命令が残っているのだ。これを止めない事には救助どころではない。

 

「しかし、どれが繋がれた場所なんだ。無事な部分を切断する訳にはいかないぞ」

「だ、だったら、左腕と左脚だ!そこを切ってくれ」

 

 目の前の男に言われた通り、そこへ集中すると、その箇所には魔法力の痕跡があった。

 

「わかった。……すまない!」

 

 流星は左腕と左脚の部位をビームサーベルで切断した。すると、グールとなった男は糸が切れた人形の様にその場に倒れ込み動かなくなる。

 

「……何とかなったな」

「うん……」

 

 2人は緊張の糸が解けたのか深い溜め息を吐く。

 

「……ははっ、せっかくまた新しい手足が手に入ったと思ったのによ……ちくしょう……」

 

 話を聞くと男は元騎士で、戦争で手足を失ったそうだ。騎士を辞めた後、故郷のグラナダへ戻ると、キケロガから手足を元に戻す魔法があると聞き、その条件としてこの儀式を受けたのだ。

そしてその結果、グールへと改造されてしまっのだ

 

「アリス……この人を治す事って出来ないのか?」

 

 流星がアリスに聞くが、アリスは首を横に振る。

 

「無理。欠損した場所を治す魔法は存在しない」

 

 アリスの言葉を男へ伝えると落胆した様に項垂れる。

 

「……そうか……やはり、考えが甘かったんだな……」

「とにかく、今は脱出だ。アリス、彼を保護してやってくれ。俺にはディアスの鎧があるから」

 

 流星の言葉にアリスはうなずくと、男に自分の鎧を装着させる。

こういう時、彼女の自立行動が非常に役立つ。

 

「アイツが勇者と言っていたが、これもその力というのか?」

「そんな所です。さあ、脱出を急ぎましょう」

 

 流星が男へそう促すと、男は小さく「ありがとう」と呟いた。

そして、流星は男を連れてもと来た道を戻り脱出する。

 その後、主と思われるキケロガを失ったダンジョンはその力を急速に弱めていき、残っていたモンスター達も傭兵部隊によって掃討され、ダンジョンは完全に機能を停止した。

 

------------

 

 ハイム工房へ戻ってきた流星は、用意された部屋のベッドへ寝転がりながら、今回の戦いで得た情報を整理していた。

 

「しかし、まさか本当にキケロガがこの街に潜んでいたなんて……」

「私も驚いた……でも、先生ならきっとどうにか出来ると信じてた」

 

 アリスは嬉しそうに微笑むが、その表情には少し疲れが見えた。無理もないだろう。この数日で様々な事があり過ぎたのだから。

そんなアリスを見て流星は彼女の頭を優しく撫でる。

 

「ありがとうアリス。でも、あまり無理はしないでくれ」

 

 その言葉にアリスは少し驚いた表情を見せたが、すぐに笑顔に戻る。

 

「うん、わかった」

 

 そして2人はそのまま眠りに落ちたのだった。

 




 脱出したキケロガは床に膝をつくと、それを心配して部下が駆け寄る。

「キケロガ様!」
「大丈夫ですか!?」
「……ええ、問題はありません」

 部下に支えられながら、キケロガは立ち上がる。

「今回は自分の負けを認めましょう・・・・・・ですが、これで、あのお方の望みも叶うだろう。……ダンジョンから運び出した物資はどうしました?」
「はっ! 大半はカロン様の元へ、一部の希少な物はメドザック様の元に輸送しております」
「殿に残したモンスター達以外は、既にカロン様の部隊に合流していると思われます」
「グール部隊は完成品が2千体、作製中の物が3千体、計5千体になりました。半月あれば全て戦闘可能になるかと」
「メドザック様の部隊には、各地で捕らえた人間を100人程向かわせております。……ですが、メドザック様はご不満があるようで……」
「それはそうでしょう……あのお方が真の目的を達成するには生贄が足りませんからね……」

 キケロガはそう呟き、周囲を見渡す。
隠蔽してあるとはいえ、時期にこの場所もバレるだろう。そうなる前に移動する必要がある。

「当初の予定通り、我々はカロン様と合流。このままワボルム帝国攻略に参加しましょう」
「はい!我ら呪術士団の力を知らしめてやりましょう!」

 キケロガは部下に頷くと、カロンの部隊と合流すべく、その場から立ち去る。
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