異世界ガンダム   作:꒰ঌ流✧星໒꒱

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 回収した壊れたグールをカードダスから放り出し、ジェルミはその上に座る。

「言われた通り、回収してきたぜ。キケロガさんよ」
「回収ご苦労様です。修復作業はコチラでやりますので、別命あるまで待機していてください」
「はいよ。……おっ、そうだ。戦場で勇者っぽい奴に会ったぜ」

 その言葉に、修復作業を始めていたキケロガは手を止めず会話する。

「それは生き残れてなにより。カロン様の腕を斬り落とす程の者と聞いていましたので」

 カロンの部隊と合流して知った事だが、ラ・ムール国から来た勇者スサは、嵐を纏ったような斬撃によってカロンの腕を斬り落とした。その治療にリユース・サイコ・デバイス儀式を使ったのは最近の事だったのでよく覚えている。
 なんでも、青を基調とした鎧を着た者で、ワポルム帝国方面軍では恐れられている人物だ。

「なんか、黒っぽい鎧を着てたな」
「黒?青ではなく?」

 その会話を聞いていた1人の団員が詳細を話す。

「確かに青もあったけど、紺と黒も混じった寒色系の鎧だったぜ」
「そうそう。お前よく覚えてるな」

 その話を聞き、キケロガはその人物が誰なのかを特定した。

(まさか、精霊の契約者か。これ程早くまた遭遇するとは……)

 自分を斬り裂いた者を思い出そうとしていると、ジェルミが声をかけた。

「おいおいキケロガさんよ、何か考え事か?」

 その言葉にハッとなったキケロガはすぐに作業を再開する。

「ええ、少し気になった事がありまして。ところで、その人物とまた戦って勝てそうですか?」
「あ?何言ってんだ。勝てるに決まってるだろ。俺を誰だと思ってる」
「では、その人物の排除をお願いします。倒せたなら、報酬も倍出します」
「よっしゃ!任せとけ!」

 そんな会話が繰り広げられている中、キケロガは心の中でほくそ笑む。
これはキケロガにとって最大のチャンスであった。

(これで、奴が倒せれば良し。倒せなくとも消耗はさせられる。その時は全力を出して確実に葬ってくれる)


襲撃 アデレード砦

「報告は以上になります」

「わかった。……しかし、グールがこれ程厄介なモンスターだとは」

 

 あらためてアドンはグールの事を説明し、その危険性は上層部の理解を得られた。

 

「これまで以上に、負傷者の救助や死体の回収を徹底しないといけないとは……魔王軍は、なんと厄介な魔法を作り出したんだ。これから、更に過酷になるな」

 

 そんな会話をする彼らを、流星とアリスは見つめる。

グールの事を詳しく知っている為、参考人として呼ばれたのだ。

 細かい部分を話し合った後はそのまま解散となり、流星達は割り当てられた部屋へと戻る。部屋に戻った流星は、そのままベットに寝転ぶとため息をつく。

 

「アリス、おいで」

 

 そう言われ、アリスは近づくと流星の手をとる。何時もの魔法力の供給だ。

 

「ある程度、余裕がある内に渡しとかないとね」

 

 交代はあるが、魔王軍からのハラスメント攻撃が続いており、その対応に追われている。

借りていたディアスの鎧は、アナ達へ返却しているのだ。余裕があるなら、アリスの鎧にできるだけ魔法力を残しておきたい。

 そしてアリスは流星の手を握り、彼の魔法力を受け取る。

しかし、それは何時もより多かった。

 

------------

 

 アデレード砦に来て1週間。魔王軍からの攻撃は続いているが、散発的で規模もそれほど多くはなかった。

流星としてはもっと激しい物を想像していたのだが、その理由がわかった。

 

「ダモクレス砦から連絡があった。どうやら、魔王軍は向こうの砦を落とそうとしてるらしい。ここが陥落したら後が無い」

 

 2つの拠点を失えばワポルム帝国は防御機能を失う事になる。そうなれば領土は荒らされ、多くの民が被害にあう。

そうならない為に、ダモクレス砦を預かる将軍は、アルカディア平原での野戦を決意した。

 

「幸いな事にアデレード砦への攻撃は散発的だ。兵士の一部を向こうと合流させる事となった。傭兵諸君には彼らと共に、移動をお願いしたい」

 

 その話を聞き傭兵達は仲間と相談を始めた。

何も傭兵全てがスリルやドンパチ、金に興味がある訳ではない。

誰だって命は惜しい。それらを天秤にかけた時に、自分の命に傾く者はアデレード砦へ残る事を選択した。

 流星はその辺を確認確認する為、アリスと相談する。

 

「キケロガは、どっちに来ると思う」

「……しばらくグールは出ていない。本命のダモクレス砦を落とす為だと思う。でも……」

「でも?」

「陽動の可能性も捨てきれない」

 

 魔王軍には、カードダスというモンスターを自由に持ち運びできるアイテムがある。

これがあれば、ダモクレス砦を攻めるフリをして手薄になったアデレード砦へ奇襲をかけてくるのも可能だ。

しかし、これはあくまで推測にすぎない。

 

「どっちにしても、警戒は怠らない方がいいな」

「うん。私も気をつける」

 

 そう言ってアリスは流星の胸に顔を埋めた。そんな彼女を優しく抱きしめると、そのまま眠りについた。

 

 翌日、未だ空を闇が覆うが、僅かに日の昇り始めた時、その心配は的中した。

アデレード砦を守る城壁が崩れると同時にモンスター達がなだれ込んできた。

もちろん城壁を守る者達は居た。敵は誰も近づいて居なかったのに、いきなり城壁が崩れたのだ。

 理由は簡単だった。モールアッグという地底を掘り進むモグラの様なモンスターによる金堀攻めだ。

足元を脆くされた城壁は自重を支えきれなくなり、一気に崩壊。これにより、アデレード砦内はたちまち大混乱に陥った。

 それに拍車をかけるように、ドダイライダー達が上空から火矢を放つ。

 

「奴らを火炙りにしろ!何もかも燃やし尽くせ!」

 

 攻撃部隊を任されたジェルミは、自分が率いる傭兵団に命じ攻撃を開始する。

ドダイライダー達が火矢を投下し、アデレード砦内は火の海となっていく。

 

「消火作業急げ!敵を砦に入れるな!!」

 

 ダモクレス砦に援軍を要請したが、到着まで時間がかかる。それまで持ち堪えられるか? その答えは、絶望的だった。

 

「やってくれる……!」

 

 流星はパックの数を確認し、素早くアリスの鎧を纏うと窓から飛び降り、ブースターユニットを吹かして落下の衝撃を和らげる。

 

「敵は?」

「右手の方。レッサーギャプラン」

 

 背中にコウモリの様な翼を持つモンスター、レッサーギャプラン。その知能は人並みにあり、言葉も話すモンスターだ。

 

「ケケケケッ!また獲物だ!今度は逃がさねえぞ!」

「アリス、援護を頼む」

 

 そう言って流星は剣を抜くとレッサーギャプランに斬りかかった。しかし、その攻撃は避けられてしまう。

 

「ケッケッケ!そんなノロい攻撃当たるかよ!!ルフィラ!」

 

 レッサーギャプランの翼から放たれた光の矢をブースターユニットを吹かし避ける。そしてそのまま接近し、再び剣を振った。

 

「うおりゃあ!」

「お見通してだって……」

「そこ!」

 

 背部・カノンへ魔法力を送り、レッサーギャプランを攻撃すると、強力な魔法力の矢に驚き慌てて回避行動をとる。

魔法力噴射(バーニア)で素早く向きを変えると、大腿部のガンで追撃をする。

その攻撃はレッサーギャプランの翼を撃ち抜き落下、倒れた所へ流星は剣を突き立てトドメを刺した。

 ひと息つく間も無く地面から鋭い爪が生えてくる。バーニアで距離をとると、爪を鳴らしながらモールアッグ達が現れる。

 

「地上では足は遅いけど、地中の移動速度は早い。既に穴が掘られてると思って」

 

 モールアッグは獲物を仕留める時、その周囲には落とし穴が掘らている。穴に落ちた獲物は哀れ、爪で八つ裂きにされるのだ。

アリスの警告通り、既に地面は掘り起こされていた。

 

「ケケッ!モールアッグと連携だ」

「あいつを穴に落とせっ!」

「やれるもんならやってみな!」

 

 2体のモールアッグが爪を光らせ襲いかかる。流星は剣で爪を受け止めると、そのまま押し返した。そしてもう1体の攻撃を避けながら反撃する。

しかし、その攻撃を妨害するようにレッサーギャプランが突撃してくるのを回避するが、いきなり足元が崩れる。

 

「しまっ!?」

 

 だが、アリスがブースターユニットを動かし、すぐに穴から飛び上がる。

 

「先生、ワッパを」

「そうか!我が身を空へ、ワッパ!」

 

 ワッパは約10m程空に浮く魔法だ。これを応用すれば、ホバークラフトのような使い方もできる。

 

「ケケッ!そんな物で逃げられるかよ!」

 

 レッサーギャプランは、再び魔法の矢を放つが、その攻撃をアリスの鎧で防ぐ。

ワッパで僅かに浮遊しながら、流星はブースターユニットで加速、モールアッグ達へ襲いかかる。

 爪をドリルのように回転させ反撃してくるモールアッグに膝部サーベルホルダーから取り出したビームサーベルで答える。

魔法力の刃が閃き、爪ごとモールアッグを両断する。

 

「いくぞ!スペリオルシューター!!」

 

 以前見せたヘビーアタック、ぶっ飛び真空投げ。あまりにも名前がアレなので、アリスが変わりにつけたのだ。

風の刃へ、魔法力で構成された刃を叩きつける事でより強力な勢いを増したソレは、地面に当たり周囲の物を空へ舞い上がらせる。

 モールアッグ達によって柔らかくされた土は簡単に彼ら事吹き飛び、その姿を露見させる。

 

「外しはしない」

「ヤベッ!?」

 

 背部・カノンへ魔法力が供給され、筒の先端が明るくなる。

それを見て、本能的に危険を察知したレッサーギャプラン達が逃げようとするが遅かった。

 

「全部砕けて」

 

 背部・カノンから照射された巨大な魔法力の砲撃は、モールアッグ達を容赦なく貫いた。

レッサーギャプランの1体は直撃を受け蒸発。もう1体は離脱しようとしたが、僅かに逃げ遅れ身体の半分近くを失い光となった。

 

「残りは1匹か!」

「チィー!」

 

 残るレッサーギャプランは援軍を呼びに行ったのか、それとも他の仲間と合流する気かはわからないが逃げ出した。そして、それを見逃す事はできない。

ブースターユニットで飛翔すると、その背中へ剣を突き立てる。

 

「ケッ……!?」

 

 その一撃は、レッサーギャプランに深々と突き刺さり絶命させた。

 

「よし!」

「先生、まだ終わってない」

 

 アリスの言う通り、モンスターを倒したが、こちらへ降りてくる者が居た。

 

「なに狩りの邪魔してくれてんだ?覚悟しろよ勇者様よ!!」

 

 ジェルミと彼が率いるブラックドッグ傭兵団達だ。

 

「来たな……マディ」

 

マディ系の初級で素早くアリスへ魔法力を受け渡し、パックを飲んで自分も回復する。

 

「ほら、ガンガン攻めろ!囲んで仕留めろ!怠けた奴は、俺が撃つからな!」

「そいつはおっかねや!」

「団長からの命令だ!死ぬ気でかかれっ!!」

「お、俺はぁまだ死にたくねぇ!」

「相手は魔法属性だっ!力属性の奴は前に出ろ!」

 

 傭兵団の中にはグールにされた人も居り、それを盾にしながら団員達が流星を攻撃してくる。

 

「そう来るよな!」

 

 けん制程度の攻撃では力属性の者を突破できなし、それ以上の攻撃をしようとすれば、グールを壁にして防いでくるのだ。

そして、敵対してるとはいえ、相手が人間である事が、どうしてもおよび腰になってしまう。

 

「くそっ!」

「ほらよ!」

 

 ジェルミのガンから放たれた魔法の矢が流星に当たるが、アリスの鎧に弾かれる。

しかし、鎧の魔法力が尽きればその守りも無くなる。後は、なぶり物にされるだけだ。

 そんな流星に誰かが語る。

 

『ボーッするな!酷だろうが、やるしかない。これは戦争だぞ』

(また怒られたな……ありがとな、ダンテ)

 

 短い間であったが、彼の言葉は考えさせられる物であった。

 

(それに、誰かが言ってたな。前に進むぶんには軽いって)

 

 モンスターになりかけていたとはいえ、既にグランドーやソラリを手にかけている。

覚悟は決まった。これからも戦い続けるなら、人間とも戦う事があるだろう。もしかしたら、生徒の中には既に人間を手にかけた者も居るかもしれない。

教師の自分が戸惑い等抱いている場合では無い。

 

(アイツ、雰囲気が変わりやがった)

 

 ジェルミは流星の変化にいち早く気づいた。

 

「甘ちゃんかと思ったが、既に筆下ろししてやがったのか。おい、準備しておけ」

 

 そう話すが、そこには誰も居ない。

 

 

 笑みを浮かべながら取り囲む団員達を流星は冷静に見る。

 

「どうしたよ!しっかり反撃してこいやっ!!」

 

 団員達はグールを盾にしながら流星達へ襲いかかってきた。

グールは言われるまま盾にある刃を振り回し襲いくる。それを回避し剣を振るうが、反対の腕にある盾で受け止められる。

 そこへジェルミの放った魔法の矢が迫るが、後ろへ下がる。

それをチャンスと見た流星の背後に居た団員が、槍を構えて突撃する。

 

「そんな物で、逃げられるかよ!」

 

 全身鎧の弱点でもある視界の悪さを利用した一撃、その筈だった。

流星はアリスにやりたい事を伝える。それだけで、アリスは鎧を操作し、最適解へ流星を導く。

 最小限の動きで突きだされた槍を避けると、未だ手にあるビームサーベルへ魔法力を送る。すると青い光の刃が伸び、団員の胸を貫く。

 

「バ、バカな……後ろは、見えない筈じゃ……」

「種も仕掛けもあるのさ。魔法の鎧にはな」

 

 団員が1人倒れたが、その程度で怯むブラックドッグ傭兵団ではない。むしろ、倒れた団員をバカにするくらいだ。

 

「あ〜あ、あんなつまらない死に方しやがって」

「カードのツケを払わなくて済んで助かったぜ!ありがとな」

「何言ってんだ!俺なんか、ツケ回収できてないんだぞ!」

「そうだ!ツケを返せ!」

 

 そんな事を言いながらも、団員達は一斉に流星へ襲いかかってきた。

 

「くたばれやぁ!!」

 

 1人が槍を突きだすが、その穂先は空を切り大腿部ガンに撃ち抜かれた。

グールの背後に隠れながら迫る団員と共に、ビームサーベルで斬り捨てる。

 

「てめぇら、どけぇ!」

 

 トゲの付いたハンマーの鎖を振り回しながら大柄の団員が怒鳴る。

 

「コイツでぺしゃんこにしてやる!!」

 

 投げられたハンマーは一直線に流星へ向かい、回避する間もなく真正面から当たる。

 

「へへっ、いっちょあが……なっ!?」

 

 大柄の団員が鎖を引っ張るが、ハンマーが動かない。

そう、わざとハンマーを受けたのだ。

 そしてそのまま大柄の団員の団員事振り回し、周囲を一掃する。

 

「なるほど、この程度の力属性となら力比べに勝てるか」

「当然。先生はまだ私の力を全て引き出していない。でも、魔法力の配分には気をつけて」

 

 それに気をつけながらでも、勇者の鎧は伊達じゃなかった。

アレだけ力の差を見せたのだ。いくらなんでも逃げ出しそうな筈である。しかし、団員達は逃げる素振りも見せない。

確かに怯えはあるが、それでも流星へ弓やオーラで攻撃を続ける。

 そして、その理由がわかった。

1人の団員が隙を見てこの場を離れようとした時、上空から撃ち抜かれた。

 

「おい。誰が持ち場を離れていいって言った?テンション下がるなぁー」

 

 ブラックドッグ傭兵団の長であるジェルミは、徹底した恐怖政治で部隊を統轄していた。見せしめとして消された団員は1人や2人では無い。それを教え込まれた団員達は恐怖で支配され、他人を蹴落としても生き残ろうとするようになった。

 それを思い出した団員達は、次々と流星達に襲いかかっていく。

ある者は剣や斧を振り回し。ある者は槍を突きだしていくが、いずれも当たらず避けられる。

しかし、連携の取れない攻撃では流星達を倒す事はできなかった。

 最後の団員が倒れたのに合わせ、ジェルミが降りてくる。

 

「こいつら全員、捨て駒か」

「そういうの気にする必要あるか?どうせみんな死ぬんだ」

「まぁ、そうなんだけどな。人間を殺すのは初めてなんだ」

「へえ、そりゃあ良い経験だ。今後の為にもしっかり学んできな!お前もそうなるんだからなぁ!!」

 

 そう言いジェルミは剣を抜くとオーラを溜める。

 

「ウインド!」

 

 オーラで構成される技の1つであり、風の刃を飛ばしてくる。

基本技であるが、素早く放つ事ができる。けん制や次の技を仕込むのに便利だ。

 魔法属性の流星には効果は薄いが、魔法力を消耗するのを避ける為、回避を余儀なくされる。

 

「どんどんいくぞ。ラピッド!!」

 

 剣を振るうと共に目にも止まらぬ速度でオーラの刃による突きを繰り出す技で、連続攻撃ができる。

流星はその連続攻撃を躱す。しかし、四撃目の刺突攻撃を左腕に受けてしまう。

 

「チッ、頑丈だな。なら、これでどうだ?」

 

 再びウインドを使ってくるが、今度は地面を巻き上げながら放たれる。

 

「目眩ましかっ!?」

 

 特殊な力が働いているので兜の中まで泥は入ってこないが、視界の妨げにはなる。

これで隙をついてくるのかと考えたが、そうではなかった。

 周囲を警戒している時、いきなり電撃が身体を襲う。

 

「な、なんだ……!?」

 

 体勢を整える前に今度は爆発で吹き飛ばされる。

その原因の正体にアリスが気づいた。

 

「魔法石か」

「なんだそれは?」

「錬金術で魔法を込められた、使い切りの魔具。あの剣にカーゴが付与されてたのは、これの為だったのか」

 

 ウインドで地面を巻き上げ視界を奪い、更に魔法石を仕込んで追撃する。いうだけなら簡単であるが、ウインドが強すぎても弱すぎても魔法石は届かない。絶妙な力加減を要求される。

卑怯な奴であるが、だからといって実力が無い訳ではない。しっかり経験を積んだ非常に厄介な奴。それがジェルミだった。

 

「まだ終わりじゃないぜ」

 

 再びウインドを使いながら接近してくる。しかし、今度は剣にオーラを溜めるのが見える。

 

「ラピッド・ブレイド!!」

 

 先程よりも速い速度で繰り出されるオーラの突きが流星を襲う。

その攻撃は回避できたが、反撃する余裕は無かった。

 

「おいおい、どうした?さっきまでの勢いはよ!」

「だったら!」

 

 アリスに鎧の制御を任せ、魔法を唱える。

 

「ルフィラ!」

 

 手に魔法力を集め魔法の矢を放とうとしたが、途中で魔法力が霧散してしまう。

 

「しまった!銀の粉か」

 

 この粉が身体に付着すると、一時的に体内の魔法力が変調し、魔法を行使できなくなる特殊な魔具。

そうアリスから念話を受け取り、流星は舌打ちをした。

地面を巻き上げた時と一緒に撒いたのだろう。

 

「この程度かー?しらけさせるなよー?」

 

 挑発しながらジェルミが襲いかかってくる。

何とか回避するが、そこへ上空から魔法の矢が飛んでくる。

これを回避したが、着弾地点は爆発。衝撃波もそれなりにあったが、鎧のおかげてダメージは無い。

 上を見てもその姿は無い。前回も居たアクティブ・カモの使い手と連携した狙撃だろうか。

 

「確か、使うには集中してないといけないんだよね」

「そう。攻撃なんてしたら姿が露見する。でも、見えない」

「なら答えは簡単だ。上に2人居る」

 

 アクティブ・カモで周囲を大雑把に隠蔽すれば、違和感しかないが、何も無い上空ならどうだろうか。

発見は困難だし、距離によっては魔法力を感知できないかもしれない。非常に良く考えられた狙撃だ。

 

「それがわかってどうする?上空じゃあ、手も足も出ないぜー?」

 

 確かにジェルミの言う通りだが、こちらにだって隠し玉はあるのだ。

 

「だからこうするのさ。行け、アリスっ!!」

 

 そう言うと、流星は跳躍。下半身部分の鎧を解除、ガンナーとして射出。空中でコア部分をファイターにして、テールスタビレーターによるアンバックで姿勢制御して着地。残りの鎧をブレイカーに変形させ上空へ向かう。

 

「な、何だその能力は!?これも鎧の力だっていうのか!!」

 

 そういいながらもジェルミは口笛でドダイを呼ぶと、流星を追いかける。

 

「ふっ…ざけんじゃねぇぞあの野郎ッ!情報隠しやがったな!!」

 

 情報を意図的に制限していたキケロガに悪態をつきながら、流星に向かってウインドを放つ。

 

「追いかけてくるか!」

 

 これを躱すとガンナーの大腿部ガンで狙撃。が、ジェルミは巧みな操作で回避する。

 

「先生、魔法力を感知した」

「良し!そっちへブレイカーを向かわせろ!ジェルミはガンナーとファイターで対処する」

「わかった」

 

ブレイカーが隠蔽箇所へ魔法弾を連射すると、慌てて2人のドダイライダーが出て来る。

 

「な、何だコイツは!?」

「ファンネルってやつかよ!」

 

 1人は王冠のよう飾りの付いた兜に白い鎧を纏い、もう1人は両側頭部からブレード状の物が伸びた箱型兜で、背中から天秤のような物が伸びていた鎧を纏っていた。

これは、魔王軍で試作された魔法の鎧で、ホワイトライダーとブラックライダーと呼ばれる物だ。

 ホワイトライダーは魔法力を伝える特殊な弓、シェキナーによる狙撃を主眼に設計。

それとは逆に、接近戦メインに重要人物の暗殺の為に迷彩能力を付与されたブラックライダー。どちらも強力であるが、弱点があった。

 ホワイトライダーは、狙撃の為に魔法力を大量消費する為、息切れしやすい。

ブラックライダーは、魔法力を使った隠蔽なので感知されやすいという問題があり、どちらも試作止まりであった。

 それらを解決できそうな事を思いついたジェルミが、倉庫から拝借してきたのだ。

 

「だらしねぇな。たかが1機に遅れをとりやがって」

「ですが団長、ブラックライダーは接近戦を想定された鎧だ!上空じゃ分が悪るすぎますぜ!」

「それをどうにかするのが、お前らのやる事だろうが!」

 

 傭兵団はほぼ壊滅し、もうこの2人しか残っていない。

しかし、その2人もブレイカーの攻撃によって翻弄されていた。ブラックライダーはコンセプト的に射撃武器が無く、空中での戦闘は不向き。ホワイトライダーは低出力連射モードへ切り替えて反撃しているが、ブレイカーを捉えきれていない。

 援護しようにも、ガンナーと流星の攻撃により向かう事もできない。

 

「チッ!仕切り直しだ。あばよ!」

 

 ジェルミはドダイを操り、戦場を離れようとした時、そこへ魔法の矢が飛んでくる。

 

「何の真似だてめぇ?」

「それはこっちのセリフだ!なんであんただけ逃げようとしてんだよ!」

「おいおい、今のお前らは俺が逃げきるまでの囮だろ?だったら、しっかりやれ」

「ふざけんじゃねえ!こんな馬鹿げた戦に付き合ってられるか!」

 

 ブラックライダーはブレイカーからの攻撃を躱すと、ジェルミの後を追うように飛んで戦場から離脱する。

 

「ついて来んじゃねぇ!別の場所行け!」

「あんたについてきゃ、逃げれる確率が高いかんな。利用させてもらうぜ」

 

 逃げ去るジェルミを睨みつけながら、残ったホワイトライダーは流星に提案をする。

 

「こ、降伏する!ファンネルに囲まれて助かる訳がねぇ!もう、抵抗しない!だから、命は助けてくれ!」

「……なら、鎧を捨てて地上に降りろ」

「わ、わかった!……ってな訳あるか!」

 

 そう言い捨てホワイトライダーは腰のレイピアを抜き、全速力で突撃してくる。

それを見た流星は、ガンナーに体当たりさせる。横からの突然の攻撃にドダイから転げ落ちたホワイトライダーは、悲鳴をあげながら地面に向かって行った……

 

「アリス。ブレイカーを」

 

 アリスはブレイカーを呼び寄せると、上半身だけを覆う。

 

「目標は、ジェルミ達が逃げた方向だ。足りない魔法力は俺から使って良い」

「了解。……目標を補足、撃つ」

 

 背部・カノンから巨大な魔法の矢が発射される。それは未だ言い争いを続けるジェルミ達に向かって真っ直ぐ飛んで行く。

 

「え……」

「チッ!!」

 

 それをいち早く察知したジェルミは、ブラックライダーを強引に押しのけて回避する。

ブラックライダーはその攻撃に飲み込まれたが、ジェルミはその余波でドダイを失い、上空へ放り出される。

 

「な……こ、こんな所で俺が終わる?そんなの、認められるかよぉ!!」

 

 咄嗟に姿勢を制御し、バーニアで着地に成功する。流星もジェルミを追いかけて着地。2人は向かい合った。

 

「勇者だからって、舐めんなぁッ!」

 

 ジェルミは剣にオーラを集めると、渾身のラピッド・ブレイドを放つ。

未だ上空にファイターとガンナーがあるので、流星は上半身の一部にしか鎧がない。

無数に分裂したオーラの刃を受ければ、ひとたまりもない。

 しかし、流星はあえて上半身の鎧をブレイカーにして射出。それをすぐさま変形させると、ブレイカーのアームをクロスさせて寸止めする。

 

「これで終わりだッ!」

握ったままのビームサーベルへ魔法力を供給。光の刃が伸びると同時にジェルミの首を飛ばした。

血飛沫を浴びながら、戻ってきたガンナーのサーベルホルダーへ柄をしまい呟く。

 

「何とも思わないとはな……戦いに慣れてく自分が嫌になる」

 

 そんな流星の隣に立つアリスは、まだ戦いは続いていると言う。

残っている魔法力をアリスへ渡すと、パックをまとめて飲む。

流星は再びアリスの鎧を纏うと、アデレード砦を守ろうとする帝国兵達の下へ急ぐのであった。

 




白と黒のライダー

 魔王軍で試作された魔法の鎧。
ホワイトライダーは遠距離、ブラックライダーは近距離を想定して作られ、特殊な能力も付与された。
しかし、狙撃に大量の魔法力を消費し、魔法力で隠蔽する為バレると発見されやすいという弱点もあった。
 もちろんそのままの筈ではなく、ホワイトライダーは王冠のような部分から大気にある魔法力の回収、ブラックライダーはオーラによる隠蔽を可能にするよう改良の途中であった。
 名前が黙示録の四騎士と同じなのは偶然なのか、それとも意図的なのか……


 年内最後は遅刻にございます。申し訳ありません。皆様、良いお年を
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