「カロン様!敵部隊が接近中です!」
部下の報告を受け、カロンは戦場を見据える。
そこには、こちらに接近するワポルム帝国の騎士達の姿があった。その内に見た事があるが姿が確認できた。
しかし、それが何であろうと関係はない。敵は排除するのみだ。
「全軍、攻撃準備」
部下が返事をし、各部隊へ情報が送られていく。そして、自らも拳を構える。
「背後を突くつもりが、釣られるとはな」
そう言いながら、カロンは笑みを浮かべている。
カロンの部隊は反転すると、迫りくるワポルム帝国の部隊と激突する。
敵味方が入り混じり、激しい戦闘が行われあっという間に乱戦状態となった。
その中でもディアスの鎧を纏った騎士達の活躍は凄まじかった。
次々と兵やモンスターを薙ぎ倒し、まるで台風のように戦場を荒れ狂う。
「くそっ!なんて強さだ!」
部下が悪態を吐きながら向かってくる騎士達を迎え討つ。
カロンもまた拳を振るい帝国兵を倒していたが、その顔は獲物を探す猛禽類のようになっていた。
「どこだ!勇者よ出て来いっ!!我はここだ!」
あらん限りの声を上げると同時に、待ち望んでいた声が戦場に響く。
「待たせたな」
それは自分の腕を斬り落とした勇者の声だった。しかし、それはカロンの知る姿ではなかった。
声は須佐であったが、青を基調とした鎧を身に纏っていた。
それで、カロンは理解した。
「イツイの持つ鎧と入れ替わり、俺を釣り出す策を考えるとは、なかなかの役者ぶりだ。しかし、お前1人で俺を倒せるのか?」
そう、カロンの言う通り、あの時は五井との連携してカロンの腕を斬る事ができたのだ。
周りにはディアスの鎧を纏った帝国騎士達が居るが、彼らでは須佐とカロンの戦いにはついてこれない。
「確かにその通りだな。でも、装着してる人物が違ったらどうだ?」
そう言って帝国騎士だと思っていた者が兜の眉庇を上げる。
そこには、森で遭遇した時に見た異世界から来た勇者の1人であった。
それを見てカロンは笑ってから賞賛する。
「そこまで騙しきったか!見事っ!!しかし、この程度ではなッ!」
カロンの身に着けていたベルトが怪しく光ると、カロンの全身を包む。
光が収まると、カロンは赤を基調とし、白で装飾。両肩には鋭いスパイクがある鎧を身に着けいる。
「あの時は、荷物を受け取るだけだったから置いてきたが、これが魔王様より授かった決戦用
恐ろしいほどの力が漲ってくるのを感じる。しかし、須佐は怯むことなく炎の剣を抜く。
その刀身は、以前カロンが見た時よりも強い光を放っているように感じた。そして、カロンもまた拳を構える。
「我が名はカロン・ド・バール!魔王軍将軍なり!」
「いくぞ、天之君!」
「ああ!」
3人は同時に駆け出すと、剣と拳が交差する。
激しい金属音が戦場に響き渡り、衝撃によって周囲の帝国兵やモンスター達は吹き飛ばされる。
「ぐうっ!これが決戦用MSの力か!」
須佐はカロンの一撃を受け流すので精一杯だった。
しかし、それは想定内である。魔法の鎧が無くても凄まじい力を発揮していたからだ。
そしてカロンが再び拳を繰り出した。
今度は連続で放たれる攻撃を全て捌き切る事は出来ずに、何発も喰らってしまう。
「ぐわっ!」
「須佐君!」
「どうした?その程度はあるまい!」
「こいつ!烈火流星斬!」
天之はオーラで剣を燃やすとカロンへ斬りかかるが、簡単にいなされて反撃の拳を受けてしまう。
一旦2人は距離をとると、剣にオーラを集める。
お互いにうなずくと、オーラを同時に放つ。
「「ヘルファイアーッ!!」」
2人で放つ事でオーラの密度を上げ、ダメージを与えようとする。
迫りくる炎の波にカロンは、両小手からビームサーベルを展開し、正面で交差させそのまま振り抜く。
「メガスラッシュ!」
振り抜かれた魔法力の刃は、カロンの圧倒的な力属性でその存在を維持できなくなり、波動となって前方へ広がる。
そして、炎の波へぶつかると、その部分を割ってみせた。
力属性は技属性に弱い筈であるが、ドルメルの鎧の力が加わった事でカロンは技属性に対抗する術を手にしたのだ。
「弱いな。勇者の力とはこの程度であったか」
「まだだ!うおぉぉぉぉっ!!」
須佐は再び炎の剣を構えて駆け出す。
しかし、カロンの蹴りによって阻まれる。
「ぐぅっ!?」
「終わりだ」
カロンは拳を繰り出そうとした所へ天之が割って入る。
「スパット斬り!」
ディアスの鎧で
「ほう!なかなかやるようだな!」
「須佐君、このまま攻めるぞ!」
「わかった」
2人は同時に斬りかかるが、やはりカロンの強さは桁外れであった。
2人の剣を掌打で弾き、地面に突き刺す。
ドルメルの鎧のトゲが真っ赤に燃えるのを見て2人が慌てて飛び退くと、カロンは2人の間を駆け抜けその後爆発が起こる。
「ぐあぁっ!!」
「うわっ!?」
2人は吹き飛ばされて倒れてしまう。
カロンの肩を覆うようにトゲが燃え盛っており、そんなカロンを見て部下の一人が呟く。
「あれが、カロン様の持つ鎧の力なのか……」
「あぁ、そうだ。3魔団1の力を持つカロン様と魔王様より授けられた鎧の相乗効果、ヒートパイル。あの御方こそ魔王軍の切り札なのだ……」
そう言って部下は戦いを見守り続けた。
彼等では、この戦いに割って入れそうにないからだ。
天之と須佐は再びカロンへ挑んでいく。
「うおぉぉっ!」
「行くぞっ!!」
2人は再び斬りかかるが、今度は避けられてしまい、反撃を喰らってしまう。
「……クソっ、どうすれば」
思うように一撃を入れない事に天之は頭を悩ませるが、須佐からある提案をされる。
「天之君、俺に考えがある。時間を稼いでくれ」
「わかった。頼んだよ」
天之は須佐の前に出ると再び剣を構える。
そして、カロンに向かって駆け出すと剣を突き出す。
しかし、それは簡単に避けられてしまう。
「まだだ!烈火流星斬っ!!」
燃え盛る剣で斬りかかるが、やはり同じようにいなされてしまう。
「その程度か?」
(このままじゃあ、時間稼ぎもならない。……まだ、練習してるけど、ここで成功させる!)
天之は剣を正眼に構えると、剣へオーラを集める。すると、オーラは熱く激しい炎へと変化する。
「ヘルファイアか。それは先ほど破ったぞ」
カロンは余裕の表情を浮かべながら、両小手からビームサーベルを展開する。
「確かに、このままならな……いくぞっ!烈火、流星斬ッ!!」
なんと天之はオーラの上にオーラを重ねみせたのだ。
それには、さすがのカロンも驚愕する。
「何ッ!?」
「う、うおぉぉっ!?」
二重のオーラを纏った燃える剣で斬りかかるが、天之はこの技を練習中であり、完全に使いこなせていない。
それでも、距離させ離さなければカロンを足止めできると考えた。
天之は力に振り回されているが、カロンの方にも余裕はなかった。
今までカロンは圧倒的な力で技属性を破ってきた、剛よく柔を断つを体現する者であった。
しかし、ここにきて自分の力属性を上回る技を繰り出された事で、カロンは焦りを感じていた。
「くっ!」
天之の剣を両小手から展開したビームサーベルで防ぐが、それでもに押される。
「魔法属性すら押し切るかっ!」
完全な劣勢。しかし、それでもカロンはドルメルの鎧から魔法力を供給し、ビームサーベルを維持する。
そして、その時が訪れた。
「うわっ!?」
「やはりな」
天之が握っていた剣が強力なオーラに耐えられず、折れてしまったのだ。
その隙を逃す事なく、カロンは自分が使える最も強力な攻撃を行う
「鋼脚烈風光っ!!」
両脚部の爪先に内蔵されているビームサーベルも展開し、ムーンサルトを決める。すると、魔法力の刃を維持できなくなり波動となって天之を襲う。
「がはっ!?」
メガスラッシュの倍の波動を受け、ディアスの鎧は壊れ、天之は重症を負う。
「うっ……」
「アレを受けてまだ生きてるか。だが、もう動けまい」
本来なら姿すら残らないカロンの奥義であるが、剣が纏っていたオーラによって軽減され、これだけで済んだ。
重症であるが、天之は起き上がろうとする。
「まだ……だ……」
「その傷では無理だ。諦めろ!」
そう言ってカロンは天之へ止めをさそうとするが、そこへ須佐が現れる。
「させるかぁっ!!」
「ふんっ!甘いわ!」
カロンは須佐の攻撃を受け止めようとしたが、直感でバーニアで回避する事を選んだ。
そして、更に小刻みにバーニアを行うと、あらためて須佐を見る。
彼の持つ炎の剣はオーラに包まれているが、須佐からは高い力属性を感じられる。
更に、須佐が身に着けている青き運命の鎧は両肩が赤く、エグザムが発動しているのがわかる。
「ヴァトラス闘術、ヴァトラス・アタック……いや、その奥義キング・フィニッシュか」
「その、前段階だ。樹君のを見様見真似だけどね……」
須佐はオーラを放出しながら、カロンへ構える。
それに対し、カロンは余裕の笑みを浮かべる。
天之は居ない。
しかし、須佐の目は強い意志を感じさせるものだった。
それに対しカロンは両小手と爪先からビームサーベルを展開する。
「来いっ!我が奥義で打ち破ってくれ
よう!」
「キング・フィニッシュッ!!」
スラスターをフル稼働させたバーニアで、須佐はカロンへ突撃する。その速度は弾丸の如くだった。
それに対し、カロンは右足を引いて構える。
「鋼脚烈風光ッ!」
力属性と技属性の複合技、あまりの威力に二の打ち要らずと言われたヴァトラス闘術奥義キング・フィニッシュッ。魔法力を波動して放つ鋼脚烈風光。
2つの技がぶつかり合うと、激しい衝撃と共に大爆発が起こる。
そして、爆煙の中から1人の男が姿を現す。それは須佐であった。
「俺の、勝ちだ……」
「……見事」
「勇者スサの一撃が〜カロンを仕留めた〜」
吟遊詩人の歌を聴きながら、流星は食事を続ける。
その歌は今まさに目の前で繰り広げられているように聞こえ、その迫力に王侯貴族達ですら圧倒される。
そして、最後の一節を歌い終えると吟遊詩人は楽器から手を離した。
「英雄の活躍を歌う素晴らしい物であった!」
ワポルム4世は拍手を送りながら吟遊詩人を讃えると、他の者達もそれに続くように拍手を送った。
「ありがとうございます」
詩人は頭を下げると退出し、入れ替わるように楽団が入ってきた。
そう、今日は祝勝会だ。
カロンが倒された事により、魔王軍は戦意を失い撤退を始めた。
帝国兵達はそれを追撃し、多くを討ち取った。
流星達が到着した時には、ほぼ戦いは終わっていたのである。
そして、今に至る。
流星は食事をしながら、カロンを倒した勇者として歓迎される須佐達を見守る。
重症を負った天之であるが、彼は元気に食事をしていた。
僧侶達の上位回復魔法によって、回復できたらしい。
貴族達が離れたのを見て、流星は須佐の所まで行くと声をかける。すると、彼は驚きながら答える。
「やあ、須佐君。元気してたかい?」
「先生!?どうしてここに?」
「ああ、ラ・ムール国にはまだ隠された勇者の鎧があってね。それを整備しに来たんだよ」
「隠された鎧?そんなのがあったんだったら、もっと早く出してくれよ」
ボヤく五井に須佐は苦笑いを浮かべる。
「いや、本当にすまないと思ってるよ。でも、見つかったのがあの事件が起きた後でね」
そう言って流星は天上を見る。
彼の言葉に生徒達はやや暗い表情をする。無理もない、裕太が居なくなってしまった事件を思い出したからだ。
「先生、湿っぽい話は今日くらい無しにしましょうよ。天国に居る岩城の為にも」
千田が明るくそう言うと、皆もそれに同意するように表情を和らげる。
「そうだね。その通りだ」
流星は微笑むと、千田の頭を撫でながら言う。
「よし!じゃあ今からお祝いをしようじゃないか!」
「「はい!!」」
2人は元気よく返事をすると、他の生徒達にも声をかけて集まり始めた。
そんな様子をアリスは遠くから見ていた。
(まただ……)
流星が千田を褒めたり、頭を撫でたりするとアリスの胸はモヤモヤする。
そして同時に、そのモヤモヤが何なのかも彼女は理解していない。
(私にとって先生は、何なのだろう……)
しかし、その気持ちを言葉に出来ずにいた。
そこへ流星がやってくる。
「……どうしたの?そんな顔をして」
「……先生」
「いくつか料理を持ってきたよ。飲み物も欲しいなら持ってくるけど」
「ありがとう」
アリスは礼を言うと、持ってきた料理を口にする。
「これが終われば、いよいよエルゴレア砂漠での探査だ。どれくらい時間がかかるかわからないから、しっかし準備をしないと」
「……そうだね」
「どうしたアリス。何か問題でも?」
「特に何も」
アリスはそう答えると、再び食事に戻る。
流星はそんな彼女を見て微笑む。
しかし、その胸に秘められた思いまでは理解していなかった。アリスが何を思っているのかを……
この後の詳しい予定をアリスと話し合おうとした時、ワポルム帝国の文官と思われる人物がやってきて、皇帝が流星と話をしたいと言っていると伝えられた。
流星はそれを了承しと伝える。
皇帝ワポルム4世は玉座に座りながら、目の前の流星を値踏みするように鋭い薄紫色の目で見つめる。
紫色の長髪を後ろでまとめ、白を基調とした赤いラインの入った服を纏った、座ってもなおわかる高身長の男だ。
「ほう……この小僧が、か」
ワポルム4世はそう言って流星の隣を見る。
そこには何も無いので、重鎮達は不思議がったが、流星にはその視線がアリスを見ているのに気がつく。
「お前達、少し下がっておれ」
ワポルム4世は重鎮達を退室させると、流星へ目を向ける。
「小僧……貴様は何者だ?」
「……どういう意味でしょうか?」
「とぼけるな。貴様の隣に居るのは精霊だろう。私の目は誤魔化せんぞ」
流星はアリスのほうを見ると、アリスも皇帝が特殊な出身を持つ事を流星に教える。
「先生、彼は妖精族との間に生まれている。それで私が見えてる」
「もう、だいぶ薄くはなったがね。私に子供が生まれたら、精霊も見えなくなるだろう。もう一度聞く、何者だ?」
ワポルム4世の言葉に流星は考える。
誤魔化しは通じないだろう。ならば、素直に答える事にした。
「私は、精霊に選ばれし者です」
「……ほう?」
ワポルム4世の目の鋭さが増す。
「こちらの世界へ来てしばらくした時に、彼女にそう教えられました」
「なるほど。異世界にも選ばれし者は居るのか」
ワポルム4世は納得したのか、それ以上追求してこなかった。しかし、彼はまだ何かを聞きたそうにしている。
「小僧……いやセイゴウと言ったな」
「はい」
「貴様は勇者なのか?」
「……違いますよ。私はただの教師です」
(まあ、今は違うが)
心の中でそう付け足す。するとアリスが口を開く。
「先生は勇者だ。私に選ばれたのだから」
「ふむ……ハイム工房からの報告にもある通りか」
皇帝は顎に手を当てると何かを考え込む。
「ラ・ムール国は当たり引いたか。どうだ、帝国に着く気はないか?」
皇帝直々のスカウトである。
「申し訳ありませんが、帝国には行けません」
「何故だ?お前はラ・ムール国に呼ばれただけだろう。それならば、帝国でもカレスティア王国でも関係あるまい」
「確かにそうですが、先代勇者も過ぎた力を恐れられたと聞きます。私やアリスがそうなるとは限りませんが、私は自分を見出した彼女を信じています。それに、故郷には帰りたい」
ワポルム4世はそれを興味深そうに見つめると、口を開く。
「なるほどな……まあ良いだろう。……だが、気が変わったら何時でも申せ。ワポルム帝国四代目皇帝の権限で、貴様の帝国入りを許そう」
ワポルム4世はそうに言うと、ベルを鳴らす。
すると、退室していた重鎮達が戻ってきた。
「勇者スサと共に帝国の脅威を退けた事、感謝する。そなたが困難にあった時、ワポルム帝国四代目の名の下に援助を行う」
「それでしたら、後日エルゴレア砂漠での探査を行いたいので、信頼できる者を紹介していただけないでしょうか?」
「そのような事で良いのか?わかった。手配しよう」
ワポルム4世が重鎮へ視線を送ると、重鎮はすぐに手配へ向かった。
「皇帝陛下の寛大なお心に感謝致します」
流星は礼を述べて頭を下げる。
ワポルム4世はそれを満足げに見ると、玉座を立つ。
「勇者セイゴウよ、そなたに精霊の加護があらんことを」
そう言って皇帝は重鎮達と連れてそのまま出口へと歩き始めると、最後に流星達に聞こえる声で言った。
「では、また会おう」
皇帝が完全に退出した後、流星はアリスに聞く。
「……今のってどういう意味?」
「私にもわからない」
アリスはそう言って何事かを考える。
(妖精族との間に生まれたのはわかる……何か見えたのだろうか?)
妖精は精霊とはまた違った力を持つ。姿を消したり、未来を見る能力も持っていると聞く。
ワポルム4世には、予知で何かが観えたのだろうか?
アリスは気になったが、結局その時はわからなかった。
歴史にタラレバがないように、未来予知もあくまで予知であり外れる事もある。
皇帝の観た予知が何だったのか、アリスが知る事ではなかった。
「じゃあ、俺達もそろそろ行こうか」
流星はそう言うと、退室した。
(何があっても、彼は私が守る)
エルゴレア砂漠のとある場所。そこに1人の男が居た。
彼の名はアモン。魔王軍呪術士団の1人である。
マーテルの命令により、ガルダーヤ遺跡について調べていた。
その秘密がわかりそうになった時に、彼に知らせが届いた。
「カロン様が、敗北された……だと……?」
彼は部下からの連絡を聞き終えると、切歯扼腕する。
「ええい、もう少しでガルダーヤ遺跡の謎が解けたというのにッ!!これでは、計画を変える必要があるぞ!」
彼はそう吐き捨てると、頭を切り替える。
「報告はどうなっている」
「既に魔王様とズール様には報告しております。マーテル様とシャー様にも時期に」
アモンはそれを聞き、うなずくと部下に指示を出す。
「よし、人員を増やしてガルダーヤ遺跡についてもう一度調べてこい!できるなら、ムットゥーウルフ共を捕まえろ!何かわかったらすぐに報告せよ」
「はっ!」
そう言うと部下はアモンの元から去っていった。
アモンも踵を返すとその場を後にしようとした時、彼に声をかける者がいた。
「っくくく……魔王軍3魔団の1人がやられたか」
その声がする方向を見ると、そこには1人の謎の男が愉快そうに笑っていた。
黒き鎧に身を包み、ダークシアンのマントを羽織った、白い髪をオールバックにした赤い目の男だ。歳は20代になったかそれよりも若いくらいだろうか?
「しかし、勇者もやるな。アレを相手に生き残るとは」
「ん、私も驚いた」
アモンは男を睨む。
「貴様、何者だ?」
男は笑いながら言う。
「……名乗る程の者じゃないさ。俺はただ、お前達のやり方が気に食わんだけだ。まあ、頑張ってくれよ?魔王軍呪術士団の1人さんよ」
そう言って男は抜刀する。アモンも素早く杖を向け、魔法力を高める。
「コールドイナク!」
無数の氷刃が男へ向かうが、それは見えない何かに阻まれた。
驚愕するアモンに男は言う。
「そんなんじゃ、俺は殺せないぜ?」
「ちっ!」
アモンは舌打ちをして後ろに飛び退き、距離を取る。しかしその直後、アモンの胸に剣が刺さる。
(な、何が……起きて?)
アモンが見たものは、突如として腕の伸びた男であった。
そして男は面倒くさそうに頭をかくと口を開く。
「ったく……手間かけさせやがって」
男はそう言って剣を引き抜くと、男の側にいつの間にか紫色の髪に薄紫色の瞳をしている女が控えていた。
そう、アモンのコールドイナクを防いだのは彼女だ。
「どうする?」
女の問いに男は答える。
「そうだな……欲しい物は既に入手してるが、遺跡があるようだし、覗いていってみるか」
男の答えに女は少し考える仕草をすると、頷く。
「……ん、わかった」
2人はガルダーヤ遺跡のある方角へと歩き出す。その後ろ姿をアモンは薄れゆく意識の中で男を睨むとそのまま息絶えたのだった。
ドルメルの鎧
魔王軍3魔団の1人、カロン・ド・バールが魔王ジオングより賜った魔法の鎧。
本来はビームサーベルもヒートパイルも維持できるのだが、カロンの持つ力属性が強く、維持できなくなり周囲に波動して広がってしまう。
カロンはこの特性を利用し、任意の方向へ放つ技へと昇華させた