「テムさんよ、どうして魔法属性と相性の悪い力や技属性の鎧があるんだ?」
テムは答えます。
「何でもかんでも弾いたら、力属性の奴は回復魔法を受けられんだろう?そういう事じゃ」
「なんか、納得いかね〜」
「ハハハ、魔法の力は完璧では無いが万能じゃよ。だから、こういう事もできる」
そう言って、テムはオーラの塊を発射し、魔法力で撃ち抜く事で拡散させて見せました。
「ッ!?テムのおっさん、今のどうやった!」
「悩め若者よ。じゃが、酒をくれたら教えてやっても良いぞ?」
勇者□□□□失われた叙事詩
カロンを倒してから一週間後。
流星達は、考古学者ナミカー・コーネル女史の案内でエルゴレア砂漠に到着した。
彼女はワポルム4世が手配してくれた人で、帝国周辺の歴史を詳しく調べてもいる。
エルゴレア砂漠があるのは、ワポルム帝国が吸収した元ティターン王国のゲッダ領。
砂漠近くにある街で最終旅支度を済ませ、本格的なエルゴレア砂漠でのガルダーヤ遺跡調査を始める予定だ。
本来なら、流星とアリスだけで向かう予定であったが、須佐と五井が同行する事になった。
理由は、2人曰く、自分達も強くなりたいとの事だ。
「天之君が居なかったら、カロンを倒す事はできなかった……」
「最近、伸び悩んでるからな。ここらで、レベルアップをしないとな!」
それを聞き流星は同行を承諾し、3人で向かう事にしたのである。
エルゴレア砂漠は広いので、馬やラクダを使って移動する。
「ガルダーヤ遺跡については、我々考古学者の間でも意見が分かれております」
ナミカー女史の話によると、昔にガルダーヤという人物がエルゴレア砂漠で遺跡を発見し、自分の名前をつけたのが始まりとされている。
しかし、肝心の遺跡は見つからず、ガルダーヤは世紀の大嘘つきとして扱われていた。
「ですが、ワポルム帝国が建国され数十年して、エルゴレア砂漠にムットゥーウルフ達が住み始めてから話は変わりました」
「ムットゥーウルフ?なんだそりゃ」
五井の質問を聞き、ナミカー女史は説明をする。
「ムットゥーウルフは非常に儀式的な事を好む獣人族で、ダンジョンや遺跡を中心にその周辺で暮らす種族です。彼らがエルゴレア砂漠に暮らしているという事は、ガルダーヤ遺跡もまた実在したのではないか?という仮説が立てられました」
「なるほど、それでガルダーヤ遺跡は実在していると?」
「はい。ムットゥーウルフ達の話によると、エルゴレア砂漠に巨大な神殿のような建物があるようです。しかし、その場所までは教えてもらってません……」
ナミカー女史の説明を聞いて五井は納得したように頷く。その話を聞き、流星はペー達から聞いた話を思い出した。
「確か、エルゴレア砂漠に居るムットゥーウルフは、プ族だったか?ペーさんから知り合いの名前を聞いておけばよかったな……」
「彼らを知っているのですか?」
ナミカー女史の質問に、流星は相づちしながら答える。
「ん、ああ……まあ、知り合いから聞いた話程度ですが」
そう説明している間に、エルゴレア砂漠の入口に到着した。
そして、その光景に五井は驚いた。
なんと、エルゴレア砂漠は至る所に岩石が転がっているからだ。
「砂漠と聞いたが、岩だらけだな」
「地球でも、ほとんどが岩砂漠と呼ばれる場所なんだ。有名なサハラ砂漠でも、そのの80%程が岩砂漠と言われているんだ」
須佐の説明に五井は驚いた様子で言う。
「マジか……全部砂だと思ってたぜ」
そして一行は砂漠へと足を踏み入れるのだった。
エルゴレア砂漠を歩き始めてから2日が経った。
道中でモンスターに何度か襲われたが、五井と須佐が特訓の為にこれらを倒していた。
「コイツ!かなり素早い」
今は、コックローチバイアランと呼ばれる、砂漠に生息してるゴキブリに似たナニカと戦闘している。
その見た目通り、非常に素早い運動能力を持っている。
しかし、須佐がチモリトの魔法を使用するとコックローチバイアランの動きはスローになり、五井の剣がその体を捉える。
「オラァ!」
コックローチバイアランは地面に叩きつけられると、そのまま動かなくなって光の粒子となった。
「ふう、なんとか倒せたな」
「ああ……」
五井はそう言うと、少し離れた場所の岩陰を指さす。
「岩陰に隠れて休憩しようぜ。さすがに疲れた」
砂漠は暑い場所とイメージしやすいが、本来の定義は降雨量が250mm以下の乾燥しきった場所の事だ。
それでも、日中は40度以上になり、地表面はもっと暑くなる。
いくら乾燥していても、辛いものは辛いのだ。
そんな中での戦闘で暑くなった身体を休める為、流星達は岩陰に向かい休憩する。
五井は岩陰に寝っ転がると、大きく息を吐く。
「しかし、この暑さには参るな……」
「そうだね。日本の夏とはまた違った暑さだ」
須佐も岩陰に腰掛け、汗を拭う。
そんな2人を見てナミカー女史は言う。
「この調子なら、あと3日程でプ族の集落に到着します。それまでの辛抱です」
「うへ~、まだ3日もあるんかぁ……」
まだ砂漠を歩かないといけない事に五井はうんざりしていると、須佐がふと疑問に思った事を聞く事にした。
それは、このエルゴレア砂漠についてだ。
「あの、ナミカーさん。このエルゴレア砂漠を2日程歩きましたが、人が何かしたような感じがするのですが」
エルゴレア砂漠は広く、ワポルム帝国が支配しているとはいえ、まだ多くの未開の地が残っている。
しかし、その割には人の手が入った痕跡がある場所が多いように感じるのだ。
「よく気がつかれましたね。それが、ムットゥーウルフ達の集落を示す手がかりです」
儀式的事を好むムットゥーウルフ達は、こうして自然の中に自分達の存在を示し、他の同族とのやり取りや危険な場所を知らせたり遺跡等を守っている。
「なるほど、だから人が通った跡があるんですね」
「はい、ムットゥーウルフ達は自分達の存在を示す事で外敵から身を守っています」
そんな話をしていると、ナミカー女史は何かに気がついたのか立ち上がり、岩壁を調べる。
「ん?どうしました?」
「どうやら、プ族の集落に着いたようです。……でもおかしい。前はもっと奥だった筈では」
ナミカー女史の案内で流星達がしばらく進むと、視線の先には小さな集落があった。
そして、その集落の入口で2人のムットゥーウルフが門番をしていた。
その表情はとても厳しく、神経を働かせて絶えず何らかの注意を 払っていた。
「モンスターの襲撃を受けたのでしょうか?少し話を聞いてきます」
ナミカー女史がムットゥーウルフの門番から話を聞こうとした時、突如ムットゥーウルフ達がナミカー女史へ武器を向けて包囲する。
「あれはただ事じゃあない。2人共行くぞ」
流星が五井と須佐に声をかけ、ナミカー女史の元へ向かう。
「待って下さい!私は考古学者のナミカー・コーネルです。何度か貴方達と話をした筈です!」
ムットゥーウルフ達は険しい表情のまま、ナミカー女史への態度を変えない。
「黙れ人間!お前達が遺跡荒らしをしているのは知っているぞっ!」
「俺達から情報を盗むつもりだろう!」
「ち、違います!私は……」
ナミカー女史は必死に説明しようとするが、ムットゥーウルフ達は聞く耳を持たずに武器を構えて臨戦態勢を取る。
そして、1人のムットゥーウルフが声の限り叫ぶ。
「お前達を集落に入れる訳にはいかない!!ここから去れッ!!」
今にも襲いかかりそうなムットゥーウルフ達。ナミカー女史を守るように須佐と五井が前に出る。
「待て!俺達は遺跡荒らしなんかじゃあない」
「そうだ。俺達は、帝国から来たばかりだ。そんな事はできない」
須佐と五井が説得を試みるが、ムットゥーウルフ達は警戒を解く気配はない。
話の雰囲気から、流星達は遺跡荒らしだと疑われた理由は、ここ最近何者かのによる遺跡荒しが原因と思われる。
(まいったな……そう簡単には誤解は解けそうにない。どうする?)
(先生、ペーの事を話してみたら?知り合いが居るなら、話のきっかけになるかも)
アリスのアドバイスに流星はうなずくと、ムットゥーウルフ達に尋ねる。
「この中に、エム・イー・ペーというグラナダのハイム工房で働く鍛冶師を知ってる者は居ないか?」
その言葉にムットゥーウルフ達が流星を見る。
「(上手くいってくれよ……)俺は、彼に鎧を整備してもらった者だ。ある程度であるが、君達の話も聞いている」
「ペーの事を知ってるのか?」
流星の言葉を聞き、1人のムットゥーウルフ思わず口に出す。
多くのムットゥーウルフ達の髪の色が、キャメルブラウンやライトブラウンに対し、発言したムットゥーウルフは髪が真っ白で大きな獣の耳が特徴的であった。
すると、周りのムットゥーウルフ達の警戒が少し緩んだ気がする。
「私はプ族の戦士リコネ。人間、何しに来た?」
(続けて呼んではいけない名前ー!)
作品すら壊しかねない名前に流星は驚愕す。読者も、続けて読んでいけない。いいね?
「それで、ペーの知り合いというのは本当か?」
「ああ、本当だ。俺の鎧は少し特殊でね。グラナダで困っていた時に助けてもらったんだ」
それを聞くと、納得したようで武器を下ろす。
「なるほど……それはすまない事をした」
「いや、いいさ。誤解が解けて良かったよ」
流星はそう言うとリコネに握手を求め、それに応じる。
「それで、君達は何をしにここまで来たんだ?」
「実は、勇者の装備を探しに来たんだ。それをペーさんに話したら、ここに有るかもしれないと言われて」
「そういう事か。確かにこの集落に勇者の装備は保管してある」
「やっぱりそうか」と流星が言うと、リコネは鋭い視線を送る。
「だが、簡単に見せる訳にはいかない」
「それは、何故だ?」
「私はプ族の戦士長であり族長代理でもあるからだ」
「……つまり、何か条件があるという事だな?」
リコネはゆっくりと口を開く。
「……私と勝負して勝ったら見せてやる」
「勝負か……」
流星はリコネの鋭い視線に少したじろいでしまう。
「どうした?怖じ気づいたのか?」
「いいや、そうじゃないさ。ただ、俺はあまり戦いが得意じゃないんでね」
すると、五井が前に出るとリコネを挑発する。
「なら、俺が代わりに相手してやるよ」
「ほう……人間にしては良い度胸だ。いいだろう。ついて来い」
リコネの後について行くと、何も無い場所へ到着した。
「ルールを説明する。この場所に寝そべり、お互いに腕比べをするんだ」
腕比べ。詳しい説明によると、戦士同士がお互いの力比べをする事らしい。
「この方法なら、無益な血が流れる事無く、お互いの実力もわかる」
「なるほど、俺達の世界でいう腕相撲って訳か。わかった」
五井とリコネが砂漠の大地へ寝そべると腕を組む。
審判役のムットゥーウルフが2人の状態を確認し、合図をする。
すると、リコネが力を入れる。
しかし、五井は微動だにせず余裕の表情だ。
それを見たムットゥーウルフは驚きの表情を浮かべる。
プ族の戦士長であるリコネは、集落では負け無しの腕比べ名人だからだ。
そして、リコネが更に力を込めようとした時、五井が口を開く。
その口調はいつもの軽い感じではなく真剣そのものだ。
「あんた強えーな。さっきのは様子見だな?」
「それがわかるのか。もしかしたら、始めて本気を出せるかもしれないな」
そんな五井に思わずムットゥーウルフ達は息を呑む。
そして、お互いに全力を出した腕比べは長時間に及んだ。
五井のスタミナとパワーにナミカー女史は驚嘆する。
「凄い……獣人族を相手にまったく引けを取らない」
照りつける太陽が反射し、眩しい。
その光と熱に2人は汗をかく。それでも腕に力を入れ、お互いの腕を押し返す。
そして、ついに決着の時が来た。
リコネの腕が地面につく。僅差で五井が勝利したのだ。
その事にムットゥーウルフ達は驚きを隠せない様子だったが、同時にプ族の戦士達が歓声をあげる。
五井も腕を離し、起き上がると握手をする。
「いい勝負だったぜ。もう少しで負ける所だった」
「私もだ。人間……いや、イツイと呼ばせてもらう。お前とはまた腕比べをしたい」
プ族の戦士達が五井を褒め称える。
「まさか、リコネ戦士長が負けるなんて!」
「凄かったぞ!」
そのおかげもあってか、プ族の信頼を取り戻し、集落への立ち入り許可がおりたのだった。
流星達は案内されるがままにとある家に到着した。
その家には、布を巻かれ傷の手当てを受けている筋肉質な男性が待っていた。その男性を見た瞬間にナミカー女史は挨拶をする。
「お久しぶりです。族長」
そう、目の前に居る人物こそ、ムットゥーウルフ達の族長である。
「ああ……久しぶりだな、ナミカー」
族長はそう言うと起き上がろうとする。
「族長、無理はいけない」
「客人の前だ。あまり無様な姿は見せられん」
族長は無理をして起き上がろうとするのをリコネが止めると、このままですまないと断りをいれ、流星達に挨拶する。
「俺が、この集落の長でありプ族の族長でもあるプ・ナオだ」
それにならい、流星達も挨拶をする。それが終わると、ナミカー女史は集落で何が起きているのか尋ねる。
「族長、いったい何が起きてのですか?前に来た時とは、あまりにも様子が違います」
「うむ。実は……」
ナオが語るには、約3ヶ月程前にエルゴレア砂漠に人間達が現れ、何かを探し始めたのだ。
始めは遠くから観察するだけであったが、彼らがガルダーヤ遺跡を探しているのがわかると話は変わる。
ガルダーヤ遺跡を守るムットゥーウルフ達は、好まれざる者達を排除する為に戦闘したが思いのほか強く、ナオが率いた戦士達は全滅してしまった。
「そんな……ムットゥーウルフの戦士が負けるなんて!」
このエルゴレア砂漠の戦闘において、ムットゥーウルフ達の右に出る者は居ない。
そんな彼らが全滅してしまう程の存在がこの砂漠に居る。
それを聞いた全員の表情が強張る。
「その時、ペー殿が再現してくれた狼の鎧も壊されてしまった……」
ムットゥーウルフ達がペーを知っていた理由、それは彼がムットゥーウルフ達へ魔法の鎧を贈ったからだ。
ナオの視線の先には、ボロボロになった狼の鎧置かれていた。
(アレはッ!?)
それを見たアリスは絶句する。
色は変わっているが、その鎧はアリスが知っている鎧に似ていた。
「すまないが、恥を忍んでお前達に頼みがある」
「何だ?俺達で良ければ聞くぜ」
五井の言葉にナオは感謝を言うと、続きを話す。
「ガルダーヤ遺跡を荒らす者達を、俺達に代わって排除してくれないか?」
その話を聞いていた須佐が疑問を投げかける。
「どうしてそこまでして、ガルダーヤ遺跡を取り返そうとしているのですか?」
「それは、古の勇者が残した装備を守る為だ」
ナオが語ったのはプ族の祖先の話だった。
プ族の祖先は昔は別の場所で暮らしており、そこにあった古城を守っていたそうだが、山のような巨人が現れ、それらを吹き飛ばしてしまったそうだ。
(もしかして、サイコゴーレムかな?……アリス?)
アリスから返事が無い事が気になるが、まだナオが話しているので、そちらに集中する。
「そこでたどり着いたのが、この砂漠だった。そこで祖先が見たのがガルダーヤ遺跡とその守護者だ」
「守護者?それは、貴方達ではなかったのですか?」
ナオの話にナミカー女史は疑問を投げかける。
「そうだ。とても理性的なモンスターであった。俺達は、あの方を砂漠の薔薇と呼んでいる」
そうしてムットゥーウルフ達は、砂漠の薔薇と呼ばれるモンスターの助けを借りながら、エルゴレア砂漠で生活をしていたのだ。
「お前達が真の勇者ならば、きっと砂漠の薔薇様も協力してくれる筈だ。どうか、奴らを遺跡から排除してくれ」
「わかりました。できる限りの事をします」
ナオの願いに、流星が代表して答えた。
ナオから、ガルダーヤ遺跡に関する話を一通り聞いた流星達は、その遺跡荒らし達を追い出す為に集落を後にし、目的地であるガルダーヤ遺跡を目指して進むのだった。
そんな中、流星はアリスへ話しかける。
「さっきはどうした?どこか調子が悪いのか?」
「そうじゃないけど……あの族長が持っていた鎧。もしかしたら、古の勇者が使っていた鎧の可能性がある」
「なんだって!」
アリスがそう言うとなると、あの鎧は前魔王軍との戦争に使われた、非常に古い魔法の鎧になる。
「ちゃんと見てないからわからないけど、テムの作った鎧に似てる」
「……先生、先ほどから独り言が多いですが、大丈夫ですか?」
須佐の心配はもっともだ。普通なら、暑さにヤラれてしまったと思うだろう。
しかし、それは仕方ない事だ。精霊が見えていないのだから。
「まだ、言ってなかったね。俺が見つけた鎧には、精霊が宿っているだ。その精霊が言うには……」
「精霊の宿る魔法の鎧ですか!」
流星の話を遮り、ナミカー女史が興味深そうに聞いてくる。
「超自然的な力を持つ彼らの宿った物は、普通ではあり得ない現象を起こすと言われています。その精霊から何かお告げでも?」
「そんなんじゃないですよ。精霊が言うには、族長の持っていたあの鎧は、テムの鍛えた鎧によく似てるって」
「それは本当ですか!」
ナミカー女史が目を輝かせるも無理はない。
テムは伝説の鍛冶師であり、考古学者からすれば当時の鍛冶師の歴史を知るのに欠かせない人物だ。
「という事は、精霊はテムが居たの時代の存在……時間のある時で良いので、ぜひ当時のお話を聞かせてください!」
「わ、わかりました。伝えておきます」
そんなやり取りをしていると、目的地のガルダーヤ遺跡へ到着するのだった。
しかし、そこには岩があるだけでそれらしい建物は何も無い。
「本当にここなのか?」
五井に聞かれ、案内してきたリコネはうなずく。
「間違いなくガルダーヤ遺跡だ」
そして、2時間程の距離を更に歩くと、そこには異様な光景が広がっていた。
「こ、これは……」
岩で隠されていたガルダーヤ遺跡の入口前は暴かれ、その付近には盗掘者達の亡骸が複数転がっていた。
「モンスターにやられたのか?」
須佐の疑問にリコネは答える。
「プ族は、ガルダーヤ遺跡を荒らす者達を排除すると約束した。それはモンスターも含まれている。だから、遺跡内部にモンスターは居ない」
「じゃあ、族長の言っていた砂漠の薔薇って存在が排除した?」
「いえ、違います。これは……人間の仕業です」
その疑問に答えのは、ナミカー女史であった。
考古学者だけあって、そういう分析も彼女は得意であった。
「死亡してから時間はまだそれほど経過していません。傷の具合から数時間以内と思われます」
盗掘者達の遺体を調べながら周囲を警戒していると、五井がある事に気がつく。
「おい!コイツ、まだ息があるぞ!」
「本当か!」
流星達が五井の元へ駆け寄ると、そこには虫の息だが確かに生きている盗掘者が倒れていた。
「おい!しっかりしろ!」
流星は意識の無い盗掘者へ呼びかけるが反応が薄い。その盗掘者は服を探ると、1枚の紙切れを取り出し渡してきて、そのまま息を引き取った。
それをナミカー女史が調べる。
「……どうやら暗号のようです」
「暗号?」
「はい。……ですが、何が書いてあるのはは不明です」
ナミカー女史が見せてくれるが、そこに書いてある事を読める者はいなかった。1人を除いて。
「……この場所……目的の物は、無い?どういう事だ」
「わかるのかアリス?」
「うん。これは、私達が戦っていた当時の魔王軍の暗号だから」
「そのまま続けてくれ、俺が伝える」
「わかった」
アリスの力を借りて、暗号を解読すると内容は以下のものであった。
モールアッグ達を使った大規模な発掘調査の結果、この場所に目的の物は無い事がわかった。
しかし、目的の物とは違う遺物がありそうだ。引き続き調査し、遺物を持ち帰る。
魔王軍呪術士団 アモン
アリスが解読した部分を伝えると、全員が驚く。
「魔王軍の呪術士団だって!」
「コイツらはただの遺跡荒らしでは無く、何か目的があってここへ来たという事なのか?」
須佐の推測は正しいかも知れないと皆が思う。
魔王を倒した勇者の装備を放置して、また魔王が倒されたら復活させた意味が無い。危険な物は破壊なり封印する。もしくは、自分達の監視下に置く筈だ。
しかし、疑問もある。
暗号の書き方から、勇者の装備を探していないように見えるのだ。
目的は違うものだったのか……だが、いったい何を探しているのか?
「とりあえず中へ入ろうぜ。魔王軍の奴らが残ってるかもしれない」
疑問は残るが、五井の提案に反対の意見は無かった。侵入している者を捕まえれば、目的も明らかになる筈だ。
「ナミカーさんとリコネさんはこの事を皆に知らせて下さい。遺跡内部は、俺達が調べます」
そう須佐が言うと、リコネは彼にある物を渡す。
「それなら、コレを持っていくといい」
「コレは?」
渡されたのは手の平大の物であった。
「それは、集落に伝わる物で、ガルダーヤ遺跡へ入る時、罠にかからなくなる物だ」
「本当ですか!」
須佐がそう聞くと、リコネは頷く。
そのお守りを受け取り、流星達は遺跡内部へ足を踏み入れた。
ガルダーヤ遺跡の通路は入口こそ小さかったものの中は広く大きく広がっており、内部は神殿といって良いほどであり、侵入者を拒む為に複雑にもなっていた。
しかし、不思議な事に迷う事なく先へ進む事ができた。
これもリコネがお守りを渡してくれたからだろう。
そして、奥へ進むと行き止まりに到着してしまう。
「なんだよ……何もないじゃんか」
「何か仕掛けがあるのかもしれない。探そう」
須佐の提案に流星達が辺りを調べるも何もなかった。
「……ん?」
その時だった。何かに気づいた須佐が上を見上げる。
すると、そこには道があった。
「よくできた仕掛けだな。これなら侵入者も、そう簡単には進めないな」
「関心してる場合じゃないぞ先生。俺達には飛行する手段が無いんだぜ?」
五井が心配しているが、流星には手段があった。
「アリス、2人抱えて飛べるか?」
「無理。1人ずつお願い」
「わかった。2人共、順番にコイツに乗ってくれ」
流星はファイターを呼び出し、どちらかに乗るように言った。
こうして、3人は無事に上まで行く事ができた。
そして、更に遺跡の奥へ進むと、ある部屋の前で立ち止まった。
そこには、魔王軍と思われる者達が人形のように手足を伸ばし転がっていた。
「……全員死んでる」
斬られていたり、何かで撃ち抜かれたのはわかる。しかし、全員が同じ方向から殺ろされているのが気になった。
この部屋で何があったのだろうか?
「同士討ち……って訳じゃなさそうだな」
驚いた事に、現場には全ての属性で攻撃された後がある。それも真新しい状態でだ。
その位置は、ちょうど流星達が入ってきた場所からだ。
「……いったい、彼らは何と戦っていいたんだ?」
流星の言葉に答えられる者は居ない。しかし、魔王軍を簡単にあしらえる者が居るのは確かであった。
そして、部屋の奥から争うような音が聞こえてくる。
「誰かいるぞ!」
「本命のお出ましって事かよ!」
五井が2人に急ぐよう言うと、青い運命の鎧を纏い駆け出す。
それに合わせて流星達も自分の鎧を纏って五井を追いかける。
戦いの声は段々と近付き、部屋の奥にある通路から人とモンスターが飛び出してくる。
人の方は長身で、白を基調とし、肩や腕の一部が紫または濃紺で彩られた細身で華奢な鎧、しかし、太もも部分にボリュームがあり直線と曲面が混在したデザイン。
その手にには、自分の身長と同じ程の長大な白い槍のように物を持っている。
兜には特徴的なV字の兜飾りがある事から、勇者の鎧と思われる。
対するモンスターの方であるが、薔薇というかチューリップだかとんがり帽子みたいな緑色の見た目をしていた。
モンスターの方はかなり消耗しているか、明滅が激しい。
「なんだコイツは!」
五井は驚きを隠せずにいる。それもそのはずだ。ナオの話ではガルダーヤ遺跡にはモンスターは居ない筈である。
「援護するならあの鎧の人だな」
「あぁ、そう……」
そして、流星は言い切る前に背部・カノンと大腿部のガンを交互に連射し、鎧を着た人物をモンスターから引き離す。
「何やってんだよ先生!狙う相手が違うだろっ!」
「いや、俺は何もしてない。アリス、どういう事だ。説明してくれ」
流星はアリスへ説明を求めると、とんでない答えが帰ってきた。
「先生、あのモンスターは私の知り合いだ。敵はあの鎧の人だ」
「知り合い?」
「説明は後でする。今は排除する事を考えて」
流星の説明に困惑しながらも、須佐と五井はファイアーで鎧の人物へ攻撃を始める。
鎧の人物は舌打ちすると、体ごと大きく後ろへ下がる。そして、その手にする槍をこちらへと向ける。
「風のオーラよ!」
そう答えると同時に激しい風が吹き荒れ炎を吹き飛ばす。
そして敵意むき出しの目でこちらを睨みつけてくる。
「おい、なんでこんな事をする。俺はお前らに何もしてないぞ?」
「男だと!?」
細身で華奢な体型であったので、女性だと思っていたが、鎧の人物は男性であった。
「まあ、悪かったよ。そこのモンスターが、こちらの知り合いなんでね。そういう訳なんだ引いてくれるか?」
流星はとりあえず説得を試みるが、鎧の男から敵意が消える事は無い。
「事なかれ主義のお前らしいな。反吐が出るぜ」
鎧の男は流星の事を知っているように話してきた事に驚くが、流星はその声に聞き覚えは無い。
「後ろの2人もそうだ。勇者なんて気取りやがって、もう少し身内の管理をしたらどうだ?」
鎧の男の謎の言いがかりに須佐は反論する。
「いきなり何を言い出すんだ。身内の管理とはどういう意味だ?」
「わからないのか?なら、死ね」
鎧の男は須佐へ槍を向けると、その先端に魔法力が集まっていき発射される。
それに割り込むように五井がオーラを纏った剣で防ぐ。
「おい須佐、何しんだ。向こうはやる気だボーッとすんな!」
「すまない、樹君」
五井は須佐を叱咤する。
「お前は魔王軍か?この遺跡に何の用だ?」
流星はもう一度問いかけてみるが、鎧の男は鼻で笑うだけで答える気はないようだ。
「……どうやら話す気はなさそうだな。仕方ない、取り押さえるぞ!」
「あぁ、わかった」
「やれやれだな」
流星の言葉に3人は戦闘態勢を取る。
まず最初に仕掛けたのは五井だ。
「青き運命の鎧よ、その真の力を見せろ!エグザム!!」
能力を解放すると同時に鎧の肩が赤く染まり、五井は駆け出すと鎧の男へ斬りかかる。
「青い運命の鎧、ブルーディスティニー、赤い肩は2号機のイメージか」
「何をごちゃごちゃと!」
五井の繰り出した剣は槍によって防がれる。
「やるな!」
「そういう暑苦しいのが気に食わないな」
そこから更に斬り合いが始まるかと思われたが、鎧の男は槍で剣を跳ね上げると、彼の持つ槍が姿を爪へと変化し発射される。
五井回避する暇もなく直撃受け、壁に叩きつけられた。
「樹君!?」
「真の騎士として、国の為に殉じた彼に劣る力しか発揮していないならこうなる」
「こいつ!」
須佐が炎の剣を構えて、で
「炎の剣だと?」
鎧の男は一瞬動揺する。
「ウォオオオオオッ!!」
須佐は剣で鎧の男へ斬りかかるが、紙一重のところで躱されてしまう。
「やれやれだな。霞の鎧と力の盾が揃ってこそだが、無いならただの凄い剣だ」
須佐は連続で攻撃するが、その全てを見切られてしまう。
そして、攻撃を捌ききると鎧の男は距離を取り爪からへ槍に戻し構えると、オーラを集中させ巨大な炎を巻き起こし回転させ始める。
「炎よ!」
鎧の男から放たれた炎の渦は、まるで竜巻のように渦巻き須佐に襲いかかる。
「ガァァァ!?」
須佐はバーニアで回避しようとするが間に合わず直撃を受け、そのまま倒れてしまった。
「マジかぁ……このパーティー回復役少すぎない?」
鎧の男の対応を任せ、流星は五井へミディを唱えていたが、前衛はあっという間に全滅した。
(それにしても、霞の鎧と力の盾?烈火の鎧と焔の翼じゃなくてか)
疑問に思うが今は戦闘中だ。考え事をしている余裕は無い。
「残りは、クソ教師お前だけだ」
鎧の男は流星を見据える。
理由は知らないが、自分達の事を知っている鎧の男を警戒する。
「あぁ、そうだな」
「消えろ、クソ教師」
そう言うと、槍の先端を向け魔法力を集中させる。そして発射され流星へ襲いかかる。
「くっ!」
流星はそれを横に回避する。しかし、それはフェイントであったようで、槍に炎を纏わせ斬りつけてくる。
避けきれない。そう考えたが、アリスが鎧を操作し回避する。
「すまないアリス」
「気にしないで」
鎧の男は攻撃の手を緩めず、連続で斬りかかってくる。
流星はそれをアリスのサポートを受けながら躱し続ける。
その間にも背部・カノンと大腿部のガンによる射撃を行うが、鎧の男にダメージらしい物を与えられなかった。
そんな事を続けていると、鎧の男が立ち止まり話しかけてくる。
「変な色だが、それはSガンダム……いや、Ex-Sのなりそこないか。ALICEが選びだした者がお前だったとはな……クズには合っているな」
「どういう事だ?」
「そのままさ。Sharを超える、ハイエスもしくはハイ・ストリーマー、シュプリーム、スーペリア、ι。読み方がわからないと、エスイーエックスなんて呼ぶ奴も居る。最強のガンダムやら好き放題言うが、元は教育役に不条理な男を乗せて、時に不合理さを伴った思考や行動を学習し、理解。自ら考え判断し行動する人工知能。その設定は、そういう風になったか」
「お前、それをどこで!?」
何かを知っているらしい鎧の男にアリスが驚く。
「その話は、彼とその仲間しか知らない筈だ。どこで知った?」
「さあな。だが、俺は知っている」
アリスの質問に鎧の男は答えて見せた。
それだけでも情報の収集はできた。
「お前、精霊が見えてるな?」
「そうだ。俺の鎧にも精霊が居る。ヴァニス」
鎧の男が声をかけると、紫色の髪に薄紫色の瞳をしている女が現れた。
「精霊の力を借りられるのが、お前だけだと思うなクズ教師」
そう言うと、鎧の男は槍を振るい炎を連続で飛ばした。
「この数ならどうだ?」
「くっ!?魔法力よ、集まり盾となれ、シール!」
流星は回避を諦め防御態勢に入るが、全てを防ぐ事は出来ずに直撃を喰らってしまう。
「ぐあっ!!」
鎧の男は攻撃の手を緩めず、今度は槍の先端に炎を集中させる。そしてそのまま突撃してくる。
アリスは膝部サーベルホルダーを取り出すと、ビームサーベルを展開しその攻撃を受け止める。
「精霊が最適な武装をピックアップして、お前がそれを選ぶ。まるで、ただの操り人形じゃないか」
「悪いか?自慢じゃないが、戦闘に関しては素人なんだ。経験者の助けを借りて何が悪い」
「いいや?素晴らしいよ。その行動原理は、自分の意思ではなく他人の意思に従うという事だ」
鎧の男はニヤリと笑うと更に力を込めてきた。
このままでは押し切られると判断した流星はスラスターを噴射させ無理矢理距離を取る。
(不味いな……このままじゃジリ貧だ)
属性相性は良くも悪くもない。恐らくだが相手は自分と同じ魔法属性のはずだ。
なのに、技属性のオーラでも攻撃してきている。複数属性を持っているにしても、技属性ならどうにかできる自信があった。
しかし、戦ってみれば数に物をいわせて突破された。
相手にも精霊が居る以上、時間をかければ不利になるのはこちらだ。
どう倒す考えていたその時、聞いた事のない女性の声が脳内に響く。
「アリス、よく耐えてくれました。貴方のおかげで、詠唱が完成します」
「何だ、女の声!?」
鎧の男にも聞こえていたのか、彼は周回を警戒する。
すると、鎧の男を中心に周辺の風景が歪み、青とも緑とも取れる色へとなりラ……ラ……とハミングのような音が木霊する。
「雷電よ、メガファン!」
鎧の男を囲むように魔法陣がいくつも現れると、電撃が鎧の男を襲う。
バーニアを連続で行い回避をするが間に合わず鎧の男はまともに喰らってしまう。
しかし、すぐに体勢を立て直すと魔法力を槍の先端に集中させた。
その時、ヴァニスが鎧の男を止める。
「……これ以上は危険。撤退を推奨」
「チッ!分かったよ。行くぞヴァニス!」
そう言って鎧の男はスラスターを吹かしてあっという間に消えてしまう。
「待て!!」
流星は追いかけようとするが、既に2人の姿は見えなかった。
「逃がしたか……」
「……そうだね。でも、今は戻るのを優先しよう」
アリスに言われ、流星も冷静さを取り戻す。
須佐と五井は負傷したままだ。それに、自分達を助けてけれた人にもお礼を言わないといけない。
「そうだな……すまない」
「……いいよ。それより早く戻ろ?」
「ああ……あの鎧の男が言っていた事について詳しく聞きたいしな……」
流星達が戻ると、緑色のモンスターが須佐と五井の側に居た。
流星は警戒するより早く、誰かがが話しかけてきた。
「先ほどは助けてくださり、ありがとうございます。貴方が今代の勇者ですね?」
「こ、声が、また頭の中に……」
「先生、目の前に居る。お久しぶりです。賢者ララァ」
「はい。久しぶりですね、アリス。姿が変わっいるのにわかってくれましたか」
流星の目の前に居るモンスター、それが賢者ララァその人であった。
「魔法力に変化はなかったから。でも、どうして貴方がモンスターに?」
「……話すと長くなります。それに、この2人にも聞いてほしい事があります」
「わかりました」
流星達は須佐と五井を担ぐと、ララァに促されるままついて行く事にした。
鎧の男
No Data
ヴァニス
No Data