ララァに連れられ連れてこられたのは、ガルダーヤ遺跡最深部。
そこには、先代の勇者が使っていた装備が安置されていた。
適当な場所へ須佐達を寝かせると、ララァが話かけてくる。
「まずは2人の治療を施します。……申し訳ないのですが、魔法力を回復するアイテムはありますか?先ほどの戦闘で魔法力が枯渇気味で……」
「なら、マディアを使います。魔法力には余裕があるので」
流星はララァへマディアを使う。流星も回復魔法は使えたが、ミディ程度なので彼女に任せる事にした。
「では、ベマサキ」
ララァは回復魔法のベマサキを唱えると、みるみる内に彼らの顔色が良くなっていった。
「……ここは、いったい?」
「気がついたか」
すると、すぐに2人は気がつき起き上がる。
「あの鎧野郎はどこ……って、モンスター!」
「落ち着け、この人が君達を助けてくれたんだ」
「始めまして、今代の勇者達よ。私は、先代勇者と共に魔王ジオングと戦った、ララァ・スンと申します」
ララァが自己紹介すると、五井は訝しげに彼女を睨む。
「魔王と戦った?ならどうしてモンスターなんかに?」
「……それは、これから説明します。まずは、私の話を聞いてください」
ララァはそう言うと、話始めたのだった。
かつて魔王ジオングと先代勇者は戦った。その圧倒的な力の前に、ララァはただの足手まといであったと自傷気味に語る。
そして、激闘の末に魔王ジオングを倒す事ができた。
そう、1度は倒す事ができたのだ。そして、国へ凱旋しようとした時、悲劇は起きた。
なんと、魔王ジオングは聖女フラウの身体を乗っ取り、復活してしまったのだ。
「そんな……魔王は倒したんじゃ」
「はい。あの時、確かに魔王は倒されました。私も確認しています」
ララァが次に語るのはこうだ。
1度倒した魔王だが、魔王にとって肉体とは己の魂を宿しておくだけの物であったのだ。
そう、魔王ジオングは1種のエネルギー生命体なのだ。
いくら倒そうとも、依り代となる肉体さえあれば、何度でも魔王は復活する。
その事に気がついた聖女フラウは、最後の力を振り絞って自分事魔王を封印したのだ。
「じゃあ、また魔王を封印すれば解決するのですか?」
「いいえ。それではまた封印が綻びた時に復活するでしょう。そうならないよう、私は先代勇者が帰還した後、魔王を完全に倒す方法を探しました」
その方法を見つけた時には、ララァも老いており、満足に動く事すら出来ない状態であり、自分の知識を後世へ残す時間も少なかった。
そこでララァは秘術を持って肉体から魂を解放し、モンスターウィルオーエルメスへと姿を変えたのだ。
「モンスターとなった私は、先代勇者より託された装備と、魔王を滅ぼす術を後世へ託す為、この遺跡で眠りにつきました」
「それで、魔王を完全に倒す術とは?」
「……魔王を滅ぼす方法は、2つあります。1つは、魔王と同じように肉体を捨て、魂となって自爆する事」
ララァはそう言うと、悲しそうに俯いた。
「この方法でなら魔王を倒せるでしょう……しかし、そうした場合生還は不可能です」
「この世界の為に死ねと?そいつは勘弁願いたいな」
流星はうんざりとした表情で頭をかいた。
「しかし、もう1つの方法なら生還の可能性があり得ます」
「……それは?」
「伝説とされる不死鳥フェニックスの力を借りる事です」
不死鳥フェニックス。生と死、破壊と再生を司る伝説上の存在。誰もがおとぎ話と思っていた存在であったが、ララァは長い年月をかけて研究し、実在する存在である事を突き止めた。
ララァが祭壇へ視線を向けると、そこにはまるで炎をそのまま閉じ込めたように激しく燃えるような鎧が安置されていた。
「破壊の力を持つ炎の剣、その炎から身を守る為の烈火の鎧、そして大空を駆け次の世代へ繋げる焔の翼。選ばれし者の許に三つの星が集う時、試練を乗り越え大いなる力が宿る……この鎧は、その烈火の鎧です」
「それが……」
五井は鎧を見つめながら呟く。
「勇者スサよ、貴方ならあの鎧を身に着ける事ができる筈です」
「……俺が?」
「はい。貴方は炎の剣を持っています。資格の無い者が持てば、色は褪せ、たただの剣となります。しかし、貴方の持つ炎の剣は燃えるような色を持っている。自信を持ってください」
ララァの話を聞き終えると、須佐は恐る恐る烈火の鎧へ近づく。
すると、烈火の鎧から炎が噴き出し須佐を包み込む。
「須佐っ!」
心配して五井が駆け寄ろうとするが、見えない壁に弾き飛ばされてしまう。
「ッ!こいつは……」
「試練です。大丈夫、彼なら乗り越えて戻ってきます。それまで、もう一つの装備をお渡ししましょう」
そう言うとララァは壁に体当たりし、仕掛けを動かす。
すると中から筒が出てきた。
「それは背部・カノン……いや違うな」
その筒の先端には半球状の蓋がしてあり、魔法の矢を発射できない構造になっていた。
「内部に魔法力を貯める事のできる特殊な筒、
ララァはプロペラントタンクを差し出し、アリスはそれを受け取る。
「使い方は覚えていますね?」
「はい、大丈夫です」
アリスの答えを聞き、ララァは小さく頷く。
「良かった。それでは勇者スサが戻ってくるまで待ちましょう」
「えっ、俺には何も無いのか?」
五井の疑問ももっともだろう。周りが何か貰ったりパワーアップしているのだから自分も……となるだろう。
「そう言われましても、もうお渡しできる物はありませんし……」
ララァが困っていると、流星はある事を思い出し五井へ声をかける。
「なら、ちょうど良い物がある。使ってみるか?」
そう言って取り出したのは、キリマンジャロ鉱山のダンジョンで入手した物だ。
バウンドミミックが落とした物を売ることなくずっと保管していたのだ。
このまま、保管しているというのもあれなので、それを五井へ譲る事にした。
「それは、カネサダノツルギ。またの名を妖刀カネサダ……」
ララァもこの刀を知っているのか、その名を呼ぶ。
「これは、使い手に高い運動能力を与えますが、耐えられない者はその身を滅ぼすという呪われた武器でもあります。その力を使う時はくれぐれも注意してください」
ララァの話を聞き終えると、五井はカネサダノツルギを受け取る。
青い運命の鎧に元々あった剣とは形が違う事もあるが、五井が手にしたカネサダノツルギを抜くと、どこか懐かしさを感じさせる物だった。
「コイツがあれば、あの鎧野郎に負ける気がしないな!」
五井は鞘へしまうと青い運命の鎧に取り付けた。
「なんか理由はわからないが、元々あったみたいにしっくりくるぜ」
それからしばらく、五井はカネサダノツルギの素振りをし、流星はアリスからプロペラントタンクの使い方を教わっていると、炎が収まり須佐が帰ってきた。試練は無事終わったのだ。
出てきた須佐の姿は見た目こそあまり変わっていなかったが、纏っている嵐の鎧は変化していた。
ダークブルーを基調としていた鎧は、燃えるような赤と白を基調した物へと変化していた。
嵐の鎧は烈火の鎧と融合し、その力を高めたのだ
「無事に試練を終えたようですね」
「はい。……それで、俺はこれからどうすれば良いのでしょうか?」
須佐が尋ねると、ララァは答える。
須佐に示されたのは、火の山タールへ登る事であった。
「この名前は、私が当時調べたものです。もしかしたら、名前が変わっているかもしれませんが、その火山に不死鳥は居ると言われています」
ララァはそう言うと、アリスへ視線を向ける。
「アリス、貴方は残りの装備を探してください。投降してきた魔王軍の将兵達を覚えていますか?勇者は、彼らにも装備を守るよう頼んでいます。彼らの子孫が装備を守っているかもしれません」
アリスは頷くと、2つのプロペラントタンクを首飾りへしまう。
「……ララァ、貴方はこれからどうする?」
アリスの質問に、ララァは答える。
「私はこの遺跡で時が来るのを待ちます。モンスターになったとはいえ、私の魂はもうすぐ限界を迎えるでしょう……」
「……そう」
「そんな顔をしないで。まったく会えないという訳でもないのですから」
そう言うララァの前に魔法陣が出現していた。
「これに乗れば、外に出られます。皆さん、どうか気をつけて」
流星達は頷くと魔法陣へ入る。
「さようなら、ララァ」
「さようなら、アリス……」
2人は短く言葉を交わすと、魔法陣が光りだす。
その光が一瞬で流星達の姿を飲み込んだかと思うと、ガルダーヤ遺跡の外に出ていた。
「とりあえず、この遺跡にもう用はない。皆と合流しよう」
こうして、ガルダーヤ遺跡の調査を終えた流星達一行は集落へ戻り、族長のナオへ報告をする事にしたのだった。
「なるほど……盗掘者は魔王軍の奴らであったか……それと、砂漠の薔薇様を守ってくださり、ありがとうございます。プ族を代表して感謝します」
そう言ってナオは頭を下げる。やはり、ウィルオーエルメスとなったララァの事が、砂漠の薔薇であったようだ。
「それで、これからどうするつもりだ?」
ナオは今後の事を尋ねると、須佐は答える。
「ララァさん言っていた、火の山タールを探そうと思います。何か心当たりは?」
「残念だが、俺もその火山の事は詳しくない。ただ……ナミカーなら何かわかるんじゃないか?」
ナオがそう答えると、ナミカー女史は頷く。
「確か、帝国の図書館でそのような火山が記載された本があった筈です。特徴的なタイトルなので、帰ればすぐ閲覧可能です」
どうやら須佐の方は目的に進めそうだ。
流星はナオにリコネとの約束を話し、勇者の装備を見せてほしいと頼むと、返ってきた言葉に驚かされる。
「それだったら、もう見ている筈だ」
「そこの壊れた狼の鎧がそうだと?」
「いや、お前達に渡した遺跡を安全に進めるお守りの事だ」
須佐が持っていたお守りを流星に渡すと、アリスがうなずく。
「確かに、彼の使っていた物だ」
「すいません、族長。この装備を俺に譲ってはいただけないでしょうか?」
「砂漠の薔薇様が認めた勇者だ。良かろう」
ナオはそう言うと、お守りを流星へ渡す。
「ありがとうございます!」
こうして、流星は古の勇者が身に着けていたアイフィールドのお守りを手にしたのだった。
向かう場所は決まったが、流星達は遺跡での戦いもあり、集落で一晩泊まってから帝国へ戻る事にした。
ささやかではあるが、ガルダーヤ遺跡から盗掘者達を追い払ったお礼として食事をごちそうになり、翌朝集落を出発したのだった。
そんな帰り道、流星は遺跡でアリスが言っていた事を質問する。
「そういえば、遺跡で会った鎧の男は、キミの事をずいぶん詳しく知っていたな」
「その事は私も気になっている。いい機会だから、私の事を話そうと思う。先生は、ガンダムについてどれくらい知ってる?」
「それは、俺達の世界の方でって事か?」
その質問にアリスは肯定を示す。
「……そうなると、ゆっくりできる場所で話したいな。エルゴレア砂漠入口近くの街で宿を取って話した方が良さげだな」
「わかった」
2人の会話はそこで終わったが、周りの者達にはただの独り言だ。
流星は先ほど話した内容を伝えると、古の勇者の話が聞けると興奮するナミカー女史、鎧の男が気になっていた須佐達。さらに自分達の世界と関係ある事も気にしていた。
こうしてエルゴレア砂漠入口近くの街に着くと、流星達は宿を取り今後の事について話し合ったのだった。
話すべき事はアリスが話す事になったのだが、やはり人前では話せない内容なので個室を予約する事にした。
食事を済ませ部屋で待っていると、準備が終わった流星が部屋に入って、机に大きな紙を広げていた。
それには魔法陣が書いてあり、様々な古代語が書かれていた。
「先生、これは?」
「アリスと会話する為の物だ。さすがに、今回は翻訳しながらは大変だからな」
アリスに教えてもらいながら書いた魔法陣へ魔法力を込めると、部屋に声が広がる。
「アリス、これで会話できそうか?」
『うん。これなら大丈夫』
魔法陣から声がすると3人は驚くが、すぐに落ち着きを取り戻し話を始める。
「……キミの過去について聞きたい」
『まずは挨拶を……私はアリス。鎧に宿る精霊。私が古の勇者と共に魔王ジオングを封印したのは既に知っていると思われる』
「これが、鎧に宿る精霊……」
アリスの言葉にナミカーは驚く。
無理もない。普通に生きていれば精霊に会う機会などまず無いだろう。
その貴重な存在との邂逅は、ナミカーにとって貴重な体験だった。
そして、アリスの過去についての話が始まったのだった。
『異世界から来た勇者よ、貴方達はガンダムという物について、どれ程知っている?』
そう問われ、須佐と五井が答える。
「ガンダムか……それなら、父さんが模型をいくつか持っていたな」
「俺も似たようなもんだ。親父が集めてた本に載ってたくらいだ」
2人がそう答えるとアリスは頷く。
『貴方達の世界に、ガンダムの存在が知られてはいるのなら話が早い。この世界は、貴方達の世界のガンダムの元になっているらしい』
過去にこの世界へ来訪し、アリスと共に戦っていた勇者が言うには、この世界は自分の知るガンダム作品を元として作り出された世界では?という事だ。
その為、この世界と流星達の世界は次元の壁を隔てられてはいるものの繋がりがあり、この世界に召喚されたと思われる。
ただし、アリスが知っているのは勇者から聞いた情報のみであり、元になった作品の情報は知らないらしい。
その事を話すと五井は手を頭の後ろに置いて話す。
「ってことは、俺の青い運命の鎧にも、何か元ネタになったガンダムがあるって事か?」
『おそらく。そして、先生。この話で鎧の男がどういう人物かわかる?』
アリスに言われ流星は考える。
「……まさか、あの鎧の男って!」
『そう、彼はガンダムという物を知りすぎている』
「待ってくれ。それじゃあ、あの鎧の男はいったい何者なんだ?」
『……あまり言いたくないけど、貴方達の中に情報を流している者が居る可能性がある』
「そんな!?」
アリスの言葉に須佐達は驚きを隠せない。
無理もない。同じ世界から来た者の中に裏切り者が居ると聞かされたのだから。
アリスは話を続ける。
『最悪なのは、裏切り者が居る事だけど……ドムリリス達が諜報活動をしていたから、そこから情報が漏れた可能性もある』
「ドムリリス?何かのモンスターか?」
「女性に化けられるモンスターさ。ラ・ムール城で、侍女として働いていたんだ」
流星とアリスが倒したから良かったが、彼女達が生きていた間の情報は魔王軍に流れていたのだ。
しかも、何人かは勇者達のご機嫌取りとして情報を集めていた。
そこから情報が漏れていた可能性もある。
「そういや、五十嵐の奴がガンダムがどうの言ってたな。あいつ、ラ・ムール国に残ってたよな。これだからオタクは……」
だが、それは仮定の話であり、その情報を知るドムリリス達はもう居ない。
どれだけの情報が魔王軍に伝わってしまったのか……
最悪なパターンを想像し、皆は沈黙する。
そんな暗い雰囲気の中、須佐が口を開く。
「異世界で共に戦う仲間同士で疑心暗鬼になる訳にはいかない……それこそ、魔王軍の思う壺だ」
そんな彼を見て皆は静かにしていた。
そう言われ、五井は考えをあらためて、彼なりに冷静になろうと努めた。
ここで感情的になり、行動すればそれこそ相手の思う壺だろう。
皆は冷静さを取り戻し、次の話し合いへと進む事にしたのだった。
『残っている装備だけど、焔の翼はスサ達に任せる』
「わかった。必ず見つけてくる」
「須佐、俺も手伝うぜ!大船に乗ったつもりでいてくれ」
「ありがとう。樹君」
『先生は、私と投降した魔王軍の将兵達の子孫を探しに行く』
「それはかまわないが、宛はあるのか?」
そこへ、それまで黙ってナミカー女史が口を挟む。
「それでしたら、カレスティア王国へ向かわれはどうでしょうか?」
「カレスティア王国にですか?それはどうして?」
流星の問いに、ナミカー女史は声を静かに答える。
「あまり大きな声で言えませんが、カレスティア王国の王族は、前魔王大戦の時に魔王に仕え、戦いで生き残った神官の末裔とされています。だから、もしかすると情報を持っているかもしれません」
『なるほど……わかった行ってみる』
「話は決まったみたいだな。次に全員そろうのは、魔王の野郎をぶん殴りに行く時か」
不安が無い訳ではなかったが、五井は明るそうな表情を浮かべる。
そんな彼の言葉に皆が元気をもらい、話し合いは終わった。
「勇者様達が召喚される事から、多元世界があるのでは?そう考えられていましたが、まさか、本当にあるとは……」
ナミカー女史は1人そう呟く。
「精霊様、全てが終わったらぜひもう一度お話させてください」
『わかった。覚えているだけの事を話す』
「ありがとうございます」
ナミカー女史は、アリスに礼を言う。
こうして、話し合いを終えた一行はエルゴレア砂漠入口の街で一泊し、翌日出発してワポルム帝国へ帰還。
そして、流星とアリスの2人は、見つけた装備の整備を依頼する為にグラナダへ向かった。
「見つけられたみたいだな」
「はい。色々ありましたが、なんとか」
ペーは、流星とアリスの2人を見て言う。
そして、彼らの後ろでは、ツィーがプロペラントタンクとアイフィールドのお守りを見て狂乱していた。
「これがテムの作った装備ですか!なんと素晴らしいのでしょうか。長い年月に晒されてもびくともしていない魔法力の気密性
。それに、このお守りは魔法力を供給すれば、どのような魔法も防ぐと言われておりますぞ!術式が気になりますな!」
その様子に苦笑いしながら、流星はペーに報告と質問をする。
「ペーさん。ムットゥーウルフ達に会う事ができましたが、彼らの持っていた狼の鎧が魔王軍との戦いで破損したので、修復をお願いされました」
「うん」
「後、アリスがあれをどこで見たのか気にしているんですが、教えてもらう事はできますか?」
「ふむ」
ペーは、少し考えてから話す。
「……あれは、ラ・ムール国へ品を届けに行った時だ」
彼が話すには、ラ・ムール国のある貴族から受けた依頼の品を届けた時に、そこで狼の鎧の原型となる壊れた魔法の鎧を見たそうだ。
「思えば、お前の鎧と良く似ていたな」
「ほう、アリスの鎧と良く似た鎧ですと?吾輩が知る限り、それは双勇の片割れにして、裏切りの勇者。ローレン・ナカモトが装備していた魔法の鎧ですな」
狂乱し終えたのか、または話題が気になったのか、ツィーが話に入ってくる。
「精霊に選ばれなかった事を逆恨みし、魔王に与した勇者。魔王軍に居た頃にそう聞きましたな」
「……ツィー、俺にはそう見えなかった」
ペーは使い込まれた金槌を弄びながら、何かを思いながら告げた。
「俺が見たあの鎧の壊れ方は、裏切り者の末路にしては、妙に真っ直ぐだった……そんな気がする」
アリスはその言葉に思う事が有ったのか、ただ静かに聞いていた。
「……話がそれたな。それが気になったから、頼んで見て俺なりに再現したのが狼の鎧だ」
流星達はハイム工房の作業場しか見ていないが、ここで鍛えた鎧や武器を販売する場所もある。
その中に値段は高いが、狼の鎧も販売されてはいた。
「なるほど……それで、アリスの鎧と良く似ていたというのは?」
「元になった鎧を作ったのが、テムだからでしょうな。魔王軍時代に少しだけ見れましたが、今思えばシールド・ブースターはもっとしっかり見ていれば良かったと後悔しておりますぞ。他にも……」
ツィーの語りがヒートアップし始めたので、流星はプ族から預かった狼の鎧をペーに修復してもらえないか頼むと、彼は快く承諾してくれたのだった。
「すぐに取りかかろう。彼らの案内が無いと、砂漠での素材集めは危険だからな」
ペーはそう言うと、狼の鎧を受け取り工房へ向かった。
「ビームサーベル兼用カノンも良い物でしたな!やはり、奴は吾輩に匹敵する天才。しかし、あれだけの鎧を作るのにどこからガンダリウム鉱石を入手したのか……魔王ですら魔法力で作れない物を人間であるテムがどうやって……」
どうやらツィーは未だローレンが身に着けていた鎧について語っているようだが、それを聞いている者は誰もいなかった。
「さて、これからどうしようか?」
「なら、特訓をしよう。ガルダーヤ遺跡で遭遇したあの敵は、危険な感じがする。戦いが得意じゃないなんて言ってられない」
アリスの提案に流星は頷く。
「そうだな。しかし、誰が教えるんだ?」
その疑問に答えはすぐに示された。
「私が教える」
アリスの宿る魔法の鎧が独りでに動くと、流星の前に立つ。
「プロペラントタンクの確認が終われば、私1人でも動けるようになれる。それまでは、ララァから渡された魔法書で魔法の勉強をする」
「わかった。しかし、いつの間に?」
「最後、別れる時」
こうして、流星はアリスから魔法力を使った戦い方を学ぶ事にしたのだった。
遅くなって申し訳ありません……次の話をどう進めるか考えておりました
頑張ってまた書いていきますね