森での実地訓練から早くも1週間がすぎた。今は森へ行き、モンスターを討伐する班、残って王都で訓練する班のローテーション制で行っている。
流星はというと、王都で訓練する傍ら、図書館で探し物をしていた。これも生き残る為の手段だ。
そもそもなんで図書館で探し物をしているかというと、森から王都へ帰ってきた日の夜になる。
「ていう事があってさ。で、どうしても生き残りたい訳なんだけど何か良いモノ知らない?」
「んくっ、はぁ……っ、ええ、それなら図書館に、ある噂が……ぁっ」
相変わらず演技臭くていまいち燃えないが、溜まったモノを消化するのには便利なオモチャである。
そんなラ・ムール国の寄越したご機嫌取りの侍女と会話し、流星はある話を聞かされた。
それは『特別な魔法の鎧』と呼ばれる存在があり、危機に陥った時に現れて助けてくれるという物だ。
そんな都合のいい話が有る訳ないだろうと思いつつも詳しく聞くと、真の勇者の前に現れるらしく、それについて詳しく書かれた本が王都の図書館で眠っているらしいのだ。
「なるほどね。ところで、時間に余裕ある?まだ楽しみたいんだけど?」
「ぁ……ん、ふあぁ……ええ、お好きなだけどうぞ勇者様……」
まあ、寝物語に聞いた話であるが、この世界で暮らしている者の話ならば信憑性もあるのでは?と思い、次の日からはその『特別な魔法の鎧』について書かれた本を探す為、図書館で調べ始めたのだ。
その結果……
「簡単に見つかる訳ないよなぁ……」
そもそも、『特別な魔法の鎧』なる存在は口伝や御伽噺等で語られる事はあるが、そのいずれも曖昧で信憑性に欠ける物ばかりだった。
「仕方ない、別の本を探そう」
流星は本を返却棚に戻すと次の本を探す為に司書の所へ向かう。
「……探し物は見つかりましたか?」
「いや、またハズレだったよ。他にそれらしい本はわかるかい?」
「……そう、ですね……でしたら、次はこの本等どうでしょうか?」
既にピックアップしていたようで、司書は数冊の本を流星へ渡す。
そんな司書の彼女との出会いは、図書館で探し物をしていた時である。
王都の図書館だけあり、その数は膨大な数であった。この中から目的の本を探し出すのにいったいどれ程かかるか……
「はぁ、こりゃ骨が折れそうだ」
流星がそうぼやいた時である。
「……お困りですか?」
突然声をかけられ振り向くと、そこには黒い髪の碧玉色をした瞳を持つ司書の服を着た女性が立っていた。
「ああ、ちょっと探し物をね……」
「……そうですか。では、私がお手伝い致しましょう」
そう言うと彼女は自分の仕事を中断し、流星に付き合う事にしたのだった。
それからというもの、流星は彼女から本の場所を聞いたりしながら目的の本を探していたのだ。
しかし、今のところは空振り続き。だが、完全な空振りではなかった。
ある本に、ガンダムやジオングといった単語が出てきたのだ。
内容は超巨大なモンスターを勇者が倒したとあるが、挿絵には元となったであろうMSのような物が描かれていた。
おそらくであるが、『特別な魔法の鎧』とはMSの事なのだろう。
「でも、気になる事があるんだよな」
そう、モンスターは超巨大でも鎧を着た勇者だけはどう見ても成人くらいの大きさしかないのだ。それに、彼らはMSに乗っていない。
「魔王ジオングを倒した勇者ガンダムね……本当、御伽噺だよ」
「そうですか?私は信じてますよ。勇者ガンダム」
司書が呟いた事に流星が反応する。
「へぇ。ロマンチストなんだね」
「はい。本を取り扱う仕事をしていると、そういう事を信じたくなります。もし、空想だったとしても元となったものは必ずある筈です」
「なるほどね。確かにそうだ」
そんな会話をしていると、彼女は何かを思い出したのか呟く。
「……そういえば……他にも勇者ガンダムについて調べていた方が居たような……」
「何!?詳しく聞かせてくれ!!」
「わわっ!お、落ち着いてください!」
カウンターから身を乗り出す勢いで彼女に迫ると彼女もその迫力にビックリして椅子ごと倒れてしまう。
「すみません。大丈夫ですか?」
「あたた……ええ、大丈夫です」
「それで、その勇者ガンダムについて調べていた人ってのは?」
流星は倒れた椅子を戻しながら彼女に謝罪し、話の続きを促す。
「はい。アレは確か3週間前だったかと……」
彼女は立ち上がるとカウンターに戻りながら話し始めた。
「貴方と同じ雰囲気の方が何名かいらして、勇者ガンダムについて探していました」
「俺に似た雰囲気?」
不思議な事を言う司書に流星は首を傾げる。
そんな時、よく知る声が聞こえてきた。
「あっ、先生!先生も図書館で調べ物ですか?」
声のした方を向くと、そこに居たのは裕太であった。
「やあ、岩城さん奇遇だね。そういうキミも調べ物かい?」
「はい。俺、何も無いから、せめて知識だけでもと思いまして」
「へぇそうなんだ。偉いな」
「最近は花梨に助けてもらってばかりだから、そうならないよう……あれ?先生、その本は?」
「これかい?勇者ガンダムっていう御伽噺……」
「ついに見つけた!」
急に大きな声を出す裕太が、回りで仕事をしていた司書から注意を受ける。
その事を謝りつつ、場所を移して裕太から話を聞いた。
どうやら、3週間前に行われた鎧を装着して訓練する時に出てきた『ジム』の単語でピンときたらしい。他にもこれで感づいた生徒が居るようで、この世界の伝承等の事を調べているそうだ。
(なるほど。彼女が言っていたのは生徒達の事か)
「それで先生、その本はもしかして!?」
裕太の方はもう待ち切れないという感じだ。なので、流星は司書に持ってきてもらった本を裕太へ渡す。
「これは……『ガンダム神話』?」
裕太は渡された本ざっと見てみるが、そこにあるのは子供向けの御伽噺で、想像していた物とは少し違ったらしい。
「あの、先生。これはいったい?」
「俺も調べてる途中だから何とも。今の所、岩城さんが考えてるような巨大ロボットは影も形もないよ」
「そうですか……」
裕太は肩を落とす。そんな彼に流星は言った。
「まあ、そう落ち込まずに。お互いが持ってる情報を交換すれば、何かわかるかもしれないよ?」
そう言って2人はお互いの情報を交換するが、ガンダムについての知識は裕太の方が豊富であったが、この世界の伝承等は流星の方が豊富であった。
「俺、3週間も探してのに、何で見つけられなかったんだろう……」
「普通にカウンターに座ってる司書に聞けば良いと思うぞ?」
「えっ!先生、あの気難しい爺さんと仲良くなったんですか!」
「いや、普通に女の子だったよ、黒い髪の青い眼をした」
「……マジすか?一度も会った事無い」
どうやら、裕太は流星が何時も会う司書に会った事が無いようだ。
仕方ないので、彼女に会わせてあげる為に裕太を連れて司書の元へ行くと、彼女は別の仕事をしているのか、裕太が何時も会う気難しそうな爺さんが座っていた。
流星は司書の爺さんと会話をするが、二言程で会話は終わってしまった。
「今は居ないみたいだね」
流星がそう言うと、裕太は訝しげに聞いてくる。
「先生。その人って、本当に居るんですか?」
「ああ。俺が行く時はだいたい」
「俺って、そんな運悪いのか……」
裕太は何やらショックを受けているようだ。3週間も通っているのに、毎回爺さんではそう思ってしまうのも無理は無い。
「さて、用は終わったし帰るか」
「あ、じゃあ俺はこの辺で。先生、また!」
そう言って2人は別れ、図書館を出て行ったのだった。
それから数日後の事である。流星達魔法属性の者達は王都から少し離れた森に来ていた。目的は新しい武器の訓練も兼ねた、モンスター討伐である。
また、シャマルが率いる法術隊の兵達が生徒達の護衛として同行している。
森に到着すると、シャマルから新しい武器の説明があった。
「前にも言いましたが、ガンと呼ばれる魔具にはいくつか種類があります。近距離戦闘で取り回しの良いガン、魔法の矢をバラまくブルパップガン、中距離の目標を攻撃するのに適したライフル、長距離を狙撃する為のロングライフル等があります。勇者様達には、自分にあった魔具を選んでいただき、習熟していただきます」
自分の得意な物を見つける為の訓練ようで、魔具は何時でも交換して良いようだ。ならば、中距離の目標を狙撃するライフルにしておくべきだろう。そう思い、流星はライフルを頼んだ。
「じゃあ俺はライフルでお願いします」
「古代魔法に挑戦してみようかな?杖系の魔具で!」
「あたしはガンのままでいいかな?」
流星に続いて、生徒達はどれにするか悩みながら物を頼んでいく。シャマル達はそんな生徒達の注文を聞いていく。
「全員に行き届いたようですね。班ごとに分かれて行動を開始してください」
シャマルの指示で、流星達は法術隊の兵達と共に森の中へと入っていった。
森の中を散策しながら暫くすると、兵からモンスターが現れたと知らせが入る。なので流星達は持ってきた武器を構えた。
「勇者様、ゴブリンです。お気をつけください」
「たかがゴブリンだろ?僕の古代魔法で一撃だ!」
そう言うと、兵の制止を振りきり生徒の1人が魔法を使う。
「喰らえ。古代魔法、ルフィラ!」
古代魔法ルフィラ。ガンから発射される魔法の矢の原型となった魔法だ。展開されたルフィラの数は3つ。始めての使用にしては十分すぎる結果だ。
生徒が杖を振ると、ルフィラはゴブリンめがけて飛んでいく。すると、ゴブリンの中でもひときわ角の目立つ個体がルフィラに気づき、盾を持っているゴブリンを集めそれを防いでしまった。
「そん、な……僕の魔法が……」
「落ちついてください!魔法力の制御をしっかりすれば倒せます!」
杖を落とした生徒に兵は声をかける。
多分、複数放ったのが良くなかったのだろう。ガンと違い古代魔法はしっかり魔法力を込めないと威力が下がるとシャマルは訓練で言っていた。
こちらの先制攻撃を防いだゴブリン達が盾の間から出てきた。
ずんぐりむっくりでおちょぼ口が特徴的な彼らは、左肩に鋭いトゲを持ち、このトゲの生えた肩を怒らせて突進する攻撃は並の者では受け止められない威力である。
「皆の者、勇者様達の前へ!」
1人の兵がそう言うと盾を構え、流星達の前へ出る。
そして、ゴブリンの群れはそんなものを気にする事なく左肩を怒らせて突進してくる。
「押し負けるな!」
「グギャギャ!」
兵達とゴブリンは激しくぶつかりあうが、兵達見事それを跳ね返す。
「よし、チャンスだ!」
そう言うと、流星はライフルを構えて引き金を引くと生徒達も攻撃する。放たれた魔法の矢は先頭にいるゴブリン達を貫いた。しかし、その後ろにいたゴブリンには当たらなかったようだ。
「ギギイィ!」
突進が効かないとわかると、ゴブリン達は斧やこん棒を激しく振り回しながら攻撃してくるが、兵達はそれを巧みにいなしていく。
そんな兵達のおかげで、流星達は安全に魔法の矢を撃つ事ができ、ゴブリン達は数を減らしていく。
「ギィィ……」
最後の1匹が倒れると、兵達が歓声を上げる。
「勇者様達の勝利だ!」
兵達の声に、生徒達も喜びの声を上げる。
「よし、もうこのくらいなら大した事ないな!」
「ああ!この調子で次も頑張ろうぜ」
そんな会話をしながら、次の場所へ向かうのだが、それからという物モンスターに遭遇する事はなかった。
「おかしいですね。入ったら必ずモンスターに出会うと言われる魔の森が、妙に静かだ……」
「まあ、楽に仕事ができていいじゃないか」
この事にある兵は訝しげにするが、別の兵が楽だと言うと、確かにと頷いた。
「確かにその通りだな!さあ、行きましょう」
その後も兵達に連れられ森の中を進むのだがモンスターは見つからず、さすがに違和感を感じた。
「なあ、これだけ歩いてるのに、モンスターに遭遇しないなんてさすがにおかしくないか?」
「そうだな。……総隊長に報告しよう」
そんな時である、生徒の1人がモンスターを見つけたのだ。しかし、そこでは異様な事が起きていた。
なんと、マゼラアントが別のモンスターを攻撃していたのだ。
「あ、あれはガブスビートル!?この森で上位にいるモンスターに何故マゼラアントが?」
ガブスビートル。カブトムシをそのまま巨大化させたようなモンスター。その角の突進は騎兵の突撃に例えられ、受けようものなら串刺しにされると恐れられている。
そのガブスビートルは複数のマゼラアントから体当たりを受け、なんとか耐えているようであったが、背後から現れたもう1匹のマゼラアントによって押し倒されてしまった。
そしてさらに2体のマゼラアント現れ、ガブスビートルの足に噛みつきそれぞれ1本ずつ折ると、そのままガブスビートルを引きずっていった。
「な、何なんだこの光景は……いったい森で何が起きているのだ?」
兵達は異様な光景に驚いてるが、すぐに正気になりシャマルへ報告するために、一度森の入り口へ戻ることにした。
入り口へ戻る途中、他の班になっていた生徒達と遭遇したが、彼らの話を聞くと、やはり彼らもマゼラアントが他のモンスターを運んでいるのを目撃して報告の為に戻ってきたそうだ。
兵達はシャマルのいる場所へ行き、見てきた事を報告する。
「マゼラアントが他のモンスターを襲うとは……」
報告を聞くシャマルは森で起きている異変の深刻さに顔をしかめる。
マゼラアントは普段、地下にある巨大な巣で暮らし、人や動物を捕まえて巣で食べるというライフスタイルだ。モンスターはよほど食料が足りない限り襲う事は無い。
つまり、彼らの巣で何かが起きていて、食料を入手する為になりふり構わなくなっているのだ。
シャマルは隣にいた部下へこの事を他の班にも伝えるように頼んだ。
部下は頷くと、すぐに行動に出る。それを見送ったシャマルは報告してくれた兵に礼を言った。
「ありがとう。後は私達で調査をします。貴方達は勇者様達を王都へお連れして、この事を知らせてほしい」
「わかりました!では私はこれで!」
そんなやり取りを終えると、連絡をした兵達は生徒達の元へ向かうと、本来の予定を切り上げて王都へ戻っていった。
「報告は以上になります」
持ち帰られた情報を聞き、フムー大臣達は頭を悩ませる。
「マゼラアントの活性化……これが意味する事は、女王が目を覚ましたと思われれます」
マゼラアント・クイーン。その体長は10m近くもある、その名の通り彼らの女王だ。普段は子供であるマゼラアントを増やすだけだが、一定周期で活性化し巣の拡大や新しい女王を産む為に通常よりも多くの餌をマゼラアント達に運ばせるのだ。
「シャマル殿の追加報告によりますと、森のモンスターを食い尽くさんとする勢いで行動は始めたそうです。今までもクイーンが活性化した事はありますが、こんな事は始めてです」
「これも、魔王復活の影響なのか?」
「今まで通り、傭兵を雇い兵達との連携で退治できないのか?」
大臣達は意見を出し合う。確かに今までも大規模なモンスター退治には傭兵達を雇ってきた。
しかし、今回は異様な数の群れで襲ってくるマゼラアントだ。今までとは勝手が違う。
もし、森の外へ出てくるようになれば、市民への被害は甚大なものになるだろう。
その事を懸念し、フムー大臣は森で調査中のシャマルへ通信用水晶球で連絡を取る。
「シャマル殿、マゼラアントが森の外へ出たり等は大丈夫なのか?」
『今の所は大丈夫です。しかし、森の中の物を食い尽くせば外へ出てくるでしょう。そうなれば、王都へも危険が及ぶかもしれません』
「わかった。とりあえず調査は続けるのだ」
『わかりました。では、私は引き続きマゼラアントの行動の監視とクイーンの捜索に行ってきますので、また何かあれば連絡します』
そう言って通信が終わると、ラ・ムール国の王であるヤムク・ラ・ムールは静かに目を閉じる。少しの静寂の後、ヤムク王は目を開いた。
「民の犠牲はなんとしても避けねばならん。森で暴れておるマゼラアントを退治する。勇者殿達にも協力してもらうのだ」
「よろしいのですか?」
ある大臣が聞いてくる。勇者達を呼んだのは、魔王を倒す為だ。ここで勇者達の力を借りれば確かにマゼラアントの群れを倒すのは容易い事だろう。
しかし、それは魔王軍に勇者達の存在を早くに露見させてしまう可能性が高い。
それでも、ヤムク王は勇者達の協力を頼む事にした。
「このまま手をこまねいて民に犠牲者を出す訳にはいかん。それと、勇者殿達には城で保管してある
「わかりました」
ヤムク王の指示で、大臣達はすぐに行動を開始した。
王都へ戻った流星達は、しばらくの休憩の後、他の生徒達と同流し会議室で王命としてマゼラアント討伐の話をフムー大臣から聞かされる。
「現在、我々はマゼラアント達が森の外へ出ないか監視をしているのですが、その数は増える一方。このままでは民に犠牲が出ると考え、我々と勇者様達でマゼラアント討伐を行う事を決め、その為の力もお持ちしました」
フムー大臣はそう言うと、小さい箱を流星達の前へ持ってくる。
「この箱には、かつての勇者様が使ったとされる
フムー大臣は箱を開けて中身を見せると、そこには装飾品が4つ納められていた。
それを見せながら説明を続ける。
「魔法の鎧は数に限りがあります。ですので、こちらの指名する勇者様にお渡しいたします。タカナリ・スサ様、こちらへ」
「はい」
フムー大臣に呼ばれた須佐が前に出る。
「貴殿には、この嵐の鎧の力が込められた腕輪を身に付けてもらいます」
「わかりました」
そう言うと須佐は
「使用するには念じるだけです。やってみてください」
「はい」
須佐は腕輪を着けた手を前に出し念じると、腕輪から風が起こり須佐を包むと、ダークブルーを基調とした鎧を身に纏った須佐が現れた。
「嵐の勇者が使った鎧、トルネードガンダムです」
フムー大臣がそう説明すると、生徒達から驚きの声が上がる。
「何あれ、凄え!?」
「あれが勇者の鎧か……かっこええな!」
「俺も欲しかったな〜」
須佐は生徒達に手を振ると、フムー大臣へ向き直る。
「この鎧の力、必ず使いこなしてみせましょう」
そう言うと須佐は鎧をしまい、元の場所へ戻った。
「では、イツキ・イツイ殿。こちらへ」
「おう!」
五井は力強く返事をすると、前に出てフムー大臣から青い宝石のついた指輪を受け取った。
「その指輪には、蒼き騎士と呼ばれた勇者の力、ブルーディスティニーの鎧が込められています」
五井は受け取った指輪をはめると、光り輝きだす。
そして光の中から現れたのは、青を基調とした鎧を身に纏い、背中にマントをつけた五井だった。
「おお!これが勇者の鎧か!今まで以上に活躍できそうだぜ」
そう言うと、五井は気取ったポーズをとる。
「ブルーディスティニー、ここに降臨!」
「うおーすげえ!」
「かっこいい!!」
それを見た生徒達も大盛り上がりだ。そんな中、フムー大臣が咳払いをすると場を鎮める。
「……こほん。それでは、次の方。ミオ・カンサカ殿こちらへ」
「はい」
続いて甘坂が呼ばれ、前に出るとフムー大臣からティアラを受け取った。
「これは最優と呼ばた勇者が使用したズィータの鎧です。使用してみてください」
「わかりましたわ」
甘坂がティアラを身につけると、一瞬にして白を基調としたトリコロールカラーの鎧に赤と黒の混じる盾を持つ姿へと変化する。
「これが勇者の鎧……凄まじい力を感じますわ」
「綺麗……」
それを見た生徒達は感嘆の声を漏らす。甘坂がポーズをとると、さらに歓声が上がる。そしてフムー大臣が手を叩くと、歓声はおさまる。
「では最後に、カリン・タチバナ殿こちらへ」
呼ばれた花梨は前にでると、箱に入ったイヤリングをフムー大臣から受け取る。
「このイヤリングには、魔法力に秀でた勇者が使ったディフェンサーの鎧が込められています。使いこなせば強力な武器となるでしょう」
「わかりました」
花梨がイヤリングをはめると、光の中から現れたのは白い鎧を身に纏い、手にはロングライフル、背中には青い翼をつけた花梨だった。
「おお……素敵だ」
「凄い、天使みたい……」
そんな歓声の中、フムー大臣は咳ばらいをする。
「……こほん。では最後に、1週間後に行われるマゼラアント討伐へ備える為に明日から勇者様達には、この魔法の鎧と武器の使いかたを覚えていただきます。また、選ばれなかった方へも最大限の援助をしますので安心してください」
そう言うと、解散となった。生徒達は興奮冷めやらぬ様子で話し合っていたが、そんな声が上がる中、流星は無言で4人の鎧を見つめていた。
(勇者が使っていた鎧か……)
口伝や御伽噺等で語られる
侍女との会話では、
しかし、出てきた
それに、考えてみれば侍女の語った
そして、その違和感が何かわからないまま、生徒達は解散していった。
流星はより詳しく知る為にあの時の侍女を探すが、彼女はマゼラアント討伐に必要な食料の製作に関わっているらしく、会う事ができなかった。
翌日からは、4人に渡された
そして、あっという間に1週間が経過するのだった。
「これより、勇者様達と我々ラ・ムール騎士隊による魔の森で大量発生したマゼラアント討伐を行う!」
戦士隊の長ツヴァイの宣言に、市民達から歓声が上がる。
「勇者様、頑張ってください!」
「うわ〜本物だ〜。かっこいい!」
「応援してるから、負けるなよ!!」
市民から受ける歓声の中、流星達も鎧を身に纏い街を歩く。
その鎧は以前のジムIIとは異なる物で、一般の兵士が着るジムIIの鎧から、ラ・ムール騎士隊が着るネモの鎧へと変わっていたのだ。
「この鎧、凄いな」
「うん、兜があるのに視界が凄く広い!」
ジムIIの時では兜を被ると視界が狭くなっていたが、このネモの鎧は視界を改善する魔法が施されており、兜を被っていても視界は兜が無い状態とほぼ同じであった。
「勇者様ー、こっちむいてー!」
「頑張ってくださーい!!」
生徒達は市民の声援に答えるように手を振り、それを見た市民達からさらに歓声があがる。
そんな光景を見ながらフムー大臣はこちらへ向き直る。
「勇者様方、準備はよろしいですか?」
フムー大臣の言葉に先頭を歩く須佐、五井、甘坂、花梨の4人は頷く。他の生徒達の士気も高く、全員が準備万端といった感じだ。
フムー大臣はそれを見ると、王からの言伝を伝える。
「ラ・ムール王からの言伝を伝える。ツヴァイよ、勇者様達と共にマゼラアントを討伐するのだ。そして巣穴を塞いでまいれ!」
「わかりました!このツヴァイ、必ずや勇者様と共にマゼラアントを討伐してみせます!」
フムー大臣の言葉に、ツヴァイは力強く答える。
「では勇者様方、出発いたしましょう」
ツヴァイがそう宣言すると一行は魔の森へと出発した。
古代魔法と魔具『ガン』
古代魔法 杖を触媒に詠唱して行使される技術。
ガン 詠唱を無くし多くの者が使えるように魔術師達が開発した比較的現代の触媒
ガンは比較的訓練期間が短くても前に飛ばすだけはできるように作られており、魔法力がある者なら大抵は使える。
古代魔法は十分な訓練が必要であり、使える者となると人数も少なくなる。しかし、熟練者の扱う古代魔法はガンと比べ投射能力や威力が高い