異世界ガンダム   作:꒰ঌ流✧星໒꒱

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マゼラアント討伐

 ツヴァイ率いる戦士隊は、先行し魔の森入り口に設置された対策本部に到着すると、森で調査を続けていたシャマルが出迎える。

しかし、その顔は疲労が出ており覇気は無さそうだった。

そのままテントの中に案内されると会議が始まる。

 

「森の様子はどうなってるシャマル?」

「よくありません。クイーンは巣穴で産卵を繰り返し、森はマゼラアントが支配してます」

「巣の入口の様子は?」

「拡張が続けてられています。昨日の報告で、新たに出入り口を発見したとありましたので、今日はその確認をしようとした所です」

 

 シャマルの報告を聞いたツヴァイは、予想以上に事態が悪化している状況に頭を抱える。

今の状態でマゼラアントの巣穴を塞いでも、すぐに新しい穴を掘って出てくるので意味がない。

 数を減らそうにも、クイーンの産卵速度が異様に早いのですぐに増えてしまう。

 

(王の判断は正しかった。あのまま何時もと同じように対処していたら、どれ程の被害がでるか……)

「ツヴァイ、どう対処するのですか?」

「これまで通りと変わらないが、今回の討伐には勇者様達も加わる」

「それは本当ですか!?彼らは対魔王軍の戦力。ここで投入すると、魔王軍に察知される恐れが……」

「ラ・ムール王がお決めになられた事だ。王は今回の件を魔王の影響による活性化と判断された。勇者様達ならば、この事態を早期解決する事ができるだろう」

「そうですか。では我々も最大限協力いたしましょう」

 

 シャマルはそう言うと、あらためて対策の話をする。

今まで通りの対策に加え、勇者達をどう配置するか等を大まかに決めた後、細かく修正し最終的な作戦を考えた。

 

「わかった、それで行こう」

 

 だいたいの作戦が決まりツヴァイはシャマルにそう答えると、兵士がテントに入ってきた。

 

「報告。勇者様達が対策本部に到着されました!」

 

 それを聞きシャマルは立ち上がると同時に、テントの外へ出る。

 

「お待ちしておりました、勇者様方」

「今回の作戦、共に頑張りましょう。皆もよろしく頼む」

 

 勇者を代表し須佐がそう言うと、兵士達から歓声が上がる中、シャマルは勇者達の元へと歩み寄る。

 

「勇者様方、これより作戦の説明をいたしますので、こちらへお願いします」

 

 シャマルの案内で広めの場所へ来ると、机の上に地図を広げて説明を始める。

 

「これが巣穴の位置です」

 

 ツヴァイが指し示した場所は森の中でも一際巨大な樹木だ。

 

「この木の付近にマゼラアントの巣穴があります。まず勇者様達をマゼラアントの巣穴の入り口まで送り届け、その後は巣穴奥に居るクイーンを討伐。残ったマゼラアントを掃討し、巣穴を塞ぐ。これが今回の作戦です」

「わかりました。しかし、マゼラアントを討伐しても巣穴の外に個体はどうするのでしょうか?」

 

 シャマルの作戦を聞き須佐が疑問を投げかけると、ツヴァイが答える。

 

「それに関しては、我々と街から来る傭兵達で掃討します」

「なるほど……」

 

 ツヴァイの説明に納得したのか須佐達は頷く。

 

「それでは皆様、作戦を開始します」

 

 シャマルの号令の元、一行はマゼラアントの巣がある森へと入っていった。

 

------------

 

 森の中は相変わらず薄暗く、道らしい道は見当たらないが、先頭を歩くシャマルと法術隊は迷うことなく進んでいく。

その後ろを流星達が続き、最後尾をツヴァイと戦士隊が歩く。

 道中、マゼラアントに襲われる事はあったが、シャマルとツヴァイ達によって倒された。勇者達をできるだけ消耗させないで送り届ける為だ。そして一行は、何事もなく巣穴の前までたどり着いた。

 隠れて様子を見ると、巣の拡張をしているのか、土をくわえたマゼラアント達が行ったり来たりしている。

 

「勇者様、用意を」

 シャマルはそう言うと法術隊と共にマゼラアントへ魔法の矢を放つ。

突然の攻撃に何匹かのマゼラアントは倒されるが、すぐに侵入者を撃退しにマゼラアント達は巣穴から飛び出した。

 

「今だ!戦士隊、突撃!」

 

 ツヴァイの叫びと共に戦士隊が飛び出すと、次々とマゼラアント達を仕留めて道を切り開く。

 

「勇者様、今です!」

 

 ツヴァイの合図で生徒達と流星は鎧を身につけると巣穴へ一直線に走り出す。

 巣穴へ入ろうとするこちらに気づいた数匹のマゼラアントが襲ってくるが、先頭に立って走る五井は剣を構えると、マゼラアントへ突っ込んでいく。

 

「うおりゃー!!」

 

 五井が気合いとともに剣を振るえば、マゼラアント体はあっさりと両断される。

 五井はそのまま巣の入り口を防衛していたマゼラアントを次々と切り捨てると、巣穴へ入っていく。それに続いて流星達も中へと入っていった。

 巣穴の中は暗くジメジメしており、壁や天井から水滴が落ちる音が響いている。

 

「アリの巣っていうより、大きな洞窟だな」

 

 そんな感想を呟きながら先へ進む五井の後を追うように、流星達も進んでいく。

 

「マゼラアントだ、気を付けろ!」

 

 先頭を走る五井がそう言うと、須佐と甘坂に花梨が続く。

正面から迫る無数のマゼラアント達の頭上をとるように花梨は青い翼で飛翔すると、手にしたロングライフルでマゼラアントを撃ち抜くが、すぐにその穴は塞がってしまう。

 しかし、マジックミサイルの魔法と合わせて弾幕を張る事でマゼラアント達の到達を遅らせれば、須佐が2本の剣を合体させ両刃剣にするとマゼラアントの群れに突っ込み両刃剣を振り回す。

その暴れっぷりはまさに嵐。嵐の鎧と呼ばれし由縁がそこにあった。

 

「俺も負けてられないな!」

 

 それを見て負けじと五井も剣を構えると、マゼラアント達を蹴散らす。

2人の活躍により道ができた事で流星達は巣穴の奥へと進んだ。

 

 しばらく進んで行くと、広い空間へと出た。

そこには大量のマゼラアント達がひしめき合っていた。

その中でも目立つのはマゼラアントより一回り大きなマゼラアントソルジャーだ。

 ソルジャーは他のマゼラアント達を統率し襲いかかってくる。

流星はライフルを構えて撃ち抜くが、後続の個体が埋めてしまう。

 他の生徒達もマゼラアント達を蹴散らすが、やはりすぐに塞がってしまうので決定打にならない。

 

(何か方法はないか?)

 

 流星はそう思いながらも攻撃を続けていると、五井が1人で広場の中央へ突き進んで行く。

 

「何をやっているんだ樹君!」

「このままじゃ埒が明かねぇ!俺がどうにかするから、お前ら先に行け!」

 

 そう叫ぶと、五井は鎧の力を解放する。

 

「青き運命の鎧よ、その真の力を見せろ!エグザム!!」

 

 能力を解放すると同時に鎧の肩が赤く染まると、五井はマゼラアントの群れに飛び込んで舞を踊るような動きで次々と切り裂いていく。

 

「す、すげぇ……」

 

 裕太が思わずそう呟くと、花梨も同意するように頷く。

 

「くらえっ!オーラバルカン!!」

 

 オーラで作られた弾丸で弾幕を張るが、その威力はバルカンなどではなくガトリングの斉射である。オーラの弾がかするだけでマゼラアントの体が千切れ飛んでいく。

 これを脅威と判断したのか、複数のマゼラアントソルジャーが五井へ攻撃を仕掛ける。

 

「五井さんっ!」

 

 甘坂が助けに行こうとするが、五井は不要だと叫ぶ。

 

「何やってんだ、先に行け!クイーンって奴を倒すんだろ!」

「樹君……すまない。皆行こう!樹君の頑張りを無駄にしないで!」

 

 須佐が叫ぶと、生徒達は頷き駆け出す。

巣の奥へ行こうとする生徒達をマゼラアントが攻撃してくるが、五井のオーラバルカンでそれを妨害する。

 

「お前らの相手は俺だ!あいつらの所へは行かせねぇ!」

 

 巣の奥に繋がる穴の前に立つと五井は剣を構える。すると、彼の背後から魔法の矢とオーラの炎が飛んできた。

なんと3人の生徒が戻ってきたのだ。

 

「おい、何で戻ってきた!早く行けって言ったろ!」

「お前だけにカッコいい思いはさせねえよ」

「ここでアリ共の足止めをすれば、奥に行く人の助けにもなるなら、やってみる価値はあるぜ!」

「……死ぬんじゃねえぞ!」

 

 

「はぁ……はぁっ……」

 息を切らせながらも、流星と生徒達は巣の奥へ進んでいく。

しかし、マゼラアントの巣は地中にいくつもの部屋があり、それらが互いにトンネルで繋がっていてとても複雑であった。

 

「くそっ、また別れ道か……」

 

 何度目かの別れ道に須佐が悪態をついた時、花梨が口を開く。

 

「あ、あのっ……分かれて行動するのはどうでしょうか?」

「そんな事をすればマゼラアントに囲まれて袋叩きにされてしまう。許可はできない」

「いえ、そうでもないです。巣の奥に来てからマゼラアントとの遭遇が減っています。ここで分かれて早く巣の奥へ行く道を見つければ、地上で戦ってる人達や五井くんの為にもなると思うんです」

 

 確かに花梨の言う通りマゼラアントとの遭遇も数えるくらいしかない。複雑な巣穴を進むのなら複数に分かれて行動した方が良いだろう。

 

「確かに……皆、どうする?」

 

 須佐はそう問いかけると全員が頷く。

 

「……わかった。なら、勇者の鎧を持つ僕と美音さんと花梨さんの3つのグループに分かれよう。道にはこれまで通り、奥へ行く道を◯、行けない道へ☓、戻る道へ△の印を残す。クイーンを見つけてもすぐには攻撃しないで、他のグループを待つ事。以上だ」

 須佐がそう言うと、3つの属性ができるだけ均等になるようグループを作り行動を開始した。

 

 

 流星は甘坂のグループに分けられ、彼女を先頭に進みながら戦闘が続いていた。

 

「はぁっ!」

 彼女が振るうロングライフルから光の刃が伸びると、マゼラアントソルジャーを切り裂き倒す。すると背後から別のマゼラアントが飛びかかるが、盾を持った男子生徒が防ぐ。

その隙に甘坂は光の刃を横薙ぎに振るい斬撃を放つと、放たれた衝撃波によりマゼラアント達は吹き飛ばされた。

 

「助かりましたわ」

「いや、このくらい甘坂に比べたら大した事ないよ」

 

 そう答えると男子生徒は剣を構えなおしマゼラアントの群れへ突っ込んでいった。

 

「あの2人、息ぴったりだな……」

「そうだね……でも私達も負けてられないよ!」

 

 そう言うと他の生徒達も剣やライフルを構えてオーラや魔法の矢を放つ。それだけでただのマゼラアンを貫き倒す。しかし、マゼラアントソルジャーはそれらに耐えて突撃してくるが、それらは甘坂によって倒された。

 

「この部屋の掃討も完了しましたわね。戻って☓の印をつけましょう」

「そうだな。戻ろうか」

 

 部屋から出ると、周囲の警戒を怠らず進んでいく。

そして分かれ道に戻ると☓の印をつける。

 

「こちらの道には、まだ他のグループはきてないようですわね。少し休憩してから……」

 

 甘坂が言いかけた時、突如天井が崩れマゼラアントソルジャーがマゼラアントを引き連れて奇襲してきた。

 

「危ない!」

 

 甘坂の近くにいた生徒2人が咄嗟に盾を前にだし、天井から降ってきた瓦礫を防ぐ。

その隙に流星はライフルを構えてマゼラアントを撃ち抜く。だが、何体か倒した所で弾切れを起こしてしまった。

 

「しまった……!」

 

 焦る流星を庇うように前に出た男子生徒が剣を振るうと、マゼラアントを切り裂いていく。

 

「先生、大丈夫ですか?」

「ああ……すまない。ありがとう」

「早くパックを使ってください」

 

 パック。魔法力を回復する薬だ。

流星は言われるままにパックを飲もうとすると、今度は床が崩壊して地下へ落ちる。

 

「うわっ!?」

 

 悲鳴を上げる生徒達だが、そこは比較的広い空間になっていてマゼラアントやソルジャーの姿は無かった。

しかし、そこには森で生息していた生き物の死骸や生きたままのモンスター等が転がる異様な光景だった。

 

「なんだこれは……」

 

 運の良い事に落下を免れた流星は穴の上から見下ろしていると、何かが蠢いているのに気づく。そちらへ明かりを向けると、そこには無数の芋虫が食事をしていたのだ。

 

「そこは幼虫の部屋だ!早く逃げろ!!」

 

 そう叫ぶの同時に幼虫達が甘坂達に気づき餌を求めて一斉に襲いかかる。

さらにマズい事に、異変に気づいた幼虫の世話をしているマゼラアント達も集まって来た。

 甘坂達を助けようと流星は穴の上からライフルを撃ちまくるが、マゼラアント達が壁となり幼虫を庇うので攻撃は全て防がれてしまう。

 

「くそっ!」

 

 再び穴から上へ戻ろうにも、既に幼虫に遮られて戻る事もできなかった。

 

「先生っ!私達は自力で突破しますわ。先生は道を戻って別のグループと合流なさってください!」

「しかし、キミ達だけでこの状況を……」

「無理はいたしませんわ」

「……わかった。後で合流しよう」

「ええ」

 

 そう言うと甘坂達は芋虫の巣窟へと飛び込んでいった。流星も急いで来た道を戻り別のグループと合流を目指す。

 

(まいったな、壁になる奴が居なくなったぞ……できるだけ見つからないように行動して、他のグループに合流しないと)

 

 悪態をつきながら流星は来た道を引き返そうとした時、マゼラアントに遭遇してしまった。

 

「こんな時に!空気読めよ、アリ共!!」

 

 そう愚痴りながらもライフルで撃ち抜くと、その隙に流星は走って逃げる。しかし、その先にはマゼラアントソルジャー達が待ち伏せていた。

別の方向に走るがやはり同じ。既に追い詰められていたのだ。

 

「しまった……!」

 

 焦る中、背後から足音が聞こえてくる。振り返るとそこには巨大なマゼラアントがいた。クイーンを守る選ばれた個体、マゼラアントガード。これまで起きた事はマゼラアントガードの策略だったのだ。

 

(終わった……)

 

そう思った時、突如どこからか声が聞こえてきた。

 

 

『オウワラーキーティナータナ』

 

 

 それは古代語であった。それも今まで聞いた中で大変流暢なものであった。しかし、その場には流星しか居らず誰が話したのかすらわからない。

 

(なんだ今の……)

 

 何が起きているのかはわからないが、かえってそれが流星を冷静にさせた。

マゼラアントガードが攻撃してくるのを流星は魔法力噴射(バーニア)を使って紙一重でかわす事に成功した。

 そのまま腹に向かってライフルを撃つが、外骨格を抜く事はできなかった。

 

「なんて硬さだ……それにさっきの古代語、力がどうとか言ってたけど、何も変化無いんだど!?」

 

 何もないならそう言うな。と、言いたい所だが、そんな事をしている暇は無い。

マゼラアントソルジャーが向かって来たので、バーニアを使ってジャンプし相手を飛び越してその背中に乗った。

 マゼラアントソルジャーは流星を振り落とそうと暴れるが、掴んで振り落とされないように踏ん張ると、今度は別のマゼラアントソルジャーが後ろから襲って来る。

 

「これでもくらえ!」

 

 流星はそう叫ぶと、ライフルを連射する。狙いをつけないものであったが、マゼラアントソルジャーの目にラッキーヒットし、薄黄色の体液をこぼしながら絶叫をあげ動きが止まった。

 

「どこに居るか知らないが、近くに居るなら俺を助けろ!」

 

 一度だけ古代語で話した誰かは未だに姿を出さない。マゼラアントガードによる包囲もいまだ緩まる事はない。

 なので、流星は近くに居るであろう誰かに賭けた。

しかし、この状況でもその誰かが動く事はなかった。

 仕方ないので、後方のマゼラアントソルジャーが怯んでいる隙に、今乗っている個体の背中を蹴って後ろへ飛ぶと、視界が悪くなっている中でも大顎で攻撃しようとしてきた。

 襲ってきたマゼラアントソルジャーの攻撃をかわすと、そのままバーニアで飛び続け、落ち着いて残った目をライフルで撃ち抜いて無力化する。

 だが、一息つく間もなく3匹のマゼラアントソルジャーが迫っきた。

 

「しつこいんだよ!」

 

 3匹のマゼラアントソルジャーが同時に襲って来るのでライフルでは対処できないと判断し、流星はバーニアでマゼラアントソルジャー達の頭上へ飛びこそうとすると、マゼラアントソルジャー達が尻をこちらへ向けてきた。

 

「ヤバっ!」

 

 とっさに盾を構えると、マゼラアントソルジャー達はギ酸を発射してきた。

ギ酸のかかった盾は刺激臭を放ちながら溶けていく。

 左から迫りくるマゼラアントソルジャーに盾を投げつけると同時にバーニアでマゼラアントソルジャー達の頭上まで飛び上がると、その勢いのまま近くに居た1匹の頭部を蹴り飛ばすが、それでバランスを崩し地面へ落下してしまう。

 

「しまった!」

 

 マゼラアントソルジャー達は落下した流星に群がろうとするが、そこへ強力な魔法力の光線が飛来しマゼラアントソルジャーの1匹を貫いた。

 

「やっとか!遅いんだよ」

 

 今まで隠れていた者がやっと援護をしてくれるようになった。

マゼラアント達も乱入者が誰なのかその顔を拝もうと、光線の飛んできた方を見ると、3つの飛行物体が接近してきた。

 

「な、なんだ?新手のモンスターなのか?」

 

 驚く流星を無視して、3つの飛行物体は光線やバルカンで次々とマゼラアント達を攻撃していく。

 包囲網を崩されないようマゼラアントガードもマゼラアントソルジャーにギ酸をかけるよう命令して、自身も大顎で飛行物体を落とそうとする。

 

「逃がすか!」

 

 流星はライフルを構え、ギ酸をかけられる前にマゼラアントソルジャーを攻撃して牽制する。

 その隙に飛行物体達は光線で次々とマゼラアントソルジャーの数を減らしていき、1機の飛行物体がマゼラアントガードの真上に陣取ると、そのまま体当たりして体勢を崩す。

 

「よしっ!今だ!!」

 

 流星は狙いをつけるとライフルに魔法力をチャージしてマゼラアントガードの頭部に撃ち込んだ。

マゼラアントガードは断末魔の叫びをあげ、そして光の粒子となった。

 

「やった……のか?」

 

 流星は警戒しつつ飛行物体達を見ると、マゼラアントソルジャー達を倒したのかゆっくりと流星に近づき、そして周囲を浮遊し始めた。

 

「いったいこれはなんだ?」

 

 こちらに敵意は無いようで、静かに浮遊している。流星が移動すればそれにあわせて飛行物体もついてくる。

 

「何かこういう物を聞いた事があるような……そうだ!魔具ファンネルだ!」

 

 魔具ファンネル。それは魔術師の中でも特別なセンスがなければ、どんなに凄い魔術師でも絶対に動かす事のできない特殊な魔具である。

 あのシャマルでも動かす事ができない。

それを今、流星は間近で見ていたのだ。

 

「凄いな……だが、こんな物どこから?」

 

 流星が周囲を見ると、通路の奥に何かが山になっていた。

 そこへ近づくと、マゼラアント達が食べられない物を捨てるゴミ捨て場となっていた。武具等も散乱しているので、流星の魔法力に反応してこの山の中から飛び出してきたのだろう。

 先ほどの古代語も、元の持ち主の最後の言葉だったのかもしれない。

 

「誰かわからないが、この魔具はありがたく使わせてもらう。無事に帰れたら、墓くらいは建ててやるよ」

 

 そう言うと魔具ファンネルを引き連れ、流星はマゼラアントの巣穴から脱出する事にした。

 

------------

 

「また◯か……△の印はどこだ?」

 

 あれからしばらく歩いたが、マゼラアントの巣穴は非常に入り組んでおり、◯と☓の印は見かけるが、上へ戻る為の△の印がなかなか見つからない。

 しかも、遠くからは戦闘の音が聞こえてくる。

 

「生徒達も見つからないし、あいつらどこに居るんだ……」

 

 次の通路へ行こうとした時、上から1匹のマゼラアントが向かってきたが、流星が何かする前にファンネルによって倒された。

 

「それにしても便利だな。俺が何かしなくても勝手に倒してくれるし」

 

 そう言いながら流星が次の印を探している時だった。

突然大きな音がしたのでその場所の様子を見てみると、体長は10m以上、外骨格からは無数の棘が生え、巨大化した腹部を持ったマゼラアントがいた。

 間違いない、この巣穴の主マゼラアント・クイーンだ。

しかし、周囲には護衛のマゼラアントが居らず、体には大小様々な傷があり、薄黄色の体液をこぼしながら腹部を重そうに引きずりながら移動していた。

 多分、生徒達と戦闘して逃げてきたのだろう。

 

(今なら、俺1人でも倒せるか?)

 

 流星にだって名誉心はある。もし、ここでクイーンを倒せたなら功労者の1人になれる。しかも、今はファンネルまであるのだ。手負いのクイーンくらい倒せる筈だ。

 

「そうと決まれば……いけ、ファンネル!」

 

 流星がファンネルに号令をかけるが、周囲を浮遊するだけで反応しない。

 

「どうしたファンネル!なぜ言う事を聞かない!」

 

 いくら指示してもファンネルは動こうとしない。流星が動けばついてくるので、壊れてはいないようだ。

 

「うーん、仕方ない。俺から仕掛けるか。そうすれば、連動して動くだろう」

 

 流星は魔法力をチャージしながら物陰からライフルを構えると、マゼラアント・クイーンへ狙いをつけ引き金を引こうとした時、クイーンの頭が突如こちらへ向いた。

 

「ヤバっ……」

 

 流星はライフルを捨てて逃げると、先ほどまでいた場所にギ酸が降り注ぐ。クイーンはそのまま流星を睨むと、棘からギ酸をさらに発射してきた。

何とか回避するが、飛び散るギ酸が当たるだけで、ネモの鎧は異臭を放ちながら溶けていき、所々に穴が空いていく。

 流星はクイーンの射線から離れようとした時、流星とクイーンを遮るように魔法の矢が飛んできた。ファンネルが動き出したのだ。

 これでどうにかなるかと思った時、流星は何ものかに体当たりされ空中へ吹き飛ばされた。

 

「うおっ!こ、今度はなんだ!?」

 

 何とか周囲を確認すると、ファンネルの1機が股下にあった。さらに他の2機もそれに追従している。

すると、股下のファンネルが突然輝き出したではないか。

 

「な、何が起きて……」

 

 光が収まるとファンネルが消えて、溶けたネモの鎧の変わりに紺色の胸当てが現れた。さらに追従していたファンネルが上下に移動して流星を挟み込むようにくっつく。その光景はまさにロボット物でいう合体シーンそのままである。

 ファンネルは全身鎧となりそれを身に纏った流星は、そのままゆっくりと地面に降りた。

 

『装着者を確認。これより支援を開始』

「しゃ、喋った!」

 

 しかし、驚いてる暇はなかった。クイーンは攻撃のチャンスと見て、大量のギ酸を流星に浴びせてきた。

しかし、鎧は溶ける事無く、頑強さを見せつける。

 

「これなら!」

 

 流星はクイーンへ向かって走っていき、思い切り殴りつけると、クイーンは悲鳴をあげながら後退る。

 

「凄い……ネモの鎧何かよりも強力だ。それに視界が……広すぎて、後ろまで見える」

 

 全身鎧である筈なのに、見ようと思えば後ろまではっきりとわかる視野に流星は戸惑うも、とりあえずクイーンに集中する事にした。

 体勢を整えたクイーンは懲りずにまたギ酸を浴びせてきたので、流星はあえてそれを受けて反撃に出ようとした。

しかし、今度は妙にベタつき、うまく身動きができなくなった。

 

「な、なんだこりゃ!?」

『分析……幼虫に与えるゼリー状の物資』

「ロイヤルゼリーってやつか。こんなの何度も浴びたら動けなくなるぞ!」

 

 動きの鈍った流星に向かって、クイーンは大顎を開いて噛み付いてくる。

 

『鎧出力上昇、筋力強化』

 

 鎧のサポートを受け、流星は真正面から大顎を受け止め、そのままクイーンの大顎をへし折ると、クイーンは悲鳴をあげてのたうちまわる。

 

『スラスター及び、テールスタビレーター解放。魔法力噴射(バーニア)

「うおおおおっ!?」

 

 すると、ゼリーでベタつく鎧はバーニアでゼリーを振り払おうとする。突然の事で制御できずに流星はクイーンへ突撃していき、そのまま痛みに悶えるクイーンへ体当たりをする。

しかし、クイーンもやられるばかりではなく、体表に生えた棘を飛ばして攻撃してくる。

 

「くそっ、他に武器は無いのか!?」

 

 バーニアのおかげでベタつきから解放された流星は棘を避けながら鎧に聞く。

 

『スマートガンを展開』

 

 すると自分の身長と同じくらいのガンが現れた。流星はそれを受けとると魔法力をチャージする。

 クイーンは本能で危険を察知し、棘やギ酸を飛ばして妨害してくるが、その全てを回避してスマートガンを構える。

 

「これで、終わりだ!」

 

 スマートガンから放たれた魔法力の光線はクイーンの腹部を貫き、周囲に大量の体液が飛び散る。

流星は油断なくスマートガンを向けていると、クイーンは光の粒子となって消滅した。

 

「やった……倒したぞ!」

 

 クイーンを倒した事を確認すると、鎧はファンネルへと戻り流星の前に来て浮遊した。

 

『魔法力残り30%。帰還します』

 

 その言葉を残し3機のファンネルは何処かへ行ってしまった。

 

「……なんだったんだ?」

 

 3機の飛行物体を見送った後、流星は生徒達の声を聞いた。

 

「先生、大丈夫ですか!」

「須佐君!無事だったか!」

「先生の方こそ大変じゃないですか!」

 

 須佐に言われよく見ると、ネモの鎧はギ酸によってボロボロにされていた。もし、もっと大量に浴びていたら今頃は骨もなく溶けていただろう……

 

「(ある意味ラッキーだったんだ、本当)マゼラアントのギ酸をくらったが、なんとか大丈夫だよ」

「よかった。あの後、美音さんから先生とはぐれたと聞かされて……探そうと出たんですが、途中でマゼラアント・クイーンに見つかって……」

 

 須佐の話では、クイーンの居る場所を探している時に、甘坂達が幼虫部屋で戦っているのに遭遇。それを助けた後、クイーンに見つかったたのだ。

 

「そうだったのか……」

 

 その時、甘坂が走ってきた。どうやら向こうも無事だったようだ。

 

「よかった……ご無事だったんですね先生」

「ああ、盾と鎧のおかげでね。でも、これじゃあ戦力にはなれないよ。それで、他の子達は?」

「ここに居るのは私と須佐君だけです。他の方達はクイーンを追いかけていますわ」

「クイーンならここで倒れていたよ。……俺が見つけた時はかなり傷を負っていたみたいだったから、そのままトドメを刺したよ」

「そうでしたか」

「何か先生に美味しい所持ってかれちゃったな」

「そんな事はないさ。キミ達がダメージを与えていなかったら、倒せなかったよ」

「なら戻ろうか。他の皆にも話さないとだ」

「そうですわね」

 

 3人は他の生徒達と合流すると、印をたどって巣穴を出た。全員が疲労し、中には怪我をした者もいたが、無事に全員が生還する事が出来て、生徒達は喜びあった。

 流星もテントに戻り安心したが、安全になった事でふと先ほどの3機のファンネルの事が気になった。

合体すると鎧になるというのは、あまりにも規格外すぎる。それこそ勇者ガンダムが身に纏っていた……

 

 

『この国の何処かに、勇者が身につけた特別な魔法の鎧(MS)があるそうですよ』

 

 それは、いつだったか侍女が言っていた事だ。

 あの鎧は間違いなく特別な物だ。もしかしたら、その勇者の鎧なのでは?と考えたが……

 

(まさかな)

 

 流石にそれは有り得ないと考え直し、疲れもあり流星は寝ることにしたのだった。

 

------------

 

 それから数日、流星達はシャマルやツヴァイの城の騎士達と街からやって来た傭兵達と共に生き残ったマゼラアントの退治や巣穴を埋める作業に従事した。

 マゼラアント・クイーンを倒したからといって、彼女が残した物がすぐに消えるわけではない。

 逃げたマゼラアントの退治報告も少なくなり、巣穴の入り口も残り1つで、こちらの埋め戻しも順調に作業が進んでいると報告が来ている。

これで、今回の騒動も終息するだろう。そう思っていた時であった。

 テントで休憩をとっていた流星のもとに、生徒が慌てた様子で入ってきた。どうやら何か問題が起きたらしい。流星は内心面倒臭いなと思いながらも教師として対応した。

 しかし、聞かされたのは全く予想外の事だった。

 

「どうかしたのかい?また、何かあったのかな?」

「先生!岩城さんが!彼が行方不明なんです!」

「……え?」

 

 案内されたのはマゼラアントの巣穴。掘り返させないよう巣穴の中に生き残りが居ないか、見回りをしている時にマゼラアントが移動に使っていたと思われる通路の穴へ落下したとの事だ。

 しかも、裕太と行動していたのは彼をイジメていた者達だったのだ。

それなので花梨は非常に怒っており、須佐と五井が彼女をどうにか落ち着けようとしてい。

 

「五井君、離して!」

「いや、無理だから!」

「どうしてよ!?コイツらが裕太を落としたに決まってる!それともコイツらの仲間なの!!」

「なんでそうなんだよ!おい、須佐。そっちはどうだ?」

「彼らの話によると、裕太君はマゼラアントの体当たりを受けて、そのまま穴に落ちたらしい」

「そんなのでたらめよ!きっとあの3人の仕業よ!」

「だから、それは違うって」

「花梨さん、落ち着いて。今は彼らの処罰より落ちた裕太君の救出が先だ」

(小学生じゃないんだから、自分達でどうにかしよろ……)

 

 流星はもう帰ろうかと思ったが、さすがに無理そうなので、裕太が落ちた穴を確認する。

 幅はマゼラアントが移動に使っていたからそれなりにあるが、底は深く遠すぎて見えそうにない。

 

「この深さじゃ、ロープ無しで降りるのは危険だな。誰かロープを……」

「大丈夫ですわ先生。私のズィータの鎧があれば、ロープは不要ですわ。来なさい、ウェイブライダー」

 

 甘坂はそう言うと盾を構える。すると、盾は黒い翼と赤い嘴を持つ大きな鳥へと変化した。

 

「これが私の鎧の特殊能力、霊鳥ウェイブライダーを呼ぶ事が出来ますの。ウェイブライダー、この穴に落ちた方を救出に向かって!」

「ケーン!」

 

 甘坂の指示を受け、ウェイブライダーが翼を広げ飛翔し、そのまま穴の中へ急降下して裕太の救出に向かった。

 

 

 ウェイブライダーが穴に入って1時間程の時がたっただろうか?あまりにも長いので、花梨も穴に降りようとしたくらいだ。

 

「私のディフェンサーの鎧にも翼はある!だから私も探しに……」

「おやめなさい!私より魔法力は少ないでしょう。途中で魔法力が無くなってニ重遭難する危険がありますわ!」

「でも、美音さん……」

 

 その時であった。穴の中から何かが出てきた。

それはウェイブライダーの嘴と翼だった。やがて全身が出てくるとウェイブライダーは力尽きたかのように地面に落下した。

 甘坂達が駆け寄ると、そこにはウェイブライダーだけが帰ってきた。

そこへ、花梨が心配になって詰め寄る。

 

「ねえ、裕太は?裕太はどこなの!?」

 

 花梨は裕太が戻ってくるものと思っていた。しかし、帰ってきたのはウェイブライダーだけで、肝心の裕太はいなかったのだ。

甘坂はウェイブライダーから話を聞くと、その表情を曇らせる。

 

「ウェイブライダーは、魔法力切れによる帰還だと言っていますわ。予想以上に穴が深かったようで……残念ですが、岩城さんは……」

「そ、そんな……裕太……裕太ぁ……」

 

 花梨はその場に泣き崩れた。甘坂も他の生徒達も、かける言葉もなくただ黙って見ている事しかできなかった。




マゼラアントの一生
マゼラアント・クイーンから生まれた幼虫は餌を食べマゼラアントへ、そこからさらに餌を食べソルジャーまたはガードに進化する
クイーンから直接特別な餌であるロイヤルゼリーを食べた幼虫だけが、次世代のクイーンになる
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