異世界ガンダム   作:꒰ঌ流✧星໒꒱

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とびだせ王都と小さいな村の異変

 生徒達が魔王軍との戦いに旅立った後、ラ・ムール王国に残った流星は図書館で古い地図と今の地図を広げ格闘していた。

 

「まさか、封印された装備の場所を知らないとは……」

「ごめんなさい……」

 

 アリスの封印された装備を探しに行こうとしたが、肝心の場所をアリスが知らないのだ。

 しかし、それも仕方ない事だ。

秘密とは共有する人数が多ければ多いほど、漏れる可能性が高まる。それが相棒であってもだ。

 だから、勇者はアリスに隠した場所を告げなかった。

 

「まあ、予想はしていたから良いけど」

 

 アリスに文句を言っても仕方ないので2つの地図を見比べていると、ふとある場所が気になった。

古い地図には城がある事が示されているが、今の地図には描かれていなかった。

どうやら、廃城になったようだ。

 

「この城について、何かわかる事はある?」

「そこはモンスターに襲われて廃棄された城だ。前は勇者に粉をかけていた貴族が管理してた」

「なるほど。なら、ここに封印された装備があるかもしれないって事か」

「可能性はあると思う」

 

 2人はさらに資料を探し、どういう人が管理していたのかを調べる。

だが、廃城になったのが200年前だったので、資料が殆ど無かった。

 それでも諦めずに探していると、国の貴族名鑑と地図を照らし合わせ、苦労して見つける事ができた。

 

「旧マーシア領、現ノア領。これだな」

「ここからだと3日くらいかかる」

 

 3日というと長い様に感じるが、この世界は車など無いので移動手段は歩くか馬である。

歩き慣れた人は1日に約36km程。馬なら負担なしなら約80km、負担ありなら約50〜60km歩けるという。(諸説あり)

 旅慣れしていない流星が選択したのは……

 

「早いな。これならすぐ着きそうだ」

 

 ファイターに乗っての移動である。

勇者の鎧を形成する3機のパーツであるファイターは、3機の中で機動性が高く、人を乗せて飛行も可能だ。

 流星はそれに跨り、馬よりも早く移動できる事に感動しながら目的地を目指すのだった。

 

 が、しかし。流星は思わぬハプニングに見舞われた。

 

「先生、もう魔法力が無い」

 

 確かに馬よりも早く移動できるが、人を乗せての移動だ。それだけ魔法力消費量も増えるので、アリスの魔法力が尽きてしまったのだ。空も暗く、今日は野宿になりそうだ。

 アリスの手を取り魔法力を渡し、焚き火を起こす。

食事は保存食であるパンと干し肉だ。

その味気ない食事をしながら、流星は空を見て今の位置を調べる。

 

「さて、方角は……」

 

 そう言いながら、流星は星から位置を割り出す。世界は変われど、位置の確認は天測航法でできる。

天測航法とは、天体を観測することで自分の位置を特定する術である。

 

「ペガサス座はわかるけど、ムサイ座とかパゾク座とかバーミンガム座ってなんだよ……」

「今はドゴス・ギア座が見ごろ」

「あー……そうなのか」

 

 もちろん、異世界の天体なんて知らないので、アリスからサポートを受けながらの作業だ。

地図と空を交互に見て、だいたいの位置がわかった。

 

「現在地は……北部の方にある平原か」

「方角的にはもう少し西より。半日くらいで、ノア領に入る」

「入るだけならか……」

 

 ノア領に行ったからといって、すぐ領主に会える訳ではない。関所等は勇者特権である程度素通りできるが、その後である。

 紹介状の確認や領主のスケジュール等で滞在は数日に及ぶだろう。

だが、今回は封印された装備の入手が目的なので、さらに長くなるかもしれない。

 

「なら明日に備えて寝よう」

 

 しかし、今そんな事を考えても仕方ない。そう言って流星は毛布にくるまり、アリスもそれに習い毛布にくるまる。

 

「おやすみ」

「うん。おやすみなさい」

 

 

 翌日。煙が見えたので、何事か確認するためアリスの鎧にある拡大機能で見てみると、村のような物があるのがわかった。

近くに村があるなら馬を借りられないかなどと、甘い考えで煙の見える方へ歩いて行ったら、それは起こっていた。

 槍やこん棒に盾で武装したコーラルピンク色のモンスター達が、村を襲撃していた。

その様子を隠れながら見ていた流星はアレの正体をアリスに聞く。

 

(……何あれ?)

(ガザオーク。特に大した事はないモンスター)

(そうなのか。なら、ここはアピールでもして、借りやすくしますか)

 

 念話を止め流星はアリスの鎧を身に着けようとしたが、待つように言われた。

 

「いやいや、ここは止めてる所じゃないでしょ」

「それはわかっている。先生が身に着けるのはこっち」

 

 そう言って首飾りから出したのは、勇者用に支給されたネモの鎧だった。

 

「あれくらいのモンスターなら、私の力が無くても倒せる」

「……わかった」

 

 アリスがそう言うなら、と流星はネモの鎧を身に纏い、ガザオーク達の前に出る。

 

「そこのモンスター!この俺が相手だ!」

 

 そう叫びつつ、盾を構えて、魔法を唱える。

 

「サイコミュ!」

 

 すると、一匹のガザオークが手にしたこん棒をめちゃくちゃに振り回し出した。

サイコミュ。相手の考える力を低下させ混乱させる魔法だ。数が居るので、囲まれて袋叩きにされないようにするために使ったのだ。

 これを2回唱え、同士討ちが始まろうとした時だ。

 

「オラッ!どけ!」

 

 流星を無理やりどかして、いかにもなガラの悪い傭兵達が出てきた。

彼らはそのままガザオーク達に突撃し、乱戦になる。

 ちなみに傭兵達の装備は鋼鉄の鎧で剣や斧盾を持ち、それなりに手入れがされていた。

混乱していた事もあり、ガザオーク達は傭兵達によって瞬く間に倒された。

 その時の傭兵達の動きは悪くはないが、生徒達と比べるとどうしても劣って見えた。

 

(正規の訓練を受けてないからそこは仕方ないにしても、荒事慣れしてるから素人よりはマシって感じか?)

「このグランドー傭兵団が村を守ってやってるってのに、他の傭兵が居るとはどういう事だ村長さんよ?」

「そ、そんな事を言われましても、私にも何の事なのか……」

「とぼけるつもりか!村から引き上げても良いだぜ」

「そ、そんな……それだけはどうか……」

 

 どうやら、この傭兵達は村の依頼で防衛をしているようだ。しかし、流星がガザオークを倒そうとした事で、別の傭兵を雇ったと勘違いしている。

流星はこの騒動の落とし所を探すため、村長に話しかけた。

 

「あの、実はですね……」

「なにか?」

「自分は旅の者で、村がモンスターに襲われていたのを見て駆けつけただけです」

 

 そう、事情を説明しようとした時、傭兵の1人が割り込んできた。

 

「旅の者だと?なら、その鎧はなんだ?」

「これは父から渡された物で、畑違いのお前にはちょうど良い装備だと言われました」

「畑違いだぁ?なら、どこの家の者か言って見やがれ」

「家の名は言えません。そういう約束なので」

「約束だぁ?どこのお貴族様だか知らねえが、随分と偉そうだな。俺達だって依頼を受けてるんだ。少しくらい俺達の言う事を聞いてくれても良さそうなもんだ」

 

 そう傭兵は言って、村長を見る。

 

(……まあ確かに、見た目じゃそうは見えないよな)

 

 流星は心の中で納得しつつ、どう説明すれば信じてもらえるか考える。

すると、村長が助け舟を出してくれた。

 

「……この者は本当に旅の者で、我々とは何の関係もございません。なのでどうか……」

「フンッ!まあ良いだろう。次からはすぐに俺達を呼ぶんだぞ!」

 

 そう言って傭兵達は広場から出て行った。

 

(何とかなったか)

 

 流星はそう思いつつ、村長に礼を言う。

 

「ご迷惑をおかけしました。申し訳ない」

「いえいえ、こちらこそ申し訳ありませんでした。あなたに大きな誤解をさせてしまったようで」

「それは気にされないでください。俺が来たタイミングが悪かっただけですし」

 

 そんな会話の後、流星は村の様子を見る。

人口は数十人程度で、農業を中心に森から日々の糧を得ている。

 そんな村に、武器や防具が充実しているわけもなく、傭兵を雇って守らせているのも頷ける状況だ。

 

(だが、武力に物を言わせ村を支配してる……という訳でもなさそうだ。この村の問題だし、俺には関係ないな)

 

 そう思いながら馬を借りようとしたが、傭兵達に管理され貸し出しできないそうだ。

当てが外れたが、流星としては楽がしたかっただけなので特に問題はなかった。

 そのまま村から出ようとした時、1人の子供がこちらへ走っって来た。

 

「どうした?」

「おっさん、戦えるんだろ?だったら、あいつら追っ払ってくれよ!」

「おっさん……」

 

 流星もそろそろ30になろうという年であるが、おっさんと思った事はない。まあ、子供から見たら、おっさんなのかもしれない。

 

「コラ!旅の方を困らせるんではない」

「だって、あいつら来てから村の雰囲気悪くなったじゃないか!それに、父ちゃんの事も馬鹿にしたし……」

「それはそうだが……」

 

 確かにあの傭兵達は、先ほどもよく分からない因縁をつけてきた。あの感じで村人にも接しているなら、この村の空気を変えているだろう。

しかし、それらは流星には関係ない事だ。

 

「なあおっさん!あいつら追い出してよ!」

「でもねえ坊や。何かしてほしいなら、報酬の1つもないと」

「なら、コレあげる。父ちゃんが作ったお守り」

 

 子供から渡されたお守りは、木彫りで作られた物であったが、わずかに魔法力を感じた。

そして、受け取ったからには、これは立派な仕事の契約である。

急ぐ旅ではないので、流星は子供の頼みに応えるべく、村で調査する事にした。

 

「わかった。引き受けよう」

「ほんと!やった!」

 

 子供は喜び、村長も安堵の表情を見せるが、流星は1つだけ注意する。

 

「ただし、俺はおっさんじゃないぞ?」

 

 子供との誤解を解きつつ、流星は村での調査を始めるのだった。

 

 

 グランドーは体格の良い男だ。自信家で大物を気取っているが、カッとなりやすい面もあった。

 もともとはワポルム帝国で仕事をしていたが、はずみで貴人を殴ってしまい仕事ができなくなり、ワポルム帝国から逃げ出してきたのだ。

 そして流れ着いたのがこの村だ。

何でも森からモンスターが出てくるようになったので、調査を依頼された。そして、森に入って原因を探したが、その原因は何ら大した事ない物だった。

 しかし、グランドーは考えた。このまま上手く利用すれば拠点を手にする事ができるのでは?と。

仲間達もこれに賛成し、村長達には原因不明と報告し、傭兵として村を守る約束をした。

 こうしてグランドー達は村長の説得に成功し、村に居座る事に成功したのだ。

そして今まで、グランドー達は森から現れたモンスター達を倒していた。

 その数は少なくないが、ガザオーク程度ならグランドー達にかかれば倒せない敵ではなかった。

しかし、そこに旅の者が現れた事で事態が一変する。

 それは流星だ。魔法の鎧を身に着けた流星は傭兵達では太刀打ちできないかもしれない。

 だが、グランドーは考える。あの旅人の鎧を奪えれば、傭兵としての仕事も楽にこなせるのではないかと。そして、その考えを仲間達に話した。

 

「それは良いな!だが、どうやって奪う?」

「そうだなあ……あいつが1人の時に襲えば……」

 

 

 流星は村人達から話を聞いてみたが、グランドー達は悪事を働くことはなく、もしくは巧妙に隠しているようだ。

しかし、彼らが何かを隠しているのは村人達も気づいているようだが、ちゃんとした証拠が無いのでどうしようもない状況だ。

 

「さて、どうするかな……」

 

 流星が悩んでいると、傭兵達の様子を見に出していたアリスが戻ってきた。

 

「どうだった?」

「先生から魔法の鎧をどう盗むか相談してた」

「ついに尻尾を出したな。他には?」

「森に様子を見に行った人が帰らず、追加で人を出すみたい」

 

 村長によると、森にはモンスターが出た事が無いそうだ。そんな森から出てくるモンスターの原因調査の依頼をしていたと言っていた。

 その時は原因不明と返されたが、何かを隠していたのだろう。

そして、今は何か想定外の事が起きたと考えるべきだ。

ここで無視すれば、こんか小さな村は無くなってしまうだろう。

 

「そうか。なら、彼らより先に森へ行ってみるか」

「うん」

 

 流星とアリスは、傭兵達の悪事の証拠を掴むため、森の調査をするために中へと入っていった。

 

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 森の中には適度な光が入り、道も整備されている事から、村人達が普段からよく出入りしているのが伺える。

現在は2〜3日置きに傭兵達がモンスターが近づかないように数人で見回りをしているそうだ。

 しかし、今回は傭兵達の一部が見回りから帰って来なかったとアリスは言っていた。

つまり、傭兵達が隠している何かに異変があったか、傭兵達では対処のできない何かが発生したという事になる。

 だが、異変が起きているのは浅い場所ではないだろう。村人達だって日々の糧を得ないといけないのだ。浅い場所で隠し事をしていれば、すぐに見つかっていた筈だ。

 流星とアリスは森の奥へ入って行き、周囲を警戒しながら進んでいくと、見回りをしていると思われる傭兵達の荷物を発見した。

 

「食料とかには手がつけられてないな」

「モンスターに漁られた感じもない。傭兵達はろくに抵抗できないまま何かあったとみるべき」

「なら、これ以上は危険かもな」

 

 アリスの言う事ももっともだが、このまま原因もわからずに放置すれば村人達の生活に支障が出るだろう。

流星とアリスは相談の結果、もう少し奥まで進む事にした。

 そして更に奥へ進むと、森の雰囲気が変わった。

 木々にはカビが生え、水は異臭を放ち、動物の骸が転がっていた。

「なんだこれは……王都の森でも見たこともないぞ」

 

 異様な光景に驚く流星の目線の先で、複数のキノコが歩いていた。間違いなくアレが原因だ。

そのキノコの事を知っていたアリスが説明する。

 

「ゲゼマタンゴだ」

 

 ゲゼマタンゴ。胞子をまき散らし、次々と増殖する厄介なキノコ型のモンスターだ。

どうやらゲゼマタンゴ達は、自分達が住みやすいように森を改造しているようだ。

 そして、1匹のゲゼマタンゴがこちらに気づいたのか、大きなカサを揺らしながら襲おうとした。

 

「こいつ!」

 

流星は咄嗟に剣を抜き、ゲゼマタンゴに斬りかかった。

しかし、ゲゼマタンゴは胞子を飛ばしながら逃げだした。

 

「逃がしては駄目」

「わかった!パーム」

 

 逃げようとしたゲゼマタンゴは、地面から吹き出した炎によって燃え尽きた。

1匹倒したと思ったら、すぐに次のゲゼマタンゴ達が複数で襲いかかって来る。

 先ほどと同じようにパームで片付けようと考えたが、火災が起きる可能性があると判断し、別の魔法を使った。

 

「無数の氷刃よ!コールドイナク!」

 

 氷系魔法イナクよりも鋭さをました無数の氷刃がゲゼマタンゴに突き刺さると、その場所から氷結していき、動きを阻害する。

中には複数刺さった事で全身氷結したゲゼマタンゴもいた。

 しかし、イナクより上位の魔法だけあり魔法力の消費も多く、流星がこの魔法を行使するのに慣れていない事もあり、詠唱が必要であった。

 だが、ゲゼマタンゴ達の数は多く、流星が攻撃をしている間にも次々と襲いかかってくる。

 

「くっ!」

 

 ゲゼマタンゴの胞子を吸い込んでしまい、咳き込む。そして、その隙を逃さずにゲゼマタンゴは胞子をまき散らしながら流星に突撃した。

 

「危ない!」

 

 アリスは咄嗟にファイターを放ち、ゲゼマタンゴ達をバルカンで薙ぎ払うとそのまま流星に駆け寄った。

 

「大丈夫?」

「ああ……助かったよ。しかし、何て数だ。こんなに増えていたら森の環境は変になってしまうぞ」

「この数、たしかに異常だ……」

 

 とても2人だけで退治できる数では無い。今は原因を探るよりもこの場から逃げる方が先決だ。流星とアリスは森を脱出するため走り出した。

 しかし、そんな2人を黙って見過ごす訳なかった。影に隠れていた傭兵達が、2人の行く手を阻んだ。

 

「よう、貴族の兄ちゃん。何処に行くんだい?」

「どこかのタイミングで出てくるとは思ったけど、まさかこのタイミングとはね……」

「なんだお見通しか」

「原因不明のモンスターの流出が発生してるのに、国や領主へ報告されてないのは、おかしいと思ってね。少し森を調べたらこの通りさ。それで、だいたいわかったよ」

「まあな。でもよ、この仕事も楽じゃねえんだよ」

 

 グランドーは剣を抜くと、その刃を流星に向ける。

 

「俺はなあ!こんな田舎で一生を終えるつもりはねえんだ!悪いが、お前の装備はここでいただくぜ!」

 

 グランドーが剣を振り下ろすと、流星はそれを避けた。そしてそのまま反撃しようとするが、他の仲間が弓で牽制してきた。

さらに背後からは追ってきたゲゼマタンゴ達が襲いかかってくる。

 

「ちっ!」

 

 流星は盾でゲゼマタンゴの攻撃を受け止め、そのまま押し返した。

そして、その隙をつくようにグランドーが斬りかかる。

 

「もらったあ!」

 

 しかし、流星はその攻撃をギリギリの所で盾で受けた。だが、その攻撃によって盾に傷がついた。

 

「先生!」

 

アリスが心配そうに声をかける。

 

「ああ、大丈夫だ。それより後ろのゲゼマタンゴ達を頼む」

「わかった」

 

 アリスはファイターの他にブレイカーとガンナーを呼び出し、ゲゼマタンゴ達の迎撃に向かっていった。

 

「ほう。魔具も持ってるのか。流石お貴族様だ。高く売れそうだぜ!」

 

 グランドーはそう言うと剣を激しく振り回しながら切りかかってきた。

それを盾で受け流し、反撃を試みるが簡単に避けれてしまう。

グランドーの動きはけして悪いものでは無いが、須佐や五井等の動きに比べると見劣りする。

 それなのに、妙な戦いづらさを感じ、ある可能性に思い当たる。

 

「(試してみるか)ルフィラ!」

 

 流星の発射した魔法の矢は真っ直ぐにグランドーへ向かい命中するが、彼は何事もなかったかのように突撃してくる。

 

「魔法が使えるくらいで、調子に乗るんじゃねえ!」

 

 グランドーが振り下ろす剣を流星は盾で受け止めたが、衝撃で後方に吹き飛ばされた。

そしてそのまま追撃を仕掛けてくるグランドーの攻撃を魔法力噴射(バーニア)で回避して、悪態をつく。

 

「ちぃっ!?やっぱ力属性かよ!!」

 

 魔法には力とあるように、魔法属性を持つ流星と力属性を持つグランドーでは相性が悪い。

下位魔法では、グランドーにろくなダメージを与える事はできないだろう。しかも詠唱する素振りを見せれば、他の傭兵達が弓等で妨害してくる。

 さらに、サイコミュを使ってみたが、混乱した傭兵に何か液体をかけて正気に戻していた。

 

(対策もされてるか……アリスを全部ゲゼマタンゴの方に回したのは間違いだったか)

 

 流星はグランドーの攻撃を捌きながら、打開策を考えていた。

 

「どうした!もう終わりか?」

 

 しかし、そんな暇など与えぬとばかりにグランドーの攻撃は激しさをまし、5度程受け止めた時に盾に亀裂ができたのでそれを投げ捨てる。

 

「何て馬鹿力だ……」

 

 盾が無くなり、ここぞとばかりに傭兵達は弓で攻撃してくる。

これを回避しながら、援護してくる傭兵達をどうにかしようと魔法を使おうとした時、アリスから念話が飛んでくる。

 

(先生、避けて!)

 

 それに従い大きく避けると、先ほどまで居た場所へ斧が振り下ろされた。

そちらを見ると、鎧などが所々壊れた傭兵が居た。

 しかし、その表情は土気色でとても苦しそうであった。

 新手を警戒していると、急いで戻ってきたファイターが流星を持ち上げる。

 

「うおっ!ア、アリス。そういうのはちゃんと連絡を……」

「そんな事をしている暇は無い。すぐに合体する」

「いったい何があった?」

「説明してる暇も無い!早く!」

「わ、わかった」

 

 流星はファイターに掴まりブレイカーとガンナーの所へ向かう。

傭兵達も流星が何かしようとしているのがわかり、弓で妨害しようとするがアリスの巧みな移動により狙いがつけられなかった。

 

「クソっ!何てすばしっこい奴だ。おい!リオ。お前も手伝え!」

 

 グランドーは怒鳴りながら斧を持った男、リオへ話かけるが、リオは返事をしない。

 

「どうした、返事をしろ!」

「グ、グランドーの、兄貴ぃ……」

「なんだ、情けねぇ声出しやがって。特上の獲物が来たんだ。そいつを仕留めてあんな村出てく……」

「兄貴ぃ、た……助けて、くれ……キ、キノコの化け……」

 

 そう言うとリオは地面に倒れ伏す。

 

「モンスターの毒にでもやられたか?こんな肝心な時に……おい!こいつを治療してやれ」

 

 ただ事ではないと感じ、グランドーは部下の1人にリオの治療を命令する。

部下の傭兵は毒消しと薬草をすり潰して漬ていた特製のポーションをリオに与えようとした時だ。

 突如としてリオの体からキノコが生え、あっという間に全身を覆った。そして、近くに居た傭兵を掴むと、大量の胞子を浴びせる。

 

「ぐわっ!な、何すんだ!やめてくれ!!」

 

 悲鳴をあげて逃れようとするが、リオだった者は人とは思えない力で傭兵を掴み逃がそうとしない。

流石にこの状況をわからないグランドーではない。もう、リオは助からないと考え、その首を剣で落とした。

 しかし、驚いた事に頭の変わりにキノコが出てきたのだ。そして、新しい顔はグランドーもよく知っている物であった。

 

「こ、こいつは、ゲゼマタンゴ!?何でこいつが……」

「ぎゃーー!!」

 

 他の悲鳴が聞こえそちらを見れば、森に様子を見に行っていた傭兵達がゲゼマタンゴに乗っ取られた姿で帰って来ていた。

 

「グ、グランドーさん助けてください!こいつら、斬ってもすぐに傷がふさが……うわぁぁぁ!」

 

 そして、複数のゲゼマタンゴが覆いかぶさりその傭兵もキノコまみれになり、ゲゼマタンゴへと変貌する。

 

「クソが!お前らは逃げろ!俺はこいつらを何とかする」

 

 グランドーは部下に逃げるように指示すると、剣を構えてゲゼマタンゴ達へ突撃した。

 

「な、なんだアレは……」

「先生、早く合体して!」

 

 アリスの呼びかけに答え、急いでネモの鎧をしまうと、ファイターを紺色の胸当てに変化させブレイカーとガンナーの元へ行き、1つに合体する。

 

「いくぞ!」

 

 アリスの鎧を完成させ、ゲゼマタンゴを殴りつける。

胞子をまき散らし倒れるが、今までと違いゆっくりと起き上がってきた。

 

「今ので倒せないだと?何て体力だ」

「アレはゲゼマタンゴじゃない。その進化系、ゲゼファンガス」

 

 ゲゼファンガス。何かしらの理由で、人を苗床にできたゲゼマタンゴが進化するモンスター。

人並みの知能を持ち、さらに高い生命力も習得。そのうえ繁殖力はそのままで、退治方法は発見場所を全て焼き払う事が推奨される程の見つけしだい国に報告義務のある指定モンスターだ。

 

「つまり、アレは放置すると村が大変な事になるってことか……」

「うん。だから、何が何でもここで倒すしかない」

「わかった」

 

 2人が話していると、ゲゼファンガス達はゆっくりと流星へ振り向き、胞子を撒き散らす。

アリスの鎧には、空気の浄化能力もあるのか胞子を吸うことだけはなかった。

 しかし、魔法の鎧の無い傭兵達は胞子を吸い込んで逃げることもできずにもがいていた。

そんな彼らを無視して、流星は大腿部にあるガンを連射してゲゼファンガス達を撃ち抜こうとするが、ゲゼファンガスの1体はその攻撃に耐えたようで、反撃に胞子をまき散らしながら体当たりしてきたが、バーニアで回避する。

 流星はそれを見て好機と思い、膝部の刺突部分であるニークラッシャーで膝蹴りを叩き込むが、ゲゼファンガスはそれにも耐えて反撃してくる。

 

(ちっ!これでもダメか)

 

 流星は舌打ちしながら次の手を考えていると、アリスから新しい武器を渡される。

 

「先生、これを」

 

 膝部から飛び出した物を掴むと、刀身の無い柄だけの剣。コレでどう戦えというのか?

 

「魔法力を込めて」

 

 アリスに言われた通り、魔法力を込めると柄から青く光り輝く刀身が現れる。

 

「こ、これは?」

「魔法力を刃に変える剣、ビームサーベル」

「ビームサーベルか……これなら!」

 

 流星はゲゼファンガスに斬りかかると、ゲゼファンガスの体をあっさりと両断した。

 

「こいつは凄いな!」

 

 驚く流星に、アリスから説明される。

 この武器は魔法力を消費する事で刃を生み出すが、魔法力が切れると元の状態に戻るという物だった。

つまり、流星の魔法力が尽きる前に決着をつける必要がでてくる。

 

「なら、奴らを早めに一掃するぞ!」

 

 ビームサーベルを構えて突撃すると、次々とゲゼファンガス達を斬り伏せていく。

ゲゼファンガスも腕を振り回したり、体当たりをするが、そんなものを歯牙にもかけず、両断する。

 そして、2体のゲゼファンガスを倒した頃には周囲のキノコ達は全て消え去っていた。

 

「よし、こんなものだな」

 

 流星はアリスから受け取ったビームサーベルをしまおうとしたの同時に、アリスがいきなりバーニアで回避行動をとった。

突然の事に流星は驚くが、それが流星を助けた。

 先ほどまでいた場所をゲゼファンガスの腕が通過したのだ。

 

「まだ、生き残りがいたのか」

 

 流星が腕の伸びてきた方を見ると、そこには体からキノコを生やしたグランドーが居た。

 

「グググ、お、おのれ……」

 

 グランドーは流星を恨みの籠った目で睨みながら近づいてくる。

 

「まだ意識があるのか?」

「先生、残念だけどゲゼファンガスに1度侵された者は助からない……」

「そうか……」

 

 そう答える流星は、グランドーに哀れみの目を向ける。

 

「な、なんだその目は!お、俺を憐れんでいるのか!」

「ああ、そうだな」

 

 多分であるが、傭兵達は森でゲゼマタンゴの大量繁殖を見つけたのだろう。森の環境が変わり、住みやすい場所を求めてモンスターが森を出るようになり、村は傭兵を雇った。

 そして、簡単に倒せるが故に放置しこの事態になった。

早いうちに倒していれば、モンスターの苗床になることもなかっただろう。

 

「ふざけるなぁ!!」

 

 ゲゼファンガスになりつつあるグランドーは怒りに任せ剣を振り下ろすが、それをビームサーベルで切断する。

剣がなくなると、腕を伸ばしてきたのでそれごと切ろうするが、攻撃は腕の一部を切るだけであった。

 

「属性引き継ぐのかよ……」

 

 さらに切った場所は再生し、腕は4本に増える。

増えた腕で殴りつけてくるのを回避しながらビームサーベルを振るうが、三すくみの影響とゲゼファンガスの高い再生能力によって思うようにダメージを与える事ができない。

 

(コイツを倒せるのか?)

 

 目の前の化物に不安になるのも仕方ない。流星には時間が残っていないのだ。

 

「アリス、残りの魔法力は?」

「25%を切っている。先生は?」

「俺は半分くらいだな」

 

 この前の移動で調子に乗ったのがここにきて響いてきたようだ。

 

(どうする?)

 

 迷っていると、痺れを切らしたグランドーが、2本の腕を合わせ太くするとソレを叩きつけてきた。それを両腕でガードして防ぐが、吹き飛ばされてしまう。

 しかし、鎧背部にあるテールスタビレーターも活用したアンバックで体勢を直して着地する。

 

「あの化物を倒すには、ビームサーベルの出力をさらに上げる必要があるな」

「それなら、いい方法がある」

 

 そう言ってアリスがそのやり方を流星に説明する。

 

「なるほど。じゃあ、準備の間は任せるよ。足りなかったら、俺から魔法力を持っていってもかまわない」

「わかった。準備ができたら、合図して」

 

 そう言うと流星は魔法力を集め始める。

その間も胞子を振りまきながらグランドーは腕を合わせて殴ったり4本に戻しての連続攻撃を流星に仕掛ける。

 しかし、アリスはバーニアで小刻みに鎧を動かし、その攻撃は全て回避していく。

 そして、ついに準備が整ったようだ。

 

「アリス!」

 

 流星の合図と同時に、大腿部のガンをグランドーの足元へ放ちながら突撃する。

 

「鬱陶しいんだよ!」

 

それをジャンプしてかわすグランドーだが、それは囮だ。

 

「氷刃よ!コールドイナク!」

 

 集めた魔法力を解放し、目の前に氷の刃を生み出すがそこへさらに魔法力を注ぎ氷の刃を大きくする。

 

「させるかっ!」

 

 グランドーは腕を伸ばして阻止しようとするが、それは遅すぎた。

 

「こいつで、終わりだ!」

 

 巨大化した氷の刃へビームサーベルを叩きつけた。。集めて増幅した氷の刃は高い反発力によって高速で発射された。

これは、ヘビーアタック。極限まで凝縮された魔法へ魔法力で構成された刃をぶつける魔法剣術だ。

 しかし、緻密にして正確なコントロールを必要とし、誤れば自爆しかねない技であり、アリスのサポートあってこそ成功できたものだ。

 

「ぐぉあぁぁぁぁ!」

 

 氷の刃はグランドーへ突き刺さると、そのまま後方の木々を破壊して止まる事なく進み続ける。

 

「こ、こんな物……」

 

 グランドーは突き刺さった氷の刃を抜こうと触れるが、強烈な冷気が解放され一瞬にして氷像と化した。

 

「これで少しは大人しくなるだろう」

 

 そう言ってビームサーベルを鎧の膝部サーベルホルダーに納めると、流星はその場に座り込む。

 

(ここまでだな)

 

 魔法力もほぼなくなった。

もう、動くのも億劫だ。だが、不思議と悔いはなかった。

そんな時だ、アリスから話しかけられる。

 

「先生、お疲れ様」

「悪いけど、今日の魔法力供給はできそうに無い。明日にしてくれ」

「うん。わかった」

 

 そして、2人はわずかに残った魔法力で結界を張ると、その場で一夜を過ごす事にした。

 

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 翌朝、流星は目を覚ますとアリスが朝食の準備をしていたのに気づく。

 

「おはよう、アリス」

「おはよう、先生。もうすぐできるから待ってて」

 

 そう答えるアリスに頷きながら、辺りを見回すとグランドーだった氷像は跡形もなくなっていた。

 

「あの化物は?」

「もういない。完全に消滅したみたい」

「そうか。それで、生き残った傭兵は……」

 

 流星がそう聞くと、アリスは指を差す。

 

「まだ生きてるけど、時間の問題」

 

 ゲゼマタンゴの胞子に侵された傭兵達はかろうじて生きてはいたが、このまま放置すれば新しいゲゼファンガスへとなってしまう。

キノコが生える前なら治療もできるが、それには高度な回復魔法か貴重な薬を使う必要がある。

 しかし、流星達はどちらも持ち合わせていなかった。いっそのこと、解釈してやるべきか……そんな考えがよぎった時だ。

 

『誰か〜聞こえますか〜。助けてください〜』

「アリス、何か言った?」

「私はなにも」

『聞こえますか〜。助けてください〜』

「ほら、聞こえた」

「確かに」

 

 流星はアリスに魔法力を分けると、鎧を身に着けカビた森の中を声のする方へ進む。すると、鎖で縛られた大木を見つけた。

 

『あっ!そこの人、この鎖をどうにかしてください』

 

 なんと、大木が話してきたではないか。さすが異世界。

 

「コレは、精霊キャトルウッド!」

 

 アリスの説明によると、巨大な樹木の姿をした精霊だそうだ。

 

『そうです。私は精霊キャトルウッド。名は、ドリュアスといいます〜』

「貴方が居るなら、森にモンスターは出ない筈。何があった?」

 

 アリスの言う事は正しい。精霊の祝福を受けた森にはモンスターは出ない。なのに、この森にはモンスターが出現している。これは非常におかしな事だ。

 

『だいぶ前に変な人達が来て、私に鎖を巻きつけていきました〜。そしたら、森を浄化する力が無くなり、モンスターが住み着いてしまいました〜』

「変な人?それは誰?」

『わかりません。ただ、1人は女性でもう1人は鎧を着た男でした』

 

 その話を聞き思い当たる事があった。

 

「まさか、魔王軍か?」

「そうだと思う」

 

 おそらく、ドリュアスの存在を疎ましく感じた魔王軍は、ドリュアスを鎖で封印し、その力を奪ったのだろう。

そして、ドリュアスは力が振るう事ができなくなり、事態は深刻化する事となったのだ。

 その2人組は魔王軍の尖兵である可能性が非常に高い。

 

「なら、こんな鎖すぐにでも外そう」

「うん」

 

 流星とアリスは鎖を外そうとするが、鎖に触れたアリスの顔色が悪くなる。

 

「アリス、どうした?」

「先生……この、鎖は精霊の力を、奪うみたい……」

 

 考えて見れば、アリスも鎧に宿る精霊だ。そんな彼女が鎖に触れればどうなるか……

 

「すまない、俺が気づくべきだった」

「いいの……この鎖を外せば、ドリュアスが力を振るえる様になるから……」

 

 そう言いながら、アリスはふらつきながらも立ち上がる。

そして、2人は協力して鎖を外すと、大木から少女が出てきた。

 

『は〜……久しぶりの外だ〜。日が暖かい〜』

 

 全身に日の光を浴びながらドリュアスは伸びをすると、すぐに浄化を開始する。

 

『そ〜れ!』

 

 すると、菌糸によってカビていた森がみるみる内に浄化されていき、元の美しい森へと変わっていく。

そのスピードは凄まじく、10分もしないうちに元通りの森になったのだった。

 それを見ていた流星とアリスも、ドリュアスの魔法力に驚かされたのであった。

 ドリュアスの力により森が元通りになると、すぐに傭兵達のいる場所へと向かった。

傭兵達は衰弱していたが、まだ助かる状態だった。

 

『ゲゼマタンゴの胞子を大量に吸い込んでしまったようですね〜。任せてください!』

 

 そう言うと、ドリュアスは魔法を唱える。

 

『優しき薔薇の花弁よ、彼の者に癒しを……ラビアンローズ』

 

 ラビア系の回復魔法で、広範囲を花弁で包み傷や毒等の治療をする高等魔法。そして、ラビアンローズは人の世では遺失されたとする最上位に位置する魔法だ。

それをドリュアスは容易に使って見せた。

 

『これで大丈夫ですよ〜』

「すごい、流石は精霊様」

 

 流星が感心する中、治療が終わると傭兵達の呼吸も安定し、命に別状がなくなっていた。

それを確認した流星とアリスは安堵する。そして、それと同時に疲労感に襲われたので少し休憩することにした。

 

「先生、魔法力頂戴……」

「ああ、わかった」

 

 先ほど触れた鎖の影響だろう。なので、アリスの魔法力補給を行う。すると、そこへドリュアスがやって来た。

 

『鎖を解いてくれてありがとうございます〜。これでまた森を守る事ができます』

「いや、こちらこそ助けてくれてありがとう。貴方がいなければ、彼らを見捨てないといけない所だった」

「先生の言う通り。ドリュアスは命の恩人だ」

『そんな〜照れますよ〜』

 

 こうして、森の平和を取り戻す事ができたのだった。

しばらく休憩をした流星とアリスは傭兵達をドリュアスが縛られていた鎖で拘束し、出発の準備を始める。それに気づいたドリュアスも見送りにやって来た。

 

『もう行ってしまうのですか?』

「うん、私達はまだ旅の途中だから」

『そうですか……ならこれを持っていってください』

 

 2人はドリュアスから綺麗な花びらの宝石を渡される。

 

『これは、我が森に咲いていた花の花弁を加工して作った物です〜。何かあれば役に立つでしょう』

「ありがとう」

『いえいえ〜、こちらこそありがとうございます〜』

 

 2人はドリュアスと別れの挨拶を交わすと、森の外へ歩き出した。そして……

 

『また来てくださいね〜』

 

 そんな声が後ろから聞こえたのだった。

 

 

 傭兵達を板に乗せロープで引っ張りながら森を歩くこと数時間後、2人はやっと村に到着した。

 

「やっと帰ってこれたな」

「うん。後は村の人に報告するだけ」

 

 2人が村の入口へ向かうと、武装した村人達に出迎えられた。後方には嫌らしい笑みを浮かべた傭兵達が居た。どうやら逃げのびた者が居たようだ。

 

「あいつらだ。あいつらがモンスターをこの森に呼んでた元凶だ。森に入って行った仲間もあの通りだ!」

 

 傭兵達の事を信じていた者もまだ残っていたのか、村人の反応は冷たいものだった。

 

「依頼を受けるフリをして騙すなんて、最低な奴等だ」

「モンスターを森に呼ぶなんて何を考えているんだ!」

 

 流星は弁解するが、村人は聞く耳を持たない。それどころか罵声を浴びせる者まで出る始末だ。

このままでは埒が開かないと踏んだ2人は、証拠を出す事にした。

 

『あの旅人の鎧を奪えれば、傭兵としての仕事も楽にこなせるんはずだ』

『それは良いな!だが、どうやって奪う?』

『そうだなあ……あいつが1人の時に襲えば……』

 

 流星の持つ長方形の板から皮算用をする傭兵達の声が流れる。そう、アリスにスマホの使い方を教えておいたのだ。モバイルバッテリーも充電切れなので、これが最後の仕事になるだろう。

 

「げっ!?な、なんでその話を!」

「魔法で録音しておいたのさ。これを聞いても、何か弁解できるかな?」

「くそ!テメェ……」

 

 傭兵達は逃げようとするが村人達に取り囲まれたしまう。

 

「先ほどの話と合わせて、ゆっくりお話したいただきましょうか?」

 

 村長の言葉に傭兵達はたじろぐ。

いくら傭兵達でも片手で数えるくらいしか残って居ないのでは、武装した村人達の包囲突破は無理だ。しかも、背後にはグランドーすら倒した流星が居るのだ。彼らに逃げ場は無い。

 傭兵達は大人しく観念しお縄に付くと、村人達は傭兵達を縛り上げた。

 

「さて、後はこいつをどうするかだな」

「でしたら、街の衛兵に引き渡しましょう。お話を聞くかぎり、こやつらは森の異変を放置してた挙句、我々にも報告していませんでした。これは契約違反です」

 

 傭兵という仕事は信頼性である。よく聞く依頼主を見捨て逃げる等したら、もう誰もその傭兵へ仕事は依頼しないはずだ。

彼らはそれと同じ事をしたのだ。村の隅にある掘っ立て小屋へ傭兵達を連行すると、村人を代表して村長が流星とアリスに感謝の言葉を述べた。

 そして、流星は村を救った英雄として歓迎されたのだった。




魔法剣術
魔法と剣術を組み合わせた、まったく新しくないありふれた物。
誰が編み出した始祖なのかは、残念ながら伝わっていない。しかし、その術だけは今でも受け継がれている
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