異世界ガンダム   作:꒰ঌ流✧星໒꒱

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 街道から少し離れた森の中、旅人達の跡を尾行している3人組の男がいた。
旅人達の数は全部で7人。あどけなさを残してはいるが、全員が青年達ばかりだった。
 男のうちの1人は、斧を背中に背負っている。
もう1人はマジックガンを持っており、時折その鋭い銃口を木漏れ日が射す方向へ向けていた。

「兄貴、ヤるなら今しかありやせんぜ」

 マジックガンを持った男が口を開く。

「よせ。俺達は偵察が任務だ」
「しかしよ、ここで逃がしたら親分達に皆取られちまう。たまには洞窟みたいなガバじゃない奴を相手したいぜ」
「焦ることはない。俺達には力がある」

 斧を持った兄貴分の言う通り、最近目深に被ったフードの人物が山賊達にある物を渡した。
魔法の鎧。山賊なんてしていたらけして見る事の無い物。

「私は魔王様の使い。お前達が良い働きをするなら、より良い魔法の鎧を与えよう」

 フードの人物はそう言って、それを山賊達全員に渡したのだ。
これによって、山賊達は向かう所敵無しとなり、街道警備の兵士ですら手出しできない存在となった。

「でもよ、兄貴。あのガキ共は中々の上玉だぜ? 女なんて犯すぐらいしか使い道がないが、男は違うだろ?」
「おい、何をする?命令違反をするのか?やめろ、親分に怒られるぞ」

 兄貴分は弟分を諌めるが、弟分はマジックガンを握り締める。

「俺達は魔王様から力を貰った。その力は山賊でいる限り永遠に続く。だがあいつらはどうだ? ただの旅人だ。力なんてねぇ」

 そう言って弟分はマジックガンを構え旅人達へ狙いをつける。

「へっ、手柄を立てちまえばこっちのもんよ」

 言うと同時に前へ進むとマジックガンへ魔法力を送る。すると、魔法の矢を連続で発射した。
こうすれば、警備兵達ですらなすすべなくやられていた。そして、旅人達もそうなる……はずだった。
 旅人達の内の1人が腕輪を着けた手を前に出すと、腕輪から風が起こり体を包むと、ダークブルーを基調とした鎧を身に纏って現れた。
そして、飛んできた魔法の矢を全て受け止める。

「あ、あいつ、魔法の鎧を!?」

 気づいた時には遅かった。魔法の鎧、トルネードガンダムを纏った須佐が山賊達の前に立つ。

「見つけたぞ、山賊共!覚悟しろっ!!」

 1人先行していた弟分はあっという間に捕まってしまった。これを見て兄貴分は隣に残ったもう1人の弟分へ命令する。

「しまった!騎士団の囮か!?ジーン。お前は親分に知らせろ。できるな?」
「でも、兄貴……」
「退くんだジーン。あいつは使う前にやられたが、俺には魔法の鎧はある。時間を稼いだら俺も逃げるから、この事を早く親分に知らせろ」
「う、うわわあーっ!!」

 己を奮い立たせるようにジーンは叫ぶと駆け出す。それを見送り、兄貴分は魔王より与えられた魔法の鎧ザクを身につける。

「さて、ジーンが親分の所へ着くまでの時間を稼ぐか……」

 斧を引き抜き、敵である須佐へ向ける。

「かかって来い。お前達山賊を見過ごすわけにはいかない」

 須佐がそう言うと、仲間の6人も山賊を捕縛する為、一斉に動きだした。

勇者タカナリ・スサの叙事詩 第2章


勇者の装備を求めて

 翌日……

 流星達は、街へ出荷に行く村人達と共に、グランドー一味の護送準備をしていた。

さすがに、板に乗せて引っ張っるのは余計な労力だ。

なので、傭兵達自身に歩かせる事にした。だが、ひとまとめにした状態で歩かせる訳にもいかないので、鎖を外して1人づつロープで縛り直した。

 また、鎖の能力は何かに使えそうなので、首飾りにしまった。

村を出る時に村長や少年に大変感謝され、またいつでも来て欲しいと見送られる。

それに手を振ると、2人は街へと歩き出した。

 

 

 街へ着いたのは昼過ぎ頃であった。

門番に事情を話すと、すぐに衛兵が来てグランドー一味を連行してくれた。

 さらに、グランドー一味は別の街で貴人を殴り飛ばしていたらしく、懸賞金がかけられており、それが流星達に支払われた。

 

「おかげで、臨時収入が手に入ったから俺としては非常に助かったよ」

「それは良かった。それで、これからどうするの?」

「とりあえずは宿を取ってからだな。それから、ノア伯爵に会おうと思う」

「わかった」

 

 そう言うと流星達は酒場と併設されている宿屋へと入る。

 

「いらっしゃいませ!フラナガン亭へようこそ!」

「すいません。部屋は空いてますか?」

「はい。相部屋になりますが、よろしいでしょうか?」

「問題ありません」

「かしこまりました。では、1泊40キャピタルになります。お食事無しでしたらもう少しお安くなりますが、どうされますか?」

 

 キャピタルとは、この世界の貨幣だ。ちなみに、平民の月収はだいたい1200キャピタル前後。1日生活するのに約30キャピタルあれば、一般的な生活ができるとされている。

今回は臨時収入のおかげで懐も温かいので、食事付きの宿を取る事にした。

 

「では、食事付きでお願いします」

「ありがとうございます。こちらが鍵になります」

 

 流星は言われた額を支払うと部屋番号が書かれた鍵を受け取り、部屋へと移動する。

そして、部屋に入ると2人は荷物を置いてベッドに座った。

 

「今日は疲れたな……」

「うん……私も疲れた……」

 

 数日前の戦闘で魔法力を消費したアリスは、それを補充しようと流星から魔法力を受け取っていた。

 

(ここにあるのが、魔法動力珠だといいんだが……)

 

 前にも話したが、勇者の鎧は、巨大な力持つが故に使用者にも相応の負担がかかる。

その負担とは魔法力である。

 兜をかぶった時の視界改善を初め、魔法力噴射(バーニア)、身体能力強化等は魔法力で行われ、とても常時身に着けていられる物ではなかった。

そんな問題を解決する為に作られたのがジェネレーターだ。

 ジェネレーターは空気中にある魔法力を集め、鎧へ供給する装置で、人が魔法力切れを起こさない様にしてくれるのだ。

もしジェネレーターが見つかれば、アリスへの魔法力供給も少なくなるはずだ。

 

(それはそれとして、抱くんだけどね)

 

 マグロではあるが、アリスは美人である。そんな彼女を抱かない理由はない。

 

「アリス、そろそろいいか?」

「うん」

 

 流星がアリスの服の上から柔らかな膨らみに触れると、アリスはうなずく。

そして、2人の影が重なり合った……

 

 

 翌日……

目を覚ました流星が見たものは、自分の腕を枕にして眠っているアリスだった。

 

「……可愛い」

 

 そんなアリスの寝顔に思わず頭を撫でると、アリスが目を覚めした。

 

「んっ……ん。おはよう……」

「おはよう、アリス。よく眠れたか?」

「うん」

「それは良かった。なら、そろそろ準備をするか」

 

 流星はベッドから起き上がると、着替えを始める。そして、その横でアリスも身支度を整え始めた。

2人は朝食を食べる為に酒場へと移動すると、話し声が聞こえてきたのだ。

 

「おい、聞いたか?なんでも勇者様が魔王を倒しに出られたそうだ」

「ああ。その話なら知ってるぞ。これで、魔王の事は心配無いな」

「そうだな。勇者様に乾杯!」

「乾杯!」

 

 その会話をその後も聞き続けると、どうやらラ・ムール国から来た行商人等から知ったようだ。

須佐達もこれから大変になるだろうなと、考えながら朝食を摂った流星はノア伯爵に会うために彼の屋敷へ向かった。

 

 

 ノア伯爵が管理する領地であるが、昔は別の者が管理していた。旧領地名はマーシア領。マーシア伯爵が管理していた。

 王都と隣接している事から、交易が盛んであったが、200年程前にモンスターの襲撃があり、立て直しが困難と悟ったマーシア伯爵は、友好のあるノア伯爵に助けを求めた。

しかし、領地の立て直しの途中、復興等での心労がたたり、マーシア伯爵は急逝してしまった。

 その後はノア伯爵が引き続き復興を行い、領地もノア領へと移り変わったのである。

 

 

 そんな街の大通りにある1軒の大きな屋敷……それがノア伯爵の屋敷である。

2人はその屋敷へと辿り着くと門番達に挨拶をして、来た理由を話す。

 

「すいません。領主様にお会いしたいのですが」

「アポイントはございますか?」

「これから取りたいのですが、ご都合の良い日はありますか?」

 

 そう言いながら、流星はある物を門番へ見せる。

 

「こ、これは!?少々お待ちください!」

 

 そう言うと、門番は屋敷に向かって行った。

流星が見せた物は英雄の徴だ。

これは、多大な功績をした者が1代限りではあるが、王族から英雄と認められた証。

旅の助けになればと、ヤムク王から渡されたのだ。

 しばらくすると、屋敷の玄関から執事が現れた。

 

「ようこそおいで下さいました勇者様。ですが、旦那様は現在用事で居りません。改めて日程調整をさせていただきたいのですが?」

「わかりました。では、いつ頃ならよろしいですか?」

「そうですね……1週間後の午後はどうでしょう?」

 

 執事の言葉に流星がアリスの方を向くと、彼女は大丈夫という様に頷いた。

 

「それで大丈夫です」

「ご配慮感謝します。それでは、旦那様にお伝えしておきますので、本日はお引き取りください」

 

 そう言うと執事はキャピタルの入った小袋渡してきた。

 

「これは?」

「滞在中の宿代です。お納めください」

「わかりました、ありがとうございます」

 

 流星は小袋を受けとると屋敷を後にした。

 

 

「さて、これからどうするか……」

「1週間暇になったね……どうする?」

「初めての王都以外の街だし、観光でもしてみる?キミも久しぶりの外だろうし」

「わかった」

 

 流星の提案にアリスも賛成し、2人は街を観光する事にした。

しかし、観光する場所はあるのだろうか?そう思い住民に聞いてみると、ある施設を紹介された。

 

「ここがそうか」

 

 住民によると、200年前に起きたモンスター襲撃を忘れない為に作られた資料館的な施設らしい。

流星は入館料を払い、中へ入った。

 

 

 今から約200年前、当時のワポルム帝国は領土拡大に力を注ぎ、周辺の小国へ侵攻していた。

その勢いは凄まじく、1年も経たない内にワポルム帝国の領土は倍に膨れ上がったのだ。

 そして、当時のラ・ムール国にも侵略の魔の手は伸びてきた。

だが、そう易々と領土を明け渡すほどラ・ムール国も馬鹿ではなかった。当時の王は領民達を守る為、兵を挙げたのである。

 それだけにはとどまらず、鍛冶屋を集め優れた魔法の鎧を作らせたのだ。その時完成したのが、ズィータの鎧、ディフェンサーの鎧、ヒャクシキの鎧だ。

これらの鎧を纏った英傑達の活躍もあり、ワポルム帝国の侵攻は阻止された。

 しかし、あくまで阻止であってワポルム帝国は健在であった。力を蓄えればまた侵略してくるかもしれない……

もしかしたら、ラ・ムール国が野心に目覚め侵略してくるかもしれない……

 そう考えたある小国は、国中の魔術師や鍛冶屋を集めて侵略されてもそれらを跳ね返せるモノを作るよう言った。

そして、できてしまったのだ。悪魔の兵器が……

 名は、賽子の鎧。待機状態がサイコロに見えた事から名付けられた。

全長約5mもあるそれは、鎧と言うには あまりにも大きすぎ、ぶ厚く、重く、そして動かすのは難しすぎた。一見すると失敗作のように見えるが、この鎧をサポートする為の者が居た。

 人工精霊4号。そう、人は人工的に精霊を生み出す事に成功してしまったのだ。

これにより、見た目とは裏腹にスムーズに動く賽子の鎧は小国にとって守り神となる……筈であった。

 それは最終試験の時だ。いくら4号のサポートがあるとはいえ、装着者に負担が無い訳ではなかったのだ。事故により魔法力の逆流を受け装着者が死亡。

装着者が居なくなり、止める者がいなくなった4号は賽子の鎧の過負荷を一身に受け、闇精霊(ナイトメア)へと変じてしまい暴走を開始。

 ナイトメア化の影響を受け、賽子の鎧もその姿を巨大モンスターサイコゴーレムへと変化。

 小国は威信をかけて作り出したモノによって滅ぼされたのだ。

だが、サイコゴーレムは小国を滅ぼしただけでは飽き足らず、その勢いのまま周辺国へ侵攻を開始したのである。

 そして、マーシア領も巻き込まれ甚大な被害を受けたのだ。

しかし、ここでズィータの鎧を纏った勇者が立ち上がった。

 彼は単身でワポルム帝国へと向かい、そこで当時の皇帝と交渉したのだ。

このまま戦争を続けるより和平を結んで、サイコゴーレムを倒そう!と……

 皇帝は最初は聞く耳を持たなかったが、彼の熱意に押される形で条件付きで和平に応じた。

 かくして、サイコゴーレムはラ・ムール国の3英傑とワポルム帝国の将によって討伐されたのだった。

 

 

「……アリス、今のは、いったい?」

「多分、この飾られているサイコゴーレムの残留思念だと思う……」

 

 流星達が資料館の中を見て回っていた時だ。

その特殊な生まれ方をした為、普通のモンスターのように消滅しなかったサイコゴーレムは頭部を討伐の証として飾られていたのだ。

 その前を通った時、突然流星達の脳裏に先ほどの光景が浮かんできたのだ。

これは推測だが、アリスと契約していた為に残留思念を聞く事ができたのだろう。

 

「先生、まだ何か語ろうとしてる」

「なんて言ってる?」

「……『過ちを繰り返さないで』って」

「……」

 

 その言葉は、サイコゴーレムとなった人工精霊4号のものであろう。幸いな事に人工精霊を生み出す技術も小国と共に滅び、賽子の鎧のような巨大鎧は作られていない。

しかし、このまま魔王軍との戦いが続けばどうなるだろうか?

 きっとどこかの国が同じようなモノを作り出す筈だ。

 

(これは、須佐達のサポートして早く魔王を討伐してもらわないとだな)

 

 そう考えながら、資料館を歩いていると、淡いピンクみがかかった金髪の美女が飾られている勇者の鎧のレプリカ品とヒャクシキの鎧を見ていた。

流星も釣られてそれを見る。

 残留思念の中にもあったが、ヒャクシキの鎧を纏った勇者は、その身を犠牲にズィータの鎧を纏った勇者の道を切り開いた。

その結果、ヒャクシキの鎧は使用不可能なまでに壊れ、その激闘の凄まじさを物語る。

 

「俺も、もっと強くならないといけないな……」

「そうだね」

 

 流星の決意にアリスも同意し、2人は資料館を後にする。

……だから美女の呟きを聞く事がなかった。

 

「美しい私にそこ、この鎧はピッタリだわ」

 

------------

 

 流星達は街を観光したり、魔法の訓練をして過ごし、ノア伯爵との約束を待った。

そして、1週間後の午後。流星はノア伯爵との面会にやって来た。

 ノア伯爵の屋敷で流星達を出迎えたのは、前回と同じ執事で、そのまま応接室へ案内された。

 

「おかけください」

「失礼します」

 

 流星がソファーに座ると、メイドがお茶を運んで来た。

それが終わると、ノア伯爵が口を開いた。

 

「ようこそおいで下さいました、勇者様。自分が領主のマフティー・マーシア・ノアです」

「西郷流星です。こちらこそ、時間を作っていただき感謝します」

「それで……本日はどのようなご要件で来られたのでしょうか?」

 

 流星はノア伯爵の問に何と答えようか考えたが、アリスの事は隠し、自分の知っている事を話す事にした。

それを聞いたノア伯爵は、少し考えるような素振りをしてから言った。

 

「……なるほど、古の勇者が残した装備ですか。父が生きて居たなら、何かわかったかもしれないのですが……」

 

 ノア伯爵の父は、魔王軍と戦いで戦死した為、領主として知っておく事を引き継ぎできていなかった。

 

「ヤラン、何か知っているか?」

「申し訳ございません。私も先代からは何も聞いておりません」

「そうか……悪いが、書庫に何か残っいないか調べてくれ」

「かしこまりました」

 

 執事のヤランが一礼して部屋を出て行くと、ノア伯爵は流星の方を向いた。

 

「お力になる事ができなくて、申し訳ない」

「いえ、こうしてお話しできるだけでもありがたいです」

「そう言ってもらえると嬉しいです」

 

 そう言うと、ノア伯爵は少し寂しそうに微笑んだ。

 

「よろしければ、我が家に泊まっていきませんか?」

「よろしいのですか?」

「調べ物も時間が掛かります。今日はゆっくりしていってください」

「ありがとうございます、お言葉に甘えさせていただきます」

 

 こうして、流星達はノア伯爵の家に泊まる事になった。

 

 翌日、朝食を食べ終えた後、流星とアリスはノア伯爵の案内で書庫に来ていた。

 

「ヤラン、何かわかったか?」

「歴代の当主が残された資料等から、いくつか見つかりました」

 

 ヤランによると、マーシア伯爵が管理していた古い城があったのだが、サイコゴーレムの襲撃でそれも壊れてしまった。

そして街の復興になればと、崩れた古城の石材等でまだ使えそうな物を探している時に何をしても壊れなかった場所があったそうだ。

 魔法を使い中を調べると、筒と箱のような物をがあったらしい。

この2つをさらに調べると、筒は魔法力を強力な矢に変え、箱は驚異的な速度を生み出すスラスターという事がわかった。

 亡くなったマーシア伯爵には悪いと思いながらも、当時のノア伯爵はこれらの一部を売り復興資金の足しにしたそうだ。

 

「ヤラン、その2つは今どこに?」

「残った資料によりますと、売られたのは筒の方で、箱は資料館の倉庫に保管されてます」

「そうか、ありがとう。すまないが先に資料館で箱の確認をしてくれないか?」

「かしこまりました。では、行ってまいります」

 

 ノア伯爵の指示を聞き終えると、ヤランは部屋から出ていった。

 

 

 流星達がノア伯爵と話している時、街では淡いピンクみがかかった金髪の美女と男達が話をしていた。

 

「今までの下見で、資料館にろくな警備が居ない事がわかりました。お前達にはサイコゴーレムの頭部を盗って来てもらいます」

「かしこまりました……」

 

 男達が返事をすると、美女は満足そうに頷いた。そして、後ろに控える男にも指示を出す。

 

「お前には、ヒャクシキの鎧の方をお願いします」

 

 そう言われた男は何か言おうとしたが、美女がそれを遮る。

 

「できますね?」

「……わかりました」

「ええ、お持ちしますわ。では……行動開始です」

 

 各々がそれぞれ別方向に走り出し、目的の場所へ向かった。

 

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 ヤランが先触れとして走っていった後、流星達はノア伯爵の馬車で移動していた。

 

「すいません勇者様。貴族には色々と決まり事があるものですから」

 

 ノア伯爵はそう、少し申し訳なさそうに答えた。

 

「いえ、大丈夫です。それよりもよろしかったのですか?先祖から伝わる大事なものなんでしょう?」

「大丈夫です。それだけ勇者様に期待していると言う事ですから」

「旦那様、そろそろ到着します」

「わかった」

 

 馬車の外からの御者の声に答えると、馬を止めさせる。そしてノア伯爵は馬車から降り、流星達にも外に出るよう促す。

しかし、ノア伯爵が到着したいうのに、施設を管理する者どころかヤランすら居ない。不審に思った護衛が資料館へ入ると、倒れているヤランと管理者を見つけた。

 

「おい、しっかりしろ!いったい何があった?」

「だ、旦那様……に、逃げてください……賊が……」

「賊だと!?」

 

 こんな真っ昼間に賊が来るとは、よほどの自信なのだろう。

護衛はヤラン達の傷を手当てをしながら、ノア伯爵の安全を確保する為に行動する。

 

「なんて事だ……旦那様、ここは危険です。馬車へお戻りください」

 

 護衛達の言葉にノア伯爵は頷き馬車へと戻る。

しかし、流星が戻らない事に気づいたノア伯爵は彼に呼びかける。

 

「勇者様、早くこちらへ!」

「俺は残って賊と戦います」

「しかし……」

「大丈夫です。いざとなれば逃げますよ」

「……わかりました。お気をつけて」

 

 ノア伯爵が馬車に乗るのを確認すると、流星はネモの鎧を装着した。そして、護衛達に声をかける。

 

「俺が賊を引きつけます。その間に皆さんはノア伯爵をお願いします」

「……わかった。無理はするな」

 

 護衛達はノア伯爵を守る為に行動を開始する。それを見送り、流星は資料館への向かった。

 

「アリス、キミはどう思う?」

「まだわからない……でも、魔王軍が関わっいるのはわかる」

 

 思い出すのは、この前の森での出来事。ドリュアスは言っていた。2人組に鎖で封印されたと。

 もし、その2人組がこの街に現れ、何か活動しているのなら狙いは何か?

 

「まさか、勇者の装備?」

 

 自分を倒した勇者の装備が残っているのなら、壊すか目の届く範囲に置いておくはずだ。少なくとも流星が同じ立場ならそうする。

 

「わからないけど、可能性はあると思う」

 

 アリスの言葉に流星は頷き、ライフルと新調した盾を構えた。

 

 

 資料館に侵入した賊は、警備用の魔法生物ストーンズサを倒し、サイコゴーレムの頭部が飾られる場所へ到達した。

 

「これが目的の物か。よし、運び出すぞ」

「隊長、本当にこんな事をするのですか?」

「そうだ。それが命令だからな」

「……我々は悔しいです。隊長の方が実力があるのに、なんであんな女の命令に……」

「あの方は、尊き血を持つ方。我々、庶民とは違うのだ」

 

 隊長と呼ばれた男は、そう言いながらサイコゴーレムの頭部へカーゴの付与された袋を被せて詰め込む。そして他の男達に指示を飛ばすと、それを運ばせる。

その時、部下から報告に来た。

 

「この領土の領主と思われる者が表に来ましたが、男を1人残して去っていきました。なんでもその者の事を勇者と言っていました」

「そうか、ご苦労。お前達も早くここから出るんだ」

「いえ、自分も共に戦います!」

「申し出は嬉しいが、相手が本当に勇者なら、今のお前達では歯が立たん。それよりも、頭とヒャクシキの鎧を持って離脱しろ」

 

 隊長に言われ、男達は急いでサイコゴーレムの頭部とヒャクシキの鎧を運び出す準備を始める。

 

「さて、ラ・ムール国の呼んだ勇者。その実力、見せてもらうぞ」

 

 隊長はそう呟くと、部下達と共に部屋を出て行った。

 

 

 その頃、流星は賊の目的が勇者の装備だと思っているので、サイコゴーレムの頭部がある部屋とは別の場所へ向かっていた。

 幸いな事に資料館に一般人は居なかった。これは、ノア伯爵が来る知らせを受けた資料館側の配慮であった。そのおかげで、賊の襲撃に遭わなかったのだ。

しかし、問題もあった。

 

「さて、倉庫はどこかな?」

 

 肝心の倉庫の場所を聞かなかったのだ。

 

「先生、アレ」

 

 アリスの指さす方をみれば、石像のような物が壊されていた。

アリスによると、これはストーンズサ。魔法生物の1種で、その固い表皮のため警備用として置かれているそうだ。

 

「この残骸を辿れば倉庫の場所がわかるかもしれない」

「ありがとな、アリス。慎重に、でも急いで行こう」

「うん」

 

 流星とアリスは、ストーンズサの残骸を辿っていく。しかし、辿り着いたのは展示室。

そしてそこには、サイコゴーレムの頭部へ袋を被せる男とそれを受け取る者達がいた。

 

(あれが賊か……でも、なんでサイコゴーレムの頭なんか運んでるんだ?)

(わからない。もしかしたら目的が違うのかもしれない)

(とりあえず、先制攻撃だ)

 

 流星はライフルに魔法力を込めると、指示を出している男へ発射した。

しかし、男は素早く抜刀し魔法の矢を切り払った。

 

「ちっ、見つかったか……ここは俺が時間を稼ぐ。お前達は早く行け!」

「わかりました。隊長もお気をつけて」

 

 男達はサイコゴーレムの頭部とヒャクシキの鎧を抱え、走り去って行った。

 

「逃がすか!」

 

 流星はライフルを連射するが、男は逃げていく者達に当たりそうな物だけを的確に切り払って妨害する。

 

「召喚された勇者よ、お前の相手は俺だ」

(そこまでバレてるのか……)

 

 流星は慎重に盾を構えながら、相手の出方を伺う。

賊の男は剣を構えると、一気に距離を詰めて来た。流星は盾でそれを受け流してカウンターを狙うが、相手はそれを読んでいたようで後ろに飛んで躱された。そして、今度は逆に切り込んできたので盾で防ぐ。

 

「どうした?勇者とはその程度なのか」

(魔法の鎧も無しに、なかなかやる……)

 

 何度か説明しているが、魔法の鎧には身体能力向上等の効果がある。これをどうにかしようとするなら、複数人で囲んで叩くか、魔法の鎧を纏って戦うかだ。

 それなのに、目の前にいる男は鎧も無しに単独でこちらと渡り合っているのだ。

 

「来ないならば、こちらから行くぞ!」

 

 突撃してくる男へ向かって流星はライフルで魔法の矢を連射する。しかし、男はそれを剣で切り裂き、距離を詰めそのまま横薙ぎに一閃。その攻撃を流星はギリギリで受けた。

 

「ほう、よく止めたな」

「こいつ!」

 

 男を蹴り飛ばすつもりで足を出したが、難なく躱された。

 

「踏み込みが足りんわ!」

 

 そして、逆に蹴り飛ばさる。

 

「ぐっ!?」

 

 流星は地面に叩き付けられ、そのまま転がる。だがすぐに立ち上がり、体勢を整えようとした時、男は既に目の前にまで迫っていた。

 

(ヤバイ!)

 

 流星は咄嗟に盾で防ぐが、間に合わず男に殴られた。さらに男の拳から衝撃波が発生し、ネモの鎧を軋ませながらその衝撃で吹き飛ばされた。

流星は壁に激突する前に、魔法力噴射で無理やり軌道を変えると男から大きく距離をとった。

 

「なんて強さだ。それにあの攻撃は何だ?」

「オーラを衝撃波として放ったんだと思う」

「という事は、相手は技属性なのか……」

 

 アリスからの説明に流星は冷や汗を感じる。

 基本的に技には魔法とあるように、三すくみでは魔法属性の方が有利だ。しかし、目の前の男は三すくみの有利不利を感じさせない強さを誇る。

 

「アリス、頼めるか?」

「わかった」

 

 流星はネモの鎧をしまうと、すぐにアリスの鎧を出し装着する。

 

「ほう。その特徴的なV字の兜飾り、まさしく勇者の鎧。ならば、こちらも本気を出さぬのは、無作法というもの」

 

 男は腕輪をかざすと、両肩には牛の角のように反り返ったスパイク、上半身を隠せる程の盾を左手に持ち、兜にはブレードのような飾りがついた青い鎧を纏った。

 

「先生、あれは戦士の鎧。あの鎧は、私が戦っていた時代の物。だけど、旧式と思わないで」

 

 戦士の鎧。魔王の力によって作られたグフと呼ばれる魔法の鎧。熟練した兵士が身に着ければ、並の騎士では止める事すらできないと言われた。

 現在の鎧と性能を比べれば低いと言わざるおえないが、この男が使うのならば驚異的なはずだ。

 

「全力でいかせてもらう!」

 

 男は剣を横に薙ぎ払うと、炎の波が襲いかかって来た。そして炎はどんどん巨大化し、まるで津波の様に迫ってくる。

 

(熱っ!?)

 

 ブリティス剣術、ヘルファイアー。須佐も同じ技を使っていたが、それとは比べ物にもならない程のオーラ密度である。

アリスの鎧のお陰で熱いと思う程度にしか感じないが、それでも焦りを覚える温度だ。もしこれがネモの鎧であったなら、火傷どころでは済まないだろう。

 これを打ち破ろうと、大腿部に設置されたガンを連射するが、オーラの密度が高いのか途中で止まってしまう。

 

「なんてオーラだ」

「先生、スマートガンを使って」

 

 アリスからスマートガンを受け取ると、魔法力をチャージして発射。炎の波を突き抜け男へと迫る。

 

「っ!?だが!」

 

 男がグフの鎧の魔法力を剣へ供給すると、灼熱化し燃え上がる。魔法力を刃に変える剣、ビームサーベル。これをより簡単に作れないかと鍛冶屋が生み出した魔法の武器、ヒートサーベルだ!

 これを男は構えると、流星の放った魔法の弾丸へ振り下ろした。すると、魔法の弾丸はヒートサーベルによって切り裂かれた。

 

「魔法を斬るか……」

「剣の技量も相当高い」

 

 流星はスマートガンを構えると、アリスに作戦を相談する。

 

「あいつは技属性で、対しこっちは魔法だ。相性ではこっちが有利だが、技量は上でさらに鎧で強化されているから、ほぼ互角と考えていいだろう。何かある?」

「何も無い。でも、資料館の倉庫に彼の残した装備がある」

「わかるのか?」

「わかる。それを私が取って来る。でも、その間はサポートができない」

 

 心配そうに見えてくるアリスに、流星は優しく微笑んだ。

 

「大丈夫、1人でも何とかなるさ」

「わかった。気を付けて」

 

 アリスが倉庫へ向かったのを確認すると、流星は男に向かって駆け出す。そして、バーニアで一気に距離をつめると、膝部のニークラッシャーを叩き込むが、男は盾を突き出しそれを受け流した。

 そして、流星へ向かって剣を突き立てようとするが、バーニアを使って回避し宙へ飛ぶとそのままスマートガンを連射する。

しかし、男の巧みな剣技により切り裂かれる。そして男が右腕をこちらへ向けると、鞭が伸びてきた。

 

「しまっ!」

 

 バーニアで逃げようとするが、その前に足を掴まれ、展示物へ向かって投じられてしまった。

 

「がはっ!」

 

 流星は背中から叩き付けられるが、その痛みに耐えながら壊れた展示物の中から立ち上がり、男へスマートガンと大腿部ガンをを連射する。

しかし、男は盾にオーラを込めて斜めに構え魔法弾を弾きながら近づいて来る。そして、一気に距離を詰められるとヒートサーベルで切りかかられるが、それを何とか回避した。

 

(あの盾は厄介だ)

 

 そう考えた流星は、左膝部サーベルホルダーからビームサーベルを取り出す。

しかし、まだ魔法力は供給しない。チャンスを待つのだ。

 

(この勇者、なかなかやるな……)

 

 余裕があるように見えるが、男の方にもそれほど余裕があるわけではなかった。

時間をかければ街の衛兵隊が駆けつけて来るだろうし、ノア伯爵が手勢を連れてくるかもしれない。

 

「だが!負けるわけにはいかん!」

 

男は叫ぶと、流星へ斬りかかる。その剣は速く、そして重い。

 

(まだだ……)

 

 男の剣を受けながらも流星はビームサーベルへ魔法力を供給するタイミングを感じ取る。

そして、その時がきた。男が盾を構えて体当たりしてきた。

 

「ここだ!」

 

 ビームサーベルへ魔法力を送ると、すぐに魔法力の刃が形成。盾めがけて斬りかかるが、男は恐れる事なくバーニアを使って前進し、盾をビームサーベルの下へ入れ流星の腕ごと払いのけて攻撃を防ぎ、ショルダースパイクで体当たりした。

 

「良い動きだった。しかし、わかっていれば防ぎようはある。とどめだ!」

 

 男はヒートサーベルを倒れる流星に突き立てようとした時、咄嗟に回避行動をとった。

 そして、男の感は当たっていた。先ほどまで居た場所を高速で何かが突き抜けていったのだ。

 

「何だ!増援か!?」

 

 突き抜けた何かは戻ってくると、流星の側に落ちる。

 

「先生、お待たせ。持ってきたよ」

 

 アリスが倉庫から戻ってきたのだ。かつて勇者が魔王ジオングと戦った際に身に着けていた装備の1つ、驚異的な速度を生み出す箱、ブースターユニットを持って。

 

「これを背中に付けて」

 

 流星はブースターユニットを受け取ると、アリスの手伝いを受け背中へ取り付ける。そしてすぐに起動させた。すると、凄まじい速度で加速し男へ向かって突撃した。

 

「何だ!この速度は!」

 

 男はヒートサーベルで応戦しようとするが、流星の速度に追いつけず一方的に体当たりされる。

 

「ならば!」

 

 男は盾を投げ捨てヒートサーベルを両手で構え、迎え討つ姿勢をとる。

 

「来いっ!!」

 

 だが、流星の方はいっぱいいっぱいであった。

 

「くお〜〜っ!?な、なんて、加速力だっ!!」

 

 アリスのサポートがあるのに、そのスピードを制御できていなかった。

 

「先生、魔法力を供給しすぎ。もっと抑えて」

「こ、こうか?」

 

 アリスの言葉に冷静さを取り戻し、魔法力を絞ると一気に減速し、そして男の少し前で停止した。

 

「な、なんだと!」

 

 男は驚きの声を出す。流星に向かって袈裟斬りを行うが、寸前の所で停止し回避されたのだ。

その隙をのがさないよう、再び加速して左膝部ニークラッシャーを叩き込み、男を吹き飛ばした。

 

「やってくれるじゃないか」

 

 男が剣を支えに立ち上がると、外が騒がしくなり出した。どうやら時間切れらしい事をさとった男は、右腕を天窓へ向け鞭を伸ばすと窓枠に引っ掛けそのまま上昇する。

 

「俺は、魔王軍騎馬団の戦士ジ・ンバ!勇者よ、次に会う時は覚悟するがいい!」

 

 男、ジ・ンバはそのまま資料館の天窓を飛び越えると姿を消してしまった。

 

「逃がしたか……」

 

 流星は舌打ちをするとアリスに向き直る。

 

「ありがとうな、アリス」

「間に合って良かった。……でも、あの実力で戦士だったなんて」

 

 魔王軍には実力に合わせて称号を与える習わしがある。その中で戦士は1番下の称号だ。

 ジ・ンバ程の実力なら騎士以上の称号を持っていてもおかしくはなかった。

 

「先生、魔王軍は私が考えていたより強大なのかもしれない」

 

 アリスの言葉に流星は頷き、気を引き締めるのだった。

そうして資料館を出て街へと戻りノア伯爵と合流すると、資料館で何があったのかを話したのだった。




 勇者が召喚される前から、数多くのスパイが潜入していた。黒い夢魔とあだ名されるモンスター・ドムリリスの攻防はただ強烈であったのだ。
 そして夢魔達は笑う。「勇者無能なり」と。

 次回、スパイ潜入!ドデカプル・ドムリリス
お楽しみに!
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