異世界ガンダム   作:꒰ঌ流✧星໒꒱

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「先生、目を覚まして!」

 アリスが流星に呼びかけるが、起きる気配が無い。完全にドムリリス達の術中にはまってしまっている。

「勇者は起きたかい?」

 1人のドムリリスがニヤニヤとしながら近づいてくる。

「こいつ!」

 アリスは魔法力を振り絞って魔法の矢を飛ばす。しかし、その攻撃はドムリリスの目の前で反射されてしまう。

「私達にはね。魔法は効かないんだよ」

 ドムリリスの言葉にアリスは絶望するしかなかった。そしてドムリリスがアリスへ近づく。

(先生……早く目を覚まして)


スパイ潜入!ドデカプル・ドムリリス

 事件の後、流星はラ・ムール国へと戻り、ノア領で何があったのかをフムー大臣とシャマルに報告した。

 

「まさか、王都近くの領地でそのような事があったとは……シャマル殿、この事をツヴァイ殿とトロン殿へ報告してくれ。王都周辺の警備体制を見直す」

「承知いたしました」

「セイゴウ様、ノア伯爵はなんと?」

「ノア伯爵は、部隊を編成しジ・ンバ達の捜索をするそうです」

「そうか。そちらは伯爵に任せるとしよう」

 

 そう言ってフムー大臣とシャマルは今後の対策を話し合う為に部屋を出た。

そして2人が十分離れたのを確認してから、流星はアリスへ話しかける。

 

「さて、次の勇者の装備だけど、あらためて確認しようか」

「わかった」

 

 流星達がこの後見つけないといけない物は以下の物だ。

 

 

・魔法力を強力な矢に変える筒、背部・カノン

・魔法力を貯める事のできる特殊な装備、魔法力増槽(プロペラントタンク)

・鎧へ魔法力を供給する魔法動力珠(ジェネレーター)

・敵の魔法を無力化するアイフィールドのお守り

・オールレンジ攻撃を可能にする魔具ファンネル

 

 

 この内、背部・カノンはノア領復興の為にどこかに売られてしまったので、何処にあるのか完全に行方知れず。

他の装備も勇者が隠した場所に今も安置されているのか不明だ。

 

「この前見つけたブースターユニットも、扱うのに慣れないとだし、慣熟訓練をしながら情報を集めよう」

「わかった」

 

 流星の言葉にアリスは頷く。

 

 

 勇者の装備を見つける為、ノア領から戻って1週間が過ぎたある日の夜、流星とアリスは人気の無い場所でブースターユニットを使っての慣熟訓練をしていた。

 

「ぐぉおあぁーーっ!」

 

 アリスの鎧を纏った流星は絶叫と共に地面に転がる。ブースターユニットの操作を誤ったのだ。

 

「先生、大丈夫?」

「……なんとか」

 

 流星は起き上がると、回復魔法のミディを唱え傷を癒した。

ラビア系が広範囲を癒す魔法なら、ミディ系は単体を癒す魔法だ。これもブースターユニットの操作ミスによって発生した傷を治すのと、アリスの指導で覚えたものだった。

 ちなみに、回復魔法を使えるか使えないかが、僧侶と魔道士を分ける。そのどちらも使える者を人は法術士と呼ぶ。

 

「今のミスは、先生が集中して無いのが原因」

「……はい」

 

 傷の治療をしながら、アリスの言葉に流星は肩を落とす。だが、それも無理からぬ事。

ブースターユニットが出す速度は、魔法力噴射(バーニア)等よりも桁外れの性能を持っている。1週間程度で使いこなせる物ではない。

 

「先生は1人で戦う必要は無い。私がいる。もう少し頼って欲しい」

「そうだな……」

 

 アリスがそう言うと、流星は彼女の頭に手を乗せ優しく撫でた。

 

「先生、くすぐったい」

 

 アリスがそう言うと、流星は手を離した。そして2人は笑い合うのだった。

 

「夜も遅いし、そろそろ戻ろう」

 

 流星の言葉にアリスもうなずき、割り当てられた部屋へと戻ると、そこには懐かしい顔が居た。

 

「あっ、勇者様。お戻りが遅かったですが、何かありましたか?」

 

 ご機嫌取りで来た侍女だ。彼女と会うのはマゼラアント討伐以来なので、2ヶ月振りだ。

 

「いや、特には」

「そうですか。……あのう、勇者様。またお相手をして頂けませんか?」

 

 そう言って侍女は己の服へ手をかける。

 

「しょうがないな……1回だけだぞ」

「ありがとうございます……勇者様」

 

 そして流星はアリスへ視線を送ると、彼女はドアの隙間から部屋を出ていく。

 

「勇者様、彼女は?」

「えっ?……ああ、彼女は図書館で仕事をしてる人だよ。キミがしたいって言うから、少し待ってもらったんだ」

「まあ、罪作りな方」

 

 そう言いながら侍女は流星の首へ腕を巻きつけ、口付をしてきた。そして唇を離すと服を脱ぎ始めた。

 

(アリスが見える人が居るとは思わなかったな。前に言ってた……なんなら者)

 

 正確には波長の合う者である。そんな事を考えながら、流星は侍女との夜を楽しんだ。

 

 

 翌朝、流星は目を覚ますと隣へ視線を向けた。そこには誰もおらず、1人で寝ていた事がわかる。

 

(やっぱり居ないか……)

 

 昨日、あんな事があったのだ。当たり前である。

手早く着替えを済ませると部屋を出て朝の空気を吸いに中庭へと出ると、そこである人物が訓練をしていた。

 すると、その人物はこちらに気づき、訓練を中断した。

 

「あっ先生。早いんですね」

 

 立華 花梨。一緒に転移してきた生徒の1人だ。

マゼラアント討伐の時、幼馴染みの岩城 裕太が深穴へ落ちてかなり取り乱していたが、現在は落ち着きを取り戻しているようだ。

 

「やあ、立華さん。訓練かい?」

「はい、強くなろうと思って」

「そっか、頑張れよ」

「ありがとうございます……ここは、裕太が戻ってくる場所ですから、しっかり守らないと!」

 

 訂正。あまりよくないようだ。流星は曖昧にうなずきながら、食堂へ向かった。

 そして朝食後、流星が部屋へ戻るとアリスも戻ってきていた。彼女はどこからか持ってきた本を読み、何かをメモしていた。

 

「アリス、それは?」

「ん……ああ。昨日彼の装備を見つけて、それについて書かれた物があったから読んでた」

 

 流星が尋ねると、彼女はそう答えながらメモした物を見せてきた。そこには、こう書かれていた。

 

・筒状の物体で、魔法力を強力な魔法の矢に変える

・しかし、大量の魔法力を消費するため注意する事。

・また、使用者の力量と魔法力量によって変わるので、その事にも留意するべし。

 

「なるほどな……って、背部・カノン見つけたの!どこで!?」

「お城の研究室」

「そうか。なら、フムー大臣に報告して見せてもらうか」

 

 流星はそう言うと、メモをアリスから受け取りポケットへしまい部屋を出る。

そんな流星の様子を見ながらアリスは1人考える。

 

(……私は、いつも通りに接する事ができただろうか?)

 

 昨日の夜、流星の首へ腕を巻きつけ、口付をしていた侍女の事を……

 男と女のすることであり、アリスには関係ない筈である。

それなのに、何か気持ちが変な感じがする。

 

「アリス、どうした?今日は部屋で待ってるのか?」

アリスが来ないので戻ってきた流星に聞かれた。

「なんでもない。今行く」

 

 アリスはそう答えるのだった。

 

------------

 

 フムー大臣にこの報告すると、すぐに見せてもらえる事になった。

 

「まさか、この城にそのような物があるとは……良く気がつかれましたね」

「前にネモの鎧の寸法測定をした時に、ちょっと見かけまして、ノア伯爵領で見た物と同じかもしれないと思ったんです」

「なるほど。それで確認がしたいと……わかりました。では、ご案内します」

 

 そう言ってフムー大臣は流星とアリスを研究室へ連れて行った。

 

「これはフムー大臣に勇者様!お越し頂きありがとうございます!どうぞ、こちらへ」

 

 迎えてくれたのは、研究員の1人。彼は流星達を研究室へ招き入れる。

ここでは、様々な魔法やその品に鎧等の研究が日々行われている。

 

「本日はどのようなご要件でしょうか?」

「実は、この研究室に古の勇者が使ったとされる物があるそうだ。本日はそれが本物かどうかを確認しに来た」

「そのような物がこの研究室に?」

 

 フムー大臣から聞かされた事に研究員が考え込んでいると、別の研究員が声を上げた。

 

「それ、見覚えがあります」

「本当か?」

「はい。確か魔道士トレノフの残した本にそのような事が書いてあった筈……あれ?本、何処にやったかな……」

 

 その本には心当たりがある。アリスが持ってきた本だ。

 

(マズっ。アリス、本を適当に戻してきて)

(わかった)

 

 姿が見えない事を利用し、アリスは借りてきた本を研究員が探している場所から少し離れた所へと戻す。

 

「えっと……あ!ありました。これです」

 

 研究員が本を見つけ戻ってくると、本を広げる。

流星はアリスの書いたメモである程度は知っていたが、あらためて内容を確認するとトレノフという魔道士はとても凄い人物であった。

 本来、背部・カノンのような魔法の鎧と一体型の装備は、鎧とその装着者からの魔法力供給で発射する物だ。

 しかし、彼は背部・カノンを解析し、これを手持ちでも使えるようにできないのかと研究をした。

 残念ながら彼が存命中には完成しなかったが、他の魔道士達が彼の意思を継ぎ、後の時代に新しい魔法の杖『ガン』を生み出すきっかけを作った。

 

「凄い人だったんだな」

「はい。彼が居なければ、魔道士は今程居なかった筈です。それで、物の方ですが……」

 

 研究員に言われて流星達は研究室の奥の台座の上に安置されている物を見た。

 

「これが、勇者様の仰っていた物ですか?」

 

 フムー大臣が指差したのは、確かに背部・カノンだった。だが……

 

「……分解されて展示されてますね」

 

 構造を調べる為に一部は分解され、展示された他の物もずいぶんと汚れていて、すぐには使えそうになかった。

 

「これは……手入れをしないと駄目ですね」

 

 フムー大臣はそう言うと、研究員達にメンテナンスの指示をするのだった。そして、その指示が終わると流星達の方へ向き直る。

 

「では、私はこれで」

「ありがとうございました。フムー大臣」

 

 流星は礼を言うと、研究員達は作業へと戻っていった。そして、フムー大臣も自分の仕事へ戻って行ったので、2人も部屋へ戻る事にしたのだった。

 2人は部屋に戻るとベッドに座る。するとアリスが口を開いた。

 

「先生……あの侍女の事だけど……」

「ん?」

「……なんでもない」

 

 そう言うとアリスは黙ってしまった。

 

(どうしたんだろう?何か悩みでもあるのかな?)

 

 そんな事を考えていると、ある事を思い出す。

 

「侍女で思い出した。アリス、ここへよく来る侍女は、キミが見えるらしい」

「え?」

「昨日来た時にそう言ってたけど。何だっけ前に言ってた……」

「……波長の合う者」

「そう、それ。しかし、他にも見える人居たんだなー」

「それについて前にも話したけど、私が見える人が居るなら、私はその存在を感じる事ができる。でも、彼女からは何も感じない」

 

 精霊を見る事ができるのは、選ばれた者か、精霊と波長の合う者だけだ。

そして、見えるという事は、それだけ特別であり、声も聞こえる者なら神殿や鍛冶屋等、引く手あまた。よほどの酔狂な者でもなければ断らない。

 魔法道具で見ているなら、何かしらの痕跡が残る筈だ。

そして、侍女はそのどちらでも無い……

 さらにいえば、『特別な魔法の鎧』アリスの鎧の事を知っているのもおかしい。

アリスの鎧は多くの時が経つ中で、他の勇者達の活躍に上書きされて曖昧になり、忘れられていた。

 

「じゃあ、彼女はいったい?」

「わからない……」

 

 そう言うアリスの顔は、いつもの無表情とは違いどこか考え込んでいるようだ。

しかし、彼女は何を悩んでいるのか話そうとしない。なので、流星も気にしない事にした。

 翌日。流星は侍女へ探りをいれる事にした。しかし……

 

「アリスどうだった?」

「見つからなかった」

「なんだかなぁ」

 

 いつぞやの時と同じように、目的の侍女を見つける事ができなかった。その日はたまたまだろうと思ったが、それからも侍女は見つからないまま3日が過ぎていく。

 その日は朝から雨が降っており、流星達は部屋の中で魔法書を読んで古代魔法の訓練をして過ごしていた。

すると、ドアをノックする音がし、兵士の声が聞こえた。

 

「勇者様、いらっしゃいますか?」

「はい。何かありましたか?」

 流星がそう答えドアを開けると兵士は言葉を続ける。

 

「フムー大臣から演習場に来るようにとの伝言を預かっております」

「演習場ですか?わかりました。すぐ行きます」

 

 流星がそう答えると兵士は敬礼し、去って行った。そして、流星達はフムー大臣の待つ演習場へと出掛けるのだった。

 

「セイゴウ様、よく来てくれました」

「何かあったんですか?」

 

 フムー大臣に聞かれると流星は用件を聞く。

すると、彼は嬉しそうに口を開いた。

 

「先日の背部・カノンの整備が整いまして、セイゴウ様に試射をお願いしたいのです」

「整備終わったんですか。早いですね」

「長年放置されておりましたが、状態が良く整備が短く済みました。物は、すでにネモの鎧へ取り付け済みです」

 

 フムー大臣の視線の先には、背部・カノンが取り付けられたネモの鎧の周りで研究員達が最終調整をしていた。

 

「そうですか……わかりました。やらせてください」

 

 流星はそう言うと研究員達の所へ行き、ネモの鎧を身に付けた流星はアリスと念話しながら背部・カノンの感想を語る。

 

(すごいな……キミの鎧以外にも装備できるなんて。それに、こうして身につけるだけで力強さが伝わってくるよ)

(彼が前に、ユニバーサル規格って言っていた。でも、それが現代にも通用する物とは思わなかった)

「準備ができました。いかがなさいますか?」

 

 流星は念話を止め、研究員に向き直る。

 

「すぐにでも大丈夫ですよ」

 

 流星がそう言うと、フムー大臣は研究員達に指示を出すと、研究員は流星に動作確認をするよう言った。

 

「動作確認を行います。指示通りお願いします」

「わかりました」

 

 背部・カノンの可動域は広く、正面と背後そして左右にも対応していた。

かつてアリスの鎧を身に付けていた勇者はほとんど1人で戦っていたと言っていた。もしかしたら、囲まれた時に対応できるよう可動域を広くしているのかもしれない。

 そんな事を考えていると、動作確認が終わり次の項目に移る。

 

「それでは、的を用意しますので少しお待ちください」

 

そう言って研究員達は準備を始めた。

 

「それでは勇者様、これよりテスト射撃を行います」

「了解です」

 

 流星は的を設置し始めた研究員達の邪魔にならないよう少し離れると、アリスに話しかける。

 

(アリス、調子はどうだい?)

(撃ってみないとわからない)

(そうか)

(先生、撃つ時はできるだけ魔法力を絞って撃って)

(?わかった)

 

 そして、準備が整い、研究員が開始の合図をする。

 

「では、撃ちます」

 

 その声と共に背部・カノンへ魔法力を供給すると、筒から光が放たれる。それは、辺りを照らしながら的を貫通し壁へと着弾し轟音が鳴り響く。

 

「うわ……」

(ちょっと先生、力み過ぎ)

(ネモの鎧の魔法力も使ったが、1/4でこれか……)

 

 そんな試射の様子を見ていたフムー大臣は感嘆の声を上げる。

 

「凄い!これは素晴らしい!」

 

 どうやら満足できる結果だったようで、研究員達も喜んでいた。だが、1人だけ違う反応をしている者がいた。それはアリスだ。

 

(でも、魔法力のロスが多い……)

「え?」

「どうかしましたか?勇者様?」

「いや、凄まじい威力だったので、少し驚いてしまいました」

 

 流星はアリスの声を誤魔化す。そして、研究員達は壊れた的を回収しながら今後の事をフムー大臣と話す。

 

「これだけの威力があれば、スサ様の助けになるでしょう」

「そうですね。スサ様の使われる鎧には、拡張する為のポイントがありました。もしかしたら、これがそうなのかもしれません」

「よし。次の補給物資に、この背部・カノンも送るとしよう」

 

 どうやらテストも終わったようなので、流星は近くの研究員に話しかける。

 

「あの、これでテストは終了ですか?」

「はい、これで終了です。ありがとうございました」

「いえ、こちらこそ」

 

 こうして、背部・カノンの試射は終わったのだった。しかし……

 

(先生。あの背部・カノン、何かおかしい)

(さっきも言ってたね。魔法力のロスが多いって)

(うん)

(ここじゃなんだ。いったん、部屋に戻ろう)

 

 そのまま部屋へ戻ると、流星とアリスは先ほどの事について考えていた。

 

「確かに威力は十分あった。でも、供給した魔法力を考えれば、対魔法防御の施された壁でも傷を残せる」

「そんなに威力あったのか……」

 

 あの時、アリスが魔法力を絞るよう言ったのも納得である。

しかし、そうなると、研究員達が気づいていないのがおかしい。整備している時にわからなかったのだろうか?

 

「アリス。キミはこの事にどう思う?」

「彼らは優秀だ。それがわからな……いや、彼らじゃない?」

「誰かが故意にやった?」

 

 いくら故意にやったとしても、研究員達が気づかない筈が無い。しかし、彼らはそれに気づいているようには見えなかった。

 つまり、調整を終えた後に変更された事になる。

そして、アリスにはもう一つ気になる事があった。

 

「あの演習場に知らない侍女が居た?」

「うん。魔法を使って隠れてるなんてありない」

「最近来ない俺付きの侍女といい、何かが起きてる。この前のジ・ンバ達が起こした事件もある。すぐ報告した方がよさそうだな」

 

 流星はフムー大臣へ事情を話すため、城へ戻る事にした。

 

 

 演習場に隠れ様子を見ていた侍女フュンフは、この結果を報告する為に自分達のリーダーであるラインの元へ訪れた。

 

「報告します。ラ・ムール国の研究室で調整されていた新装備ですが……」

「報告はいいよ」

「しかし……」

「くどい!お前のせいで私達の存在が露見したんだよ!」

「そんなまさか!隠蔽は完璧でした。現に演習場に居た誰もわたしに気づく事は……」

 

 フュンフの隠蔽は確かに完璧であった。しかし、そんな隠蔽を見破った者が居た。

 

「勇者付きの精霊が居なければね……勇者を見張らせいたリーファから報告がきた。勇者が私達の事を知らせに行くとね」

 

 ラインはそう言うと、フュンフに向き直り話を続ける。

 

「フュンフ。他の仲間に知らせな、この城からケツを捲るってね」

「了解しました」

「それと、新装備は奪取するよ。準備しな」

 

 そう言ってラインはモンスターの描かれたカードを手に立ち上がると、フュンフを連れ部屋から出ていった。

 

 

 2人は城まで戻って来ると、そのまま中へ入る。そして受付に居る男性へ話しかける。

 

「これは勇者様。どうかされましたか?」

「すみません。至急でフムー大臣へ報告したい事があります。取り次いでもらえますか?」

「それは構いませんが、フムー大臣は只今会議中です」

 

 どうやらタイミングが悪かったようだ。

 

「そうですか……では会議が終わるまで待たせてもらっても良いでしょうか?急ぎなので」

「わかりました。少々お待ちください」

 

 2人は受付の男性に待つよう言われ待っていると、使用人達が兵士に囲まれながら慌てて移動してきた。

それを不審に思った流星は、彼らを呼び止める。

 

「何かあったんですか?」

「!これは勇者様、ちょうど良い所へ。現在、城の中から突如モンスターが出現しまして、非戦闘員の避難誘導中です」

「モンスター?一体どこから?」

「わかりません。しかし、このままでは城が危険です!」

 

 兵士は流星にそう伝える中、そのモンスターが襲いかかる。

 

「ワーカ!ワーカ!」

 

 雄たけびを上げつつ、鋭い爪を振り下ろしてくるモンスターの攻撃を回避し距離をとる。兵士も使用人達を守る為にモンスターへ応戦する。

 

「なんだコイツらは!?」

「ワーカプールです勇者様!」

 

 ワーカプール。丸い体をした1つ目の鋭い爪と牙を持ったモンスター。

もちろん城に居るはずの無い存在だ。何者かが手引きしなければ。

 

「どうやら、彼女は黒らしいな……」 

 

 自分付きの侍女が最近姿を見せないのと、演習場に居た侍女。これらが関係している可能性は高い。

 

「ここは我々が食い止めます!早く避難を!」

 

 1人の兵士は使用人達にそう言うと、ワーカプールへ斬りかかる。しかし、その攻撃はモンスターの皮膚にはじかれると、逆に爪で反撃される。

 

「くっ!」

 

 兵士達は苦戦を強いられる中、流星は魔法力を高めていく。そして、魔法力が最大まで高まった時、それを放った。

 

「光よ貫け、ムービルフィラ!」

 

 流星の手元からやや細い青色の矢が飛翔し、ワーカプールへ突き刺さる。

ルフィラより威力のある魔法の矢、ムービルフィラだ。

 命中した矢はワーカプールに突き刺さると、そのままワーカプールは地面へ倒れ、光の粒子となる。

 

「た、助かりました」

「避難誘導を続けてください。モンスターは俺が相手をします」

「わかりました。勇者様もお気をつけて」

 

 兵士達はそう言うと、使用人や非戦闘員達の避難誘導を続けた。

流星は兵士達とすれ違うようにワーカプールへ近付き、今度は魔法力の消費が少ない魔法を放つ。

 

「雷よ、ファン!」

 

 ファン。相手の周囲360°、どこからでも雷を放つ事ができる雷系の魔法。しかし、雷系の初級であるが、習得難易度は中級以上と、扱いの難しい魔法でもある。

 流星も一応扱えるが、頭上から落とすか手の平から飛ばすしかできないので、完全に扱えているとはいえない。

しかし、ワーカプールの隙さえできれば良いのだ。

 手の平から迸る雷はワーカプールに回避され、そのまま反撃に向かってきた。

だが、それは予測済みだ。すぐに剣を抜くとワーカプールの口へ突き刺さす。しばらくワーカプールは藻掻いたがすぐに動かなくなった。

 

「よし」

 

 魔法力を回復する為パックを服用していると、偵察に行っていたアリスが戻ってきた。

 

「どうだった?」

「モンスターは目眩まし。研究室が襲われてる。護衛の騎士も居るけど、長くは持たない」

「狙いは、背部・カノンか……」

 

 狙うにしても、行動があまりにも雑すぎる。バレないで背部・カノンの性能を変化させられるのだから、周りが静かになった時に盗めば良い筈。なぜ流星が報告へ行こうとしたタイミングで?

 

「……見張られていたか」

 

 おそらくだが、スパイを゙している侍女が見張っていたのだろう。自分達の存在が露見した為に大胆な行動に出たのだ。

 

「アリス、急ごう」

「わかった」

 

 2人は急いで研究室へ向かうのだった。

 

------------

 

 研究室で研究員や護衛の騎士達を倒した侍女達。その正体は、ドムリリスであった。

むちむち或いはぽっちゃり系の娘が多い夢魔の1種で、普段は人に化け、魔王軍のスパイとして諜報活動をする恐ろしいモンスターだ。

 紫色に黒が入ったレオタードを纏ったドムリリスのボス格であるラインは、部下のナンシーと共にいまだ抵抗を続ける騎士達と戦闘しながら、他の部下達へ命令を出す。

 

「バーバラ、誰も通すんじゃないよ!」

「アイアイサー」

「バニラとノーミーは新装備のロック解除を急ぎな」

「はいはーい」

「好き勝手させるか!」

 

 ジムIIの鎧を纏った騎士がそう言うと、バーニアを使ってドムリリスへ近づていく。

そんな彼の前に立ったのは、太ももがひときわ大きいドムリリス、ナンシーだ。

 

「リーダー達の所へは行かせないよ!」 

 

 左手にしたスパイクシールドを叩きつけ、鎧ごと騎士を穴だらけした。

 

「つ、強い。なんて奴だ……」

「ジムIIの鎧じゃ、足止めもできないのか」

 

 本来であれば、騎士達はネモの鎧が標準装備であった。

しかし、ネモの鎧は異世界から来た勇者達へと配られ、さらに各国の支援へ向かった勇者達の補充用または整備部品となった。

 その為、ネモの鎧は手元に無く、騎士達はジムIIといった量産型の装備で戦っているのだ。

 

「この!」

「はい残念」

 

 騎士が剣を振るうが、ナンシーはそれを軽々と回避しカウンターを決める。

 

「ぐあッ!」

「さっさとおねんねしな」

 

 ドムリリス達は手慣れた様子で騎士達を倒していく。

 

「もうダメだ……おしまいだぁ……」

 

 研究室の隅で震える研究員に他の仲間が声をかける。

 

「大丈夫だ、きっと勇者様達が来てくれる」

「来てくれるといいですねぇ」

 

 そんな彼らの前に来たのはスノー。彼女は他のドムリリスと違いダークグレーに青色の入ったレオタード姿であった。

研究員達へ氷の刃を撃ち出し、彼らを氷漬けにすると、ラインへ報告する。

 

「隊長ぉ。こっちは終わりましたぁ」

「あいよ。さて、残すは新装備だけど」

 

 そう言ってラインがバニラとノーミーの方を見るが、彼女達は強固な魔法の鍵に手間取り封を開ける事ができないでいた。

 

「何やってんだよお前ら。こんな物、オレがぶっ壊してやる!」

 

 業を煮やしたのか、切り込み隊長のルイスがバニラ達へ近づく。

 彼女は手にした大ナタを振りかぶると、頑丈な魔法の鍵を叩き割ろうとすると、鍵の中から小型の丸い球体が出てくる。防犯用のトラップだ。

その球は光を放ちながら浮遊しルイスの周辺で爆発した。

しかし、そんな罠による爆発を気にする事なく大ナタを振り下ろし鍵を無理矢理破壊した。

 

「これでよし」

「よくありません!それは新装備ですよ!壊れたらどうするんですか!貴方は昔からそうやって乱暴で……これで何度目だと思ってるんですか!」

「あー……まあ、それは良いとして。それじゃあ、とっとと新装備とやらをいただこうぜ!」

「まったくもう!」

 

 そんな2人を余所にラインは箱に収められた背部・カノンを取り出した。

そしてカーゴの魔法が付与された腕輪へ入れようとした時だ。

 

「隊長ー、抜かれましたー」

 

 すると、研究室のドアを壊して流星達が現れる。

 

「来たね、勇者」

 

 

 流星とアリスが研究室前に着くと、辺りは血の匂いに包まれ、騎士や兵士達が倒れていた。

 

「これは……酷いな」

 

 そんな中、隠れていたワーカプールの1体が流星達に襲いかかるが、手にした剣で倒し光の粒子へと変える。

 

「さて、研究室はこの先だけど……」

 

 流星が研究室へ行く為の広場を見ると、そこには無数の穴が空き、研究員や兵士達が倒れていた。

 兜のスコープ機能で確認すると研究室の入口付近には大型の多連装ガンで武装した女性が居た。

 

「奥にガトリングガンを構えてるのが居るな……」

 

 壁越しに見ていたのがバレたのか、ガトリングガンがこちらを向くと、激しい音と共に弾幕が張られる。

慌てて頭を引っ込めると、先ほどまでいた場所に穴が開いた。

 

「これは突破するのが大変そうだな。アリス、これをネモの鎧で攻略でき……」

「援護してくれる人が10人居たらできる」

 

 ネモの鎧より劣るとはいえ、しっかり訓練を積んだ騎士達ですら突破できなかったのだ。ここまで色々と戦ってきたが、それでも流星では援護無しに突破できない。

そう、今のままなら。

 

「そうか……できれば、使いたくはなかったんだけどな」

 

 古の勇者ガンダムの鎧であるアリスは確かに強い。しかし、流星はそういう意味での勇者になる気は無いのだ。

死なない程度に生き延びるつもりであったが、それもこれまでのようだ。

 

「仕方ない、腹をくくるか。いくぞアリス」

「わかった」

 

 流星は誰かに見られるのを覚悟でアリスの鎧を纏う。

そして、ブースターユニットへ魔法力を送ると一気に加速した。

 飛び出してきた流星にガトリングガンで武装した女性、バーバラは再び弾幕を張る。

流星はすぐに回避行動をとり、弾丸の嵐を避ける。

そしてブースターユニットの加速力に物をいわせ研究室のドアを壊して中へと入る。

 

「来たね、勇者」

「お前がリーダーか?」

「そうだよ。ラインって言うんだ、よろしくね勇者様?」

 

 レオタード姿の11人のドムリリス達はそれぞれの得意とする武器を構え流星を半包囲してくる。

 

「まさか、私達の正体を見破られるとは思わなかったよ」

「少し前にジ・ンバ達が起こした事件があってね。それでなんとなくだよ」

「こいつは参ったね」

「それで、降伏する気は?」

「それは無いねぇ。まあ、もうじきわかるよ」

 

 ラインがそう言うと、研究室の奥から轟音がする。

自身よりもさらに大きな杖を持った12人目のドムリリス、ノーミーが研究室の壁を魔法で破壊したのだ。

 

「それじゃあね、勇者様。我が声に答えよ!コール!」

 

 ラインは手にしたカードへ魔法力を注ぐと、カードからモンスターワーカプールが出現した。

コール。これは魔王軍が開発した魔法で、あらかじめカードダスと呼ばれる特殊なカードにモンスター等を封じ、カードを消費して目の前に呼び出す事のできる魔法だ。

 フルーシア王国早期陥落は、シャー・ネグザスの功績も大きいが、この魔法も関係している。

 

「逃がすか!」

 

 ドムリリス達を追いかけようとしたその隙をついて、1体のワーカプールが飛びかかってくる。

 

「グガァッ!」

「こいつ!光よ貫け、ムービルフィラ!」

 

 流星は魔法の矢を放つが、それはよく顔を知る者による魔法に防がれてしまう。

 

「邪魔はさせない!」

「やっぱり関わってたか……リーファさん」

 

 流星付きの侍女、リーファ。やはり彼女は魔王軍のスパイであった。

 

「残念でしたか?体を重ねた侍女がスパイで」

「いや。アレは俺にとって欲望の発散で、キミは情報の収集だろう?」

「他に呼ばれた子供と違ってドライですね。ですが、勇者の鎧を見つけてくれたのは感謝してますよ。あそこには近づけなかったので」

 

 リーファは人の姿に近いが、モンスターである。

 侍女になる前から仲間達と共に、魔王ジオングを討ち取った勇者ガンダムの鎧の所在を調べていた。

その鎧がある場所までは突き止める事ができたが、モンスター避けの結界によって保管場所へ近づく事ができなかったのだ。

 ラ・ムール国の住人を誘惑し取りに行かせたりも試みたが、勇者でなければ扉を開ける事ができないようになっていた。

精霊であるアリスに近づきすぎれば、自分達の正体も露見するので、迂闊に接近もできない。

 そこで、彼女達は異世界から来た勇者達を唆し、忍び込む機会を窺っていたのだ。

そうしたら、期待していなかった流星が知らない間に扉を開きアリスの鎧を受け継いでいた。

 それを知ったのは、ノア領から帰ってきた時であったので、妨害できなくなってしまった。

 

「それで?キミは魔王軍のスパイとして何をするつもりなんだ?」

「新装備を持ち帰り、勇者を始末するんですよ」

 

 そんな彼女はガンの1種であるバズーカを取り出して攻撃してくる。その早さは中々で、しかも爆風まであるのでいつもより距離をとって避ける必要があった。

 だが、その隙をつくようにワーカプールの鋭い爪が横薙ぎに振るわれる。

流星は膝部サーベルホルダーからビームサーベルを抜くと、ブースターユニットへ魔法力を供給して前進しようとしたが、力んだせいで上方向に跳ねてしまった。

 

「うあッ!」

 

 いまだ使いこなせていないブースターユニットだが、今回はそれが功を奏した。

いきなり目の前から消えた流星に狼狽えたワーカプールの頭頂を取る事で、防がれる事なく頭から真っ二つにできたのだから。

 着地した流星の背後から大きな口を開き牙で噛み砕こうと迫るワーカプール。

しかし、その牙が触れる前にアリスが大腿部のガンを後方へ向け連射、魔法の矢をたらふく食べさせられワーカプールは力尽きてしまう。

 

「ソレ、後ろにも向けられたのか」

「1対多数の戦闘が多かったから、どの方向にも対応できるようにって」

「なるほど、だから背部・カノンは可動域があるのか。魔王軍には尚更渡せないな」

 

 そして、流星はスマートガンを取り出すと、左手に持ちドムリリス達が開けた穴へ向かって撃ち込む。

攻撃は回避されたが、このままでは逃げる事もままならないと悟り、ラインは流星を倒す事にした。

 

「しつこい男だね。そんなんじゃ嫌われるよ!ノーミー、やりな」

「OK。派手にいくよ!」

 

 リーファが退避したのを確認し、ノーミーは杖を研究室へ向けた。

 

「吹き飛べ、バズレイっ!」

 

 ノーミーが指定した場所で光が凝縮すると、一瞬の後に大爆発した。

バズ系は破壊力は高いが、使い方を間違えると味方も巻き込みかねない魔法である。

 

「これで、勇者も終わりね」

 

 ラインは勝利を確信し、笑みを浮かべる。しかし、その笑みはすぐに消えた。

なぜなら、爆煙の中から流星が飛び出してきたのだから。

 

「なッ!あれを喰らって生きてるだとっ!?」

「この鎧にそんな攻撃は通用しないさ!」

 

 本当はめっちゃビビったが、兜で顔が隠れているのを良い事にハッタリをかます。

そして、流星はスマートガンでドムリリス達へ狙いをつけ魔法力をチャージする。

 

「お前達、フォーメーションを組みな。アレをやるよ!」

「よしきた、任せとけ!」

 

 ラインのかけ声でドムリリス達が散らばらって行く。

流星は狙いを絞らせないようにする為だろう考え、始めから狙いに考えていたリーダー格のラインへ目掛け、チャージしたスマートガンを発射する。

 収束され高まった魔法の矢が迫りくるが、ラインは避ける事なく堂々と構える。

 

「いくよ、リフレアタック!!」

 

 流星の放った渾身の魔法の矢は、目の前に現れた光の壁によって反らされてしまう。

そのままなら明後日の方向へ行くだけであったが……

 

「スノーさん、そっち送るよっ!」

 

 リフレアタック。撃ち込まれた魔法を偏向するリフレの魔法で連携による偏向を繰り返す。

 

「はぁい」

 

 スノーが返事をして反射し、それをさらに他のドムリリス達が次々と反射していく。

そして最後にたどり着くのは……

 

「先生、危ない!」

 

 ドムリリス達へ攻撃する為に、ブースターユニットの出力を上げようとしていた流星であった。

 

「しまっ……」

 

 アリスの警告に流星は咄嗟に回避、そのおかげで直撃こそ避けられたが、他の待機していたドムリリス達からの魔法攻撃を何発か食らってしまう。

そして……そのまま意識を失った。

 

「先生!しっかりして!」

 

 そんなアリスの悲痛な叫びも空しく、流星は起きない。

 

「どうやら、気絶したみたいだね?好都合だ。リーファ、確か勇者と関係を持っていたね。そいつを天国へ連れていきなり」

「わかりました。星屑の帳よ、夜のヴェールを纏え、夢幻の織り手、静寂の彼方へ……」

「やらせない!」

 

 アリスは鎧を動かしスマートガンで攻撃するが、先ほどと同じように反射されてしまい決定打とならない。

その間にも詠唱は進んでいく。

 

「月の囁き、雲の調べ、心の彩りを無垢に解き放て。幻想の糸よ、時を編み、夢幻の悪夢をこの手に宿せ!」

 

 夢魔たるドムリリスが最も得意とする魔法、夢幻の悪夢(ドリーミングな世界)

対象を夢の世界へ引き込み、その精神を破壊する魔法である。

 

「さあ、お眠りなさい」

 

 リーファが杖を振るい魔法を発動すると、流星はドリーミングな世界へと囚われた……

 

「先生、目を覚まして!」

 

 アリスが流星に呼びかけるが、起きる気配が無い。完全にドムリリス達の術中にはまってしまっている。

 

「勇者は起きたかい?」

 

 ラインがニヤニヤとしながら近づいてくる。

 

「こいつ!」

 

 アリスは魔法力を振り絞って魔法の矢を飛ばす。しかし、その攻撃はリフレの魔法で反射されてしまう。

 

「私達にはね。魔法は効かないんだよ」

 

 ラインの言葉にアリスは絶望するしかなかった。そしてドムリリス達がアリスへ近づく。

 

(先生……早く目を覚まして)

「さて、これで邪魔者はいなくなったね。それじゃあ、覚悟はいいかい精霊?」

 

 ラインはそう言うと、鎧を破壊すべく魔法を……

 

------------

 

「……生。……先生。西郷先生。もうすぐ昼休みが終わりますよ」

「ん……ああ、そうか。すまんね、眠っていたようだ」

 

 気がつけばアリスの膝でうたた寝していたようだ。

さて。そろそろ昼も終わりだ。午後の授業が始まるな。

 

「じゃあ、また放課後に来ますね」

「ああ。待っているよ」

「はい」

 

 放課後になった。俺は職員室を出て、資料室に向かう。

しかし……今日は何かおかしい気がする。大切な事を忘れているような?……まぁいいか。忘れてるなら、大したことじゃないだろう。

 俺は気にせず、資料室に向かうのだった。

そして、いつものように資料室でアリスと勉強をしていたのだが……。

 

「先生」

「……ん?」

「今日は先生の家に行っても大丈夫ですか?」

 

 突然そんなことを言われたので驚く。

基本的に俺から誘う事が多いからだ。

しかし、何故急に?と疑問に思っていると彼女は恥ずかしそうに顔を赤らめながら言う。

 

「その……今日は両親も仕事で帰ってこないし、私も予定がなくて……」 

 

 なるほど。そういうことか……しかし、どうしたものか。

俺は少し考えた後、彼女に言うことにした。

 

「……わかった。じゃあ、おいで」

「はい!」

 

 嬉しそうな表情を浮かべる彼女と共に家路につくのだった。

そして、家に到着した俺は早速夕食の準備を始めた。

 今日は何を作ろうかと考えていると、アリスが声をかけてきたのでそちらを見ることにする。すると、彼女は何故かモジモジしていた。

 

「先生……」

「どうした?」

「あの……その……ですね」

 

 何やら歯切れが悪いな。一体どうしたんだろうか?と思い首を傾げると、彼女は意を決したように口を開いた。

 

「しょ、食事の前に……お風呂にしませ……んか?」

「まったく、誘ってるのか?」

 

 そういって額にキザったらしくキスをすると、彼女は顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 

「は……はい……」

 

 俺は笑いながら彼女の頭を優しく撫でてやる。すると彼女は気持ち良さそうに目を細めた。

そんな仕草が可愛らしくてつい見惚れてしまう。本当に可愛い子だと思うと同時に、この子を絶対に幸せにしたいと思うのだった。

 その後、二人で仲良く入浴を済ませた後、夕食を食べながらリビングでくつろいでいたのだが……そこで、誰かに呼ばれたような気がして彼女に聞いてみることにした。

 

「なぁ、アリス」

「どうしましたか、先生?」

「今……誰かに呼ばれなかったか?」

「いえ。私は何も言ってませんでしたが……」

「……そうか。俺の気のせいかな?」

「きっとそうですよ。それより先生、今日は泊まっていっていいですか?」

「ああ。構わないよ」

「やった!ありがとうございます!」

(気のせい……か……)

 

 何か引っかかるものを感じながらも、アリスは俺の手を取り、寝室へと連れて行く。

到着すると、彼女は持ってきた制服へ着替えベッドへ寝転ぶ。

 

「先生、愛しています」

 

 さっき、風呂で仲良くしたというのに……これが若さかと思いながら自分の上着に手をかけた時、1枚の紙が落ちてきた。

 

「なんだ?」

 

 俺はソレを拾って中身を確認する。

そこには、こう書かれていた。

 

・筒状の物体で、魔法力を強力な魔法の矢に変える

・しかし、大量の魔法力を消費するため注意する事。

・また、使用者の力量と魔法力量によって変わるので、その事にも留意するべし。

 

「こ、これは!?」

 

 それは、アリスが書いたメモだった。

 

「先生、どうしたの?早く来て……」

 

 アリスが近づいて来るが、ソレがアリスに見えない。

ここは現実の地球では無い。まやかしだ!

 しかし、頭ではわかっても体が動かない。

その時、誰かの指先が俺の肩に触れた。そこを見ると、半透明の手だけあり、必死に肩を揺すっていた。

 

「先生、大丈夫?」

「う、う〜ん……」

 

 隣には、制服を着崩したアリスが居る。そして俺は裸だ。

だが、先ほどと違い半透明の手が触れている腕だけは自由に動かせそうだ。 妖艶に微笑む女性の腹部に触れると、俺は魔法力を解放した。

 

「光よ貫け、ムービルフィラ」

 

------------

 

 ラインはそう言うと、鎧を破壊すべく魔法を放とうとした時だ。

 

「……光よ貫け、ムービルフィラ」

 

 けしてしない筈の声がしたと同時に、リーファの腹部から細い青色の矢が飛び出した。

 

「ガハッ!?」

「ドリーミングな世界を抜け出しただと!?」

 

 倒れ伏すリーファに、ラインは驚愕する。

今までドリーミングな世界を抜け出した者は誰も居ない。皆、夢に呑まれて精神を破壊されたからだ。

 

「心配かけたね。もう、大丈夫」

 

 流星は心配そうに自分を見つめるアリスの頭を優しく撫でた。

 

「……はい」

「よし、反撃開始だ!」

「はい!」

 

 アリスの返事を聞くと、流星は魔法力を高めていく。

 

「1人倒せたくらいで私達のフォーメーションは崩せはしないよ!」

 

 ライン達は慎重に魔法力を高め、流星の魔法へ備える。

そんな状態の中、1枚の木の葉が風に舞うのを見て、流星はある事を思いつく。

 

(アリス、森でやったアレをやるぞ)

(でも、アレも魔法。反射される)

(俺に考えがある。大丈夫、信じてくれ)

(わかった)

 

 風が止み、木の葉が地面に落ちる同時に両者は動いた。

 

「風よ切り裂け、ムービサーベ!」

「甘いんだよ!リフレ」

 

 先ほどと同じようにドムリリス達は風の刃をリフレで偏向していく。

流星はビームサーベルを構えると、鎧の力で360°の視野を確保し周囲を警戒する。

 凄まじい勢いでドムリリス達の間を移動していく風の刃が、ついに流星へ牙を向ける。

 

「オラっ!」

 

 ルイスが大ナタで斬りかかるの同時に風の刃が流星へ放たれる。

タイミングは完璧で、どちらかを避けるともう片方に攻撃される状況。だが、流星は動こうとしなかった。アリスも流星を信じて回避行動を一切しなかった。

 振るわれた大ナタをスマートガンで受け止めが、容易く切断されてしまう。しかし、これは計算済みだ。

 スマートガンは斬り裂かれると同時に内部わざと残した魔法力が爆発し、ルイスの視界を一瞬遮る。

さらに飛んできた風の刃へ、魔法力で構成された刃を叩きつける!

 極限まで凝縮された魔法へ魔法力で構成された刃をぶつけるヘビーアタック。

これで根比べ……では無い。

 風の刃はより勢いを増すと、地面にぶつかりそこにある物を全て上空へと吹き飛ばした。

 

「名付けて、ぶっ飛び真空投げっ!」

「先生、それダサい」

「そ、そうか?」

 

 流星はアリスに突っ込まれつつ、上空へとブースターユニットで飛翔する。

そうこうしているうちに、上空の物は爆発的に加速され雨の様に降り注いでくる。

 そこで、流星の目的が何なのかラインは察した。

 

「しまった!?新装備が目的か!」

 

 そう、ラインは新装備である背部・カノンをカーゴの付与された腕輪にしまっていなかったのだ。

 

「やらせない。ムービルフィラ!」

 

 ノーミーやバニラが妨害しようとするが、それらをくぐり抜けて、背部・カノンを空中装備した。

 

「これでも喰らえっ!!」

 

 流星は己の持てる魔法力を全て背部・カノンへ送ると発射した。

 

「バーバラ合わせて、アレを弾くよ!」

「アイアイサー」

 

 ナンシーとバーバラが前に出ると、リフレを展開して偏向しようとする。

 

「バカっ!今すぐ避けなっ!!」

 

 ラインが2人に警告を出そうとしたが、それは遅かった。

確かに、リフレは魔法を偏向できるが、それでも限度がある。

 背部・カノンから魔法力の光が放たれると、張られた光の壁を容易く貫通してナンシーとバーバラを一瞬で消し飛ばし、遅れるように周囲に轟音が鳴り響き、砂埃が舞った。

 

「この野郎!」

 

 砂埃を切り裂くようにルイスが大ナタを振り回しながら突進してくる。しかし、流星はそれを紙一重で避ける。

 

「ちっ!ちょこまかと」

 

 ルイスは舌打ちすると、さらに攻撃の手数を増やしていくが、それは隙を生む事でもある。

大ナタが上段から振り下ろされようとしたその瞬間、流星は前へ出るとルイスに体当たりし、その腹を蹴り飛ばした。

 そして追撃にと、手を組んで頭へ叩きつける。

倒れ込んだルイスに向かって大腿部のガンを撃ち込み、きっちりとどめを刺す。

 

「残りは8体か……」

 

 流星はパックを飲んで魔法力を回復させると、ビームサーベルの柄を握る。

 

「よくも皆をっ!」

 

 フュンフから打ち込まれる掌打の連続を腕を交差して防ぎ、バーニアも使いそのまま押し返す。

 その勢いのまま、回し蹴りで彼女の横腹を蹴り飛ばすと、彼女は地面を転がりながらも受け身を取る。

追撃をしようとするが、そこへ複数の魔法の矢が飛来する。

バニラとノーミーからの援護射撃だ。

 

「前に出れる奴は出るよ!こいつは放置できない」

 

 ラインはハルバードを取り出すと、古参の部下であるロプトと共に前に出る。

ロプトは魔法力を高効率で熱へと変える特殊な剣、ヒートサーベルを抜くと流星へと突進していく。

それを紙一重で回避するとカウンターの要領で拳を打ち込もうとしたが、ラインからの鋭い突きが迫る。

 

「ぐぅっ!」

「このままたたみかけるよ!」

「はぁい。コールドイナク」

 

 スノーが鋭い氷の刃を撃ち出すが、直接流星は狙わなかった。リフレアタックによる奇襲を狙ったものだ。

対処しようにも、ラインとロプトによる連携によってそちらに集中もできない。

 

(くそっ!どこから来る?でも、この状態じゃ……)

 

 周囲を警戒しつつ、打開策を考える。

その時だった。彼の視界にアリスが指を差し、飛来する氷の刃を教えた。

 

「助かった!」

 

 流星は頷くと、ラインの突きをギリギリで回避する。そして、そのまま彼女の背後へと回り込み、その背を蹴り飛ばしバーニアを吹かして距離を取り氷の刃を避ける。

 

「くっ、私を足蹴にしただと!?」

「この程度で怒るなよ」

 

 ラインは怒りに顔を歪ませると、再びハルバードを構える。

 

「なら、これでどうだ!」

 

 彼女はオーラを練り上げると、その全てをハルバードへ送り込む。

 

「うおおおおっ!バーニング・スマッシュッ!!」

 

 そして、それを地面に叩きつけた。すると炎が地面を走る。そこへスノーの氷の刃も加わり炎と氷が流星を包み込むが、ブースターユニットも使ってジャンプして回避した。

 

「予想済みですよ!猛襲弾!!」

 

 待ち構えていたフュンフはオーラを拳に纏い、流星へ襲いかかる。拳に集めたオーラの塊を叩きつける一角流の技、猛襲弾だ。

 殴られれば鉄ですら凹ませる恐ろしい技であるが、弱点もある。それは……

 

「技には魔法だ。雷よ、ファン!」

 

 三すくみである。流星の手から放たれる雷はフュンフの拳に当たり、纏っていたオーラを散らす。

 

「避けろフュンフ!!」

 

 ロプトが声をあげるが、それよりも早く次の魔法が炸裂する。

 

「パーム!」

 

 フュンフの足元から炎が噴き出、彼女の体を包む。

 

「うあああっ!!」

 

 炎はフュンフの体を焼き、彼女はその場に倒れた。

しかし、流星の反撃はここまでであった。

 

「くそっ、魔法力がもう無いか……」

 

 背部・カノンは確かに強力であったが、その分魔法力の消費も激しかった。パックで一応は回復したが、それも尽きた。頼みのアリスの鎧だが……

 

「先生、残り魔法力25%を切った。離脱を推奨する」

「そうしたいのだけど、相手が許してくれそうにないな」

 

 数は減ったが、未だ包囲が緩む事はない。

そして、包囲を狭めながらライン達は笑う。

 

「魔法力の管理もできないとはね」

「仲間の仇、取らせてもらうぞ!」

 

 ラインとロプトが武器を構え、距離をゆっくり詰めてくる。

 

(ここまでか……)

 

 己の最後を覚悟したアリスは、流星だけでも逃がす為にある機能を使おうとした時だ。なんと、流星がとんでもない話を出したのだ。

 

「こんな絶望的な状態だが、ここから逆転する方法があるんだぜ?」

 

 その言葉に、ここに居る誰もが驚愕した。

 魔法力は底をつき、頼りの勇者の鎧も残る魔法力は僅か。この状態からドムリリス7人を倒そうというのだ。

しかし、すぐにライン達はそれがハッタリだと笑う。

 

「絶望しておかしくなったかい?現実は非情なり、お前はここで死ぬんだよっ!」

 

 ハルバードを振り上げ、下ろそうとした時に、ラインは殺気を感知した。

自分の直感を頼りにその場を飛び退ると、魔法の矢が突き刺さり地面が爆ぜた。

 

「城の外で爆発を確認したと報告があって駆けつけて来ましたが、これは……」

「なるほどな。モンスターの仕業だった訳か」

「答えは、仲間が来て助けてくれる……さ。まあ、こんな頼もしい人達が来るとは思わなかったけどね」

 

 流星はただ魔法力を全て背部・カノンへ送った訳ではない。

試射した時にもかなりの音を出した。その音が聞こえれば、他の勇者達が来てくれると思っていたのだ。

 しかし、来てくれのはツヴァイ、トロン、シャマルのラ・ムール王国で三星と呼ばれる者達であった。

3人はそれぞれ専用のネモの鎧に身を包み、さらに防御魔法を纏っていた。

 

「貴様達が研究室を襲った犯人か。覚悟しろ!」

「ラ・ムールの三星!?時間をかけすぎたか……お前達、すぐに逃げな!」

「逃がしはしませんッ!」

 

 トロンの鎧は、ネモ・ハイマニューバーと呼ばれ、高機動化を施されたカスタム鎧である。その加速性能を活かし、逃げようとするドムリリス達を牽制。

 そこへ、ツイン・スピアを装備したネモ・ストライカーを身に着けたツヴァイが、二股に分かれた槍でロプトの体を貫く。

 

「ぐおぁっ!隊長……すま、な……」

 

 ロプトはそのまま倒れるが、それをツヴァイは見もせずに他のドムリリス達へと接近する。魔法攻撃に特化したネモ・カノンのシャマルは攻撃を控え、他の2人のサポートに徹する。リフレを使ったドムリリスを見たからだ。

 

「……まさか、ドムリリス隊が絶滅する日が来るなんてね……」

 

 ラインは次々と倒される仲間を見送ると、ハルバードを構え流星へ突貫する。

 

「お前だけは、討つ!覚悟しな」

「ちっ!」

 

 横薙ぎに振るわれるハルバードを舌打ちと共にビームサーベルで受け止める。

 

「先生、魔法力は少ない。決着をつけるなら早く」

「ああ、わかってるよ。はああっ!!」

 

 流星はハルバードを弾くと右上段から袈裟斬りにビームサーベルを振るい、ラインの肩から腹部までを切り裂く。

 

「ちぃっ!だけど……」

 

 血しぶきが舞う中、ラインはハルバードの柄で流星の頭部へ打撃を与える。

 

「うぐっ!」

 

 その衝撃によって脳が揺れ、一瞬だが意識を持っていかれる。そこへ、ラインは渾身の突きを繰り出すが……それは空を切った。アリスが鎧を動かし回避したのだ。

 意識を取り戻すと、流星はラインの腹部へビームサーベルへ押し当てると、その刃先がラインの体を貫いたのだ。

 

「ま、魔王様……バンザ……イ」

 

 ラインは最後の力を振り絞り、そう告げるとその場に倒れ粒子となった。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 流星は肩で息をしながらビームサーベルをしまう。そして、その場に座り込む。

 

(やったか……)

 

 そんな流星の所へドムリリス達を倒したシャマル達がやって来る。

 

「ご協力感謝します……と、言いたい所ですが、貴方は何者でしょうか?見た所勇者ガンダムの鎧に見えますが……」

「城に保管されてた物とは違うな。どこから持ってきた?」

「そうだな。どこで手に入れた」

 

 3人から質問され、流星は兜を外しながら答えた。

 

「それは……話すと長いので後でいいですか?今は休みたいんで」

「貴方はセイゴウ様っ!?……いえ、今はお疲れ様のご様子。フムー大臣や国王には自分達から言って起きます」

「助かります。正直……ちょっと、眠……い」

 

 流星はそう告げると、そのまま意識を失った。

 

「セイゴウ様!?……これは、すぐに城へ運ばなければ……」

 

 3人は頷き合うと、流星を抱えて城へと急いだ。




作者 大変遅くなって申し訳ない
アリス 理由はなんだ?
作者 某ガンダム作品の更新があったので読みふけっていた
アリス そうか(スイカバーを構える)
作者 何、それは……
アリス 次は早く仕上げるんだ
作者 うわああぁぁー!?
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