魔防隊の貧乳隊員 作:くろさん
こんなペースでゆっくりやっていけたらいいと思います。
「――さて、こんなもんかね」
ぽんぽんと手を叩きながら、黒野カグラは呟いた。
目の前の積み上げられた醜鬼の残骸たち。原型を留めていないものが大半であるが、その数は少なくとも二十は超えていた。
「醜鬼の肉って食えたりするのか……?」
それを見て、思わずそんな疑問を漏らす。無論試す気は米粒二つ分くらいしかないが、気になるものは気になる。やはり調理するとしたら加熱しなければならないが、単純に焼くか煮るか。一応見た目は筋肉モリモリな奴らなので、食ったら硬いだろうから煮た方がいいのか。
だが、どデカい塊肉を炙って食べるという浪漫も捨て難い。どこぞのひと狩り行こうぜ!的なゲームよろしく、モンスターを調理して食べるというのは一度は憧れる。ああ、ダ◯ジョン飯。
「……って、何考えてんだ自分。バカジャネーノ」
と、唐突にそんな思考は打ち切って、灰髪女はその場から離れた。
彼女が醜鬼が確認されたとの報告を受けたのが十分ほど前。精鋭揃いの魔防隊でも屈指の仕事の早さだ。
「やっぱり裏鬼門の近くじゃないと醜鬼の数も少ないな」
正直、あの激戦区は骨が折れる。カグラの能力をもってすればすぐに醜鬼は殺し尽くせるのだが、無尽蔵に湧いてきやがるのだ。一匹見かけたら三十匹はいるGと、デカくて気味が悪くて十匹見かけたら八十匹いる醜鬼。そしてそれを食おうとしたカグラ(vsダー◯ライ)。
「まあ、あんま変わんないね」
ヨシ。
さて、何故黒野カグラが三番組にいるかというと。
以前から話が出ていた、人型醜鬼の襲撃を受けて人員不足となった三番組に出向しているのだ。それもちゃんと総組長からの命令で。
彼女を『特例』として扱うことにしたのは、上司の上司である総組長である。
曰く、あれほどの力を持つ者を遊ばせておくのは勿体ない、とのこと。確かに、一組織の長として真っ当な判断であり、ぐうたらな隊員を戒めるには丁度良かった。
当然、カグラは猛反発……しようとしたのだが、彼女の状況を鑑みて七番組組長・羽前京香は二つ返事で了承。
流石に権力と決定事項には反発する気もカグラには無く、大人しく役職を拝命。
その時の顔は怒りだとか諦めだとか不満だとかそういうものは一切なく、逆に一切の曇りがない純粋な瞳だったという。因みにその顔を京香は二度見し、総組長は「んふっ」と吹き出したらしい。
今回だって勿論カグラは行きたいわけじゃないのだが、仕事は仕事だ。やらなければ金が貰えない。
「まあ、しっかり働きますか」
大きく伸びをして、ふらふらと歩き出す。
このまま三番組寮には戻らなずに、パトロールも兼ねて散歩することにした。
普段は一仕事終えれば自室に直帰するのだが、今回は事情が違う。
なにせ今日は七番組と六番組との交流戦の日なのだ。
ズボラな女とは言え、そこは気になるところ。何も無ければ観戦していたところだった。
七番組のみんなが頑張っているのだから自分もちゃんと仕事しなくては、などと思うくらいにはあの場所は気に入っている。
「この時間だと、京ちゃんと少年が頑張ってるのかね」
右腕に付けた安物の腕時計を見ながら、京香と優希が六番組組長・出雲天花と戦っている姿を思い浮かべる。
正直なところ、天花の能力に京香たちが対応できるか心配だが、七番組の頼れる組長ならなんとかなるだろうとも思ってしまう。
それは楽観視しているというわけではなく、長年の付き合いから来る信頼であった。
そして、三番組寮に戻らない事情はもう一つある。
それは――三番組組長・
噂が一人歩きするどころかブレイクダンスをしている黒野カグラだが、実際は違う。その〝違う〟も
勝手に噂が踊っていると表すならば、当の本人は一人で『新◯島』を歌って踊っていると言っても過言ではない。なんというシュールな光景であるが、彼女を知る人はその通りだと言うだろう。
しかもその知る人というのは極一部。
だが本人は別に隠してるわけでもなんでもなく、単純に面倒くさくて人前に出てこないだけである。
彼女はコミュ強ではない。ぶっちゃけ言ってしまえば、会話は面倒くさいとまで思っている。というか世の中のこと大体面倒くさい、働きたくねえと常々ボヤいているどうしようもない人間だ。
だからこそ他の職業形態とは違う魔防隊に入っているし、その中でも下っ端にいようとしていたのだが。
そんなわけで、知っていない人の方が多い現状。
「黒野カグラ」という人間に様々な想像を膨らます中には、恐怖の念を抱く者もいるらしく、その中で代表なのがベルだ。
最初に出会って挨拶してからというもの、カグラを見る度に怯え、明らかに避けているのだ。
酷い時には悲鳴を挙げて逃げられたこともある。
今日だって寮を訪れた時に出迎えはしてくれたものの、目を合わせず一定の距離を保っていた。
「私は熊か何かか?」
それよりもっと恐ろしいものか。
流石にあそこまで怖がられると、いくらマイペースなカグラでも落ち込むというもの。
吠えるなら兎も角、ブルブルと震えるチワワを虐める趣味はない。総組長じゃあるまいし。逆に弄るなら総組長の方がやりやすい。その結果減給になりかけたのは笑えないが。
とはいえ、ベルが怯える原因はなんとなく理解している。
が、それはカグラに原因があるかと言えば……微妙なところ。所謂、不可抗力というやつだと思っている。
「あの能力なら、
それでも、カグラは出来る限りベルとは仲良くしたいと思っている。
そしてあわよくば、あの柔らかそうなおっぱいを観察したいと思っている。
勿論触りたくはあるのだが、如何にしてあのような果実が生まれたのかが気になる。何を食ったらそんなデカいものぶら下げるに至るのかが途轍もなく興味を唆られる(真顔)。
確か覚えている限りでは、ベルは寿司が好きだと言っていた。もしや魚の中にはおっぺえを育てる成分が入っている種類でもいるのだろうか(知能指数一桁)。
「非ッッッッッッ常ォに気になるねェェェ」
内容が物凄く下らない気持ち悪いだけに、浮かべた笑みからは変態の気配が漂っている。
それを京香が見れば迷いなくアームロックをかけていただろう。
「ふーむ、どうしたものか……」
着物のように改造した隊服の袖に腕を入れて唸る。
お菓子で釣ってみる作戦は前にやったが、あんまり手応えを感じなかった。
今度はどうやって興味を引いたものか。いっそのこと寿司のキグルミを着て接触してみようか(変人)。
一先ず戻ったら話しかけてみようか―――
―――と、
「―――あ?」
一切の動きを止め、振り向く。
その先は、七番組の方角。
「―――、――こいつは」
心臓が一際大きく鼓動する。
刹那、カグラは強い感情を顔面に浮かび上がらせる。
彼女を知る者ならば滅多に見られないと驚く、激しく感情を表に出した表情。
「オイオイオイ……」
先程とは全く異なる、壮絶な笑み。
僅かながら笑い声が漏れる。
「ハハッ―――………はあ」
が、それもほんの一瞬。
目元を手で覆い、一つため息を吐くと、すぐさま普段通りの落ち着いた表情に戻った。
「まさか――この世界で
とはいえ内側は未だ感情が昂ったままなのか、その声はどことなく弾んでいるように思え――同時に、どこか諦観が滲んでいるようでもあった。
「
誰が聞いても理解不能であろう事をブツブツと呟くカグラ。
上機嫌とも不機嫌とも取れる態度で、自身が決して逃してはいけない気配がいる場所を見据える。
「挨拶代わりに飛ばしてみるか?まあ……あの感じだと京ちゃんたちで対処は可能だろうが」
方角と急に出現したという状況から推測するに、恐らく交流戦の最中に襲撃しているのだろう。
戦力が整っている状態のハズで、その場合手出しする必要はないことは明らかなのだが。己が内に眠る■■は、それ許そうとしない。
半ば投げやりに「お節介っつうことでヨロシク」と言い放つ。
そして、黒く変色した左腕を標的がいる方角へ向けた。
「―――出番だぞ、
その瞬間――炎が巻き上がる。
大地を焦がす。
轟、と大気を揺らす。
太陽の炎とも、地獄の業火とも云えるその赫は踊る。
遍く生物がその焔に触れれば、等しく焼き尽くされるだろう。
けれどもその中心に立つカグラは、まるで熱を感じていないように飄々とした笑みを浮かべる。
事実、カグラにとってこの炎は〝ただの挨拶〟に過ぎない。
別世界で最高ランクと評されたその炎の真価は、こんな生温いものではないのだから。
「……これでいいか」
独りごちると同時に、カグラの周囲の炎が、無数の剣へと形を変える。
それは記憶の片隅に或る、何処かで見た■■の真似事か。
一つ異なる点があるとすれば、それは剣ではなく槍だったことか。
「まあ、どうでもいいな―――」
そして、一つ呼吸を置いた後、その炎剣は撃ち放たれた。
無論、目標は腕の先にいるであろう〝神〟。
烈風を巻き起こし放物線を描きながら飛んでいく。
直撃すれば……焼けるだろうが、死にはしないだろう。
神代ならともかく、現代であれ程の気配だとするならば、存在そのものが焼けることはない。精々表面程度だが、挨拶には丁度いい。
「それに、後はみんながどうにかするだろ」
唯一の心配事はアレが目標以外に当たることだが、優秀な索敵係である寧がいるから問題はない……ハズだ。
そもそも、カグラも「神がいる」事以外は何もわかっていないのだ。
詳しいことは七番組に戻ってから聞けばよいだろうとカグラは判断し、何事も無かったかのようにふらふらと歩き出した。
「偽物か本物かは関係ないな。奴らと同じ力、名を騙るのであれば、
ふと漏らした言葉は誰に届くわけでもなく、風に流されていった。
主人公の隊服は、鬼滅の無一郎の上が着物みたいになった感じ。肌面積少なめで軍用ブーツ履いてます。(伝われ)
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