謎の商人ロールプレイ   作:誰かさん

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エピソード0 オラリオで一服

 ぱっかぱっかと、二頭立ての馬車に乗ってのんびり動く。街に入るだけならば、世界中どこでも瞬間移動できる。だが街の中で何かしらの活動を考えようとした場合、こうして行商人に扮した方が都合がよかった。出入りの記録がないというのは、それだけで問題が起きたときのリスクが跳ね上がる。

 馬車に積み荷はそれなりに積んであった。行商人を装っている以上、少なすぎると怪しまれる。少数でそれなりの金になり、珍しすぎず、数を確保していても怪しくない。そんな案配を毎回探すというのは、かなり面倒なことだった。

 門の前に来て、ひらひらと門番に手を振る。

 

「よっ、ハシャーナさん」

「久しぶりだな、ユースケ」

 

 ユースケとは、彼がこの世界で名乗っている名前だ。本名とは言いがたいが、特に偽名という訳でもない。こちらの世界で彼の名前は発音しづらいらしく、ユースケと名乗っているうちに、それでいっかとなった。どうせ元の名前を呼ぶ者などいないのだから、ユースケこそ本名で言い気がする。名前なんて特にこだわりないし。

 ハシャーナへ、御者台に乗せていた小さな革袋を投げて渡す。

 

「ほいこれ、今回の」

「いつも悪いな。が、何度も言ってるが、これで優遇なんかはできないぞ」

「いーのいーの、そういうつもりのもんじゃないから」

 

 渡したのは、そこそこ値が張る乾物。いわゆる袖の下だが、これは本当に、ハシャーナが考えているようなつもりで渡したものではなかった。

 金銭的な利益を目的としていない彼にとって、オラリオに限らず都市への滞在は無事平穏が一番の目的。万が一厄介ごとに巻き込まれた時は立ち会ってくれる人が必要だし、そのためには顔を覚えていて貰わなければ話にならない。

 つまり名前を覚えられている時点で成功なのである。品物については、どうせいくらでも作れるため、元手などかかっていない。

 

「今度オラリオの売れ筋商品とか教えてよ。持ってくるからさ」

「まあそれくらいなら構わないが。中でやらかしだけはするなよ……っつっても、恩恵なしが下手なことしたら、すぐ制圧されるだろうけどな」

「騒ぎを起こすつもりはないって。そんなことしたら商売あがったりだ」

 

 軽口をたたき合って、オラリオ内へと入る。

 迷宮都市オラリオ。その内情は、この数年で大分変わったと思う。具体的に言えば復興が進み、そこそこ安全に過ごせるようになったのだ。といっても、未だ民度は世紀末だし、冒険者はクズ率が異様に高いしで、油断できる程でもないが。

 外からの商人は、大雑把に一纏めで管理される。

 ここら辺を彼は甘すぎと感じており、実際、密輸入がかなり盛んに行われている。ただ、それを指摘するつもりはなかった。扱いが雑だというのは、管理される方も楽だという意味である。ついでに言えば、彼に被害はない。そういうのは当事者が頑張ってくれという話だ。

 彼は馬車を動かして、集積所へと向かう。そこでは多くの行商人と街商人で溢れていた。

 

「誰かー! 油漬けの魚持ってる人いませんかー!」

「極東商品高く買うよー!」

「ラキア王国から商品持ってきましたー!」

「大量の蝋を持ってる人はおらんかね?」

 

 相変わらずここは活気で溢れている。

 オラリオにも大規模な通関業はあるが、それだけで全てを充足させられる訳ではない。そういった隙間を埋めるのが、比較的小さな行商人という訳だ。ここでの買い手は大半が何らかの形で商売をしている者であり、個人的な買い付けに来る者は少ない。

 行商人はここで可能な限り商品をさばき、残ったものを露天に流す、というのが定番になっている。逆に言うと、ここでより多くを売らないと地獄を見るわけだ。

 とりあえず仕事はしていますというポーズを取るべく、彼はエルフを探した。街の商売人は、ここへは品物が足りなければ来るという程度なので、頻繁に通っていても同じ顔を見ることはあまりない、とは同業者から聞いた。

 ただ今回が運がよく、知り合いのエルフを見つける。

 

「やっほ、ジュレミーさん」

「ん? おお、ユースケですか」

 

 藍色の髪をした美人のエルフに話しかける。最初はかなり塩対応だった彼女も、今では普通に話してくれる程度にはなった。まあ相変わらず、事故でも肌に触れると烈火のごとく怒るが。

 

「あなたは相変わらず、エルフ向け商品を大量に持ってきますね」

「これが一番楽に捌けてなあ」

 

 オラリオは、エルフの人口比率が飛び抜けて高い。その上、種族単位でめちゃくちゃ偏食な上にわがままなため、エルフ向け商品はあるだけ売れるのだ。

 最初の方はエルフ向け、極東人向け、砂漠の民向けなどを均等に運んできた。しかしオラリオの事情を知るうちに、エルフ向け七割極東人向け三割という形に収まっている。

 

「商隊を率いる気はないのですか? あなたのように信用できる商人なら、こちらも安心できるのですが……」

「無茶言わんでよ。さすがに人を雇う余裕はないって。高品質な品をそれなりの頻度で持ってくるだけで勘弁してくれ」

 

 商品が高品質なのも当然で、これらは全て彼が能力で生み出したものだ。アルヴの王森でしか手に入らないもの以外は大抵用意している。

 わがまま種族のエルフだけあって、品質にも無茶苦茶こだわりがあった。そのため、商人といざこざを起こすことも多い。品質が低すぎると言って、問題ない商品を買い取り拒否などしょっちゅうである。この手のトラブルは、治安維持をする側も仲裁が難しく、面倒だとぼやいていた。

 安定して高品質商品を持ってくる彼は、かなり優良な取引相手だった。

 

「まあいい。その気があるなら、いつでも声を掛けなさい。リヴェリア様は無理でも、ロイマン程度にならいくらでも顔をつなげてあげますから」

「その時は頼もうかな」

 

 相変わらずナチュラルに人を見下してる人だなあ、などと思う。いや、これはエルフ全般に言えることなのだが。

 早々にエルフ関連商品を売り切って、次は極東人向けの商品処理だ。こちらも運良く、極東人を見つけられた。

 

「おーい、カシマー!」

 

 市場を駆けずり回って商品を探している巨漢に、そう声を掛ける。

 彼は一瞬動きを止めた後、こちらを確認してすっ飛んできた。

 

「おおお、ここで会えたのは天佑だぞユースケ! 早速で悪いが、味噌と醤油、それに米麹はあるか!?」

「あるよーそれなりにあるよー」

「全て買うッッッ!」

 

 極東向けの商品のうち、注文されたものを引っ張り出す。桜花はそれに飛びついて、涙を流さんばかりに喜んでいた。

 カシマ・桜花は商業系ファミリアではなため、本来はここに居ないはずの人物だ。これには極東人のコミュニティ構造が大きく関係している。

 というのも、極東人はあまり強いコミュニティを形成しない。そのためオラリオには大規模な極東人向け用品店が少なく、こうして商人向けの場所まで足を運ばなければならないわけだ。しかも彼のファミリアは、非常に珍しいことに、極東人だけで構成されているらしい。

 

「助かった……本当に感謝するぞ。実は管理に失敗して、樽ごと腐らせてしまってな。大豆を追加で買うには時期が遅く、麹も全て駄目にしてしまう、という八方塞がりだったのだ。下手をすれば来年まで、味噌醤油なしで過ごす羽目になっていたぞ」

「あらら、そりゃ大変だ。米はあるのかい?」

「うむ、そちらは大丈夫だ。米までなかったら、俺は腹を切っている」

 

 ははは、と笑っているが、カシマなら本当にやりかねない。そういう男だ。

 彼は安堵の息を吐いた後、落ち着きを取り戻して言った。

 

「そうだ、よかったら後でうちのファミリアに寄ってくれ。晩飯くらいならご馳走できるぞ」

「それはありがたい。……カシマ、ちょっと耳を」

 

 ちょいちょい、と耳打ちのジェスチャーをする。桜花は不思議そうにしながらも、顔を寄せてきた。

 

「そっちで料理してくれるなら、いい魚を譲れるんだが、どう?」

「なにっ! どんな魚だ?」

「鰤、銀鱈、鮭。どれも身が締まったいい品だよ」

「おいおい、全部高級品じゃないか! い、いいのか? そんなものを消費してしまって」

「数があるわけじゃないからなあ。売り物になるかって言われると微妙」

「それでも、オラリオみたいな内陸地なら、どこでもかなり高く買って貰えるだろ」

「魚をさばくツテなんてないし、その間に腐らせたらそれこそ馬鹿馬鹿しいじゃん? 凍らせてあるとはいえ生だからなおさら難しいし、ならおいしくいただきたい。刺身出してくれたら残りはそっちで使っていいからさ。な、頼むよ」

 

 ちなみにこの魚は作ったものではない。だからこそ、なおさら処理に困っていた。自分でも動画なり見ながら捌けない事はないが、ちゃんと料理がうまい人にやってもらえるなら、それに越したことはない。

 

「むぅ……魅力的な提案だが、いいのか? さすがにこちらへ利益がありすぎるぞ。返せるものが何もない」

「利害だけで世の中考えようってのは、ちょっとお堅すぎるんじゃないかな。こんなもん、運がよかったって程度に考えとけばいいじゃない」

「お前が言うなら……すまん、ご相伴にあずかる」

 

 頭を下げた桜花に、荷台から取り出した――ように見せかけて、取り寄せた木箱を渡す。ずしりとした重さに、彼は思わずと言った様子でうなった。

 

「この重みだけでよだれが垂れそうだ」

「はは、俺が行くまでに食い尽くすとかはやめてくれよ」

「ぬかせ」

 

 そんなことを言いながら、桜花と別れて。

 ほとんどの商品を売ることができ、手元にかなりの大金も残った。まだ多少積み荷は残っているが、どれも食料品でなし、商人としての面目は保っただろう。

 

(さて、こっからが本当のお仕事だ)

 

 ここまでは、あくまで都市へ入るための合法的な処置。本命はあくまで、オラリオ曰く『謎のファミリア』としての情報収集だ。

 ほとんどオラリオを観光するような形で、彼は街を歩く。この時、危険な場所には向かわないよう気をつけていた。路地裏はもちろん、冒険者の割合が多い場所など。

 繁華街とでも言えるそこは、当然に賑わっている。そして現代日本人の感覚では異様なほどに、ONE PIECEや呪術廻戦で賑わっていた。少なくない数の作品専門喫茶店が並んでおり、彼には一体どういう棲み分けをしているのかすら分からない。普通、一カ所にこれほど並ぶ前にぼろぼろと閉店していくものだ。

 

(やっぱワンピも呪術も強いなあ)

 

 ぼんやりと持った感想は、そんなものである。

 文化や風土の違いで理解できない部分は多々あれど、これは予想できた結果だ。予想以上ではあるが。

 確かにONE PIECEや呪術廻戦は面白い作品だ。が、これほど熱意を込めて読まれているのは、ただ作品が面白いからだけではない。

 現時点で彼が出している作品は、能力という形で、現実にも多大な影響を与えている。ただ作品だけで楽しむのではない、能力までひっくるめた楽しさなのだ。言うなれば、体感型コンテンツならぬ()()型コンテンツ。こんな能力がある、自分の能力が作中で出てきた、作品にはないこんな使い方ができる。そこまでひっくるめたものが作品の面白さとなっている。熱狂具合が比較にならないのも当然だ。

 とりわけオラリオでは、能力者が多い。それはファミリア同士が合議と相互監視を行い、謎のファミリアに手出しするべからずという不文律を敷いているからだ。そのため、彼もここでは活動しやすい。

 他の大都市でも、これら作品は大人気と言っていい。ただ、どうしても熱量には差があった。多くの都市にとって、能力はあくまで作品の中だけにあるものだから。たまに能力を持った者がいて、英雄とはやし立てられたりしている事もあるが。

 アレス・ファミリアやアマテラス・ファミリアは、二度と捕まえようとしないから戻ってきて、という声明を国家単位で行っている。他にも兵を向けられた経験がある場所には、彼は向かっていなかった。そのため、両ファミリアには能力者が少数で止まっている。ここらに限らず避けている場所は結構あるため、能力者の分布には偏りが大きい。

 いくらやらないと言われても保証がないため、まだしばらくは近寄る気がなかった。ほとぼりが冷めたら、行くことがあるかもしれない。

 そんなこんながあって、オラリオは現在、世界一の市場と言える。だからこそ、サービスの充実を考えるからここで調べるのが一番な訳だ。

 

「本屋も大分増えたな」

 

 新本だけでなく、古本を売る店も、以前来たときより多くなったように見える。

 なんとなしに、近場の店に立ち寄ってみた。

 店内には、いろいろな漫画本が並べられていた。彼が出している漫画本だけではない。前に渡した印刷機で、オラリオ独自の漫画も作られているようだった。

 

(アルゴノゥト列伝、真なるエピメテウス……童話や古代英雄譚の再編集的な漫画が多いな。他にもロキ・ファミリア伝説、フレイヤの旅路、オラリオの盛衰、ゼウスとヘラの光と影。大体どれも実話を元にした題材だな。やっぱ、まだ完全オリジナルを漫画にする段階にはならないか)

 

 まあ、仕方のない事だ。この世界で、漫画という文化は登場して十年も経っていない。まだ手探りもいいところの段階で、構図という概念すらないのだ。

 しかし熱意は確かなようで。この様子を見ていれば、そのうち漫画専門ファミリアなんてものが出てきそうな気はする。オラリオはそういう土地だ。

 これは十年二十年先の話になるだろうが。彼は、この世界独自の面白い漫画がばんばん生まれるようになったらいいな、と考えている。

 

「おう、兄ちゃん」

 

 いつの間にか近くに居た、年老いた小人族(パルゥム)。恐らく店の店主だろう彼女が、小さな杖でぺしぺしと足を叩いてきた。

 

「堂々と立ち読みしてんじゃあないよ」

「こりゃ失敬。これとこれと、これとこれとこれ……ください」

「なんだい、買う気があるなら最初からそう言いなって。まいどあり」

 

 どさどさと本を重ねると、一転、店主は愛想笑いを浮かべてきた。現金なものだと思うが、まあ商売人なんて大なり小なりこんなものだ。

 情報収集と言うには余計な出費をしてしまった。いざとなれば金も売れるものも、いくらでも作れるからどうでもいいが。

 一通り街を見て回ると、昼時を大分過ぎていた。夕飯は約束があるため、今からしっかりなど食べられないし。どこかの喫茶店で軽食かな、と店を選んだ。

 入ったのは、いかにも普通で特徴のない、今のオラリオでは珍しくなってしまった店だ。現在の主流は、漫画グッズが所狭しと並んでいるタイプである。

 流行に逆らって店を出しているだけあるのか、店はかなり賑わっていた。一人席が空いていないので、四人席を一人で使っている女性に声を掛ける。

 

「失礼、相席させていただいても?」

「んん? まあ、ええけど……」

 

 女性は、関西弁っぽい言葉を使っていた。ぽいとなるのは、イントネーションに特徴が薄いからだ。大阪出身だと、もっと強く癖が出る。確か、三重出身の知り合いが、ちょうどこんな感じだっただろうか。まあ異世界で何を況んや、と言ってしまえばそれまでの話だが。

 糸目の女性は、こちらをまじまじと見ながら問うてきた。

 

「兄ちゃん、オラリオ出身やあらへんな?」

「あれ? 一目で分かるもんなの?」

「まあなあ。ここにわざわざウチと同席したがるような奴、そうそうおらへんし」

「もしかして嫌われてる?」

「そういう意味やあらへんよ。ほんまにウチの事知らんみたいやな」

 

 なぜか苦笑をする女性。さらに身を乗り出してくる。

 

「冒険者志望か? これでもウチは顔が広いんや、ファミリアの紹介くらいはしたるで」

「んにゃ、商売できた。ファミリアに入るつもりはないよ」

「さよか。まあオラリオは世界一の都市やからな。ええ商売になっとるやろ?」

「正直、エルフの数が多いのがありがたい。エルフ向けの商品が飛ぶように売れる」

「へえ。エルフ向けとなると、仕入れが大変なんちゃう?」

「特に大変だと思ったことはないなあ」

 

 なにせいくらでも生み出せるのだし。

 

「見た目よりずいぶん優秀な商人やんな。その若さでエルフが満足できる品質の商品揃えて持ってこれるやつ、なかなかおらんで」

「おだてても何も出ないよ」

 

 と言いながら、店員にジュースとサンドイッチを注文する。ウェイトレスは、なぜか正面の彼女を見たときにぎょっとしていた。

 彼女はなおも面白そうに、にっと笑みを深める。

 

「いいや、出してもらおか。ジブン、商売だけでオラリオに来とる訳やないんやろ?」

 

 指摘され、彼は小さく目を見開く。

 

「そうだけど。どっかで態度とかに出てた?」

「隠しとる訳やないし、実際態度にも出てへんよ。そこは安心しい。まっ、これもひとえに、ウチの勘がよすぎるのがあかんのや。恥じる必要はないで」

 

 というわけで、と彼女は続ける。

 

「ほれほれ、何でもお姉さんに話してみい。暇やから聞いたるし、答えられる事なら答えたるよ」

「うーん、そうだなあ」

 

 彼は少しだけ悩み、そして悩むという行為自体が無意味だと気がつく。

 別に情報収集をしている事は、隠すような事でもないのだ。ただ、わざわざ吹聴するような事ではないというだけで。なんなら相談という体で話に乗ってくれるのは、都合がいいまであった。

 

「じゃあ能力について聞きたいな」

「能力? まさかお前さん、アレスの回し者とか言うんやないやろな。当たり前やけど、誰がどの能力を持ってるかなんて教えへんで」

 

 なぜか、女性の目が鋭くなる。本気で心当たりがなく、きょとんとするしかない。

 

「誰がどの能力をっていうんじゃなく、能力全体の気になる点とか知りたかったんだけど。むしろ、誰がどの能力を持ってるとか知ってんの?」

「あっ……あぁーっ! せやな! うんうん、ウチは分かっとったよ!」

 

 なぜだか女性は焦りだし、慌てて取り繕う。

 様子から見るに、彼女はどこかのファミリアでも、相当に立場がある存在なのだろう。多分、深掘りしない方がいい話だ。下手につついたら面倒くさいことになるかもしれない。

 

「せやなあ。やっぱ悪魔の実は、便利で概ね魔法よりも強力で、何より応用が無茶苦茶利く。優秀やと思うけど、スキルとして表示されないのがネックやな。そのせいで、能力の把握が極端に難しいわ」

「悪魔の実が出回って当初から、ずっと言われてることだね」

「せや。その点、呪術はずいぶん改善されとるな。魔法として発現するおかげで、大雑把にでも性能を把握しやすい。まあこっちも応用力の鬼で、本人の発想次第でいくらでも使い方が広がるから、難しさっちゅう意味ではあんま変わらんけど」

「なるほどね。でもまあスタートダッシュを勢いよく切れるんだから、多少は変わるんでしょ?」

「そらそうや。まあそのせいで馬鹿やってまう子もおるけどな」

 

 やっぱり方向性は間違っていなかった、と心のメモに記す。

 彼は悪魔の実を広めてから、それなりに市場捜査を行っていた。その中で一番多かった意見が、使い方が分からない・難しいというものだ。早い話、悪魔の実の応用力が人の想像力を超えてしまっていたという問題である。

 それならそれでいい、と切って捨てるのは簡単だった。しかし、曲がりなりにもそれを提供している側の人間。やはりある程度ユーザーフレンドリーにしないと、ユーザーは付いてこない。

 そこで、これからどうすればいいのかというのを考えた結果、選んだのが呪術廻戦であり。魔法に類似した形で発現させるというものだった。

 一定の成果を出せたことに安堵する。まあ、さすがに馬鹿やった奴の事までは相手にしていられないが。

 

「ふふふ、実はここだけの話なんやけどな」

 

 これ絶対ここだけの話じゃないな、などと心の中で思いつつ。

 

「うちにはスーパースペシャルレア(SSR)ウルトラレア(UR)がおるんやで」

「スーパー……? ウルトラ?」

 

 なんだそれ、と一瞬迷う。

 が、すぐに思い出した。確かオラリオでは、作中の露出や活躍によって、能力をそんな風にランク付けするのだと。どうやら自慢したかったらしい。

 

「へー、凄いね」

「なんや、反応薄いな。興味ないんか?」

「というか、いまいちピンとこなくて」

 

 なんなら彼は、誰にどんな能力が渡ったかも覚えていないくらいである。それも仕方なく、すでに能力を渡した人数は、軽く三百人を超えている。ましてや暗がりが取引場所名為、相手の顔が見えないことが大半なのだ。

 かろうじて覚えているのも、最初に悪魔の実を受け取った、金髪の小さな女の子くらいか。その子にしたって、名前も知らない。

 

「うーん。実はウチ、話の節々で探り入れとったんやけど、ほんまに好奇心程度にしか興味ないんやな」

「まあねえ。そりゃあ知ることができたら儲けもん、程度には思ってるけど。自分から熱心に探そうとまでは思わないな」

「淡泊やなあ」

 

 つまらん、と彼女は椅子にもたれかかる。

 こればかりは仕方ない。理解の深さはさておき、この世にある全ての能力を把握しているのだし。なんなら、まだ世に出回っていない能力だって知っている。

 後はまあ。こうしようという考えはあっても、こうしたい、こうなって欲しいという思いはなかった。つまりは、興味がない。得た力をどうするとかどう評価するとかは、それこそ当事者が行えばいいのだ。

 

「ところで兄ちゃん」

 

 引いたかと思えば、またもやずずい、と身を寄せてくる。

 

「外でもそれなりに活動しとるんやろ?」

「まあそれなりに」

 

 ほとんど趣味みたいなものなので、本当にそれなりだ。

 ウェイトレスが、フライドポテトのついたクラブハウスサンドのようなものを持ってくる。食べようとしたところで、女性に一つかすめ取られた。これで腹を満たすつもりはないが、一声掛けてくれてもいいのではないだろうか。

 

「外で『謎のファミリア』……あー、謎のファミリアって言い方で伝わるか?」

「一応」

「ならええわ。そこについて、何か情報があったりとかせーへん? ウチらも探してはおるんやけど、如何せんオラリオの中だけやと限界がな。せめてオラリオ未発売の新作が他所で出てるかとか聞きたいわ」

「ないんじゃないかな。少なくとも流行ってるものは」

「そっかー」

 

 実のところ、謎のファミリアというのは、かなり大雑把で明確なくくりがない。よそで作られた本が入ってきて、謎のファミリア扱いなどと言うことも少なくないのだ。つまり、謎のファミリアとは、すでに彼だけを指す言葉ではない。後はまあ、相応に詐欺もある。

 女性は残念そうにしながらも、しかし落胆は見えなかった。

 

「こういうとき、謎のファミリアがオラリオ所属やない欠点を感じるなあ。メリットも十分あるから、文句を言えるもんでもないけど」

「メリットなんてあったんだ」

「そらもう当然や。それこそウチらみたいな一般ファミリアには恩恵ましましやで」

 

 大げさに手を広げた後、残っていたクラブハウスサンドもどきを、ひょいっと口に放り込む。ついでに、彼が注文していたジュースも奪われた。この人自由すぎないだろうか。

 

「謎のファミリアがオラリオ所属やないから、力を中で独占できんし、情報も断片的や。かわりに、ギルドへお伺いを立てる必要が無いから、誰に対しても分け隔てなく無料で、っちゅう真似が通せとる。普通に買ったら何十億ヴァリスするかも分からん悪魔の実を、無料で手に入れられるのは、明確なメリットや」

 

 ジュースを飲み干した後、ポテトまでつまみ出す。すでに彼女は、彼より食べていた。

 仕方なしにウェイトレスを呼んで、追加で飲み物二つと、二人でつまめるものをいくつか追加する。彼女は「おおきに!」などと言って、剛毅に笑っていた。

 

「実は、ギルドが……というよりロイマン派が、謎のファミリア取り込みを考えとってな。正式にオラリオ所属である事を求め、上納金もそれに準ずる……なんて事を考えとったんや」

「そう話すって事は、上手くいかなかったんだよね」

「そらそうやって話やな。そもそも、だーれも影をつかめない組織、どうやって見つけるっちゅうねん。ましてや放っておくだけで有益無害、こんなん誰も本気にならん。そんで当然反感を呼んだ」

「言っても、ギルドって所詮、冒険者管理組織でしょ? そんな強権振るえるの?」

「外の者にはあんまりピンと来ないかもしれへんけど、ギルドはファミリアを総括する関係上、政府みたいな役割も担っとるんや」

「へー」

 

 初耳である。やっぱり聞きかじりでは分からないことも多かった。

 

「つまりギルドがやらかしたら、オラリオ全体がやらかした、みたいに思われる可能性が高いっちゅう事や。アレスん所みたいに、オラリオそのもがそっぽを向かれるような事態になったら目も当てられん。せやからしゃーなしに、ファミリア同士が連合を組んでギルドを倒し統治機構の入れ替え、なんて事を想像させて圧力かける事になったんや」

「怖っ。水面下でそんなことが起きてたのか」

「やっぱり外の人間の反応やなあ。ファミリア連合成立とギルドへプレッシャーかけとる件は、別に秘密でもなんでもないんやで」

 

 現地人しか分からない事情というものは、やはりあるのだろう。どこにも与さず自分勝手にやっているのは正解だったと、改めて思う。

 

「まあそんなつまらん話はどうでもええねん。今の興味は、次にどんな作品が出てくるか、や。どんな能力が出回るかっちゅうのは、割とトレンドな話題やで!」

「確かに。それは気になる」

 

 主に出す方の視点として。

 

「今まで謎のファミリアの先行情報(おもらし)聞いたことないし、一体統制どうなっとんのや」

 

 そらまあ一人しか居ないのだから、彼さえ口を滑らせなければ情報漏洩などない。

 彼女は、先に知った情報で知り合いにでかい顔したい、などと人としてどうかと思うような事を言っていた。

 

「じゃあさ、逆に考えてみたらどう?」

「逆ってなんや」

 

 追加で運ばれてきた料理に、彼女がさっそく手を伸ばす。ピクルスをこりこりとかじっていた。

 

「どうやって先行情報を得るかなんて、考えても詮無いじゃん。だったらむしろ、どんな作品が読みたいとか、こんな作品が出そう、出て欲しいとか」

「…………」

 

 一瞬、彼女はぽかんとした後。

 

「それ、おもろいやん」

 

 もっていたフォークでこちらを指し、にやっと笑った。

 

「ウチはちょっと切り口を変えて、ロキ・ファミリア関係の本を出したりとかしたらええと思うんや。いや、他意とか全然ないけどな」

「つまり、ロキ・ファミリアの関係者なんだね」

「他意はないけどな!」

 

 念押ししたところで無意味だと言うのに。

 そんなふざけた様子も、彼女はすぐに戻す。

 

「冗談はおいといてや。個人的には、魔法系をもっと充実させて欲しいとは思う」

「魔法系? ごめん、そういうの詳しくなくて、よく分からないや」

「素人さんには、ちょい難しい話やったかな。魔法について、どれくらい知っとる?」

「魔法スロットっていうのがあって、最大三つしか覚えられないって程度」

「概ね一般人が知ってる程度の知識やな。実はいろいろと制限があったり、使い勝手が悪かったり、面倒な条件があるんやけどそこはおいといて。つまり魔法って言うんは、魔法を使えないモンが思っとるほど便利やないんや」

「ふーん」

 

 まるで分からない。そういった方面に関しては無知なのだ。ついでに言うと、スキルやステイタスについてもほぼ無知である。

 具体的にどうなのかと問いかけても、答えてはくれないだろう。使い勝手が悪いと言うことは、つまり魔法使いの弱点という事でもある。それが一般的に知られていたとして、どのみち聞かれていい気はすまい。

 

「その点呪術は優秀や。あ、呪術って分かるか?」

「知識としては」

 

 使用感などは問われても、さすがに分からない。使ったことないし。

 

「ならええわ。あれはええもんや、ほんまに。詠唱はいらん、精神力(マインド)消費も少ない、おまけに集中する必要が無いから動きながら手軽に使える。それでいて、威力は魔法より上な場合が多いからな。呪術に比べれば魔法はクソや、って知り合いの魔法使いがぼやいとった」

「それ、魔法使いが言っていい台詞じゃなくね」

「事実なんやからしゃーない。ただ問題もあってな。どうも調べてみたところ、呪術って七割くらいが殴り合い(ガチンコ)向けなんや。せやからもっと、魔法使い向け……うーん、これはちょっと表現がちゃうな」

「後衛向け?」

「それや! 後ろを任せられる能力があったらええなって思う」

 

 ふぅーむ、と考える。現場の意見だけあって、なかなか参考になる話だ。

 今まで世に出す作品および能力は、好み二割勢い八割で決めてきた。そろそろ、バランス取りというかてこ入れというか、そういうことをする時期に来ているのかも知れない。

 作品の候補について、実は常日頃から考えている。これと決めたものはないが、逆にこれは出せないというタイプの作品は結構あった。

 

(BLEACHとかHUNTER×HUNTERとかジョジョの奇妙な冒険とか、能力が個人の資質に偏りすぎたものって出しづらいんだよねえ。特にHUNTER×HUNTERとか絶対無理。作中じゃあ、多分意図的に出さないようにしてるけど。制約と誓約でお手軽能力引き上げと指向性決定なんて、特定対象暗殺能力作って下さいって言ってるようなもんだ。この世界には『神』っていう共通の弱点がある。下手しなくても暗黒期の再来だわ。カジュアルな暗殺とか凄く嫌だ……)

 

 彼も一応暗黒期は知っている。というか、実際に尋ねたことがある。さすがにあの時代へ引き戻す気にはなれない。

 当然、能力のを出さないただの作品としてなら問題ない。ただし、それはもう少し先の話になりそうではある。

 

(そうじゃなくても近代以降が舞台の作品ってしんどいし)

 

 勢いで呪術廻戦の翻訳を決めたはいいものの、それはもう大変だった。というのも、概ね動力機関と電子機器は理解されないからだ。

 魔石科学とでも言うべき技術があるから一概には言えないが、この世界の技術水準は概ね十四世紀から十六世紀ほど。つまり車やら電話やらといった品は、別のものに置き換えるなり説明を入れるなりしなければいけないのだ。控えめに言って地獄である。二度としたくないとすら思った。

 

「後衛向け能力って、例えばどんな感じの? 魔法以外で」

「んえ!? えーと、超凄い弓とか……アカーン! 全然思いつかへん! 想像力の敗北や!」

 

 考え事をしながらも、そこそこに話を振ったり相づちを打ったりする。こういうのは昔から得意だった。ちゃんと話を聞いていなくとも、重要そうな単語を拾えば、会話くらいは成立する。当然、しっかり覚えておく事はできないが。

 

(後衛向け能力かぁ……となると、遠距離とか補助とかだよねえ。あと制圧能力か、バフデバフなんかも)

 

 候補のうちから、さらにいくつかの作品をピックアップする。正直、条件に該当する作品はあまり多くなかった。というのも、少年漫画という性質上、バトル漫画はワンマンアーミーでなんぼという風潮があるからだ。補助もできる能力がでる作品は多くあれど、補助特化の能力ばかり出る作品というのは、心当たりがない。

 ついでに言えば、彼は出す作品をジャンプ系列で縛っている。深い理由があるわけではなく、そうしないと収拾が付かなくなるためだ。これに関して、ジャンプは能力バトルの頂点みたいな所があるし、別にいいかなと思っている。週刊少年マガジンがスポーツ漫画の大御所みたいなのと一緒だ。

 

(逆に、能力を現実に反映さえしなきゃ、どんな作品出したっていいんだけど……。それには下地が必要だよなあ。この暴力全盛期な時代に、中世くらいが舞台で、しかもバトルも歴史的背景もなし。それでいて大受けしそうな作品……難易度高いなあ)

 

 多分、日常系やらラブコメやら出した日には爆死する。そういった作品が悪いと言うつもりはない。ただ、この世界にそれらを面白いと感じて貰える基板がないだけで。

 とにかく文化(文明ではない)の差異は大きい。

 学校などがいい例で、義務教育などないここで子供が強制的に集められ勉強をしているという描写は、下手をすると『虐待』と捕らえかねない。金持ちだけが受けられる教育をなぜ万民が、とも思われるだろう。子供でも家のために働け、という考えが常識である以上、どうしたって『意味不明』なのだ。

 人間の創造力というのは偉大で、時には思いもしない発想が飛び出てくる。しかしやはり、想像の起点となるのは『文化』。揺るぎのないゼロ地点があるからこそ、そこを基準にすることができる。そして、ゼロ点が違った場合、発想自体が通用しない。

 

「ねえ」

「やから、せめて幹部と上位戦闘員には能力を持っといて欲しくてな。どーにかして繋ぎを作れんかと……ん? なんや?」

 

 ほとんど愚痴になっていた彼女の言葉を遮る。いい加減、知りもしない内情をうんうん聞いているのがしんどくなったというのもあったし。

 

「能力が配布されない漫画とか出てきたら、どう思う?」

 

 何を考えるにしても、まずは段階が必要だろう。ということで、とりあえず生の声を聞いてみることにした。

 

「どゆこと? つまり漫画が能力の販売促進やなくて、本当にただの娯楽って意味かいな」

「え? うん、多分そう」

 

 販売促進って何の話だろ。思ったが、そこはスルーする。多分、重要な話ではないし。

 

「うーん、うーん……。難しい質問やな。面白ければええんちゃうって思う反面、やっぱ欲しくはあるやろなあ……」

 

 やはりというか、バトルもの前提のようだ。いや、そもそもそれ以外の発想がない、というのが正解か。

 

(難しい問題だなあ)

 

 新ジャンルが受け入れられる為には、よっぽどできがよく、しかも運だってなければいけない。ましてや今までのように能力を配らないのであれば、人気はかなり劣ると簡単に予想できた。

 能力の追体験ができない以上、ライバルは既存の娯楽になる。さすがにそちらと比べて負けるとは思わないが、そもそも既存漫画が強すぎるのだ。

 体験型コンテンツのシェアが大きすぎ、そもそも競っていい相手ではない。そこらの棲み分けも重要だ。

 

(個人的には、サイエンスフィクションとか広めたいんだよなあ。好みって意味でも、その後に作品が広めやすいって意味でも)

 

 空想科学だから、そういうものだから、で強弁できるのは割と便利である。まあ、これも程度問題だが。Dr.STONEなら丁度いいかもしれない。少なからず調整する所はあるだろうが、まあそれは未来の自分に頑張って貰うしかないか。暇を持て余して、また自ら苦行へ突っ込むかも知れないし。

 

(いっそ弐瓶勉作品とか出して、固定観念をぶっ壊すのもいいかもしれんね。その場合、困惑の方が強いだろうけど)

 

 それを見て理解できずに首をひねってる人たちの集団というのは、ちょっと面白い気はした。

 

(他にも終末のワルキューレとか。神達のノリを見るに、登場する神については下界の解釈って事で笑い飛ばしてくれそうな気がするし。でも、歴史上の偉人は、多分かすりもしないんだよなぁ。これのせいで、歴史上の偉人が出てくる系の作品は全滅だし)

 

 そこを改変すると、作品を一から作るくらいの労力がかかる。彼にそこまでの熱意はないし、技術もない。さすがに歴史上の偉人と銘打っておいて、知らない者ばかりでは興ざめだし。

 いや、考えようによっては、全く知識の無い偉人より、むしろ神の方が厄介かも知れなかった。

 こちらには、元の世界でも名の知れた神が多い。が、元の世界で語られる伝説と同じ歴史を辿っているかは分からないのだ。恐らく、共通する部分と全く関係ない独自のものとが混在する。

 これが作中の描写と、全くかすりもしないならば問題ない。しかし、天界でも起きたこと、かつ下界に伝わっていない話であったなら厄介だ。今はただの作家集団程度にしか思われていない『謎のファミリア』も、何らかの意図を持って情報を広めている集団と捉えかねない。そんなこと全くないのに。

 そういった方面の面倒は覚悟していないし、受けるつもりもない。なんならそんなことになった場合、全力で逃げようとすら考えていた。

 

「正直な話、能力に反映されん話なら、ウチはエースの話とか見たいなあ」

「エースって、ワンピースの?」

「他に誰がおんねん。ほら、エースって割と謎が多いやろ? 明かされたんも幼少期だけやし、死んでもうたから作中で続きも期待できへん。新しい能力とか出て来んでもええから、エースのストーリー見たいわ」

 

 そういえば、そんなのどっかで見た気がする。ムック本だったか。コンビニで立ち読みしてたやつが偶然、エースの物語を描いていた……気がする。一度見ただけなので、断言はできないが。帰ったら調べてみようと思った。

 

(ONE PIECEはいろいろとメディア展開されまくってるから、探せば大抵何かあるんだよな。ONE PIECEに限らずジャンプ系は太いから、人気作品は必ず展開されてる。といっても、一番わかりやすいアニメは、電波も何もない以上、連載できないんだけど)

 

 ただ、この発想は重要だ。つまり、漫画にこだわる必要は無いという事なのだから。

 そういった意味なら、トレーディングカードゲームとか出しやすいかもしれない。マジック:ザ・ギャザリングやら遊戯王やら……いや、やっぱりやめよう。トレーディングカードゲームは地獄しか生まない。

 

「確かに読んでみたいエピソードあるよね。俺は白ひげ対クロコダイルがどうだったのか知りたい」

「分かってくれるか! いやー、ほんまワンピースはキャラクターの気になる歴史が多くて困るわー。呪術廻戦もナナミンとか伏黒親子とか、過去がむっちゃ気になるキャラクター多いんよな!」

 

 本編外で作品を楽しむ。これもまた、創作物の正統派な味わい方だ。その芽が出てきているという事は、そろそろ創作側のコミュニティが大きくなるかも知れない。結果的に、作品そのものの戸口も広がるだろう。

 現時点でも、街には非公式グッズが溢れている。これはオラリオに限らず、大都市では大なり小なりそういう所があった。

 今は(品質が雑である事は多いが)原作に忠実なグッズしかない。が、スーパーデフォルメとでも言うべき人形などが出てくるのも、そう遠くないだろう。現時点では発想自体がないが、それだけ。忠実でない事の是非は、そういったものが生まれた後に議論されればいい。

 そう思うと、選択肢は一気に広がった気がした。

 下手に選択肢を増やすより、まずは裾野の拡大に勤しんだ方が近道ではかいだろうか。それこそ、あるかどうかも分からない適合する作品を探すより、よっぽど建設的に思えた。

 

(そういう意味じゃ、ワンピは強いよなあ)

 

 アニメ、スピンオフ、舞台、実写……メディアミックスで考えられる事は一通り行っている。しかも、三十年近く連載を行っているため、ストックも種類も膨大だ。それこそ全部把握している奴はいるのか、という程に。

 これならば、何を出すべきかなどと考える必要はない。全部出せばいい、という意味ではなく。都合よく、原作者監修の作品があるからだ。

 

「なかなか話の分かる兄ちゃんやな。商人としての腕もええらしいし、うちのホームに招待したいくらいや。今日来る? 晩飯くらいはおごるで?」

「お誘いはありがたいけど、夜は先約があってね」

「あらら、そら残念。ちなみにどこと約束あるか聞いてええ?」

「えぇと……確かタケミカヅチ・ファミリアだったかな? 場所は覚えてるけど、所属ファミリアまでは曖昧で……」

「聞いたことあらへんな。小規模ファミリアやろか」

「所属は数人だって話だよ」

「ホンマに零細やんか。ま、しゃーないわな。そんならウチにも定期的にエルフ用品を卸してくれ、ってのはアリか?」

「それなら全然」

「よっしゃ! 言ってみるもんやな! 持ってきて欲しいもんリストアップしとくわ」

 

 その後、彼女とは夕食ギリギリまで話し込んでいた。実に有意義で、楽しい時間だったと記しておく。

 

 




投稿サボっていて申し訳ありません。いろいろあって校正がめんどくさくなっていました
話自体は60話くらいまでできており、校正だけが終わっていない状態です。なので少なくともそこらへんまでは続きます。また更新が止まったら「こいつ校正さぼってんな」と思って下さい
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