謎の商人ロールプレイ   作:誰かさん

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ウォーキング・マーメイド

 豪華な食事の山に、飲みきれないほどの酒。そして広いパーティールーム。

 神の宴を開催できるというのは、一種のステータスだ。それだけの経済力を持っているという事実の誇示になる。これは臨時にそれだけの出資をできるというだけではなく、大きなホームを維持できる安定した収入も必要だ。イコール、眷属の優秀さを示している事にも繋がる。

 正直な所、特別な事情でも無い限り、生産系ファミリア以外が神の宴を行うことで得られるメリットはない。冒険者家業に、広告はほとんど意味が無いのだから。

 それでも実行しようとする神が後を絶たないのは、まあ、シンプルに自慢したいからだろう。

 探索系ファミリアが神の宴を主催する場合、眷属(子供)のうち誰かのランクアップ直後というのが一番多い。要は、外向けのお祝いな訳だ。

 余談だが、神会(デナトゥス)の場で眷属(子供)に変な二つ名をつけた奴は、呼んで貰えない事が多い。これは、一定以上の規模を持つファミリアに、変な二つ名を持つ子が少ない理由の一つだったりする。神は面白いものが大好きで、ハブられるのが大嫌いなのだ。

 さて。今回の神の宴は、歴代でも上から数えた方が早いくらいに豪勢なものだった。料理や酒だけでなく、食器類にまで金を掛けている。恐らくこの日のために取り寄せたのだろう。

 

(これで後は、やたら目障りなアポロンの石像さえ並んでなければ満点なんやけどな)

 

 パーティールームのどこへ目をやっても、必ずアポロンが目に入る。それこそ天井でさえだ。もはや目障りを通り越して気色悪い。考えるアポロンも相当な馬鹿だが、実行する設計士も設計士である。控えめに言って狂った空間だ。どれだけ自己顕示欲が強ければ、こんな場所を作ろう思うのか。

 正直、アポロンを相手するのは面倒くさいし、それ以上に鬱陶しい。普段なら招待を無視していたかも知れないが、今回ばかりはそうもいかなかった。

 なにせ、モンスター……もとい人魚のマリィちゃんお披露目会なのである。

 

「マリィちゃーん、こっち来てー!」

「タダイマ!」

「きゃー! かわいー!」

「ハァハァ……マリィちゃんえちえちすぎる……」

 

 最初は皆、おっかなびっくり見ているだけだったが、数分もするとすっかり皆のアイドルだ。中にはかなり危ない事を言っている奴もいるが……まあ、神にとってはいつもの事である。それで許されたりはしないので、警備に引きずられる事となるが。

 ちなみに、マリィは給仕をしていた。これは彼女に限った話ではなく、ここにいる人間は全員アポロン・ファミリアの人員である。これはマリィの安全対策だ。

 普段なら護衛(という名の見せびらかし)も入場許可される事が多いが、今回は厳重に禁じられている。万が一にもマリィを害されては困るためだ。ファミリアとして襲ってくる事はなくとも、一個人の感情から暗殺を仕掛ける可能性は低くない。

 代わりに、ホームの外にいる護衛は、全てアポロン・ファミリア以外の者だ。ロキも、さすがに一線級を連れてくる事はできなかったが、ラウルやアナキティを配置している。

 

「……ええなぁ」

 

 蟻のようにたかっている神から一歩引きながら、ロキはそんなことを呟く。

 初めて見る動物系(ゾオン)のモンスターは、思っていたより遙かに人間的であり。そして可愛らしかった。

 外見年齢はレフィーヤ・ウィリディスよりいくらか下といった程度。言動の幼さから察するに、実年齢はもう少し下がるかも知れない。途中からやや波打った長い髪に、笑顔の似合う優しい顔立ち。見た目から性格から、どこからどう見てもお嬢ちゃんだ。ただ一つ、人類ではあり得ない肌の色を除けば。

 加えて、今の彼女には足があり、宙に浮いている。これは悪魔の実の効果らしい。

 ヒトヒトの実幻獣種・モデル天女。原作にない悪魔の実だから仮称だが、大きく間違えてはいないだろう。羽衣を生み出して、それを手に取ると飛ぶ事ができる。恐らくは何かしらの形で癒やしの力もあるだろうというのが、大方の予想だった。

 まあ正直な所、能力がどうとかはどうでもよく。ロキにとって問題なのは、性格まで清らかな超正統派美少女だという点である。

 はっきり言って、ロキの好みど真ん中だった。

 そんな子が、神に追いかけられて「きゃー♪」と悲鳴を上げながら、アポロンに抱きついている。許すまじ。嫉妬で狂いそう。

 

「ぐぎぎぎ」

「ちょっと、あなた怖いわよ」

 

 マリィにばかり注目していて、誰かが近づいているのに気がつかなかった。

 ロキをやや引いた目で見ているのは、アストレアだ。彼女はあまりこういった催しに参加しないので、ドレスで着飾る姿は非常に珍しい。明るい紅色のドレスから覗く肌色が、とてつもなくエキゾチックでまぶしかった。

 

「なんやねん、一言目が怖いって。全然怖くあらへんわ」

「怖いわよ。今にもアポロンを殺しそうな顔をしてたわ。鏡見に行きなさいな」

 

 反論こそしたものの、顔が引きつっているのは自分が一番分かっている。こんな表情で愛しのマリィに接触することはできないため、なんとか顔をもみほぐした。

 いくらか落ち着いて来たところで、アストレアがぽつりと漏らす。

 

「正直、意外だったわね」

「何がや?」

「あなたがマリィに心底惚れ込んでいる所よ。ロキ・ファミリアは反モンスターの急先鋒みたいな所があるでしょ」

「ああ」

 

 そこか、と気がつく。まあ確かに、ロキは立場として反モンスターを掲げなければいけなくはあるが。

 

「ぶっちゃけそこは、フィンに配慮して、みたいな所があるしなあ。そもそも一番モンスターを憎んでるアイズたんですら、ヒトヒトの実で人の心を得たっちゅーたら、どうすべきか悩んどったくらいやし。ま、この辺の線引きが難しい時代になったわなぁ」

「そうね……」

 

 頭を抱えながら同意するアストレアを見るに、彼女のファミリアでも一悶着あったのだろう。これに関しては、どのファミリアでも大なり小なりだろうが。

 謎のファミリアが、どういうつもりでモンスターにまで能力を配っているかは分からない。唯一分かっているのは、敵意はないだろうという事だ。それは今までの積み重ねもそうだが、マリィの様子もある。下手したらそこらの人間より害意がない。能力まで守勢一辺倒だ。

 ロキとしては、リアル人魚を作りたいというだけの動機であっても驚きはなかった。

 

(これは実験なんか、そうでないんか……)

 

 今日に至るまで、『能力持ち』のモンスターは発見されていない。それはつまり、暴走して人間に攻撃するようなモンスターには、能力を渡していないという事だ。

 高確率で、能力を渡されているモンスターは、ヒトヒトの実ないしはおとなしい草食獣系あたりだけ。後は確定情報として、知性を獲得したモンスターは、モンスターから攻撃される。

 

(だとしたら、ダンジョンには別の()()が現れた、っちゅう意味でもある)

 

 ロキの中の、冷徹な策略家が瞼を開けた。

 今もダンジョンの中では、どこかで知性のあるモンスターが眠っているのかも知れない。

 マリィのような子であれば文句なしだが、さすがに高望みだろう。そうでなくとも、有用だと推定できる存在はたくさんある。例えば馬。例えば犬。人間が家畜化に成功し、隣人として歩んできた動物。そういった類いの実を食べたモンスターなら、調教して上手く利用するのは容易だ。仮に上手くいかなかったとしても、モンスターよりはよほど与しやすい。

 おまけに同族(モンスター)に襲われるため、見分けるのも簡単と来た。

 問題は、そもそも知性を得たことで、簡単に見つからないよう逃げ回っている点か。

 

(なんにしろ、こっからは争奪戦が始まるわ)

 

 探索済みの土地も、もう一度洗い出しが始まる。遠からず、どのファミリアも躍起になるはずだ。

 他の誰かが動く前に、ロキ・ファミリアは先制する必要があった。密かに準備をして、素知らぬふりで先手先手を取る。つまり、やり慣れたいつもの手段。

 

(上層は狭いし、そんなところで探し回っても分が悪いやろな。せやったら、最初からそこは捨てる。上にいたら、そらもうしゃーないって諦めるしかないわ)

 

 だが、上層が騒がしくなってくれた方が、むしろ好都合かも知れない。

 

(騒ぎが大きな所に、獣は隠れんし寄りつかん。やったら最初から中層以下に狙いを定めた方がええやろ。それも、狙うのはリヴィラより下。ここ以降なら、競争相手はがくんと減る)

 

 編成がどうのはロキに決定権がないため、フィンに丸投げする形になるだろう。間違いなく、彼も同意する。

 フィンがモンスターを許すことができないのは、それが民意だからだ。受け入れる土台があるなら、存在を否定しない。そこまでモンスターにこだわりがないという、ある意味酷い理由で。後は、アイズをどうやり込めるかというだけ。

 面白いというのを抜いても、能力持ちモンスターは魅力的に過ぎた。最初から一定の戦力が保証されているし、戦闘に利用できないならそれでも構わない。無駄飯ぐらいの一匹や二匹増えたところで、可能性を考えれば、損という程ではないのだ。

 まあ、その可能性はまずないと思っている。なにせ、謎のファミリアが提供したものが、有用性を欠いた事などないのだから。

 

「今度は悪い顔をしてるわよ」

「おっと、いかんいかん」

 

 悪巧みは、ホームに帰った後、頼りになる団長殿とするとして。今はとりあえず、ラブリーマリィちゃんを堪能する時間だ。

 

「おらぁ、どけどけ! ロキさんのお通りやで!」

「んだ絶壁ぃ! 後ろ並べ!」

「そうだぞカス野郎! 冗談は胸の大きさだけにしろ!」

「今言うたやつら、絶対許さんからな!」

「だったら何だオラァ!」

「マリィちゃんを前にして、脅しが通用すると思ってんじゃねえぞコラァ!」

「あかん、これは本気や」

 

 いつもは冗談交じりで、こうやって威圧すれば大抵の話を通せるのだが。今回は本気で反抗された。

 しょんぼりしながら、列の最後尾に並ぶ。こんなことなら、変に格好つけず最初からがっついていればよかった。あぁ……マリィたんまでの距離が遠い。

 かなりの時間を掛けて、ついにロキの番が回ってきた。

 近くで見るマリィは、魅力百倍である。なんというか、少し前のアイズを見ている感覚だ。美しいよりも可愛らしいというのが前に出てきて、思わず頭を撫でたくなる類いの魅力と言えばいいのか。

 

「うおおお! マリィたーん!」

「ピィ!?」

 

 思わず声を出してしまうと、彼女は怯えてアポロンの背中に隠れてしまった。かなりショックである。

 頑張って落ち着きを取り戻し――表面上だけ――再度近づいてみる。しかし、またもびくりと震えて、より大きくアポロンの背中に引っ込んでしまった。

 

「くっ」

「……ふっ」

「ああん?」

 

 その様子を鼻で笑われ、びきびきときた。めちゃくちゃ腹立つ。

 そういえば、アポロンはこういう奴だったと思い出した。お気に入りの眷属が手には入ったら自慢しまくるし、煽りまくる。控えめに言ってカス野郎。

 だから神の中でも特に嫌われているし、同じく眷属を引き抜きまくるフレイヤなどとか犬猿の仲だ。同族嫌悪というやつである。今までロキは気にしていなかったが、なるほど、これは殺したくなる。

 

「舐め腐りよってぇ……」

「舐めていたら何だと言うのだ、あーん?」

 

 ロキの怒りが80を突破した。天界にいた頃のロキであったなら、既に周囲をそそのかしまくって戦争を仕掛けている所である。

 待て、慌てるな。深呼吸をする。ここで怒りを爆発させても意味が無い。アポロン風情に何を言っても仕方ないのだから、こちらが大人になるべきだ。

 

「ウチに喧嘩を売るとはええ度胸やなあ?」

 

 全然大人になれていなかった。彼女は短絡的でこそないが、短気なのだ。でなければ、天界で数々の問題行為を起こしていない。チンピラじみた様子で、アポロンに詰め寄る。

 

「喧嘩を売っていたら何だと言うのだ? 何ができるのか、是非聞かせて貰いたいものだ」

「どうやらウチを本気にさせたいみたいなや……」

「喧嘩ハ、メッ!」

 

 険悪な気配を感じて、マリィそう口を挟んでくる。一瞬で和んだ。

 

「マリィたんはええ子やなぁ。アポロンなんぞ捨てて、うちに()ーへん?」

()ッ!」

 

 マリィは強くアポロンに抱きつきながら、きっぱりと拒絶してくる。とてもしょんぼりだ。

 これが気に入らなかったのは、当然アポロンである。

 

「貴様……私の子を引き抜こうとは、ずいぶん調子に乗ったマネをしてくれるな」

「いや、お前にだけは言われたくあらへんわ」

 

 文句を言っている本人こそ、幾度も引き抜きを――それも言葉だけではなく実力行使で――行ってきた張本神(ちょうほんにん)だ。ロキが思わず素に戻って突っ込むのもやむなしである。

 まあマリィの懐き様から見るに、希望がない事は分かっていた。それはそれとしてアポロンはムカつくので、挑発してやることにする。

 

「ずいぶんと大きく出るやんけ。なんやジブン、ウチと()()っちゅうんか?」

「はっ! 安い脅しだな」

 

 彼の態度に、さすがに違和感を持つ。

 ロキの言葉が脅し以上にならないと分かっていても、ここまで大きく反発するのは難しいはず。下界における神の上下関係は、抱える眷属の質とイコールなのだ。はっきり言って、アポロンがロキに勝っている部分など何一つとしてない。

 こうったものは、いざという時より、むしろ冗談半分の今みたいな方が影響が大きい。本当に引けない時以外は、笑い話で済ませられるのだから。

 答えたのはアポロンではなく、ロキのやや後ろに控えていたアストレア。彼女の申し訳なさそうな様子に、眉をひそめる。

 

「ロキ、申し訳ないけど、それは恐らくできないわ」

「なんでアストレアが答えるねん」

 

 彼女は、想定外だと言うようにいくらか逡巡して。やがて覚悟を決めたように答えた。

 

「アポロン・ファミリアが戦争遊戯(ウォーゲーム)をする際、アストレア・ファミリアとガネーシャ・ファミリアが介入する可能性があると言ったのは覚えてるわね?」

「そらまあ。現場におったし」

「つまり、そういう事なの」

 

 言葉に、はっとしてアポロンの方へ振り返った。彼は殴りたくなるにやけ面をしている。

 

「介入できるのはアポロン側だけやなくて、()()()()()()()にもか!」

「そういうこと。そして、私達はマリィの奪い合いによる混乱を望んでいないわ。あくまで場合によってはだけど……三ファミリアで連合を組むこともある」

「はーっはっはっはっはっ! その間抜け面が見たかった!」

「お前本当にぶっ殺したるぞ」

 

 馬鹿笑いをするアポロンに、殺気を叩き付けつつ。これを事前に聞かされていたからアポロンは強気だし、マリィのお披露目などという事も出来たのだと気がつく。

 これは最初から危惧されていた事だが、アポロンに対し懲罰という名目で戦争遊戯(ウォーゲーム)をしかけるファミリアがあるのではとは考えられていた。彼は、シンプルな恨みを買いすぎている。

 いわばアポロン・ファミリアへの救済措置だ。

 確かにアポロン・ファミリアが消滅することまで望む者は少ないだろう。いや、アポロン単体で言えば、に死んで欲しいと思っている者は多数いるだろうが。それにしたって、かなり強引な真似だ。今の力が弱まったギルドがすることではない。間違いなく、ウラノスが絡んでいる。

 

「さすがにずっこいやろ!」

「ごめんなさいね。でも、あの時は反対しなかったでしょ?」

「そらここまでやるとは思っとらんかったし!」

 

 やるとしても、せいぜい牽制程度だと考えたから許したのに。いくら事態を丸く収める為だと言っても、ここまでされてはアポロンの勝ち分が大きすぎる。

 

「私をやり込めようなどと百億年早いわ! 神生(じんせい)生まれ変わってやり直すのだな!」

「――言っておくけど、別にあなたの味方な訳ではないのよ。私達を当て込んでまた無茶をしようものなら……分かっているわね?」

「は、はい、すみません。調子に乗りました」

 

 アストレアの威圧に負けて、アポロンが肩を縮める。

 

「元気ダシテ、ネ?」

「おお、やはりマリィたんは優しいな。やはり私の女神……」

 

 が、すぐに慰められて復帰した。本気で怯えたわけではなく、わざわざこの姿を見せびらかすために演技したのだろう。証拠に、周囲の神がうらやましがっているし、アポロンはちらちら挑発的な目を向けている。

 茶番を横目で見ながら、ロキはひっそりと身をひかせた。そして、アストレアに「こっち来いよ」と指で小さくジェスチャーする。彼女は顔を引きつらせながらも、指示にしたがった。

 

「……ずいぶん舐めた真似してくれるやん?」

「その……本当に申し訳なく思っているの……」

 

 彼女は今までの様子が嘘のように、びくびくしながら小声で答えた。

 つまるところ、ロキはアポロンおよびアポロン・ファミリアの線引きを明確にするため、利用されたのだ。打算半分、本物の怒り半分で叱責する。

 

「ジブン、誰を使ったか分かってないわけやないやろ? ウチは道化に()()のは好きでも、道化に()()()のは嫌いやねん」

「感謝しています……だけど、その……少し抑えて貰えると……」

 

 んなもん通用するわけがない。

 

「そっちの顔を立てて、大事にはせんでやったっちゅうのは理解できてるな」

「それはもう、重々」

 

 周囲には分からない程度に、彼女は頭を下げる。

 恐らくアポロンも知らない事。アストレアはショーを行いたかったのだ。ここで今一度周囲を牽制し、決定事項を事実無根にさせない。魂胆はすぐに見抜けたから、わざわざ乗ってやった。メンツを重視するなら、ぶち壊す方がよかったにもかかわらず。

 

「これだけは信じて欲しいのだけど、最初はあなたを使うつもりはなかったわ」

「んなこたぁ分かっとるわ」

 

 親指で、状況に困っている一柱の神を指す。

 あちらが本来の仕込みで、神の宴終了直前に似たような事を起こすつもりだったという所か。ロキが先につっかかってしまったため、プラン変更を余儀なくされた。一度目で何も怒らなかったのに、二度目で騒ぐのは不自然すぎる。

 

「清算はするわ。でもその、お手柔らかに……」

「駄目や」

「そうよね……」

 

 名はくれてやったのだから、実を貰わなければ帳尻が合わない。それもちょっとやそっとじゃない、大きな貸しだ。これの何がいいかと言えば、間接的にガネーシャ・ファミリアへも貸しを作れた事である。

 

「いひひ、何に使ったろかなぁ」

「あの、お願いだから本当に、あまり無体な要求はしないでね?」

「それは時と場合によるやろ」

 

 なかなか大きなカードだ。彼女らが正義を掲げて治安維持を旨としている限り、価値が下がらないというのもいい。

 帰ったらフィンと相談だな、と考えながら。これで恥を掻かされた分は取り返せたかな、と密かに思った。

 

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