謎の商人ロールプレイ   作:誰かさん

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えっっっ!

 神会(デナトゥス)。それは神だけの遊び場である。頭に一言付け加えるなら、クソみたいな、といった所か。

 ヘスティアがこれに参加するのは初めてのことだ。

 勘違いされがちな事だが、神会(デナトゥス)は神なら誰でも参加権があるのではない。ファミリアを運営する神が参加できるものなのだ。故に、最近まで名目上の眷属すら一人もいなかったヘスティアは、これが最初の参加となる。

 開催頻度は三ヶ月に一度。神の感覚で言えば、隔日で開催されているに等しい。人の感覚だと……どうなのだろう。ともあれ、子供達のランクアップ頻度を考えるなら、これくらいの間隔が一番いいと思われている。

 さて、そんな神会(デナトゥス)の中、ヘスティアはやたらめったら緊張していた。これから地獄が待っているというのは、もはや既定路線であるが故に。命名の際に行われると悪名高い悪ふざけも恐怖の対象だが、今回に限って言えばそれどころではなかった。

 確か、Lv.2への最速記録(レコード)はアイズ・ヴァレンシュタインが持つ一年だったか。ベルの記録とだけ比べれば、とろくさいものである。

 ただし、根本的にLv.1の期間とは、誰でも長いものだ。そもそもどこであってもファミリアに所属すれば、即恩恵(ファルナ)を刻まれる。そこから座学と技術を少しずつ行っていくというのが通常の流れなのだ。この例に当てはまらないのは、恩恵(ファルナ)を刻むことに躊躇するほど若年からファミリアに囲われ、知識と戦闘技能をたたき込まれた場合のみ。そうして初めて、恩恵(ファルナ)を得たときには実技のみという状態になることができる。そういったパターンの頂点に立ったのがアイズなのだ。

 さて、これに比較してベルである。彼は……ええと、だいたいどれくらいの期間でランクアップしただろうか。正確には一月と少しなのだが、こんなことを馬鹿正直に言っても余計ややこしくなるだけ。まあどうせ三ヶ月以内なのは隠しようがないのだ。最速記録(レコード)の十二分の一前後になってしまえば、いくつであっても誤差である。

 

(実はベル君が所属時点でLv.2でしたとかいう事にできないかなぁ……。できないよなぁ……)

 

 正直に言って、この速度は誰にとっても予想外だ。彼を教育していたアルフィアにしたって、戦闘力はともかく、知識面ではほとんど手つかずだったのだ。スキルの影響が出てくるのはLv.2以降と踏んでいた。Lv.1というのは、それだけで挑戦がしづらい環境なのだ。

 にもかかわらず結果は、何がどう影響したのかご覧の通り。ヘスティアつるし上げ大会の開催である。

 今の所ベルの話題は出ていない。これは、どうしたって荒れる話題だから最後に回そうという気遣い、もとい悪魔の発想からである。つまり「ヘスティアを弾劾する為にいくらでも時間を取るぜ!」という訳だ。

 わやわやがいがい、悲喜こもごも(ほとんど悲鳴)が響く中、手元の資料がどんどんと消化されていく。記されているのは当然今期にランクアップした子供達で、残りの数はは処刑のカウントダウンだ。

 

(せめて今日をごまかしきれるだけの時間まで遅れてくれないかな)

 

 などと思うが、そんな願い叶うはずもなく。まだ日が高いうちに最後の一枚までたどり着き、ヘスティアへ一斉に好奇の目が集まった。

 

「えー、それでは最後。ベル・クラネル、ランクアップに所要の時間は三ヶ月以内とのことです。それで、ヘスティアさんちのヘスティアさん、何か弁明は?」

 

 じとり。そんな目だった。

 彼らは言うまでもなく、ヘスティアが不正を働いたと思っている。

 下界では神の力(アルカナム)を使ってはいけない。そう、使えない訳ではないのだ。実のところ、それぞれ『権能』という形で、送還されない程度に使える場合がある。

 使えると言ってもこれは明確にルール違反で、表沙汰にされれば、基本送還される類いの問題だ。ただ、自派閥に力があると、だからなんだと突っぱねる事ができる。現実に送還されていないんだから使ってねーよ、と強弁するのだ。

 が、ヘスティアにそんな後ろ盾はない。そして、神の取り調べ態勢などないため、基本的に疑わしきは罰せよなのだ。これもまた、相手をはね除けられないほど弱いのが悪いとなる。

 つまり、彼女は恩恵(ファルナ)以外の『恩恵』を与える手段を持っており、それで不正を働いた結果がベルだと断定されていた。冗談じゃない。

 

「ボ、ボクは何もしてないぜ! ベル君はまぎれもなく、自分の力でランクアップしたんだ!」

「はい、以上ヘスティアさんの言い訳でした。判定をどうぞ」

「処刑」

「処す」

「三日くらい吊した後、天界に還そうぜ」

「チクショウ、誰もボクの言葉を聞きやしない!」

 

 まあ分かっていたが、誰一人として話を聞こうとしなかった。眷属に対するずる(チート)など、それこそ闇派閥(イヴィルス)すらしなかったことだ。できなかっただけかもしれないが、結果的にはそうなっている。それをしたと思われているのだから、この意見も仕方のない事だった。

 

「その前に、ちょっといいかしら?」

 

 嘆くヘスティアを無視し、優雅に小さく手を上げたのは、フレイヤだ。

 もしかしたらかばってくれるのかも知れない、そんな希望を抱く。なにせ彼女は、地上に来てからの神友(マブダチ)である。……実のところ、現実はヘスティアが一方的にたかっているだけだが。

 ともあれ、フレイヤに口を挟まれては、大半は黙るしかない。彼女に口出しをできるランクのファミリアといえば、それこそ一つだけである。

 

「フレイヤ、言うとくけど、これは重大な問題やからな? お前のわがままでどうのっちゅうんでは納得せんで」

 

 ロキの釘刺しに、分かっているというように、手をひらひらさせただけで返す。この様子には、誰しもが多少の違和感を持った。

 このタイミングで発言したという事は、少なくともヘスティアの援護をしようという意図があっての事。しかし、生半な事で「神の力(アルカナム)乱用疑惑」が晴れる訳もない。そもそも本気ならば神会(デナトゥス)が始まる前に手回しを終えているだろう。が、その様子はない。

 皆が意図をはかりかねていたし、その中には当然ヘスティアもいる。フレイヤに批判的な神の中には、まさか目立ちたいから割り込んだだけではないだろうな、と思っている者すらいたほどだ。一部、何か一つでも落ち度があれば即座に噛みつこう、という様子を見せている者さえいる。

 ……まあ実際、フレイヤは聡明そうな見た目に反して暴力至上主義者(脳筋)だ。ただ注目を集めたいだけの可能性は、ないわけではない。こういう所は、いかにもすぎるほどいかにもな神だ。

 

「うちのアレンについてなんだけど」

「勝ち猫から一転、負け猫になっちゃったあいつがどうしたんだよ。別にランクアップしたわけでもないだろ」

「それ以上減らず口をたたくと、舌を引っこ抜くわよ」

 

 フレイヤの迫力ある一言によって、余計な事を言った神は口元を両手で覆った。

 

「実はあの子、新しいスキルを発現したのよね」

「ほーん、そらおめっとさん。正直それだけの話やと、自分のファミリア(トコ)で祝ってくれとしか言えへんのやけど」

「もう、せっかちなんだから」

 

 フレイヤはロキと軽口を叩いているが、他者は彼女の言葉に驚いていた。これはヘスティアもだ。

 基本的に、他ファミリアの団員に関しては、大雑把なステイタスを予測する程度でしか分からない。これだけは、戦っている様子を見ていれば、なんとなく想像できるものだ。

 しかし、スキルや発展アビリティに関しては、分からない事がほとんど。ステイタスの上下でなんとなく推察することはできるが、その程度だ。とりわけスキルは、所持している数ですら秘匿されるのが当たり前となっている。スキルが一切ないと公言されている超凡夫(ハイ・ノービス)、ラウル・ノールドは例外中の例外と言えた。

 ヘスティアだけは、恐らくアレンと話をしていたあの日に得たものだろうと当たりをつけていた。ただそれはそれで、なぜいきなりこの場、このタイミングで語り出すかは分からない。

 

「で、生えてきたのはどんなスキルなのよ。アレンくんがアレンちゃんになっちゃうスキルとか? だったら俺に頂戴」

「うふふ。黙らないと口を縫い付けるわよ」

「ふぁい」

 

 口を滑らせた馬鹿二号が、一号に習ってつぐむ。

 ヘスティアとてあまり人のことを言えた義理でもないが、なぜ神は分かっていても余計な事をしてしまうのだろう。不思議だ。

 

「アレンが新しく発現したのは、成長促進スキルよ」

 

 言葉に。一瞬、沈黙が当たりを包んで。

 

「……はあああ!?」

 

 真っ先に復帰したのは、ロキだった。周囲の神も、叫びこそしないが、大半が顎が外れそうなくらい口を開けている。

 

「えっ……ちょっ……まっ……それってつまり、ただでさえ無法な強さを持っとるアレンが、さらにヤバくなるって事なん?」

「その点に関しては、グラグラの能力を持つアイズと十種影法術を持つリヴェリアを抱えるあなたにだけは言われたくないのだけど」

「アホか! 方向性が全然ちゃうやん! なにそれずっる!」

「ずるくないわ。だって、アレンが頑張った軌跡の結晶だもの」

 

 二柱の言い合いを尻目に、ヘスティアは混乱の最中にある。

 成長促進スキルが、何らかの意図を疑いたくなるほど時期的にも距離的にも近くで発現したのは、まあいい。好都合というだけだ。本気でただの偶然という可能性も十分にあるのだし。

 問題は、フレイヤが明かしたタイミング。

 確かに彼女の介入で、ヘスティアに向けられた疑念の視線は薄くなった。が、それは別にヘスティアが問い詰められた後でなければいけなかった訳ではない。

 あらかたの敵意(ヘイト)がヘスティアに集まった後、改めて彼女は切り出した。これが指し示す事実は一つ。

 

(フレイヤ……ベル君が持ってるスキルをある程度察していて、ボクを身代わり(スケープゴート)にしたな!?)

 

 事実上、フレイヤ・ファミリアを問い詰められる存在はいないにしてもだ。余計な恨みをもたれないならばそれに越したことはない。

 このタイミングで明かせば、本来彼女が浴びるはずだった悪意の半分くらいはヘスティアに向けられるだろう。そうでなくとも、フレイヤの含みがある言い方から、何かしら勘ぐる者は出てくる。

 

(いや、確かにボクとしてもすごく助かったけど! 助かったのは事実だけども! ずっこくないかこれ!)

 

 ただ、釈然としないものは隠せなかった。

 いや、フレイヤの取った手段は当然だというのは分かっている。結果的に助けられているというのも、重々承知しているつもりだ。しかしどうしたって、ボクはいらなかったじゃんという意識が拭えない。

 フレイヤがこちらを見ながら、ひらひらと手を振る。ヘスティアはどうしていいか分からず、引きつった笑みで手を振り替えした。

 

「それで、このスキルなんだけどね。実は、スキルの対象が自分だけじゃないのよ」

「……! ははぁん。つまり、ベル・クラネルも()()っちゅう事やな?」

「ええ」

「んでもってドチビの反応を見る限り、あいつはこのことを知らなかった。ベル・クラネルはベル・クラネルで、別の成長促進スキルを持っとる。ちゃうか?」

「恐らく、としか言えないわ。私も別に、詳しい事情を知っているわけではないのだから」

 

 ぐりん、と視線を向けてきたのは、何もロキだけではない。ほぼ全ての神が、事実を知るべく集中した。

 うぐ、とヘスティアは歯噛みする。

 成長促進スキルは、フレイヤの告白によって唯一無二ではなくなった。ましてやアレンの「自分と対象の成長率を向上させる」という力は、ある意味ベルの上位互換と言える。

 が、そこはそれ、ファミリアおよびスキル所持者の規模が問題だ。以前と、おもちゃにしやすいのがベルという事実には変わらない。いや、おもちゃにするだけならばマシな方だ。場合によっては、強引に奪おうとする事も考えられる。いつもベルの尻を追いかけているクソ変態野郎のように。

 そういった意味においては、フレイヤ・ファミリアと協力関係であるのも救いではあった。もっとも、よりフレイヤ・ファミリアへの依存が増し、独立独歩が難しくなったという意味でもある。もしかしたら、ヘスティア・ファミリアの取り込みまで考えた告白タイミングだったかもしれない。

 おのれフレイヤめ。恨みがましく思いながら、この期に及んで黙っている訳にもいかない。

 

「そうだよ……。言っとくけど、詳細まで明かすつもりはないぜ。そんな義理はないし、無理に聞き出そうとするなら、いくらボクでも本気で抵抗するよ。それこそ手段なんて選ばないからな!」

 

 ヘスティアの言葉に、大多数の神があざ笑った。一体何ができるのかと。

 ただし、ごく少数、派閥裏を知るいくらかの神は顔をしかめる。彼らは新興のファミリアだとしても侮らずに、情報収集をしているのだろう。まさか成立して一年も経過していない、ましてや団員三名のファミリアが、Lv.4を二人も抱えているとは思うまい。下手な相手は彼らだけでぼこぼこにできる。

 フレイヤも知っているが、この二人にはあまり興味を示さなかった。いや、ベルに構い過ぎなのか。なんでだか知らないが、フレイヤはベルを気に入っている。別に悪いことでもないので、変な真似をしない限りは見守ろうと思っていた。

 まあよほどの事情がない限り、何もしてきやしないだろう。どう考えたってデメリットの方が大きい。

 

「そこまでマナーのなってない神はいないわよ」

「せやな。この場で明かせっちゅうんやったら、それこそ全ファミリア構成員のステイタスを完全公開するくらいせんと釣り合いが取れん。ちなみにウチはそこまでして知りたない」

 

 最強ファミリアの二つに牽制されて、いくつかの舌打ちが聞こえた。まあ分かってはいたのだ。そういうカスがいることは。

 あと、なぜかヘルメスが妙に顔を青ざめていた。気になる事でもあったのだろうか。

 

「つまり、そういう事なのよ」

 

 唐突とも言えるフレイヤの言葉に、ヘスティアは首をかしげた。誰に言っているのか分からない台詞である。

 が、彼女は一定の確信を持っているようだった。周囲の反応が鈍いことも気にせず、続ける。

 

「先に言っておくけど、隠してて許されるのは()()()()よ。元々情報共有の協定があるのだから、新機軸スキルの報告は義務。ここまでに情報がないのは、明らかなルール違反だわ。でもいちいち遡行したって仕方がないから、()()()()なら皆が納得できるわ。そうよね、ロキ?」

「ああ、せやな。ウチも今はっきり言うならば、許したれる。んでもってこれ以降は、たとえ何があっても保証できんわ」

 

 鈍いヘスティアは、やっとこれが警告というより恫喝なのだと気が付いた。

 オラリオに我の強い神が無数に存在しながらも一定の秩序を保っていられるのは、それなりの理由がある。一番大きいのは絶対的調停者としてウラノスが存在し(間違ってもギルドではない)、その彼を大ファミリアが尊重しているからだ。間違ってもなんとなしで保たれているバランスではなく、ある程度良識と実力のある神が努力した結果。

 ただし、そういった事情を分かっていても不正を働く者というのは出てくるもので。現時点が、制裁のないギリギリのラインと告知しているのだ。

 というか。

 

(えっ? えっ?)

 

 いまいち状況を察しきれないヘスティアは、きょろきょろと周囲を見回した。

 言わんとしていることは分かる。分かるが飲み込めない。これではまるで、絶対に隠し通さなければならないと思っていた成長促進スキルが、実は隠れながらもぽつぽついるような言い草ではないか。

 微妙に気まずい沈黙の後、最初に手を上げたのはアストレアだった。彼女を皮切りに、ぽつぽつと手が上がり始める。

 

「実はうちの子にも一人……まだ目に見えて効果はないけど。どうせだから言っちゃうけど、聖闘士(セイント)星矢にちなんだスキルでした」

「俺の所にも……。ちょっと体が弱くて大成できないと思ってた子が、北斗の拳のトキにちなんだスキル得てから、それはすごいのなんのって」

「えへへ、私んとこにもいるんだよね。桜木花道系っていうか、戦闘に一切の補正が入らない代わり、成長をどかんと上げてくれるって感じの」

「えっっっ!」

 

 ある意味、それはヘスティアにとって辛すぎる裏切りだった。

 こいつらが黙っていたせいで、ヘスティアが針のむしろになったというのもある。いくら明るみに出て、しかも唯一無二の超有用スキルとなってしまえば、眷属(子供)強奪の危機があるとしても。気持ちは分かるがふざけんな、だ。

 だがそれ以上に、手を上げた者の中にアストレアがいたのが、一番堪えた。

 ヘスティアはアストレアと仲がいい。天界では特に絡みがなかったものの、間にアルテミスが入ったことも手伝って、今では超神友(マブダチ)と言ってもいい間柄だ。それが、ここにきて。

 分かっている。アストレアは悪くない。彼女はただ、自分の眷属(子供)を守るために、そういう選択を取ったというだけだ。ヘスティアと同じように。それでも、それでも……なんかものすごくショックである。

 

「今日、議事録取ってるの誰だったかしら?」

「分からん。まあどうせ役割なんて有名無実化しとって、ちゃんとやっとる奴なんておらんしな。後でウチからギルドの子に言っとくわ」

 

 新ジャンルスキルの発見はかなりの大事だ。全く同じスキルはないが、似たような効果を持つものは結構見つかる。そういったとき、役に立つかは微妙だが、まあ指標くらいにはなるだろうという事でリストに記されるのだ。故に、スキルの大雑把な方向性を記録するのは、それなりに重要だったりする。ヘスティアも、この一覧を見てスキル分類を覚えたし、だから成長促進スキルがない事を知っていたのだし。

 ただし現在、これの価値は大分下がってきている。

 『能力』は言わずもがな、覇気を代表とする汎用技術すらも並大抵のスキルより有用なのだ。それも、場所や状況を選ばない。環境によって発生するスキルは有用性に大きな差があり、あれば強いという訳ではないのだ。

 現在は下手なスキルを頼りにするより、汎用技術の成長と運用のノウハウを蓄積した方が強くなると言われていた。ヘスティアも、状況・環境限定のスキルより頼りにしやすいという心情は理解できる。

 もしこれで汎用技術が広まっていなかったら。そう思うとぞっとした。それこそ、今回など比べものにならない大事になっていただろう。下手をすると、有無を言わさずベルを取り上げられていたかも。

 なんとかかんとか神会(デナトゥス)が終わり、ヘスティアは「お疲れー」とそこら中の神から雑にねぎらわれる。

 暫く呆然とした状態で、ぱらぱらと神が変えていく中、一人座ったまま佇んでいた。半分ほどが会場から居なくなった頃、ぽつりと呟く。

 

「釈然としない……全然釈然としない……」

 

 話はいいように終わった。それは間違いない。

 これからはベルを隠す必要がなくなり、負担はかなり軽減された。アルフィアも肩の荷が下りる事だろう。総じて見れば、全てがヘスティアにとって都合よく回ったと言っても間違いではないのに。

 どうしても納得できなくて、ヘスティアは暫く、その場で渋い顔をし続けた。

 

 

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