絶対に負けるわけにはいかない。
俺、ジークフリートは、貴族として、魔術師として、ギルド組員として、矜持がある。
光が収まると、戦いの座に俺達二人はいた。神聖で、どこまでも静謐な世界、それが結界の中だ。
「「今、勝負の剣を」」
声を揃えて宣言すると、中央に剣が落ちて突き刺さる。
剣が指し示した俺達の色を決める。俺が黒で、「通り魔」の少女が白。ここで負ければソウルカードを奪われるかもしれない、とは考えなかった。彼女は間違いなく魔術師狩りではない。結界の中であたふたしているのがその証左だ。お互いに4枚引いて、手札とする。
「私のターン!」
(ターン1)
彼女のやや低いが通る声が聞こえゲームが始まった。最初の土地、それで相手のカードの色が分かる。たしか魔術師狩りは黒色のデッキを使っていたというが、果たして。
「私は《スコレー沖幽霊船》をドミネーション!」
公開された土地は、広い海に不気味な廃船が浮かぶ二色の土地。
「青と黒のデュアルランドだと」
「......」
青と黒の混色のデッキ。
二色の土地の代償として、フードの少女は2点ライフを失った。
・フードの少女
20→18
「そして私は、1コストで《嘔吐》をキャスト。2点支払って、手札を吐いてもらう」
「いいだろう」
・フードの少女
18→16
どんどんライフを支払って、序盤から動いてくる。スーサイドと呼ばれるようなデッキなら、それだけで前進だ。土地を公開していない俺には抵抗する術がないので、しぶしぶ手札を公開した。
公開されたカードは次の四枚。
《白銀の歩哨》
《槌と盾の騎士》
《果ての塔の竜退治》
《ヴェントの黒騎士》
すべてが騎士に関連するカード。
騎士家に生まれ、魔術を収めながら騎士を目指す俺にピッタリのカード群だ。
「白単で、騎士がテーマのデッキ? ふーん、なるほど......」
彼女は暫く考えて、《果ての塔の竜退治》を捨てさせた。その行為に俺は内心舌打ちする。
俺の握るデッキは、彼女の言うとおり、白単騎士デッキ。ピースを騎士中心で組んで、シナジーを優先するミッドレンジの、ストンピィ(殴り倒し)デッキだ。騎士同士のシナジーは、置物スペルと土地が担うことになっている。その一枚を捨てさせられたわけで、俺は急所を突かれたように思った。
「ターンエンド」
「俺のターン、アクティベートフェイズ、ドローフェイズ、メインフェイズ」
俺は引いたカードを見て、にやりと笑った。そのカードは、《果ての塔の竜退治》。ハンデスされたカードを直後に引き込んで、ハンデスの意味が消失したのだ。カードの消耗は早まるが、ただそれだけ。2点ライフと1ターン、1コストと見合う働きだったかはこれから次第だろう。
「俺は、光の高原をドミネーション。そして《白銀の歩哨》をキャスト」
盤面に騎士が降り立つ。
種族、人間、騎士の貫通を持つ2/2のピースだ。召喚酔いで、このターンは攻撃できない。
────────────
白銀の歩哨 1
ピース-人間・騎士
貫通
2/2
────────────
「ターンエンド」
「私のターン、アクティベート、ドロー。マテリアルをセットして、《神秘の水域》をドミネーション」
(ターン2)
少女は一枚カードを引き、青の土地カードを公開する。
土地にはさまざまな効果があり、公開する順番で使える効果が増減する。一番メジャーなものは、回復ランドというもので、戦闘後、戦闘を行ったピースを回復してくれる。
今公開した《神秘の水域》は、ピースの回復能力を持たない特殊地形みたいだ。
「私はコストを1支払って、神秘の水域の効果でストックを1カウント上昇させる」
ランドストックはその数字が、カードに示されたストック以上であれば、そのカードのコストが1下がるギミック。青が得意とするギミックで、禁忌と呼ばれるデッキはこの効果を多用する。今のところテンポ損だが、コストが下がったカードを連打されると、突然捲られることになる。
こういう手合いの場合、序盤からどんどんピースを展開し、相手のライフにプレッシャーをかけるのがよい。ピースが並べばその分打点が膨らむわけで、そうした場合、相手の残りターンが減る。自由に動けるようになる前に、詰めておくことが肝心だ。
セオリー通り、進める。
それが騎士として、正統な戦い方。
「そして青の1コスト、《開架》をキャスト。デッキから3枚見て並び替えて1枚ドローする。私はこれでターンエンド」
ドローの質を高めるキャントリップ呪文を唱えてターンを渡してきた。手札増減は1枚使って1枚ドローなので0。
「アクティベート、ドロー、マテリアルをセット、ドミネーション。《騎士たちの巨城》を公開。そして《果ての塔の竜退治》をキャスト」
「.......っ!?」
捨てたはずのカードをすぐにキャストされて、フードの少女がうろたえているのが見えた。それを見て内心ほくそ笑む。神に愛されたのは俺だ。
────────────
果ての塔の竜退治 2
クラフト
あなたは探検を行う。探検は、3コスト以上のナイトを場に出すか、騎士によって相手プレイヤーにターンの最初のダメージを与えることで進行する。
1 ダミーマテリアルを1つチャージする。
2 デッキの上から二枚を見て好きな順番でデッキトップかボトムに送り、2点のライフを回復する。
3 相手プレイヤーに3点ダメージ
4 一枚ドローする。
5 このカードを破壊し、飛行を持つ4/3ドラゴントークンを場に出す
────────────
目の前の仮想盤面、その大理石の上には巨大な巻物がバーンと公開される。それは地図の形をしていて、すごろくのようにマスが設定されていた。マス目にはそれぞれ効果があり、最後に竜の塔へとつながっている。そして騎士のコマが最初の場所に置かれ、騎士によるダメージか、3コスト以上の騎士の着地で一歩進むのだ。
「《果ての塔の竜退治》の1マス目の効果を発動する。ダミーマテリアルをチャージ」
「どうぞ」
「そして、《白銀の歩哨》で攻撃!」
「ライフで受ける.......っ!!」
騎士の剣が彼女に振られて、少女のライフが削られる。痛がる彼女を見て、良心がちくりと痛む。
思えば、この年頃の少女と結界で戦うのは初めてだった。
・フードの少女
16→14
「ダメージを与えたことで、果ての塔の竜退治を2マス目に進める」
2マス目の効果はデッキ操作。
俺はデッキを見て、二枚の不要牌をボトムに送った。そしてライフを2点回復する。
・ジーク
20→22
雀の涙だが、この回復があとで効くことを祈ってターンを終了した。
「ターンエンド」
「私のターン、アクティベート、ドロー」
(ターン3)
土地を起こして、4枚になった手札をじっと見つめて、彼女はカードを繰る。
「竜退治は全部の効果を使うと、2点回復、デッキ操作、3点バーン、一枚ドローの4/3飛行ドラゴンになるわけ? 効果に時間差があるとはいえ、全部使われると、さすがに厳しい......」
少女にぱっとデッキの骨組みを見抜かれるが、俺はどこ吹く風だ。
超えられるはずがない。相手のデッキは、多分遅いのだ。騎士のダメージが通り続ければ、すぐにドラゴン解放までたどり着く。
「マテリアルセット、私は1コストでストックを上昇して2へ。《汚染地帯のコウモリ》を軽減0コストでキャスト。《運命修復》を2点支払ってキャストして、2枚ドロー。ターンエンド」
かなり派手に動くが、ドローソースで手札は増減せずそのまま。
・フードの少女
14→12
「ふっ。俺のターン、ドロー!」
俺は正直余裕しゃくしゃくだった。1/1飛行のコウモリ? そんな貧弱なピースで騎士は止まらない。ここで騎士が止まらないなら、このまま騎士物語軸のシナジーで押しきれる。土地を起こして、カードを唱える。
「騎士の剣を受けてみろ!」
天高くカードを持ち上げそれを提示する。
「俺は、2コスト、《聖なる騎士マルタス》をキャスト。こいつは2コスト以上の騎士を持つピースのコストを一度だけ1コスト下げる」
────────────
聖なる騎士マルタス 2
ピース-人間・騎士
1ターンに1度、あなたが騎士のピースを場に出す時、そのカードのコストを1下げる。
3/3
────────────
《騎士》シナジーを構成する強いカードだ。3/3の騎士。
「白銀の歩哨で攻撃」
「ライフで受けます」
・フードの少女
12→10
「ダメージを与えたので、竜退治を3マス目にすすめて効果を発動。3点ダメージ」
「きゃっ!!」
塔の上から落石があり、彼女に降り注ぐ。防壁がそれを守った。
・フードの少女
10→7
彼女のライフは着々と、想定以上に早く削れている。いい傾向だ。このまま殴りきれば、大量に残してある手札に何もさせずに勝つことが出来る。次のターンには、一気にドラゴン解放までのめどが立っているのだ。
「ターンエンド」
「ドロー、なるほど」
(ターン4)
彼女は引いたカードをみて、ふんと息を吐いた。
「ドミネーション。《神秘と生け贄の祭儀場》を公開。1コストでストックを3にする」
そして彼女は手札から目を離して、盤面に手をかける。
「メインフェイズ、コウモリで攻撃」
「ライフで受ける」
飛行を持つピースは飛行を持つピースでしかブロックできない。
地上戦で強い騎士も、空を飛ぶ存在には触れられないので素通しする。
・ジーク
22→21
「ターンエンド」
「なんだと!?」
なにもせずに、目の前の少女は自分の番を終えた。
相手のランドが立っている。カウンター構え?
それとも、事故? あんなに引いたのにか?
相手がピーピングしたカードの内、自分の手札に残ったカードは《槌と盾の騎士》、《ヴェントの黒騎士》の二枚。
二枚で動ける。盤面も定着していて圧勝だ。
ここでカウンターが走っても勝てるだろう。ここは踏み込んだほうがいい。
「ふんっ。正直拍子抜けだぞ。俺のターン、ドロー!」
……来た。
手札に来たカード。それは、自分のソウルカードで、このデッキのキーカードである《威光の玉座グリムヴェント》。相手はコストを立てているが、《グリムヴェント》は打ち消されない。
完全に裏をつける。
このまま行けば、勝てる。
「俺は《エンダーハント城》をドミネーション。《聖なる騎士マルタス》の効果により、軽減3コストで《威光の玉座グリムヴェント》をキャスト! さあ、いでよ、騎士の王よ!! その威光にひれ伏せ!!」
────────────
威光の玉座、グリムヴェント 4コスト
伝説のピース-騎士・王
このカードは打ち消されない。
速攻(このピースは召喚酔いしない)
指定攻撃(相手のコントロールするピースを対象にして攻撃できる)
継戦(このピースはあなたのターンエンド時にアクティベートする)
神聖(1)
このピースはダメージを受けない
5/5
────────────
盤面に、カードを叩きつける。
マントと共に、剣を引き抜く音が鳴る。
鎧に身をまとった伝説の騎士、グリムヴェントが着地した。
「《グリムヴェント》の着地により《竜退治》を一歩進める。一枚ドロー」
《竜退治》のマスが一マス進んでドロー。引いたカードを見て、ほくそ笑む。
「さらに、《御旗の伝令》をキャスト。騎士を2体コントロールしているため、0コスト」
────────────
御旗の伝令 2
ピース-人間
速攻
あなたが騎士をコントロールしているなら、その数だけこのカードのコストを下げる。
2/2
────────────
馬に乗った伝令が着地した。
速攻なので召喚酔いせず、このターン攻撃出来る。
メインフェイズからアタックフェイズ。
ここで攻撃するか否か。盤面の打点は大きく、ライフを削り取るのに十分だ。しかし相手は3コスト残しているわけで、返し技がある場合、損をするだろう。
しかし、《竜退治》を見ると、残すマスは一個。竜の棲む塔のみ。攻撃が通れば、ドラゴンが開放されて盤面は固い。
局面はいい。
ここで怖いのは、盤面で損をすることより、コンボ等の相手の大技が飛んできて、ゲームが終了すること。だからライフプレッシャーをかけて、相手のドロー回数や展開、キャスト回数を最小に抑えることが、最善か。
覚悟を決めて、場のカードに触れる。
「《グリムヴェント》、《白銀の歩哨》、《マルタス》、《伝令》で攻撃。合計12点だ」
《グリムヴェント》は「指定攻撃」を持つ。
それは相手のブロック宣言に依らず、好きなピースに攻撃出来る。
「攻撃指定は《汚染地帯のコウモリ》」
「《グリムヴェント》を《コウモリ》でブロック」
《汚染地帯のコウモリ》を一方的に打ち取る。《グリムヴェント》はダメージを受けない永続効果を持つため、無傷で攻撃やブロックができる。かなり強い!
このままいけば、《マルタス》と《歩哨》《伝令》で7点でライフ7を削り切ることができる。つまりリーサル(致命傷)だ。
「インスタントタイミング」
「......来た」
相手は残した3つの土地を使って、こっちのターンに動いてくる。
「《嵐に潜むもの》を閃光でキャスト」
────────────
嵐に潜むもの 3
ピース-アバター
閃光:このカードはインスタントタイミングで唱えられる
飛行
このカードを唱えるに際して、あなたは手札のカードを一枚捨ててもよい。そうしたなら、このカードのコストを1下げる。そうして唱えたなら、このピースを着地後生け贄に捧げる。
着地時、相手の場か、キャスト中のピースを、デッキの一番上か、一番下かを相手が選んで送る。
3/3
────────────
突如、空が荒れて、エイのような飛行生物が突風と共に襲来する。
「《聖なる騎士マルタス》を指定、デッキの一番上か下に送る」
「下だ」
《マルタス》は確かに強いカードだが、それでもコスト2。
故に後半引きたいカードではない。
これから後半戦を送る上で、もっと質の高いカードは沢山あるので、デッキボトムへと送った。
「《嵐に潜むもの》で《歩哨》をブロック」
「......! 来た!」
急襲してきた《嵐に潜むもの》は、《歩哨》の攻撃に対応して、反撃する。
逆に一方的に討ち取られて、盤面は《グリムヴェント》のみに。大損だ。だが《グリムヴェント》の貫通ダメージがコウモリを打ちとったことにより、4点通る。
さらに追撃で《伝令》の速攻2点。
・フードの少女
7→5
「ダメージボーナスで、《竜退治》を一歩進める。そして竜の塔を破壊。鎖を断ち切ってドラゴンを場に出す!!」
塔の頂上からドラゴンが降りてくる。
真っ赤なウロコに、黒い背の刃。ギョロッとした目。間違いなくドラゴン!
凶暴なドラゴンの登場に、彼女はぞっとするほど冷たい声でその死を宣告した。
「インスタント。《内臓裂き》を発動。2コスト以下のカードを破壊する。対象はドラゴントークン」
────────────
内臓裂き 1 ストック2
インスタント
コスト2以下のピースを破壊する。
────────────
コスト0で飛んでくる確定除去。どんなに強いトークンでも、コストは0として処理される。
そのため、ドラゴンはすげなく沈んだ。
しかし、盤面は依然こちら有利。《グリムヴェント》が盤面に立っている限り、地上戦で負けることはない。
「ターンエンド」
「私のターン、アクティベート、ドロー」
(ターン5)
彼女はふーっと息を吐いて、手札に指をかける。
「そろそろ仕返しのターンだ。私はマテリアルをセット、そして墓地の《汚染地帯のコウモリ》の効果を発動する。墓地のコウモリを除外して、盤面に1/1飛行コウモリトークンを場に出す」
再びコウモリが盤面に出てきた。
しかしたったの1/1。こちらを脅かすようなものでもない。
「そして《群像》を1+2、軽減2コストでキャスト」
────────────
群像 1+X ストック2
アーツ
あなたは1+X体の飛行を持つ1/1鴉トークンを場に出す。
このカードを唱える際に、あなたは場のピースを一体生け贄にささげても良い。そうしたなら、このカードをコピーしてもう一度適用する。
────────────
「唱えるときに、コウモリを生け贄にささげて、合計6体の鴉トークンを場に出す」
コウモリが生け贄に捧げられて、ずらーっと鴉がならんだ。黒いコウモリから、黒いカラスに変わっただけなので、大して差は感じない。ただ量が多い。
「そんな雑魚トークン、いくら並べても無駄だ」
「本当にそう?」
彼女は挑発するように言った。
無駄に決まっている。コストを2消費して、6体の鴉トークンだ。たしかにこちらには飛行を持つカードがない。対処しなければ毎ターン6打点なので、それなりの脅威にはなる。しかしこっちのライフが19なのに対し、あいては4。ダメージ勝負はこっちに分がある。そして相手の残りコストは1。それでは何も出来ない。
「だが......」
だが延命としては有効だ。毎ターン鴉でブロックされれば、こっちは盤面で得するものの、かなり手数を稼がれる。その間に、相手のペースになれば損だ。
しかし、そんな俺の考えをぶっ飛ばすようなカードが公開された。
「私は鴉トークンを5体生け贄に捧げて、軽減1コストでキャスト。《失われし空、スカラノク》」
彼女が唱えた瞬間、空が割れるような激しい衝撃。
天空から滑り落ちてくるそのウィザードには刺々しい翼が生えていて、そして銀色の髪が長く光り輝いている。
スカラノク。コスト7の超巨大(メジャー)ピース。
────────────
失われし空、スカラノク 7 ストック2
伝説のピース ‐ ウィザード・デーモン
飛行
犠牲x このカードを唱える時、あなたのコントロールする飛行を持つピースを最大5体生贄に捧げてもよい。そうしたなら生け贄に捧げた数だけこのカードのコストを1下げる。
神聖(生贄1)ー通常のコストに追加して相手がコントロールするピースを一体生贄に捧げない限り、このカードへの効果を無効にする。
着地時/攻撃時:相手は自身のピースと、ピース以外の場のカード、手札、のそれぞれの領域から一枚ずつ選んでコストとして墓地へ送る。それらが行使されなかった場合、その度ごとに、相手はライフを2点失い、あなたは2点回復し、一枚ドローする。
7/4
────────────
「スカラノクの着地時効果を発動。あなたは手札を1枚、盤面のピースを1枚、ピース以外の場のカードを1枚、それぞれ選んで生け贄にささげてもらう」
「ぐっ!」
手札を一枚捨てて、手札は残り1枚。盤面に残っている《伝令》を生け贄に捧げて、盤面はがら空き。
騎士物語を先のターンに使い切ったので、それは免れた。
「捨てられなかったカードの分ドローして、ドレインする」
「は?」
彼女はそういうと、1枚ドローした。
それを見届けると、2点のライフドレインが発生して、急に痛みが走る。
・ジーク
21→19
・フードの少女
5→7
彼女のキーカードは、盤面を荒らして荒らしてその場に居座る。
むちゃくちゃだ、あのカード。奪い取ることに特化した、すさまじいカードがこんなターン数に着地するなんて。しかも、あの効果は着地時だけじゃなく、攻撃時にも適応されるらしい。
そうなれば、死だ。返しのターン、あれを討ち取らねばならない。
しかし、《グリムヴェント》はそれが出来る。
「ターンエンド」
相手はピースを立たせたまま、ターンを終了した。
「俺のターン、アクティベート、ドロー!!」
ドローは、4コストの騎士、《ベレスの白銀の聖騎士》!!
「俺はマテリアルをセットして消費」
ランドストックは青の専売特許ではない。どの色でも、マテリアルを消費すれば、ストックは上がる。
「そして、軽減3コスト。《ベレスの白銀の聖騎士》をキャスト!」
────────────
ベレスの白銀の聖騎士 4 ストック1
伝説のピース 人間・騎士
速攻
着地時:あなたはデッキの上から6枚を見て、2枚手札に加える。
破壊時:2/2の騎士トークンを2体場に出す。
4/5
────────────
ストックにより、コストが軽減されて3コストで場に出た。
そして着地時、デッキの上から6枚を見て、後続を探す。結果、4コストの騎士と3コストの騎士を1枚ずつ手札に加えた。
「アタックフェイズ」
《グリムヴェント》を横向きにして、宣言した。
「さあ、剣の錆になれ!! 《グリムヴェント》で《失われし空、スカラノク》を指定して攻撃」
「.......対応なし、どうぞ」
《グリムヴェント》と《スカラノク》が真正面からぶつかり合う。
《スカラノク》のパワーは7で、普通なら殴りまけるものの、《グリムヴェント》は効果でダメージを受けない無敵のピース、一方的に《スカラノク》を討ち取ることができる。
「さらに、《ベレスの白銀の聖騎士》で攻撃。白銀よ、敵を討て!! 速攻4点」
「鴉トークンでブロック」
鴉トークンがあっという間に蹴散らされて、戦闘終了。
相手のライフに剣が通らない。
歯がゆいが仕方ない。
俺はイライラした気持ちを押さえて、一息つく。
結果盤面は、こちらに4コストの強力な騎士が2体、相手には《嵐に潜むもの》だけが場に残る。
《スカラノク》を除去出来たのは良かった。あんなものが盤面に居座り続けていたら、こっちの盤面はめちゃくちゃになっている。
「ターンエンド」
グリムヴェントの「続戦」能力で、グリムヴェントはターンエンド宣言と共にタップ状態から回復し、頼れる盾になる。
俺は盤面にかかっていたプレッシャーを一気に払いのけ、深く深く息を吐いた。
スカラノクが相手のキーカードなのは間違いない。なにせ7コスだ。お膳立てしてようやく1枚出てくるカード。これを凌げば、必ず失速する。相手のデッキは間違いなく、あのカード《スカラノク》に全ての体重を乗せるデッキなのだ。
柱が消えた家屋は潰れる。これには例外がない。
「私のターン、ドロー」
(ターン6)
このままいけば勝てる、そう確信して相手の少女の様子をちらっと覗いた。
フードの隙間から見える彼女は.......確かに笑っているように思えた。
でも、このターンを凌げば、必ずこっちが勝つ。
こっちの盤面は盤石で、返すのは難しい。
「何言ってんの?」
目の前の少女は、こっちを貫くような視線で言った。
「次のターンが来るわけないじゃん」
彼女は増えた手札からカードをぽろりと落とす。
「私は軽減2コスト、《剥離》をキャスト」
────────────
剥離 3ストック1
アーツ
墓地の一番上にあるカードを対象にする。それがピースだった場合、場に出す。それは速攻を持ち、次のエンドフェイズに除外する。
────────────
「.........」
絶句した。
「墓地の一番上は、《失われし空、スカラノク》」
自分には対処するすべがない。
先ほど破壊したはずの超大型ピースが、再び盤面に舞い戻る。まさかのリアニメイトスペル。気がつくべきだった。自分ならあのキーカードを握った時、なにを思うか。7コストのカードなんて、まず普通に唱えようとは思わない。だからリアニメイトか踏み倒しで唱えるだろう。そういう風に考えて然りだったのに。
「スカラノクの着地時効果を発動。あなたは手札、盤面のピース、ピース以外のカード一枚ずつ選んで生け贄に捧げる」
「そんな........!!」
俺は激しく慟哭した。
盤面には、いつも自分を支えてくれた、魂のカード。
それを自分の手で葬り去らなくてはならないこと、もう勝ち目が薄いこと。その全てが自分の甘い心にのしかかる。
「お、俺は、《白銀の聖騎士》を生け贄に捧げる」
手札を1枚捨てるが、盤面にはピース以外のカードがないため、2点のライフを失った。そして少女は1枚ドローする。《白銀の聖騎士》の破壊時効果は発動しない。
・ジーク
19→17
・フードの少女
7→9
「さらにアタックフェイズ、速攻、《スカラノク》で攻撃。攻撃時効果発動、手札とピースとスペルを捨てて」
「ぐううううっっ!!!」
《グリムヴェント》に手をかけて、そして生け贄に捧げた。
盤面から《グリムヴェント》が消滅する。
手札をさらに1枚捨て、クラフトスペルが場にないためさらに2点ライフを失う。
・ジーク
17→15
・フードの少女
9→11
「《スカラノク》飛んで......穿け」
「ライフで受ける!!」
場にピースがいないためブロックできない。
「ぐわああああああ!!!」
・ジーク
15→8
激しい痛みと共に、攻撃が突き刺さる。
「次、《嵐に潜むもの》で攻撃。飛行3点」
「ライフで受ける!!」
・ジーク
8→5
だがこのまま行けば、アタックフェイズは終了し、ライフが残る。
このターンでの負けはない。
「そして、インスタントタイミング。私は手札から、《生首送り》をキャスト」
────────────
生首送り 2 ストック1
インスタント
場のピースを1体選択して破壊する。それをコントロールしていないプレイヤーに、そのピースのコスト分のダメージを与える。
────────────
「対象は、《失われし空、スカラノク》」
スペルを唱えて、《スカラノク》の首がぼとり、と落ちた。
グロテスクで、華々しい風景に息を飲む。
「......ははっ」
俺は乾いた笑いしか出なかった。
彼女は強い。
あのカード、普通に使えばライフを犠牲にする万能除去だが、自分のキーカードを自爆させて、相手にダメージを与えるカードとして彼女は使う。その冷酷さが恐ろしい。
その瞬間、目の前の少女が分かった。
彼女は、勝利以外が見えていない。だから、強い。
「効果でスカラノクを生け贄に、あなたにコスト分、7点のダメージ。さあ、散れ」
「......ここまでか」
・ジーク
5→−2
勝負の幕が降りた。
***
その男はぺっと結界から吐き出された。そのまま、後ろにすっ転ぶ。
騎士シナジーのデッキは強かったけど、なんか《スカラノク》が刺さって普通に勝っちゃった。デッキの回りも強かったし。
それを思うと、この魔術師ギルドの人も可哀想だった。
私のデッキはアンフェアデッキ(インチキ中心で組んでるデッキ)だから、妨害札を持たないままフェアな戦い方をしていると勝てないだろう。
妨害札を抱えると、騎士ピースを並べて殴るという当初のコンセプトに反するので、ノイズになるし、デッキ単位の相性差があったように思う。
「さあ、カードを頂くよ」
私は戦いの盟約に従って、レアカードを頂いた。《果ての塔の竜退治》と《ベレスの白銀の聖騎士》の2枚を手に入れた。
この《果ての塔の竜退治》、めっちゃ強かった。
書いてあること全部強い。騎士がいないと何にも出来ないけど、騎士で盤面を支配できれば、圧倒的にリードを拡大できる、とんでもないカードだった。それが「騎士物語」というテーマなんだろう。
「売ったら高くつくかも」
レアカードは度々手に入れているが、なかなか売りにいけない。カードを取り扱う錬成士に一人で取引を持ちかける勇気がないのだ。この前クレアちゃんと行った錬成士には、顔を覚えられてるだろうし、今更行くのもな。
「.......うぅ、お前.......」
男が、半身を起こしながら、こちらを睨みつける。
「ありがとう、じゃーね。魔術師ギルドの......人。他の人には私を追わないように言っといて」
私はそいつに一言残して、その場から立ち去ろうとした。
その時、一人の男の人が遠くから走ってくる。
誰だ? と思う暇もなく、魔術師ギルドのギルド員の男の前で止まった。
私には目もくれず、彼の前で話し始める。
「ジークさん、こんなところに居たんですね。今すぐ来て下さい!」
その声はかなり焦っていた。
「先日の魔術師狩りの構成員のディリスを捕まえた少女が、魔術師狩りに接触して行方不明とのこと」