わたしにとって、結界で勝負するのは久しぶりだった。
それも、見知らぬ男。お父さんのソウルカードを奪った犯罪者との勝負。
辺りは神の座と呼ばれる絶景の勝負場に二人はいる。
青い精霊がクレアの周りについた。
たぶんアリシアちゃんだ、とクレアは思う。アリシアちゃん自体は青のキャスターなんだろう。パック剥きでも青色のカードが出ていたし。
父が倒れて、私はどうすればいいか分からなかった。
でも、アリシアちゃんは違った。私より冷静で、私より多彩な魔術を使って、この状況を創りだした。いまもこうして戦えてるのは、アリシアちゃんの魔術でこの犯罪者を追いかけたからだ。
私がアリシアちゃんを拾わなかったから、もう間に合わなかったかもしれないのだ。
......わたしは今起きたことを回想する。しかし、今は、目の前の勝負に集中しなくては。
「勝負の剣を」
わたしが宣誓して天から剣が落ちてきた。キーンと耳が裂けるような高音が鳴って、白と黒の陣営に分かたれる。わたしがダークサイド、黒陣営で、後攻になった。
ぎゅっとカードを持つ手に力が入る。
***
「うわー、クレアちゃん大丈夫かな」
「まあ、なるようにしかならんね。君の方こそ大丈夫かい?」
「なにが?」
「クレアが負けたら、君が仇を討たないといけないよ」
「.......確かに」
私は背筋がぞっとした。
「だからよくよく敵を観察しておかないとね」
「......それもそうだね」
相手のデッキを見て、私は有利になるように組み替えておかないと、私にはもう命綱がないんだから。
私達の会話をよそにゲームが始まる。
「ふふふ、運が悪かったわね。先行は頂いた」
ドレスの女、ディリスから調子のいい言葉がポンポン出てくる。お互い4枚引いて、4枚のランドをセット。そして勝負が始まった。
(ターン1)
「私のターン、《消えない火の火口》をドミネーション。マテリアルをセット、赤1コスト、《屋敷の漂い火》をキャスト」
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屋敷の漂い火 1(ストック3)
速攻
1ターンに1度、あなたの墓地にある呪文を1枚除外する。そうしたなら、このピースをこのターンの間、+1/+1の強化を行う。
1/1
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盤面にボワンと火が立って、火の精霊が現れる。かわいいピースだ。効果は可愛くない。
速攻1/1ターン中に使った墓地の呪文を1枚除外し、このターン中、屋敷の漂い火を+1/+1の強化を行う小粒(マイナー)ピース。
「速攻で攻撃よ。さあ、燃やしちゃって」
「ぐっ」
魔力の火で防御幕を焼かれ、1ダメージを背負った。結界内でのダメージは痛覚とリンクしている。クレアちゃんは苦悶で顔を歪めた。
・クレア 20→19
「ふふっ、ターンエンド」
「私のターン」
クレアちゃんにターンが渡って、後攻により、ドローしてドミネーション。相手は赤の土地がめくれたが、クレアちゃんは白。《光の高原》を公開する。マテリアルをセットして、手札は5枚だ。
選択肢はあるが、
「ターンエンド、ゴー」
「ふーん? なにもしなくてもいいの?」
「関係ない」
クレアちゃんは動かずにターンを渡した。
「シエル、クレアちゃん、1ターン目動かなかったけど」
「ま、そういうこともある。多分、1コストのカードをデッキに入れていないんじゃないか?」
このゲームのコストは1ターン目に1、2ターン目3ターン目に2、4,5ターン目に3という風に増えていく。
もし理想的にテンポよく動くなら、手札を1-2-2-3になるように組むべきで、そうすると手札損なく動けるのだが、1コストのカードをデッキに入れずに、1ターン目に動きを犠牲にすることで2−2−3−3で組むのも、初手にかかわらず安定した動きが取れるので悪くない選択肢といえる。
その場合、デッキの速度は中速以降になり、ミッドレンジかコントロールといった速度帯になることが多い。
大抵の場合、デッキのアーキタイプはアグロ、ミッドレンジ、コントロールという風に別れることが多い。
アグロは高速でゲームを閉じることを目指し、ミッドレンジはそれより遅く、コントロールはもっと遅い終盤戦を志向する。
それぞれのアーキタイプの相性差は、ミッドレンジはアグロに強く、コントロールはミッドレンジに強く、アグロはコントロールに強いというのが定説だ。高速で展開しきるアグロに対し、ミッドレンジはシンプルに強いカードを手から順番に出すことで盤面をとって勝ちにいける。そのミッドレンジの強みを消して、消耗しきった終盤戦を戦えるコントロールはミッドレンジに強い。アグロの速さと手数を使えば、そもそも終盤戦にならないから、アグロはコントロールに強い。
速度差による三竦みはアーキタイプの基本。
それにコンボデッキや、ランプ、撹乱アグロ(妨害を打ちながら優位を保ち続ける戦い方)、などが加わる。
「お願い、白単ミッドレンジであってくれ。きちんと盤面で張り合ってくれ」
「どうかな。どうにも、そういうふうには見えないけど」
「.......」
クレアちゃんの様子を見るけれど、その顔色は私からは窺い知れなかった。
(ターン2)
「うふふ、私のターン、ドロー。セットして《聖なる炎の祭祀場》をドミネーション。私は1コストで、スペル《注ぎ火》を発動。漂い火を+3/+1の強化、漂い火の効果発動。墓地の注ぎ火を漂い火に食わせてパワーアップ、攻撃。5点!」
火の勢いが増したピースがクレアちゃんを襲う。
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注ぎ火 1
アーツ
ピース1体を選択する。そのピースにこのターンまで+3/+1の強化を行う。
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「........っ!!」
・クレア19→14
火が防御幕を焼いた。いきなり5点のダメージが飛んできて、クレアちゃんの足元がふらつく。
盤外で観戦している私達まで、火の気が飛んで熱い。
「加えて1コスト、《火炎投下》」
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火炎投下 1
インスタント
好きな対象に2点のダメージを与える。あなたがこのターン中、カードを1枚以上除外していたなら、「このピースはブロックされない」を持つ、1/1の炎エレメントトークンを場に出す。
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ボンと火が投げつけられて、クレアは2点のダメージを受けた。
「きゃっ!!」
・クレア14→12
そしてこのターン、漂い火の効果でカードを除外していたので、場に火炎の精霊が現れる。弱いけどブロックされない効果を持つ、1点クロック(ダメージソース)で、馬鹿に出来ない。
「ターンエンド」
「........」
クレアちゃんは手札を見ながら考える。
相手のデッキ、思ったより早い。火炎軸の赤単のアグロだ。
アグロというデッキは4ターンというのが一つのゴールになっている。
速攻の二点ピースを毎ターン並べると想定すると、2+4+6+8で20点に到達すること。
そして4ターン目に土地が3枚並ぶので、全体除去を打たれたり、3コストのメジャーピースの登場があることが理由になっている。
4ターンまでたどり着いて、それ以降生き残れるかが問題だ。それを無事通過すれば、段々と後半戦へと移行する。
「私のターン。セット、ドミネーション。2コストでクラフトスペル、《約束の花畑》をキャスト!」
唱えた瞬間、盤面に花畑が広がる。
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約束の花畑 2
クラフト
着地時:あなたは「このマテリアルは消費できない」を持つダミーマテリアルを二つ、マテリアルゾーンにセットする。あなたは0/1精霊トークンを場に出して、ライフを2点回復する。
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「約束の花畑の効果を発動。私はダミーマテリアルトークンをマテリアルゾーンにセット」
ダミーマテリアルトークンは、消費できないマテリアルトークンだ。それをセットゾーンに置く。それをする理由は、白という色が、セットされたマテリアルの数を参照するカードが多いからだ。
「.......シエル」
「ああ」
後々のための投資、だけど、これで確定した。
「コントロールだろう」
盤面を優先せずに置物スペルで終盤へと準備したわけで、多分コントロールだろうとの予想がついた。
クレアちゃんはスペルの効果で2点のライフを回復する。
・クレア12→14
そして0/1の精霊トークンが場に出た。基本的にブロッカーとして使い捨てるか、火力スペルの的になるか。
「ターンエンド、ゴー」
「私のターン、どんどん行くわよ」
(ターン3)
ディリスは手札を舐めるように検分して、カードを触った。
「私は2コストで、この火炎の使い手をキャスト、3/2アタッカー」
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火炎の使い手 2コスト
ウィザード
攻撃時:好きな対象に1点のダメージを与える。
3/2
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ぱちぱちと閃光のような火を放つ、赤いフードの魔術師が出てきた。
シンプルに図体のでかいピース。
「火炎投下を除外して2/2の漂い火で攻撃」
「精霊トークンでブロック」
精霊が一方的に取られて、ダメージ損失なし。
部分的には損だが、効果で出たトークンなのでカードカウント的には損ではない。後に回さずに、今この瞬間のライフのほうを優先してブロックする。
「炎スピリットトークンで攻撃」
「ライフで受ける」
・クレア 14→13
「ターンエンド」
「ドロー、マテリアルをセット、2コストで《月光野の乙女の物語》を設置」
盤面にバーンと本が開かれて、ステンドグラス調の風景が浮かぶ。
盤面に残り続ける、オブジェクトスペルだ。「物語」と呼ばれるオブジェクトスペルは、何ターンかすれば自壊するという特徴を持ち、経過ターンで効果を変える。
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月光野の乙女の物語 2
クラフト
(このカードはあなたがセットゾーンにマテリアルが1個以上ない限り唱えることは出来ない)
着地時:物語を進める。
一章 2/2の大鹿トークンを場に出す。
二章 セットゾーンにあるマテリアル数あなたのデッキの上から除外して良い。除外したカードは、あなたの二回目のエンドフェイズまで、手札にあるかのようにそれを唱えても良い。
三章
起動:1コスト支払ってこのカードをタップする。2/2大鹿トークンを場に出す。
このカードが場に離れた時、あなたは3点のライフを得て、飛行を持つ2/3天使トークンを場に出す。
あなたが望むなら、アクティベート時にこのカードを三章のまま破壊しない。
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「月光野の1章目の効果を発動! 2/2大鹿トークンを一体場に出す」
鹿が盤面に現れた。
「ターンエンド」
「私のターン、うふふ、私は2コストで《火を纏う猛獣》をキャスト、2/2速攻」
(ターン4)
ディリスの手札は残り2枚。
「そしてマテリアルをチャージして土地、《聖なる炎の祭祀場》の効果を発動。マテリアルを1つ消費してお互いに2点のダメージ」
「ぐっ!!」
・ディリス 20→18
・クレア 13→11
マテリアルを消費して、お互いへのダメージ。
三回目のドミネーションの権利を放棄しているため、損をしているのは相手だ。ライフも得していない。
だが、このダメージレースのゴール地点をたぐり寄せるお互い2点バーンは、短距離走を志向する相手にとって有利に働く。
その証拠に、クレアちゃんのライフはかなり心もとないものとなっていた。
「一斉攻撃! 攻撃時、火炎の使い手の効果で相手に1点の火炎攻撃」
「ぐうっ」
・クレア 11→10
「大鹿トークンで《火炎の使い手》をブロック」
2/2と3/2で相打ち......
「その瞬間、インスタントスペル。《猛火の一撃》を発動。速攻ピースが攻撃した時に誘発、4点のライフを払って、火炎の使い手に+2/+2の強化、貫通を付与」
ディリス18→14
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猛火の一撃 1コスト
猛火の一撃はあなたが赤のスペルを2枚以上除外している時、コストの代わりに4点のライフを支払って唱えることが出来る。
誘発:このカードは速攻を持つピースが攻撃した時、好きに対象を選んで発動する。
このターンの間、対象に+2/+2の強化を行い、貫通を付与する
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「さらに漂い火の効果、猛火の一撃を食って強化。貫通8点!! さあ、燃えろ!! 燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ!!!!」
「ううっ」
クレア10→2
立て続けに攻撃を喰らって、ばさっと膝をついた。
「クレアちゃん!!!」
やばい、クレアちゃんが負けちゃう。さっきの回復がなかったら、クレアちゃん負けてた。
「ターンエンド」
「私のターン、ドロー........来た!!」
絶望的な局面でも、クレアちゃんはまだ光を失っていない。
キラリと光る、金色に光る刻印。
「あれは.......」
シエルも思わず目を細める。
私にも分かった。あれが彼女のソウルカード!
「マテリアルをセット、月光野の2ページ目の効果を発動。私のセットしたマテリアルの数デッキが除外して、2ターンの間、手札にあるかのように唱えて良い」
白というのはドローが苦手な色だ。
だけどこのデッキはコントロールなので、終盤のリソース差で勝たなくてはならない。順当にマテリアルを伸ばして、カードを消費していかなくては勝てないデッキになっていて、そのためにマテリアルが多く入っている。月光野の効果は、そんな白の事情によくフィットしていた。
デッキの上から四枚除外して、自由に取り扱える。
「マテリアルを二枚消費してドミネーション! 《雲の上の時計塔》を公開! 4コスト、私の魂を喰らえ!! 《真夏の幻影エレゼー》をキャスト!!」
夏の草木をかき分けて、翼のない女神がその場に現れる。
花は咲き、風がそよぐ。手折った枝を手に、天使のほほ笑みを送る。クレアちゃんのソウルカード!
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真夏の幻影、エレゼー 3
ソウルピース 精霊
2(このカードはあなたがセットゾーンにマテリアルが2個以上ない限り唱えることは出来ない)
飛行
着地時、4点回復する。
このピースが場に居る限り、相手の着地時効果を全て無効化する。あなたが着地時効果を発動する度にあなたは一枚ドローして2点回復する。
4/5
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「エレゼーの着地時効果を発動、4点回復」
クレア2→6
「更に、《幻日環の祈り》をコスト0でキャスト!」
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幻日環の祈り 1(ストック2)
着地時:あなたは3点のライフを得る。
あなたのセットゾーンに2枚以上マテリアルがあるなら、これをコストを支払わずに唱えてよい。
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「エレゼーの効果で着地時効果にボーナス発動。1ドローして2点回復!!」
クレアの手札は6枚に。
そしてライフも5回復する。破格の性能だ。
クレア 6→9→11
「チィッ!! しぶといんだよ!!」
ディリスは舌打ちをして悪態をついた。化けの皮がべりべりと剥がれている。
しかしさもありなんだ。
このターン合計9点のライフ回復。アグロにはきつい仕打ちだろう。
相手の手札は0枚。盤面は1/1が2体。3/2、2/2の状況。一番大きいのをエレゼーで止めれば、4点。土地によるライフバーンで2点。火炎の使い手の攻撃時効果で1点。
合計7点。
もし相手がスペルを打ってきたら、《漂い火》のスタッツが1増えて合計8。
よって、相手の手札から3点以上の火力が出ない限り、このターンはなんとか生き残れる。このターンを凌ぎさえすれば......
クレアちゃんは除外されたカードの内、一枚に目を落とした。
「ターンエンド、ゴー」
そしてクレアちゃんはターンを渡した。