理由はなんか気持ち悪いからですね。2週間投稿だと間が14日なので微妙に月始めと噛み合わない。それともう少し頑張ったらリアルの季節と合っていい感じになる。
ただ今後ストックが10話とか20話とかできたら話は変わるんですけどね(´・ω・`)
というわけで次回の投稿は6月1日です。
梅雨の季節の、束の間の晴れ間だった。晴れ間と言っても雲の隙間からかろうじて日が差しているくらいだけど。何日も続いた雨のせいで、床も壁も、どこか湿っぽい。
そんな中、私は自室でぼんやりと外を眺めていた。
「ユーフォリアさん!」
元気な声とともにドアが勢いよく開いた。顔をのぞかせたのはルームメイトのラサさんだった。
彼女は弾むように私の元へ駆け寄ると、にっこりと笑って言った。
「せっかく晴れたんですし、商店街に行きませんか?」
「……商店街、ですか?」
「はい。ほら、最近ずっと雨ばっかりだったじゃないですか。外に出ないともったいないです!」
私は少し迷った。人混みはあまり得意じゃない。でも、期待に輝くラサさんの目と身振り手振りを交えながら説明する姿を見て、つい笑ってしまった。
「……わかりました。行きましょう、ラサさん」
「やった!」
ラサさんは嬉しそうに拳を小さく握ると、すぐさま支度を始めた。
………………
…………
……
着替えを済ませ、私たちは学園の外へ出た。
雨上がりの空はまだ曇っていたけれど、時折、雲の隙間からやわらかな光が差していた。まだ乾ききらない道に気をつけながら歩く。
「ふふ、どこから見て回りましょうか!」
ラサさんがうれしそうに振り返る。私は小さく頷いて彼女の後についていった。
しばらくして商店街にたどり着いた。昔ながらの看板が並ぶ通り。ガラス戸の八百屋、店先に並ぶ色とりどりの果物、遠くから聞こえる呼び込みの声。
どこか懐かしいような、あたたかい空気が漂っていた。
「わあ……人、けっこういますね!」
ラサさんが目を輝かせる。私はふと、胸の奥がきゅっとなるのを感じた。
何か、既視感がある。……気がする。でも、その感情はすぐ指の間からこぼれ落ちていった。
私はそっと息をつき、ラサさんに続いて歩き出した。
ラサさんに引っ張られるようにいくつかの店をのぞいた。
雑貨屋、文房具屋、喫茶店……。
きらきらと目を輝かせるラサさんを見ていると、こっちまで楽しい気持ちになってくる。だけど、そんな時。私はふと足を止めた。目線が一つの道に吸い寄せられる。
「……? ユーフォリアさん、どうしましたか?」
ラサさんの声で私ははっと我に返った。
「……っ。ごめんなさい。ぼーっとしてました」
慌てて笑って取り繕ったけれど、視線は自然とまたあの道に向かってしまう。
「……その、ラサさん。あっち、行ってみませんか?」
「え? あっち?」
ラサさんが私の指さす方を見る。そこは、商店街の脇にぽっかりと空いた細い道だった。人通りもなく、ひっそりと静まり返っている。
「……奥に何かあったかな? でも……どうして?」
「なんとなく……気になって」
自分でも、どうしてそう思ったのか、うまく説明できなかった。けれど、胸の奥に、小さな灯りがともるような感覚があった。
「お願いします。何か、知っているような気がするんです」
ラサさんは一瞬だけ戸惑ったようだったけれど、すぐにふっと笑った。
「わかりました。行ってみましょう!」
そして、私の隣に並んで歩き出してくれる。
私は小さく「ありがとうございます」とつぶやいた。
細道に入ると、喧騒はあっという間に遠ざかった。
さっきまであんなに賑やかだったのに、ここは別世界みたいに静かだった。
古びたブロック塀、ところどころ割れた舗装、草むらに隠れた小さな標識。
何も特別なものはないはずなのに、胸の奥がざわざわする。
歩くたびに水たまりが光を反射してきらりと瞬く。
そんな中、私はまた足を止めた。
「……ここ、なんだろう」
視線の先にはぽつんと佇む小さな公園があった。
錆びついたブランコ、色あせた滑り台、草に埋もれたベンチ。
人気のないその景色に、強い――けれど、名前のない懐かしさを感じた。
「……知ってる気がする」
思わず、誰に言うでもなく呟く。
ラサさんは少しだけ心配そうな顔をした。でも、すぐにいつもの明るい笑顔を作って言った。
「……行ってみますか?」
私は小さくうなずいた。
二人で、そっと公園へ足を踏み入れる。
耳に届くのは、自分たちの足音と、どこか遠くで鳴く鳥の声だけだった。
私は無意識に、古い手すりに手を伸ばした。
その瞬間。
ぱちん、と音が鳴ったような気がした。
視界の端で、何かが弾ける。
(……誰かが、ここで、泣いていた)
(……誰かが、誰かの手を引いて、走っていた)
(……呼ぶ声、必死な声、振り返る背中)
断片的な記憶が、怒涛のように押し寄せる。
「――っ」
私はふらりとよろめいた。思わず手すりをつかむ。
「リアさん!」
私は俯いたまま、震える声で言った。
「ここ……知ってる……。……私、ここで……」
記憶の輪郭はまだぼんやりしていて、形にならない。
だけど確かに、ここに“いた”ことだけはわかる。
そのことを言葉にしようとした瞬間だった。
ぽたり、と頬を伝う温かいものに気づく。
「……え?」
自分でも驚いて、私は指先で涙を拭った。
どうして泣いているのか、わからなかった。
悲しいのか、嬉しいのか、それすらもわからない。
ただ、心の奥にぽっかり空いた穴が、じんわりと痛む気がした。
そして、ラサさんがそっと手を差し伸べて、いつもの明るい声で言った。
「帰ろっか。こんな悲しい場所、ユーフォリアさんには似合わないよ」
その言葉に、私は思わず笑った。涙まじりの笑顔になってしまったけれど、それでも、笑えた。
小さく「はい」と答えて、私はラサさんの手を取った。雨のにおいを含んだ風が、私たちの間を通り抜けていった。
細道を戻るころには、空はすっかり雲に覆われて、さっきよりも灰色が濃くなっていた。
ぽつ、ぽつ。
気が付けばまた雨が降り始めていた。
「……あ」
私が空を仰ぐと、ラサさんも続けて見上げた。
「……降ってきちゃいましたね」
「……はい」
ぽつりぽつりの雨粒はすぐに音を増し、あっという間に本降りになった。
「どうしよう、傘、持ってないです……!」
「急ぎましょう! どこか、屋根のあるところ……!」
雨に追われるように、私たちは走った。
濡れた道を踏みしめて、さっきとは逆方向――賑わいのある通りの方へ。
見つけた屋根の下に滑り込むと、二人して肩で息をした。
「はぁ……。びしょ濡れ……!」
「……ですね」
「風邪引いちゃいますよ! リアさん」
その言葉に、私はぴくりと反応した。
「……え?」
「え?」
私がラサさんを見ると、彼女も目をぱちくりさせて、きょとんとしている。どうやら、本人も無意識だったらしい。
「えっと……ラサさん、今、私のこと……」
「あ……え、あっ……え、えっと……」
ラサさんは顔を真っ赤にして、あたふたと手を振った。
「ち、違うんです! さっきの公園のところで、なんか、その……! 空気にのまれたっていうか! あの、えっと……!」
私は思わず笑ってしまった。
「ふふっ……大丈夫ですよ。嬉しかったです」
「え……?」
「リアさんって呼ばれるの、なんだかあったかくて。そう呼ばれるの、好きかもしれません」
ラサさんの目が、ぱっと丸くなる。そして、少し照れたように、でも嬉しそうに笑って彼女は言った。
「……じゃあ、また呼びますね。リアさん」
私は小さく頷いた。雨の音が、まだしばらく続いていた。
だけど、その中に小さなあたたかさが確かにあった。
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